不動産売却では大きな金額が動きますが、消費税は課税されるのでしょうか?
消費税が課税されるのであれば、いくら課税されるのか知りたいですし、また課税されないで済む方法があるのであればその方法を知りたいですよね。
ここでは、不動産を売却する際にかかる消費税について、その仕組みや、課税対象を丁寧に解説します。
- 売却にあたり、土地は非課税、個人取引であれば建物も非課税
- 法人の建物取引の場合は、課税対象となりうる
また、「不動産売却の税金について知りたい」という方は、こちらの記事をご覧ください。
不動産売却で消費税は課税されるの?
消費税の課税対象については、「消費税の課税の対象となる取引は、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡、貸付け、及び役務の提供と外国貨物の輸入」(国税庁)とされています。
日常生活でよく耳にする消費税ですが、不動産売却時に直面する悩みの一つに、「消費税の問題」があります。不動産売却ではどのように課税されるのでしょうか。また、個人と法人で消費税の取り扱いに違いがあるため、この点を理解することが重要です。
まずは不動産の種類別に解説し、どの場合に課税され、どの場合に非課税になるのか確認しましょう。そして気づかぬうちに損をしていたという危険を前もって打破しましょう。
土地を売却した場合
不動産売買において、土地はその譲渡(売却)や貸付けにおいて消費税がかからないことになっています。
これは、消費税法基本通達の第6章「非課税範囲」の第1節に「土地の譲渡及び貸付け関係」が記載されています。
後ほど詳しく解説しますが、土地の売却に関しては、売主が個人でも事業者でも消費税は課税されないということが覚えておいてほしいポイントになります。
しかし、1か月未満の土地の貸付及び駐車場などの施設の利用に伴って土地が使用される場合は非課税取引に当たらないので注意しましょう。
他に非課税取引となるものとしては、有価証券の譲渡や社会保険料の給付等の他、住宅の貸付けなどがあります。
国税庁「No.6201 非課税となる取引」
建物を売却した場合
土地は非課税ですが、個人が、不動産売却で一戸建てやマンションを売却する場合は、建物部分は非課税取引に含まれないため課税対象となります。
抑えていただきたいポイントは、消費税は建物のみ、土地は非課税ということです。
建物を売却した場合に「課税」になる理由は、以下のような原因が考えられます。
- 建物の取り扱い:
法人が不動産を売却する際、建物には消費税が課されます。これは、建物が消費税法上「有形の動産または不動産」と見なされ、その売却が事業者間の課税取引に該当するためです。つまり、法人が建物を売却する場合、売却価格に消費税を上乗せして請求する必要があります。 - 土地の非課税:
一方で、土地の売却には消費税が適用されません。土地は消費税法上、非課税取引の対象とされています。これは、土地が消費税の課税対象から除外されているためで、法人が土地を売却する際には、その取引価格に消費税を加算する必要はありません。 - 複合取引の場合:
不動産が建物と土地のセットで売却される場合、税金の計算は複雑になります。この場合、建物部分に対しては消費税が課せられ、土地部分には課されません。従って、売却価格を建物と土地に按分し、それぞれに適切な税率を適用する必要があります。
個人が不動産売却をした場合の消費税
先ほど消費税の課税対象は「国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡及び外国貨物の輸入」とされていると解説しました。
では事業者ではない個人が不動産を売却した場合は消費税は課税されるのでしょうか?
結論からお伝えすると、人が自己の所有する不動産を売却する場合、通常は消費税の課税対象外となります。しかし、個人の売却活動でも消費税が課せられるケースもありますので、自身のケースをよく理解するようにしましょう。この後の章で、個人が不動産を売却した場合非課税にな理由や、課税になるケースについて紹介します。
法人が不動産を売却した場合の税金について、知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
個人が不動産売却をしたら消費税は課税される?
