アパート経営は、不動産投資や土地活用のひとつとして、まず初めに考えられることでしょう。
近年はアパートやマンションの賃貸経営を推奨するCMやサイトなどを多く見かけます。土地の有効利用や税金対策や副収入への期待感から、専門業者だけでなく一般の人の参入も増加しています。ところが収益を上げるどころか、赤字を出しているアパート経営者も少なくありません。
銀行への貯蓄から収入を生み出す投資として、アパート経営にシフトした人の中には、資産ではなく負債となってしまったケースも見られます。また、賃貸物件のサブリース契約やシェアハウスの”かぼちゃの馬車問題”など、物件オーナーが想定していた経営状態とは、ほど遠い結果となっている現状があります。
賃貸物件をすすめる不動産会社の営業マンは、利回りのよさや年間収益の金額など、よい面ばかりを案内します。しかし、アパート経営に一番大事な満室状態を維持する方法や、必ず発生する維持管理にかかるコストのことは、話題に挙げません。そこで今回は、アパート経営の基礎知識として、知っておきたいリスクや実際の失敗例についても徹底解説いたします。
- アパート経営における利回り計算は難しい
- 空室やトラブルなどのリスクも多くある
- 物件だけでなく経営手腕なども大きく影響する
アパート経営の仕組みと特徴
まずは、そもそもアパート経営とは何なのか、マンション経営とどう違うのかを解説していきます。アパート経営の仕組み
アパート経営とは、購入・建設したアパートを第三者に賃貸することで収入を得るビジネスモデルです。経営するにあたっては、管理業者に委託するか、あるいは自分自身で賃貸経営を行うことになります。アパート経営は入居者募集、建物管理、定期点検、建物修繕、トラブル対応など多岐に渡るため、
専業の大家以外の場合、管理会社に管理を依頼するケースがほとんどです。
マンション経営との違いと特徴
アパート経営と比較されるものにマンション経営があります。そもそもアパートとマンションは構造が異なり、アパートは2~3階建てで木造もしくは軽量鉄骨造ですが、マンションは階数に制限はなく鉄筋コンクリート造です。経営面でいえば、マンション1棟丸ごと購入するのは大きな資金と豊富な不動産投資経験が必要です。その一方で、アパート経営は比較的低予算で始められるため、
これから不動産投資を始めようと考えている初心者にも運営しやすい投資手法と言えます。

アパート経営に向いている人
初心者でも比較的に始めやすいアパート経営ですが、向いている人と向いていない人がいます。アパート経営に向いていると考えられるのは、以下に当てはまる人です。
- 土地の固定資産税を節税しつつ収益も得たい
- 定年後に年金以外の収入もほしい
- 不労所得を得たい
- 不労所得のために自分で責任を取って経営できる
- 相続税の節税対策をしたい
- 金融資産以外に収益性のある資産を保有したい
まとめますと、失敗しても自分で責任を取る覚悟のある、意思を強く持っている人です。
また、収入が大幅に増えてローン節税を適用して所得税の節税をしたい人や、固定資産税がかかる土地を所有していて、節税と副収入をどちらも叶えたい人も向いているでしょう。
アパート経営に向いていないかもしれないと感じた方は、まずはアパート経営をして何を叶えたいのか、他の活用では叶えられないのか、考えてみることをおすすめします。
- 第三者に賃貸して収入を得るアパート経営
- 管理会社に管理を依頼すれば、手間をかけなくていい
- 初心者でも始めやすいが向いていない人もいる
自分はアパート経営に向いている?と思った方は、まずはアパート経営のプロに相談してみることをおすすめします。
向いている方でも失敗してしまうケースは多いものです。契約するまでは無料で相談できるため、自分だけで考えずに、まずは無料で資料を取り寄せましょう。
アパート経営に向いていないと感じたけれど、固定資産税を支払う分くらいの土地活用をどうしてもしたいのであれば、駐車場経営など他の活用方法も考えられます。アパート経営の資料と駐車場経営の資料を取り寄せて、比較してみると良いかもしれません。駐車場経営であれば、多額の借金を背負うことなく固定資産税を払えるだけの収入を得られるでしょう。
アパート経営のメリット
アパート経営やマンション経営など、賃貸経営をすることで様々なメリットがあります。
ここでは、アパート経営のメリットについて解説します。
安定した不労所得が得られる
健全なアパート経営が出来れば、安定した収入が継続できます。病気や事故などで長期にわたって休暇が必要な場合にも、収入の確保が可能です。そのため、老後の生活資金や資産を活用した不労所得として、長期的な収入が見込めます。超低金利が続く昨今、銀行預金からの利息を当てにはできません。よって年金の受給額の減額から、家賃収入を私的年金として捉えているアパート経営者も多いです。アパート経営は土地と物件がある限り、資産価値は一定確保でき、長期的な賃料収入から安定した収益を得ることが可能です。

