アパート経営を始めるにあたって、その建築費は必要な費用の大半を占めます。企業に見積もりを依頼する前に、おおよその予算を把握しておきたい方も多いでしょう。
アパートの建築費は、建築するアパートの構造や延べ床面積によって大まかに概算できます。
【アパート構造別・建築費相場】
構造 | 坪単価相場 |
---|---|
木造 | 74万円~105万円/坪 |
軽量鉄骨造 | 80万円~105万円/坪 |
重量鉄骨造 | 90万円~120万円/坪 |
坪単価を元に計算すると、たとえば延べ床面積100坪(建坪50坪・2階建て)のアパートを建てるなら、建築費の目安は木造なら7,400万円~、軽量鉄骨造なら8,000万円~、重量鉄骨造なら9,000万円~というようにわかります。
本記事では、建築費の相場や内訳、予算ごと・土地の坪数ごとに建てられるアパートなど、アパートの建築費に関する知識をわかりやすく解説していきます。
アパート建築にどれくらい費用がかかるか知りたい
予算や土地の面積によってどんなアパートが建てられるか知りたい
自己資金はいくら必要か知りたい
建築費を安く抑えるコツを知りたい
アパートの建築費はいくら?
アパートの建築費は、アパートの大きさや構造、設備や内装・外装のグレードなど様々な要素によって大きく変わるため、建築会社に見積もりをしてもらう前に金額を知るのは難しいです。
しかしながら、坪単価の相場がわかれば、おおまかな金額を概算することができます。
この章ではアパートの建築費の相場の求め方や、建築費の目安について解説します。
アパート建築費の計算方法と坪単価相場
アパートの建築費は、以下の計算式でおおよその金額を求められます。
「延べ床面積」とは、建物の床面積の合計値のことです。
「坪単価」とは、実際に建築された建物の工事費を建物の延べ床面積で割り算して、1坪あたりの金額に直したものです。
- 実際の建築費はケースごとにバラつきがありますが、平均的な坪単価を用いることで、アパートの建築費をシミュレーションできるというわけです。
建築費の坪単価の相場は、アパートの「構造」によって変わります。
構造とは、建物を支える骨組み部分のことです。構造ごとに使われる建材や工法・工期が異なるため、使用する構造によって建築費に差異が出ます。
以下は、建物の構造ごとの坪単価相場をまとめた表です。
構造 | 坪単価相場 |
---|---|
木造(W造) | 74万円~105万円/坪 |
軽量鉄骨造(S造) | 80万円~105万円/坪 |
重量鉄骨造(S造) | 90万円~120万円/坪 |
鉄筋コンクリート造(RC造) | 95万円~125万円/坪 |
(※イエウール編集部調べ)
賃貸アパートは、木造や軽量鉄骨造で建てられるのが一般的です。
たとえば、1室あたり7.5坪の総戸数8戸の木造2階建てのアパートを建てる場合の建築費は、以下のようにシミュレーションできます。
アパートの建築費=坪単価×延べ床面積
=80万円/坪×7.5坪×8戸
=4,800万円
(坪単価80万円として計算)
なお、実際にアパートを施工する際の坪単価は、施工会社の建築プランによって異なります。
「イエウール土地活用」なら、土地所在地を簡単に入力するだけで、大手ハウスメーカー・建築会社に一括で見積もりを請求できます。
複数の企業の見積もりを比較しながら、あなたの土地に合った建築プランを見つけませんか?
\建築費は?初期費用は?/
※建築プランの請求後に工事請負契約を締結するまで、費用は一切かかりません。
アパートの構造について詳しく知りたい方は、以下の記事をご参考にしてください。
アパート建築費の目安【坪数・階数別】
建築プランの問い合わせがまだの方は、土地に建てるアパートの大きさの見当がついていないという人も多いのではないでしょうか。
市街地の土地は、建ぺい率や容積率の指定によって、敷地内に建てられる建物の大きさに制限が設けられています。
用途地域によって指定された土地の建ぺい率の割合で建坪の上限面積が決まり、容積率の割合で何階建てまで建てられるかが決まります。
ここからは、一般的な建ぺい率と容積率の指定のもとで、建てられる面積いっぱいに建てる木造の2階建て・3階建てアパートの延べ床面積の上限と建築費の目安を簡単にご紹介します。
▼2階建てアパート(建ぺい率60%・容積率200%の場合)
土地面積 | 延べ床面積の上限 | アパート建築費(木造) |
---|---|---|
30坪(約100㎡) | 36坪(120㎡) | 2,664万円~3,780万円 |
60坪(約200㎡) | 72坪(約240㎡) | 5,328万円~7,560万円 |
90坪(約300㎡) | 108坪(約360㎡) | 7,992万円~1億1,340万円 |
▼3階建てアパート(建ぺい率60%・容積率200%の場合)
土地面積 | 延べ床面積の上限 | アパート建築費(木造) |
---|---|---|
30坪(約100㎡) | 54坪(約180㎡) | 3,996万円~5,670万円 |
60坪(約200㎡) | 108坪(約360㎡) | 7,992万円~1億1,340万円 |
90坪(約300㎡) | 162坪(約540㎡) | 1億1,988万円~1億7,010万円 |