「事業者が事業として対価を得て行う」ことが課税条件とされているため、不動産の売却でも個人対個人で売買されるものについては非課税となります。
これは前章で解説した土地と建物、どちらを売却しても非課税となります。非課税となる理由は以下のような理由が挙げられます。
- 非事業者の取り扱い:
通常、個人が不動産を売却する場合、その個人は消費税法上の「事業者」とは見なされません。消費税は事業者間の取引に課される税金であり、非事業者である個人にはこの税金が適用されないため、個人による不動産売却に消費税は発生しません。 - 非課税取引の範囲:
個人が売却する不動産が自己の居住用である場合、この取引は消費税法上の非課税取引に該当します。居住用不動産の売却は、消費税の対象外とされています。 - 一定の基準を満たさない売却:
個人が不動産を売却する場合でも、その取引が一定の規模(消費税法で定められた事業規模)を超える場合には、事業者と見なされることがあります。しかし、一般的な個人の不動産売却はこの基準に達しないため、消費税が課されないのが通例です。
一方で、土地や建物は非課税でも不動産売却を進めていく中で消費税の課税対象となってしまうものもあります。
個人でも消費税が課税されるケース
土地や建物には消費税は課税されませんが、不動産売却を進めていくうえで必要になる以下のサービスについては消費税が課税されます。
課税事業者である不動産会社の仲介手数料
不動産の売却では、多くの場合不動産会社に仲介を依頼して売却活動を行ってもらいますが、不動産会社に支払う仲介手数料には消費税が課されます。
仲介手数料は不動産の売却価格に応じて高くなりますが、法律でその割合の上限が定められています。
売買価格 | 仲介手数料 |
---|---|
200万円以下 | 5%+消費税 |
200万円超~400万円以下 | 4%+2万円+消費税 |
400万円超 | 3%+6万円+消費税 |
売買価格が3,000万円であれば、3,000万円×3%+6万円+消費税=105.6万円。
売買価格が300万円であれば、300万円×4%+2万円+消費税=15.4万円です。
※平成30年1月1日の宅建業法一部改訂により、400万円以下の不動産売買の仲介手数料の上限が18万円となりました。
仲介手数料の上限はあくまでも上限額
仲介手数料の上限はあくまでも上限額のため、それ以下であっても構いません。
とはいえ、多くの不動産会社が仲介手数料の上限額を提示してくるため、値引きを希望するのであれば仲介の契約前に交渉しましょう。
仲介手数料の値引きで多いのは、半額にしたり、3%+6万円の6万円を除いたりすることです。
売買価格が3,000万円であれば、上限額は105.6万円ですが、半額であれば52.8万円、6万円を除くのであれば3,000万円×3%+消費税=99万円となります。
仲介手数料は税抜き価格にかかる
不動産会社の仲介手数料は物件価格の内、消費税を抜いた価格に対して課されます。
個人対個人の取引の場合や、売主が不動産会社など法人であっても土地だけであれば物件に消費税は課されませんが、売主が不動産会社など法人で、建物も含まれる物件であれば消費税が課されています。
売主が個人か法人か、対象の物件に建物が含まれているか含まれていないかで仲介手数料の対象となる金額を判断しましょう。
融資を受けた場合の一括繰り上げ返済手数料
不動産を購入した時に金融機関から住宅ローンなどの融資を受けており、売却時にまだ残債がある場合には、住宅ローンの残債を完済できないと不動産を売却することができません。
住宅ローンを借りた時に不動産に抵当権を設定し、担保に取られているからです。そのため、売却益や自己資金で住宅ローンの残債を一括返済する必要があります。
この住宅ローンなどの一括繰り上げ返済手数料には消費税がかかります。この手数料は、金融機関が提供するサービスの一環として認識されるため、消費税が適用される場合があります。
費用は金融機関によって異なりますが、固定ローンの場合で3万円~5万円、それ以外で3,000円~5,000円などが一般的です。
3万円~5万円に消費税が課されると3.3万円~5.5万円。3,000円~5,000 円だと3,300円~5,500円です。