相続税や固定資産税の節税対策になる
アパート経営の第一の目的は安定した収入を得ることですが、副次的なメリットとして、節税対策が挙げられます。土地を所有していたら課税される固定資産税は、アパート経営をしていてると経費にできます。
アパート経営を通じて第三者に賃貸物件を貸している場合は、その分相続税が軽減されます。一般的に、土地のみを相続するときに比べて数十%ほど相続税課税評価額が下がるため、節税しつつ収入源を確保することができます。
また、アパート経営を行うと、収支が赤字・黒字にかかわらず、確定申告が必要になります。アパート経営にかかった経費を家賃収入から差し引いてマイナスが出た場合、アパート経営に関しての税金は発生しませんが、赤字分を給与収入から差し引くことが可能です。結果、課税対象額が下がるため、所得税や住民税が抑えられます。
この場合、青色確定申告が必要ですが、条件を満たせば給与所得の年末調整で、最大で65万円戻る場合があります。給与と家賃収入の2つの収入に対して税金が安くなるので、結果的に年収が上がる節税効果の恩恵を受けることができます。
アパートを担保に銀行融資が可能になる
アパート経営で所有している物件は、不動産としての資産となります。安定した家賃収入が入り、黒字経営ができている場合、金融機関とも信頼関係が構築しやすくなります。その結果、アパートを担保にすることで、銀行からの融資審査も通りやすくなります。融資を受けることができれば、所有物件を増やすことや大型賃貸物件へのチャレンジなど、選択肢を広げることも可能です。
- 安定した収益を得ることが可能
- 相続税や所得税、住民税などの節税対策になる
- 銀行からの融資審査が通りやすくなる
アパート経営の収入リスクと対処法
アパート経営をする上では、もちろん多少のリスクは存在します。ただ、これらのリスクはあらかじめ対処しておくことで、十分回避することは可能です。ここでは、アパート経営におけるリスクと、その対処法を紹介します。過度にリスクに怯えることなく、しっかり一つずつ対処するようにしましょう。

