サ高住(さこうじゅう)経営とは、「サービス付き高齢者向け賃貸住宅」を経営して家賃収入を得る土地活用方法の一つです。
本記事では、老人ホームとの違いや経営方式など、サ高住経営について詳しく説明します。また、サ高住経営の収益性やサ高住経営を始めるメリットやデメリットまで解説します。
老人ホーム経営の基礎知識を知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。
サ高住経営とは
サ高住(さこうじゅう)経営とは、「サービス付き高齢者向け賃貸住宅」を経営して家賃収入を得る土地活用方法の一つです。
サ高住の基本サービスは安否確認と生活相談ですが、24時間ケアスタッフが常駐したり、看護師が常駐して健康相談を提供するといった手厚いサービスを提供する場合もあります。
高齢化が進む日本において、近年注目されている土地活用方法の一つになります。
【サービス付き高齢者向け住宅の登録状況】
サ高住は、全国に8,211棟あり、大阪府に国内最多の805棟(31,538戸)、次いで北海道に530棟(23,098戸)、兵庫県に447棟(17,922戸)が点在しています。
登録件数は年々増加傾向にあり、日本は今後さらに高齢化が進むとされているため、サ高住の需要は増えるとされます。
活用事例
エリア | 千葉県 |
土地面積(㎡) | 2569 |
延べ床面積(㎡) | 2292 |
工法 | 重量鉄骨造 |
そこで、ミサワホームでは「10の資産活用」をご説明し、土地の色分けからスタート。さらにミサワホームグループの介護実績を評価いただき、地域貢献できるサービス付き高齢者向け住宅を建築することに決定しました。
オーナー様のご希望で、落ち着いた雰囲気にこだわり、残した園芸用地は入居者の借景になるように配慮。敷地内にはポケットパークや、バーベキューテラスを設けるなど、入居者が楽しく過ごせる住宅が完成しました。(ミサワホーム株式会社の土地活用事例)
サ高住と老人ホームの違い
ここではサ高住とその他高齢者施設の違いについて詳しく説明します。
そもそもサ高住とは?
サ高住とは、「サービス付き高齢者向け賃貸住宅」の略です。
入居者は60歳以上の高齢者が対象です。要支援・要介護認定者等も入居できますが、自立して生活できる高齢者が主な入居対象者となっています。
サ高住には「一般型」と「介護型」の2種類があります。施設数は一般型が全体の約92%を占めていますが、介護度の高い方が入居する介護型も一定数存在します。
一般型 | ・自立から要介護者まで入居可能 ・介護サービスを必要な分だけ個別で契約 |
介護型 | ・自立から要介護者まで入居可能 ・介護サービスを必要な分だけ個別で契約 |
サ高住では、高齢者の安否確認・生活相談が基本的なサービス内容になりますが、他にも身体介護やリハビリ、医療行為のようなサービスを受けることができます。
国道交通省によると、サ高住の登録基準の主な要件は下表のようになっています。
定義上、サ高住に求められるサービスは安否確認と生活相談だけであり、その他サービスや併設施設は不要です。
ですが、実際には1つ以上の併設施設を設けているサ高住が多いのが実状です。サ高住経営を考えている人は、賃貸住宅以外にも高齢者に向けた施設を併設する必要があります。
老人ホームとの違い
国土交通省によると、サ高住と(有料)老人ホームの違い以下の通りになります。
施設の種類 | 定義 | 対象者 | 経営主体 | 一人あたりの面積 |
老人ホーム | ・入浴、排せつ又は食 事の介護・食事の提供・洗濯、掃除等の 家事 ・健康管理のいずれかをする事業を行う施設 | 老人 (老人福祉法上、老人 に関する定義がないため、解釈においては社会通念による) | ・限定なし (営利法人中心) | 13㎡(参考値) |
サ高住 | 状況把握サービス 生活相談サービス等の福祉サービスを提供する住宅 | ・60歳以上の者 ・要介護/要支援認定を受けている60歳未 | ・限定なし (営利法人中心) | 25㎡ など |
大きな違いは、提供するサービスの違いです。サ高住は定義上、安否確認と生活相談の2つに対し、老人ホームは食事、入浴、健康管理等、日常生活における介護サービスをも提供する施設です。
また、サ高住は比較的自立して生活が送れる元気な高齢者を対象としている一方で、老人ホームは介護が必要な高齢者を受け入れています。
ただし、一部介護サービスを提供するサ高住や、自立した高齢者を受け入れる自立型老人ホームが存在するなど、入居者確保のために、国土交通省が定めた定義以上により良いサービスを提供している施設が多く存在します。
サ高住経営を考える場合は、競合に負けないようなサービスを取り入れる必要があります。
サ高住の経営方式
ここでは、サ高住経営にある4つの経営方式について詳しくご紹介します。
一括借り上げ方式
一括借り上げ方式とは、土地オーナーが建物を建て、施設運営は事業者に任せる方法です。