なお、最近ではインターネットで繰り上げ返済できるシステムも多くなっており、その場合手数料が安くなったり、商品や金利に直接関連する手数料は消費税の非課税対象となることもあります。具体的なケースによって異なりますので、確認をしてください。
抵当権抹消登記を依頼した場合の司法書士報酬
不動産の売却では、所有権の移転登記を行う必要がありますが、この時の登記費用は通常買主が負担します。
一方売主としては、住宅ローンを完済するタイミングで、不動産に設定された抵当権を抹消するための抵当権抹消登記の手続きをする必要があります。
抵当権抹消登記は司法書士に依頼するのが一般的ですが、税金として納める登録免許税以外に司法書士報酬を支払う必要があり、この司法書士報酬に消費税が課されます。
抵当権抹消登記の登録免許税は1件1,000 円で固定ですが、司法書士報酬は依頼する司法書士によって異なり、5,000円~2万円程度が多いです。
これに消費税を加えると、5,500円~2.2万円となります。
住所変更登記と売渡証書
不動産の所有者の情報は法務局に登録されており、謄本を取ると住所を確認することができますが、売却する予定の不動産を購入してから、売却するまでの間に住所が変わっていた場合には、売却する前の間に住所を現在の住所に変更する必要があります。
この住所変更登記も、司法書士に依頼する際には登録免許税と司法書士報酬を支払う必要があり、登録免許税は1件1,000円、司法書士報酬は5,000円~2万円程度が多いです。
また、不動産の所有権移転などの登記費用は買主が負担するのが一般的ですが、売主は売渡証書を作成する必要があります。
売渡証書の作成には登録免許税はかかりませんが、司法書士報酬として5,000円~10,000円程度支払う必要があります。
住所変更登記や売渡証書作成の司法書士報酬に関しても、消費税が課されます。
法人が不動産を売却した場合の消費税
ここでのポイントは、法人が不動産を売却する際には消費税が課税さる。ということです。
消費税の課税対象となる事業者が事業として行う取引とは、不動産会社などの事業者がお金など対価を得て、資産の譲渡(不動産の売却)などを 継続して、かつ独立して、繰り返し行うことです。
個人が住宅を売却するのは一回限りのため事業の取引として認められませんが、法人が不動産売却を独立して繰り返し行うことは、事業者が事業として行う取引に該当するため消費税の課税対象となるわけです。
ですが、課税売上高によっては免税事業者となり納税の義務が免除されることもあります。
免税事業者に該当する条件
消費税では、課税期間に係る基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者は、納税の義務が免除されます。
法人の場合、基準期間というのは原則として前々事業年度の売上課税高のことをいい、新設の法人は基準期間がないので基本的に免税事業者となります。
しかし基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても特定期間における課税売上高が1,000万円を超えた場合はその課税期間から課税事業者となります。
特定期間は法人の場合、原則としてその事業年度の全事業年度開始の日以後6ヶ月の期間ことをいいます。
免税事業者となる場合には消費税の納税義務者でなくなった旨の届出というものを提出する必要があります。
詳しくは国税庁のタックスアンサーNo.6501「納税義務の免除」をご覧ください。
個人事業主が不動産売却をした場合の消費税
個人事業主とは、税務署に開業届を提出し、税務上の所得区分で法人になることなく個人で事業を行っている人のことをいいます。
個人事業主は、法人としての法的な枠組みを持たず、個人がそのまま事業を行っています。
法人の場合と異なり、個人事業主は事業に関する責任を全額自己負担します。つまり、事業が借金を抱えた場合、個人事業主は個人の資産でその債務を賄う必要があります。
また、法人格がないため、事業の利益は個人の所得として扱われ、個人の所得税の対象となります。個人事業の決算書を基に確定申告を行い、所得税と住民税を計算します。
法人ではなく、個人で事業をしている人が不動産の売却を行った場合の「消費税」はどうなるのでしょうか?