空室や家賃滞納による収入低下リスク
アパート経営において黒字経営を継続するためには、入居率を高めることが基本です。空き室がいくつも発生してしまうと収益が安定しません。そのうえ、家賃収入はなくともランニングコストはかかるため、赤字経営になってしまうリスクがあります。また、入居者の中には家賃を滞納される方もある程度存在します。家賃滞納が続くとその分収入が減るため、赤字経営に陥る可能性があります。
空室や家賃滞納リスクの対処法
空室率を下げるための対処法は、家賃を下げて埋まるようにするしかなくなります。家賃を下げてしまうと、収入が下がるでしょう。そうならないための対策として、アパートを建てる前の建築計画が鍵を握ります。その地域にはどんな人が住んでいるのか、したがってどういう層に向けたアパートを建てるべきなのか、そしてどういう構造にするべきなのかなど、地域のリサーチをしっかり行いつつアパート建築計画を立てるようにしましょう。そうすることで、空室率を下げることは十分可能です。
また、入居者を決定する際の審査をしっかり行っておくと同時に、連帯保証人をたてたり保証会社と契約を交わしたりすることで、家賃滞納リスクの対策が可能になります。
これらのリスク対策をする際には、豊富なナレッジを持った不動産会社に相談して一緒に話を進めておくことをお勧めします。無料で相談することができるところもありますので、ぜひ一度相談しておくようにしましょう。
建物の老朽化リスク
建物は築年数によって劣化が進みます。外壁や給排水などの配管の管理や修理、シロアリ駆除や雨漏り対策、エレベータの劣化など、築年数が経つにつれてさまざまな箇所の老朽化が進んでしまいます。 設備が汚い、壊れているような物件には誰も住みたがらないため、建物の老朽化が進むにつれて入居者は減り、空室率が上がってしまいます。結果として、収益が低下して赤字経営となってしまうこともあります。新築物件や立地の良い物件は人気が高いため、ある程度築古の物件でも入居者が見込めますが、そうでない場合はどんどん空室が増えていってしまうでしょう。そのため、建物が老朽化するリスクに対して何かしらの対処を施しておく必要があります。
建物の老朽化リスクの対処法
建物の老朽化が進んでからその老朽化箇所を修繕する、と後手の対処ではなく、定期的な保守点検を通じて早めに予防装置をとれるような対策を先手で打っておく方法がおすすめです。壊れてから修理するよりも、壊れる前に改修しておくほうが予算も時間も削減できる場合がほとんどでしょう。そのためには、ランニングコストの中に修繕費用や点検費用などの費用を見込んでおく必要があります。多ければ多いに越したことはありませんが、かといって多くなるほど収益を圧迫してしまいます。
ほかのアパート経営者はどの程度の費用を見込んでいるのか、どのくらいがおすすめなのかといったデータは不動産会社が多く保有していますので、ぜひ1度相談することをお勧めします。
地震や火事などによる災害リスク
アパート経営をしていく上では、地震や火事など、予期しない災害が発生するリスクもあります。災害によってアパートが崩壊し、資産が無くなってしまったという例もしばしばあります。そのため、「自分は大丈夫だ」とたかを括ることなく、災害に対するリスクも加味したうえでアパート経営を進めておくようにしましょう。地震や火事などによる災害リスクへの対処法
自然災害が発生して、一般住宅は災害者生活再建支援法の対象になりますが、賃貸物件は対象外です。そのため、アパート経営として賃貸物件を持っている場合は支援金を受け取ることはできないため、100%自力での再建が必要です。したがってアパート経営をする際には、災害に備えて火災保険に加入して対策しておくことで、災害リスクへの対処が可能となるでしょう。あわせて入居者への対策として家財保険の加入もおすすめです。家財保険は災害時だけでなく、水漏れのような場合にも保証の対象となりますので、入居者に加入を促すようにすると良いでしょう。
入居者トラブルによるリスク
アパート経営には、隣人関係や騒音トラブルなど、入居者間のトラブルが発生するリスクもあります。問題のある住民を放置し続けてしまうと、次に来る入居者やほかの入居者に悪影響が及んでしまい、結果として入居者が少なくなって空室率が上がってしまいます。入居者トラブルによるリスクへの対処法
対策として「何かトラブルが起こった際にすぐに解消する」ための仕組みを作っておくことが重要です。例え大家さんとはいえ、入居者間の関係に深く立ち入ることはできません。そのため、
大家さん本人が対応できる場合はいつでも相談できる体制と相談しやすい環境を作っておくと良いでしょう。また、本人が対応しづらい場合は、管理会社に依頼することで、クレーム対応やトラブル対応を代行してもらうことも可能です。アパート建築計画を立てる際に、不動産会社の担当者に掛け合っておきましょう。
事業計画シナリオ通りにいかないリスク
アパート経営を始める際には、支出や収入を見立てた事業計画シナリオを作る必要があります。平たく言うと、どのくらいの収入が得られて、どのくらいの支出が出ていくのか、その結果数年後どのくらいの利益になるのかを把握するための計画書です。最初に不動産会社やアパート建築会社の方とこの事業計画を立てることになりますが、ほとんどといっていいほどこの事業計画通りにアパート経営は進みません。というのも、予期せぬ出費が発生したり、家賃収入が減ったりするなど、思いがけないリスクが発生する場合がほとんどだからです。
そのため、概算値として事業計画を見積もりつつアパート経営を進めていくことで、余裕を持ったアパート経営が実現できます。
事業計画シナリオ通りにいかないリスクへの対処法
計画通りにいかないからと言って、事業計画作成をないがしろにしてはいけません。どのくらいの収入があるのか、どの程度の支出があるのか、数年後にはどの程度の収益が見込めるのかを理解するためには、事業計画書が必要不可欠です。そのため、事業計画シナリオ通りにいかない場合に備えて、余裕を持った事業計画をあらかじめ想定しておくことをおすすめします。「これくらいが理想」の事業計画ではなく、「この程度が手堅い」というラインで事業計画を設計することで、余裕を持ったアパート経営を進めることができるでしょう。
- 空室・家賃滞納リスクがある
- 建物の老朽化リスクがある
- 災害リスクがある
- 入居者トラブルによるリスクがある
- 事業計画通りにいかないリスクがある

