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被災者生活再建支援制度の支援金とは
台風や地震などの自然災害によって家が壊れてしまった場合、これからどうやって生活していけば良いのか途方に暮れてしまいます。東日本大震災や至るところで起きている集中豪雨による被害で、多くの家が倒壊、全壊し、避難所で生活をする風景がニュースで映し出されています。自然災害によって居住する住宅が全壊するなどの生活基盤に著しい被害を受けた世帯に対して、支援金を支給して生活の再建を支援する被災者生活再建支援制度というものがあります。
被災者生活再建支援制度のしくみ
被災者生活再建支援制度とは、都道府県が相互扶助の観点から拠出した基金を活用して被災者に支給します。被害状況を見て被災者生活再建支援制度の適用になれば、都道府県の拠出金を充てていきますが、国からの補助も2分の1程度捻出されます。災害といってもすべてがこの被災者生活再建支援制度の適用になるのではなく、国が支援法適用と認めない場合は国からの補助は下りず、その都度、市区町村で対応が求められます。各市区町村で申請を受け、被災者生活再建法人(公益財団法人都道府県センター)から被災者に支給されます。
被害状況から再建に向けての支援金は2種類
被災者生活再建支援制度の支援金には、基礎支援金と加算支援金の2種類があります。被災者生活再建支援制度の加算支援金とは、生活再建に向けて支払われるものです。新たな住居の建設や購入に200万円、補修に100万円、賃貸に50万円が支給されます。単数世帯の場合は支給額が4分の3になります。
基礎支援金とは、住宅の被害程度において支給されるものです。住宅が全壊・半壊してやむを得ず解体した場合は100万円、大規模な補修が必要な場合は50万円が支給されます。
例えば、支援法適用と認められた災害によって、家が全壊した場合は基礎支援金。そして、家を新たに建て直す費用として、加算支援金が支払われます。
立て直しが決定した契約書などの書類が必要になりますから、申請の時期は変わってきますが、該当すれば、2種類の支援金が支給されます。
制度の対象となる自然災害と被災世帯
自然災害と言っても全ての自然災害や被災世帯が対象となるものではありません。まずは対象となる自然災害や被災者について解説します。
対象となる自然災害
内閣府が定めている要件は、「10世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村等」としていますが、詳細は以下の通りです。1. 災害救助法施行令第1条第1項第1号又は第2号に該当する被害が発生した市町村 2. 10世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村 3. 100世帯以上の住宅全壊被害が発生した都道府県 4. 1.又は2.の市町村を含む都道府県で5世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村 (※人口10万人未満に限る) 5. 1.3.の区域に隣接し、5世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村 (※人口10万人未満に限る) 6. 1.若しくは2.の市町村を含む都道府県又は3.の都道府県が2以上ある場合に、 5世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村(人口10万人未満に限る) 2世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村(人口5万人未満に限る) |
基本的には10世帯以上の住宅の全壊被害が発生した市町村と、それに隣接し少なからず被害があった地域も含まれます。被災者生活再建支援制度の対象となった地域は、公的な市区町村のHPで公開されますので、災害が起きた場合はHPを確認しましょう。
対象となる被災世帯
対象となる自然災害により以下のような被災を受けた世帯になります。- 住宅が「全壊」した世帯
- 住宅が半壊、又は住宅の敷地に被害が生じ、その住宅をやむを得ず解体した世帯
- 災害による危険な状態が継続し、住宅に居住不能な状態が長期間継続している世帯
- 住宅が半壊し、大規模な補修を行わなければ居住することが困難な世帯(大規模半壊世帯)
被災者の生活を再建するための支援制度ですから、壊れた住宅で生活していくのが難しい世帯を救済するのことを目的としています。被害状況によって支援金額も違いがありますが、罹災証明が発行されないと申請ができません。
基礎支援金と加算支援金について
被災者生活再建支援制度には2種類の支援金がありますが、実際に制度を適用するとき、それぞれの支給額はいくらなのでしょう。手続き方法も確認しておきましょう。支援金の支給額
被災者生活再建支援制度の支援金支給額は、次で紹介する基礎支援金と加算支援金の合計が実際の支給額となります。基礎支援金とは住宅の被害程度に応じて支給される支援金のことで、加算支援金とは住宅の住宅の再建方法に応じて支給される支援金のことです。複数世帯なのか単数世帯なのかによっても支援金の支給額は違うので注意が必要です。ここでは複数世帯を中心に説明しています。
基礎支援金
基礎支援金は被害を受けた住宅に対する支援のためのものです。支援金の支給される金額については以下の通りです。<基礎支援金の支給金額>
- 住宅が全壊した世帯 100万円(75万円)
- 住宅が半壊、又は住宅の敷地に被害が生じ、その住宅をやむを得ず解体した世帯 100万円(75万円)
- 災害による危険な状態が継続し、住宅に居住不能な状態が長期間継続している世帯 100万円(75万円)
- 住宅が半壊し、大規模な補修を行わなければ居住することが困難な大規模半壊世帯 50万円(37.5万円)
※括弧内は単数世帯の支給額