課税事業者であれば納税義務がある
個人事業主の場合も前々年の課税売上高が1,000万円を超えると、消費税の課税事業者となります。
そして法人と同様に、資本金が1,000万円未満、事業を始めて2年未満の基準期間がない個人事業主は免税事業者となりますが、その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても特定期間における課税売上高が1,000万円を超えた場合、その課税期間から課税事業者となります。
また、免税事業者であっても、消費税課税事業者選択届出手続を提出している場合は、課税事業者となりますので消費税が課税されます。
個人事業主における特定期間とは、その年の前年の1月1日から6月30日までの期間のことを指します。
法人と同様に基準期間における課税売上高が1,000万円以下となり、免税事業者になる場合には消費税の納税義務者でなくなった旨の届出を提出する必要があります。
提出先は納税地を所轄する税務署長です。
詳しくは国税庁の「[手続名]消費税の納税義務者でなくなった旨の届出手続」をご覧ください。
消費税の計算方法と納付方法
「土地や建物には消費税は課税されませんが、不動産売却を進める際に必要なサービスに関しては消費税が課税される」という点に基づき、消費税の計算方法を紹介します。
ポイントの復習にもなりますが、不動産を売却する場合、建物には消費税がかかり、土地には消費税がかかりません。そのため、日本における標準的な消費税率は、2023年時点で10%です。以下に計算方法と事例を紹介します。
ただし、実際の取引では、仲介手数料のほかにも様々な費用が発生することがあり、それらにも消費税が適用される場合があるため、総費用を正確に算出するには全ての費用を網羅する必要があります。また、税率は変更される可能性があるため、最新の税率を確認することが重要です。
消費税額の計算方法
不動産売却に関連するサービスや手数料の消費税額は以下のように計算します:
消費税額 = サービス料金(*1) ✕ 消費税率(*2) |
は不動産会社の仲介手数料や登記手続きの報酬など、消費税対象のサービスに対する料金です。
*2:消費税率 は、2023年時点で10%です。
事例①:不動産会社の仲介手数料に対する消費税額の計算
例えば、不動産の売却価格が5,000万円で、仲介手数料が売却価格の3%(+6万円)だとします。
仲介手数料 = 5,000万円 ✕ 3% + 6万円 = 1,506万円
消費税額 = 1,506万円 ✕ 10% = 150.6万円
消費税額は、150.6万円になります。
事例②:登記手続きの報酬に対する消費税額の計算:
例えば、抵当権抹消登記の報酬が5万円だった場合、
消費税額 = 5万円 ✕ 10% = 5千円
消費税額は、5千円になります。
これらの計算により、不動産売却時に発生する各種サービスに対する消費税額を算出できます。
消費税の納付方法
消費税は、サービスの提供が完了した時点で請求され、通常はサービス料金とともに支払われます。例えば、不動産の売買契約が成立した際や物件の引き渡し時などです。
消費税の納付は、サービス提供事業者のオフィスや取引の場で行われることが多いです。例えば、不動産会社のオフィスで契約を締結する際などに合計金額に含まれています。
納付の際の注意点は以下になります。
- 明確な内訳の確認:
請求書や契約書において、サービス料金と消費税の内訳が明確にされていることを確認してください。 - 税率の変動:
消費税率は政策によって変更されることがあります。取引時の現行税率を確認することが重要です。 - 領収書の保管:
支払った税金に関しては、領収書を保管しておくことをお勧めします。将来的な税務処理や確認のために必要となることがあります。 - 税理士の相談:
税金に関する複雑な事項や不明点がある場合は、税理士などの専門家に相談することをお勧めします。
不動産売却時の消費税に関連する手続きは、主に関連するサービス提供者が行うため、サービス利用者はサービス料金に含まれる消費税を理解し、適切に支払うことが求められます。
ここまで不動産売却の消費税について解説しました。
身近にある消費税であっても、不動産売却となると課税に関して複雑でよく理解できないこともあると思います。
不動産売却の消費税について疑問点や不安がある場合は、不動産売却のプロである不動産会社に相談することがよいでしょう。
不動産の売却では、複数の不動産会社に査定を依頼するのが一般的で、複数の不動産会社に査定を依頼するのであれば一括査定サービスの利用がおすすめです。
一括査定サービスにも多くの運営会社がありますが、その中でもおすすめはイエウールです。
イエウールの特徴は 提携不動産会社数が2,000社を超えています。
提携不動産会社数が多い事で、郊外でも多くの不動産会社の紹介を受けられる可能性が高くなります。郊外でなくとも、多くの不動産会社の紹介を受けられる事で、査定価格や不動産会社の比較検討がしやすく、結果として優秀な不動産会社の営業マンと出会える確率が高くなります。
不動産の売却を考えているのであれば、まずはイエウールで売却査定を依頼しましょう。