アパート経営の失敗例
アパート経営を始めたは良いものの、想定通りにいかずに失敗したなんて例もしばしばあります。ここでは、どういうアパート経営をしようとして、なぜ失敗したのか、例を紹介します。ここで挙げる失敗例はよくある例なので、肝に銘じておくようにしましょう。

利回りだけを見てアパート経営を始めてしまった
アパート経営をして儲けを出すためには、もちろん利回りに注目する必要があるでしょう。ただ、その際によくあるのが、「高利回りだから」というだけの理由で物件選びをして、失敗してしまうパターンです。東京都内に住むAさんは、地方の田舎に利回り15%の物件を購入しました。空室が目立っていたので、入居者を募集、さまざまな媒体にも宣伝を出しました。
しかし、数か月だっても一向に入居者が集まりません。そこで、急遽家賃を下げて募集をしましたが、それでも思ったよりは集まりません。最終的に、Aさんは半年かけ、想定の60%ほどまで家賃を落として入居者を募ることになり、その分収入が減ってしまいました。
この場合、Aさんは半年間収入がほとんど得られなかったと同時に、家賃収入自体もかなり低くなってしまいました。もちろんさっそく赤字経営で、幸先の悪いアパート経営人生がスタートしてしまいました。
高利回りだけに注目しない
物件を選ぶ際は、「高利回りだから」という理由だけで選ばない方が賢明です。利回りは、実際にある程度の入居者が入った前提で算出されているものであるため、そもそも入居者が集まらないと家賃収入が下がり、利回りは下がってしまいます。そのため、そもそもその物件に入居者は住みたいと思うのか、自分がアパートを建てる立地的に入居者が集まりそうなのか、を考えつつアパート経営に踏み切ることが重要です。

高金利の融資を受けてしまった
アパート経営を始める際に、自己資金のみで購入・建築ができない場合はローンの融資を受けることになります。ローンには金利がつきものです。アパートローンの金利は各社によって異なりますが、高い金利のアパートローンを借りる際には注意する必要があります。Bさんは知人に紹介された不動産会社からアパート経営を進められ、さっそくその気になってアパート経営を始めました。資金を調達する際、Bさんは融資の審査が降りにくく、かろうじて審査が通ったアパートローンを金利3%以上で借りることになりました。
経営開始当初は空室率も低く、人気のあるアパートとして予約待ちも続いていました。しかし、築年数が古くなってくると同時に入居者も減り、空室率が増えて家賃収入が減ってくるようになりました。結果的にローンの返済額分を賄うことができず、物件を手放してローンの残額分を支払うことになりました。
金利を甘く見ない
アパート経営は中長期的な視点で行うことが肝要です。新築や築浅のうちは、入居者が多く集まる分家賃収入も安定して見込めますが、築年数が古くなるにつれて入居率が悪化し、家賃収入が下がってしまいます。そうなると、高い金利で融資を借りていると、ローンの返済に追われるアパート経営になってしまう可能性もあります。一般的に都市銀行のアパートローンが最も金利が低い分審査が厳しく、次いで地方銀行、信用金庫、ノンバンクと続きます。ただ、アパート経営の実績が少ない場合には、都市銀行の融資が難しいため、地方銀行や信用金庫に融資の相談をする場合がほとんどです。
もしどこからも借りれなかった場合は、ノンバンクからアパートローンを借りることを検討する方もいらっしゃいますが、ノンバンクのアパートローンは金利が3%以上と高く設定されているので、資金計画に余裕がある場合はおすすめです。