土地オーナーは土地の賃料によって収益をあげます。土地活用におけるサ高住経営では一括借り上げ方式が一般的です。
サ高住を自分で経営するためには、建物の建築から入居者・介護職員の募集など全ての業務を行う必要があります。施設規模が大きいサ高住では、一人で経営することはかなり難しくリスクが最も高いです。
そのため、多くの場合は介護施設を運営している事業者と契約し土地と建物を貸すという選択をとります。
一括借り上げ方式では、ノウハウのある事業者に経営を任せられるため撤退・廃業リスクを減らせるところが魅力です。
ただし、建物の所有者は土地オーナーとなりますので大規模修繕や建物への固定資産税は土地オーナーが支払うことになります。
委託方式
委託方式はテナント方式と似ており、介護サービスだけ外部の事業者に委託する方式です。
入居者の募集や、契約、建物のメンテナンスなどは自分で行います。また、選定する介護事業者などの見極めもしなければなりません。
委託方式では、入居者の賃料や介護サービス料を得られますが、委託した介護業者には手数料を支払わなければなりません。
そのため、入居率に比例して収益が大きくなりますが、収益が安定しずらいといったデメリットがあります。
テナント方式
テナント方式は、介護サービスは外部事業者に委託し、入居者の募集や契約は自分で行う方式です。
テナント方式では、入居者から賃料だけではなく、委託する事業者からもテナント料を得られます。
しかし、自分で集客や募集を進めないと空室率の上昇がそのまま収益の低下につながるため、競争の激しいサ高住経営では経営ノウハウが十分にないと安定した収益が出しづらくリスクが高いです。
自営方式
自営方式は、サ高住経営に関する全業務を自分で行う経営方法です。そのため、実態としては起業といえるでしょう。
施設利用料や介護報酬などがそのまま収益となるため、4つの経営方法のなかでは収益性が一番高いですが、その分経営知識が問われます。
近年は介護・福祉施設の棟数が増加しているため競争が激しくなっており、入居率を維持するのは簡単ではありません。
また、介護業界は人出不足も深刻であり、働き手をどのように募集するのかについても考える必要があります。
サ高住経営なかでは最もリスクの高い経営方式であるといえるでしょう。
サ高住経営の収益性
サ高住経営は、利回りでみるとアパート・マンション経営に比べて儲かりやすい土地活用ということができます。
土地を持っているところからサ高住経営を始める場合の利回りは、10%前後といわれています。一方のマンション経営では、表面利回りは8%前後が目安です。
建築費が数億円ほど必要となるサ高住経営では、初期費用がマンションよりも高額になるケースも多いです。しかし、サ高住経営では補助金や税制優遇があること、また介護サービス事務所などを併設することでテナント料も収入となるため費用を抑えつつ収益性を高めることができるという特徴があります。
次項では、サ高住経営における収入例をご紹介します。
サ高住経営の収入例
ここでは、サ高住経営の収入と表面利回りをシミュレーションしてみます。条件は以下の通りです。
- 土地の広さ・・・300坪
- 1戸当たりの広さ25㎡
- 戸数・・・20戸
- 建築費・・・70万円/坪
- 家賃・・・7万円
- テナント料・・・30万円
まず、この場合のサ高住の建築費は70万円×300坪=2億1,000万円です。ここから、補助金を引いた分が実際にかかる建築費用となります。
次章で詳しくご紹介しますが、サ高住の補助金は①建築費の1/10もしくは②部屋の広さごとに決められた補助額×部屋数をそれそれ計算し少ない方が支給されます。
今回は、①の方が少ない金額です。つまり、今回の条件だとサ高住の建築費は補助金を適用させると1億8,900万円となります。
次に、1年あたりの収入を計算します。
家賃収入は7万円×20戸×12=1680万円/年。テナントによる30万円×12=360万円となり、合計すると2040万円となります。
表面利回りの計算方法は、1年間の収入÷投資額×100となりますので、これを今回の場合に当ててはめると、2040万円÷1億8,900万円×100=10.79となります。
つまり、今回の条件の下では表面利回りが約11%になるということになります。
マンション経営についても同じ条件で計算すると、1,680万円÷2億1,000万円×100=8%となります。サ高住経営と比較すると約3%の差です。
お持ちの土地でどんな活用方法に迷われているなら、実際に土地活用プランを確認してみるのもおすすめです。
イエウール土地活用でなら、土地情報などを入力することでその土地に最適な活用プランを確認することができます。
\建築費は?初期費用は?/
サ高住経営をするメリット
ここでは、サ高住経営のメリットについて詳しくご紹介します。
補助金がでる
サ高住の建築費用や改修費用には、国から補助金が出ます。
具体的な補助金額は、1戸当たり床面積が30㎡以上は135万円、25㎡以上は120万円、25㎡未満は70万円です。