大規模半壊以外は、一律100万円となっています。全壊とは言えないけれども、リフォームで対応しかねるほどの被害を受けた住宅として同じ金額が設定されています。また、世帯でも家族構成の人数によっても違いがあります。一人だけの単独世帯の場合、複数家族世帯の4分の3の金額が支給されます。
加算支援金
加算支援金とは、新たに住居を建設もしくは購入する、従前の家を補修する(従前の家の一部を使って建て直した場合も補修に該当する)、新たに賃貸するときに支給される支援金のことです。加算支援金の支給金額は建設・購入、補修、賃貸の3パターンでそれぞれ違ってきます。<加算支援金の支給金額>
- 建設、購入 200万円(150万円)
- 補修 100万円(75万円)
- 賃貸 50万円(37.5万円)
※括弧内は単数世帯の支給額
新たに住宅を手に入れる資金を援助してくれる加算支援金は、基礎支援金と比べて金額も高額にせっていされています。こちらも基礎支援金と同様に、一人だけの単独世帯の場合、複数家族世帯の4分の3の金額が支給されます。
支援金として支給される合計金額
基礎支援金と加算支援金は、支援内容が違うのでどちらも支給されます。それぞれの支援金を合計するとどのくらいになるのでしょう。<全壊世帯・解体世帯・長期避難世帯の合計金額>
被害状況 | 再建方法 | 複数世帯 | 単独世帯 |
全壊 | 建設、購入 | 300 | 225 |
解体 | 補修 | 200 | 150 |
長期避難 | 賃貸 | 150 | 112.5 |
大規模半壊? ? | 建設、購入 | 250 | 187.5 |
補修 | 150 | 112.5 | |
賃貸 | 100? ?? | 75 |
(※金額の単位:万円)
全壊・解体・長期避難とリフォーム可能の半壊では金額に違いが出ます。申請手続きは別で、申請時期も別になります。それぞれに申請を行いますので、忘れずに手続きを行いましょう。
支援金の申請方法
申請には期間が設けられてあり、基礎支援金は災害発生日から13カ月以内の申請、加算支援金は災害発生日から37カ月以内となっていますので、必ず期間内に手続きするように気をつけましょう。災害の規模によっては申請期限にも違いがあります。市区町村の公式ホームページを確認してください。支援法適用 ↓ 国、支援法人、市町村に適用報告、公示 ↓ 羅漢証明書の交付 ↓ 支援金支給申請 ↓ 市区町村で受付、都道府県でとりまとめ支援法人に提出 ↓ 支援法人より被災世帯に支援金の支給 ↓ 支援法人から国に補助金申請 ↓ 支援法人から国に補助金申請 ↓ 国から支援法人に補助金交付 |
申請して、支援金が配布されるまでの流れは上記の通りです。災害を受けた市区町村だけではなく国からの補助も加わるので安心して申請してください。
必要な申請書類
高額な支援金を支給されるので、申請に必要な書類も多くなります。心身ともに不安な時期ではありますが、丁寧に書類を揃えましょう。基礎支援金
まずは被災者生活再建支援金支給申請書を用意しましょう。市役所にて配布されています。次に罹災証明証。こちらも市役所にて発行されます。災害時の世帯全員の住民票の写しも必要です。災害時に住民票があったのか否かを確かめるために確認します。いつの時点のものが必要なのか、ホームページにて確認しましょう。申請者(世帯主)の振込口座の通帳のコピーも必須です。これは、支援金を入金するために必要なアイテムです。災害の影響で通帳が紛失している場合は、今後のこともありますので、新たに口座を開設するか、金融機関に問い合わせてみましょう。
住宅が半壊した取り壊しを行った場合は、法務局で閉鎖事項証明書(滅失登記簿謄本)を発行してもらいましょう。住宅ではなく敷地内が被害を受け、住宅を取り壊してしまった場合も同じように、閉鎖事項証明書(滅失登記簿謄本)を用意しておきましょう。敷地内被害を証明する書類(敷地修復工事に係る契約書のコピー及び復旧地の工事前後の写真)も用意しましょう。
全ての世帯が用意するもの ? | ||
1 | 被災者生活再建支援金支給申請書 | 市役所にて |
2 | り災証明書 | 市役所にて |
3 | 世帯全員の住民票の写し | 市役所にて |
4 | 申請者の振込口座の通帳のコピー | 金融機関 |
半壊でやむおえず解体したもの | ||
5 | 閉鎖事項証明書(滅失登記簿謄本) | 法務局にて |
敷地に被害を受けやむおえず住宅を解体したもの | ||
5 | 閉鎖事項証明書(滅失登記簿謄本) | 法務局にて |
? | 敷地被害を証明する書類 (敷地修復工事に係る契約書のコピー及び復旧地の工事前後の写真) | 今時関係者にて |
加算支援金
加算支援金の場合、住宅の購入の際の契約書が必要です。被災者生活再建支援制度の支援をうけたいとハウスメーカーや不動産会社に相談して、契約書をもらっておきましょう。加算支援金の申請には、さきほど基礎支援金について確認した上記の1?6までに加えて改めて契約書など準備しましょう。予想されている災害が起こった際の財源に不安の声
前項で説明したとおり、この被災者生活再生再建支援制度の財源は都道府県や市町村がその財源から支給するわけではなく、半分を相互扶助の観点より拠出した基金と国が半分ずつ支給を行います。しかし、今後発生が予想されている南海トラフ地震や首都直下型地震などの大規模災害において、被災者全世帯にこの被災者生活再生再建支援制度の財源が国にあるのかなど、議論になることもあります。例えば、首都直下型地震が起きた際の必要支援金は3兆円の概算となっており、心配は残っています。
被災者生活再建支援制度を理解した不動産管理
阪神・淡路大震災の後、被災者の生活再建のための施策として1999年に被災者生活再建支援制度が誕生しました。当時の義援金は数十万円程度でしたが、2007年11月に改正案が成立しました。この改正により、住宅の解体撤去費や住宅ローンの利子に関する支出も認められて上限が300万円まで引き上げられました。支援法の適用で新たに住宅を構え、新しい生活を送っている被災者の方にとって、ありがたい制度です。このような自然災害が頻繁に起こることは嬉しくないニュースですが、少しでもこの制度を利用して、生きてく希望を見いだせるようになりたいですね。