アパート経営の利回りと収入
アパート経営を行う際、多くの方は「利回り」に注目するでしょう。利回りは簡単に言えば、投資した金額に対しての利益の割合であり、利回りが高いほど利益も高くなります。利回りを投資家の目線で考え適切な物件を選ぶことでより多くの収益を得ることができます。ここでは、アパート経営の利回りと、実際の収入のイメージについてを解説します。

アパート経営の利回り
アパート経営で考えるべき利回りは大きく3種類で、計算式は以下の通りです。利回り | 収益計算 |
---|---|
表面利回り | 年間収入÷購入価格×100 |
実質利回り | (年間収入-年間支出)÷(購入価格+購入経費)×100 |
想定利回り | 年間収入÷購入価格(満室を想定) |
表面利回りは、収益を大まかに捉えるためのもので、いわば目安に過ぎません。実際にどれくらいの利益が出るかを判断するには、費用まで含めて考える実質利回りを参考にすることが大切です。不動産広告で公表されている利回りは、基本的に表面利回りです。
表面利回りが高くても費用を考えると実質利回りは低くなり、ほとんど利益が出ないこともあるため注意しなければなりません。想定利回りは計算式こそ表面利回りと同じですが、満室を想定して計算するため収入の金額が違います。その物件の最大化された収入額を考える際に想定利回りを計算します。
投資で最も大切なのは実質利回りですが、さらに正確な利益を知るためには、空室率を加味して考えなければなりません。3つの指標を使い物件の情報を知って空室率を加えた実質利回りが、物件選定の基準になります。

アパート経営の収入
アパート経営を通して得られる収入には以下のようなものがあります。支払いタイミング | 費用項目 | 目安 |
---|---|---|
毎月 | 家賃 | 物件による |
共益費 | 家賃の5~10%程度 | |
随時 | 礼金 | 家賃の1~2ヵ月分 |
更新料 | 家賃の1~2ヵ月分 |
アパート経営を通じて得られる収益のほとんどは家賃収入です。基本的に前払いで支払われますが、期限内にきちんと支払われているかを確認する必要があります。
また、家賃の一部で毎月徴収する共益費も収益の1つです。共用灯や駐車場などの維持費として活用されることが多いですが、具体的な使い道に関して法的な定めはないため、「アパートの維持管理に必要な資金」として捉えるとよいでしょう。
礼金は、オーナーと入居者が賃貸契約を交わした際に入居者から初期費用として支払われる謝礼金のことです。一般的に、家賃の1~2か月分が相場であり、入居者に返還する必要はありません。

アパート経営で経費にできる費用
アパート経営で経費に計上できる費用の、具体的な例を確認していきましょう。減価償却費
減価償却とは、建物や付属設備など時間が経つごとに価値が下がる固定資産を取得した際に、その取得費用を固定資産の耐用年数に応じて経費計上する会計処理のことです。土地は何年経っても価値が減らないので、減価償却の対象にはなりません。建物の法定耐用年数の間、毎年一定の金額を減価償却費として経費計上できます。減価償却費は、どこかに支払うものではありませんが、経費として認められている費用です。
減価償却費は継続的に掛る経費ですが、年数が経つと建物の資産価値が減り、同時に減価償却費も少なくなります。アパートの建物や付属設備の減価償却費は、最も額が大きい経費です。しかし、減価償却費が少なくなっていくと、節税効果も小さくなっていきます。
固定資産税など税金
租税公課として経費計上出来るものもいろいろあります。租税とは、不動産の取得や事業に関する税金のことです。公課とは、組合費などの公の費用、租税以外の賦課金や罰金などで課せられる公の費用のことを指します。例えば、アパートを所有することにより生じた不動産取得税、印紙税、土地や建物の固定資産税、都市計画税、登録免許税、事業税、自動車税などは租税公課として経費計上が可能です。所得税や住民税、相続税は対象外なので、経費計上できません。
不動産取得税、固定資産税、自動車税などは、事業で使用するもののみが対象です。プライベートで使用するものは対象外になるので、事業とプライベートで併用している場合は、按分する必要があります。