例えば、25㎡の部屋が15戸ある場合は120万円×15戸=1800万円が補助されるということです。
ただし、1戸あたり30㎡以上サ高住について、135万円の適用は総戸数の20%までです。それ以降は120万円/戸となるため、補助金額を計算する際は注意しましょう。
例えば、30㎡の部屋が20戸ある場合は135万円×4戸+120万円×16戸=2460万円が補助されるということです。
また、既存のサ高住に併設施設を追加する場合、1施設あたり1000万円の補助金が出ます。
固定資産税の優遇措置がある
サ高住経営では、老人ホーム経営などと違い各税金の節税ができます。まずは固定資産税からみていきましょう。
サ高住経営を始める場合、5年間の間、建物にかかる固定資産税額が1/2~5/6となります。
1/2~5/6と幅があるのは、各自治体ごとで減額割合が異なるためです。そのため、サ高住経営を行う自治体ではどのくらい減額されるのかをあらかじめ見ておく必要があるでしょう。
サ高住経営における固定資産税の減額措置については、各自治体のホームページにて確認することができます。
例えば、神奈川県の相模原市であれば2/3が軽減されます。
<参考> : [相模原市]:[サービス付き高齢者向け住宅である貸家住宅に対する固定資産税の減額について]
不動産取得税の優遇措置がある
不動産取得税では、建物と土地にかかる両方の税制優遇措置があります。
建物では、課税標準から戸数×1,200万円控除されます。ただし、条件があり1戸あたり30㎡以上であることと、総戸数が10以上である必要があるため注意が必要です。
土地では、次のうち額が大きくなる方をもとに減額されます。
- 4万5000円
- 建物の床面積×2(200㎡/戸が上限)と同じ土地の広さの価格×1/2×3%
また、不動産取得税で優遇措置を適用させるためには、建築費補助を受けていることなどが必要になります。
現在ある要件の適用期限は令和5年3月31日までです。
<参考> : [国土交通省]:[サービス付き高齢者向け住宅の登録制度の概要]
所得・法人税の優遇措置がある
サ高住経営では、他の賃貸物件と違い所得税や法人税の優遇措置があります。
サ高住経営を始めると、所得税と法人税では5年間の間40%割り増しで償却を行うことができます。
建物の法定耐用年数が35年未満の場合は28%となりますので注意しましょう。
法定耐用年数は建物の構造によって変わります。各構造の法定耐用年数は、木造が22年・鉄骨造が19年~34年・RC造が47年ですので、40%の割り増し償却を行うにはRC造でサ高住を建てる必要があります。
サ高住経営をするデメリット
サ高住経営にはメリット以外にも複数のデメリットが存在します。サ高住経営を考えているのであれば、メリットだけでなくデメリットの部分も理解しておくとよいでしょう。
入居者のトラブルがおこりやすい
高齢者が入居するサ高住では、入居者同士のトラブルなどが発生しやすい環境です。
また、入居者によっては認知症を抱えてている方もいるため、対人トラブルはアパート経営などよりも起こりやすいと考えられるでしょう。
入居者トラブルは、事件や事故に発展する可能性が高いため対策をしっかりと立てておく必要があります。
事件・事故が起こるリスク
施設内で事件や事故が発生する可能性もゼロではありません。サ高住をはじめとした高齢者施設では、入居者の転倒や対人トラブルが事件や事故に発展したケースもあります。
暴力事件などが起こり話題となると、入居率に影響を及ぼし最悪の場合は撤退も視野に入れなければならなくなります。撤退とまではいかなくとも、損害賠償として多額の費用が事業者に請求されることもあるでしょう。
職員の目の届かないところで事故などが起こると発見が遅れる可能性があるため注意しましょう。一度でも施設への悪評がたつと信頼を回復することは困難です。
事業者の撤退する恐れがある
事業者の撤退は、土地や建物を貸してサ高住経営を行う場合に最も大きなリスクとなります。特に、施設建設費を負担している場合は多額の損失を被ってしまいます。
事業者の撤退理由には立地や社会的背景もありますが、事業者の経営ノウハウ不足によるところも大きいです
過去数年の間でトレンド的に新しく介護・福祉事業を始めた事業者は、福祉事業に対する見通しが甘い可能性があります。
サ高住経営で失敗しない方法
他の賃貸経営同様、サ高住経営では建物が主体となる土地活用のため、信頼できる建築会社に依頼することが大切です。
また、建築費用をできるだけ抑えておくことが、今後経営の利回りを大きく左右するポイントになります。よって、サ高住経営で失敗しないためにも、一社ではなく複数の建築会社に建築費の見積もりを取ることをおすすめします。
ですが、複数の建築会社に見積もりをお願いするのは面倒ですよね。そこでおすすめしたいのがイエウール土地活用の一括査定サービスです。
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