火災保険料など保険料
火災保険や地震保険、賃貸住宅費用補償保険、施設賠償保険などの損害保険料は経費計上ができます。ただし、火災保険などの損害保険料のうち、その年に掛った保険料のみが対象です。1年ごとに掛けている保険であれば全額経費として計上できますが、10年契約などで長期で掛けている場合は、保険料を資産計上し毎年10分の1ずつを損害保険料として経費計上します。賃貸用の部屋のみ対象なので、自分で使っている部屋があるなど賃貸事業用ではない部分は経費計上できません。
例えば、火災保険10年分の保険料が120万円、この10年契約の火災保険を7月1日から契約したとします。その場合「120÷120カ月(10年)×6カ月(7月1日~12月31日)=60,000円」となるので、その年に経費計上できる金額は60,000円です。さらに地震保険を付加して長期契約した場合は、同じように計算し必要経費にプラスします。
- 保険料÷保険期間×契約月数=経費計上できる金額

維持管理費・修繕費
時間と共に老朽化していくことは避けられないので維持管理が必要です。建物や付属設備、給湯器やエアコンなどの機械装置、器具備品など、通常の維持管理や修理のために掛る費用は、「修繕費」として経費計上できます。具体的には、部屋のクリーニング代、原状回復のための内装工事費、壁紙の交換、床板の張替え、共用部分の清掃やメンテナンス費、大規模な修繕に備えた修繕積立金、退去時の修理費用などは経費計上可能です。部屋の機能を回復させるための費用や管理費であれば修繕費として経費を計上します。しかし、機能を向上させるために掛った設備費用は「資本的支出」とされ、修繕費として一括で経費計上することができません。その場合、耐用年数の期間にわたり減価償却の方法で各年ごとに経費計上します。
「修繕費」は、維持管理、建物や付属設備の整理、原状回復など、資産を元の状態に戻すために必要な費用のことです。「資本的支出」は、建物や設備の耐久性を上げるなど、資産を元の状態以上にグレードアップさせて価値を高めるために必要な費用のことです。
管理委託費
一般的に自分だけでアパートの管理をすることは難しいので、管理会社に建物の管理を委託するケースが多いです。例えば、エレベーターや給排水設備、電気設備、建物設備の保守管理、エントランスや廊下などの清掃、各種消防設備の法定点検、管理組合の運営サポートなど。それらの管理委託費も経費計上できます。また、家賃の5%程度を支払い、トラブルの対応、空室の入居者募集、清掃、退去時の内装工事の手配、各種契約業務、家賃の徴収、エアコンや給湯器などの設備交換などを任せる賃貸管理代行手数料も、経費として計上可能です。アパートに関わる費用であれば、不動産運営に必要な経費だと認められ経費計上ができます。
つまり、管理費には管理委託費と賃貸管理代行手数料の2種類があるということです。管理委託費は、建物全体の管理を建物管理会社に委託する費用のことで、賃貸管理代行手数料は、入居者や部屋単位での管理を賃貸管理会社に委託する費用のことを指します。
通信費や接待交際費などその他
管理会社や不動産会社、税理士などとの電話代、郵便代、物件検索をしたインターネット通信費など、アパート経営に関わる通信費は必要経費です。管理会社や不動産会社や税理士などと打ち合わせをするための飲食費などは、接待交際費として経費計上できます。その他にも、物件を見る際の電車代や自動車を使用した際のガソリン代、駐車場代などの交通費も必要経費の対象です。税金に関する本の購入代金、不動産屋への手土産、物件撮影のために使ったデジカメ、チラシを作製したPC、プリンター、印刷用紙などの消耗品も必要経費になります。
ただ、アパート経営に関係ないプライベートのことは経費にならないので注意しましょう。また、交通費や交際費の頻度があまりにも高いなど、不自然な点や金額が多すぎる場合は、税務署がチェックします。

- アパート経営の利回りは3種類ある
- アパート経営の収入は、家賃・共益費・礼金から得られる
- アパート経営の費用は経費計上でき節税効果も見込める(私生活分は対象外)
アパート経営の始め方
不動産を購入する機会は、人生の中で何度もありません。そのため、実際にアパートを経営したいと思ってもどのような流れで、何をするべきなのかまったくわからない人も多いでしょう。
ここでは、アパートを購入し経営するにあたり、どのような手順で進めれば良いのか解説します。アパート経営は以下のような流れで進めます。
- 購入できるアパートを知る
- アパートを探す
- 買い付けを入れる
- 融資の審査を受ける
- 売買契約を結ぶ
- 管理会社の選定を行う
- ローン契約を結ぶ
- 決済・引き渡しを行う

購入できるアパートを知る
まずは自分の収支やライフプランを見直して、どれくらいの物件を購入できるのか予算を立てましょう。最初に予算を決めて、予算を軸に物件を探して行くと非常に効率的です。また、住宅ローンで借りることができるのは年収の5~6倍程というのが大まかな目安です。ここに貯金などをプラスした金額が購入予算となります。
アパートを探す
予算が決まり次第、物件選びのための情報収集を始めます。物件探しはインターネット上の物件検索サイトや不動産会社の仲介サービスを通して行います。特に不動産会社の仲介サービスの場合、物件選びや資金計画について専門的な立場から相談に乗ってもらうことができるのでおすすめです。もちろん、ある程度の前提知識やアパート経営の経験がある方は、物件検索サイトから直接購入を申し込むのもよいでしょう。
買い付けを入れる
買いたいと思える物件が見つかったら「この物件を購入します」という意思表示として買い付けを入れます。買い付けは購入申込書(買付証明書)の提出によって行いますが、もし値下げを求める場合には、この際に価格交渉を行いましょう。
融資の審査を受ける
購入申し込みと前後して住宅ローンの事前審査を始めます。突然訪問しても断られてしまう可能性があるため、仲介会社や大家さんなどの知り合いから紹介してもらうとスムーズです。また、融資の事前審査は一行に断られただけで諦めないようにしましょう。同じ銀行でも支店によって判断が異なる場合があるので、複数の銀行に打診することが重要です。
売買契約を結ぶ
売主との交渉が終わり、合意に至り次第、売買契約を結ぶことになります。売買契約当日には「物件の重要事項説明」「売買契約の締結」「手付金の支払い」の3つの手続きを行います。
契約手続きは通常不動産会社のオフィスで行われ、時間は2~3時間ほどが目安です。
重要事項説明とは、物件の状態やマンション規約に関する説明で、売買契約では価格と契約内容の確認を行います。
管理会社の選定を行う
管理を委託する場合は、この段階で管理会社を選定します。管理会社を売主から引き継ぐケースもあれば、新たに探すケースもあります。また自主管理の場合でも、入居者を募集してくれる賃貸仲介会社を探しておく必要があります。管理会社と賃貸仲介会社で、アパート購入の成否が大きく変わるので慎重に選定しましょう。
ローン契約を結ぶ
契約を結んだら、住宅ローンの本審査に入ります。本審査でチェックされるのは以下の2点です。
- 物件にローンの担保として十分な価値があるか
- ローンを返済できる健康状態であるか
決済・引き渡しを行う
融資の実行が可能になれば、いよいよ決済と引き落としを行います。決済と引き落としは通常は住宅ローンを組んだ融資先の金融機関で行われます。この引き渡しには売主、買主、不動産会社、金融機関の担当者、司法書士などが出席します。この時、登記手続きの委任も行われます。司法書士が決済・引き渡しの完了後に登記申請を行い、この手続きが完了すると物件が正式に自分のものとなります。
- 住宅ローンで借りれる額は年収の5~6倍程度
- 融資の事前審査は複数の銀行に依頼する
- 審査にかかる時間は2週間~1カ月程度
アパート経営に不安があるなら専門家に相談してみよう
アパート経営を手広く専門に行っているのではなく、副業として行っている人にとって不足しているものは、「情報」でしょう。最新の情報を持っているのは、プロの不動産会社です。今後のアパート経営に不安を感じているのであれば、専門家への相談をおすすめします。記事のおさらい
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