土地の敷地面積ごとに建てられるアパートと建築費については、以下の記事で更に詳しく解説しています。気になる方は、該当の記事を是非ご覧ください。
地域によっても建築費の相場は異なる
建物の構造以外にも、アパートの建築費を左右する要素があります。
たとえば、アパートを建てる地域によっても相場に差異があります。
以下は、国道交通省発表の建築着工統計調査を元に、2023年に着工した共同住宅(貸家)の工事費予定額の平均額から算出した坪単価をまとめたものです。
地域 | 木造 | 鉄骨造 | RC造 |
---|---|---|---|
全国平均 | 66万円 | 92.4万円 | 95.7万円 |
東京都 | 79.2万円 | 115.5万円 | 122.1万円 |
神奈川県 | 72.6万円 | 102.3万円 | 108.9万円 |
大阪府 | 56.1万円 | 85.8万円 | 89.1万円 |
京都府 | 62.7万円 | 92.4万円 | 92.4万円 |
愛知県 | 59.4万円 | 92.4万円 | 89.1万円 |
福岡県 | 56.1万円 | 85.8万円 | 75.9万円 |
北海道 | 62.7万円 | 75.9万円 | 59.4万円 |
(国土交通省「建築着工統計調査 住宅着工統計 第34表(2023年)」を参考にイエウール編集部が表を作成)
地域によってアパートの建築費の平均額に違いが生じているのは、建材の調達にかかる費用や人件費が地域ごとに異なるからです。
また、住宅の密集したエリアの多い都市部では、大型の重機が入れないために人件費が追加でかかったり、車両や資材置き場を確保しなければならないという理由で費用が高くなりやすいという背景で、建築費が高くなりやすい傾向があります。
ご自身の土地に建てるアパートの建築費を具体的に知りたい方は、建築会社に建築プランと費用を見積もってもらいましょう。
「イエウール土地活用」の一括見積なら、複数の企業のプランが比較できるので、建築費の相場感を掴めます。見積もり依頼は完全無料で利用できます。まずはご自身の土地にどんなアパートが建てられるか、建築プランを提案してもらいましょう。
アパートを建てた後の「アパート経営」について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
アパート建築にかかる費用の内訳
アパートの建築には、坪単価から計算できる建築費以外にもかかる費用があります。アパート建築の予算を立てるためには、かかる費用の内訳についても理解を深めておきましょう。
アパートの建築にかかる費用を大まかに分けると、以下の3種類になります。
費用の内訳 | 費用割合 |
---|---|
本体工事費 | 費用全体の70~80% |
付帯工事費 | 費用全体の15~20% (本体工事費の約20%) |
諸費用 | 費用全体の5~10% (本体工事費の約5~10%) |
本体工事費は、アパートの建築にかかる費用全体の7~8割程度を占めます。つまり、アパートの建築には本体工事費の約3割の費用が別途かかるということです。
たとえば本体工事費に6,000万円かかる場合、建築費用の総額は8,000万円程度になります。
この章では、それぞれの費用について、簡単に解説していきます。
本体工事費(本体価格)
本体工事費は、アパートの本体部分の工事にかかる費用のことです。アパート建築にかかる費用全体の7~8割を占めます。
いわゆる「建築費の坪単価」は、本体工事費の坪単価を指すのが一般的です。
本体工事費の内訳と、工事内容の概要は以下の通りです。
本体工事費の内訳 | 概要 |
---|---|
躯体工事費 | 建物の基礎や構造の建築工事にかかる費用。会社によって、仮設工事費もここに含まれる。 |
仕上げ工事費 | 外装工事費・内装工事費。屋根や天井・外壁・内装等の仕上げにかかる費用。 |
設備工事費 | キッチンや浴室・洗面所・トイレなどの住宅設備の設置工事や電気工事費。 |
アパートの本体工事は、さらに「躯体工事」「仕上げ工事」「設備工事」に分けられます。
一般的に、本体工事費のうち、躯体工事費が40%、仕上げ工事費が40%、設備工事費が20%を占めると言われています。建築費の見積もりを確認する際には、適正な範囲に収まっているかどうかをチェックしてみましょう。
付帯工事費(別途工事費)
付帯工事費は、電気・水道の引き込み工事や地盤改良工事など敷地にアパートを建てるために必要な工事にかかる費用や外構工事等にかかる費用です。「別途工事費」と呼ばれることもあります。
- アパート本体の工事に付帯(関連)した費用という意味で、付帯工事費と呼ばれています。
実施する工事の内容にもよりますが、アパート建築にかかる費用全体の15~20%程度かかるのが一般的です。
付帯工事費には、以下のような費用が含まれます。
費用の項目 | 概要 |
---|---|
地盤改良工事費用 | 土地の地盤を補強するための工事費用。 |
外構工事費用 | 庭や駐車場、門塀、門柱、フェンスなどの発注や設置工事にかかる費用。 |
土地造成費用 | 土地の造成や整地にかかる費用。土地を転用してアパートを建てる場合や傾斜地の工事費は高額になりやすい。 |
電気・水道・ガスの引き込み工事費用 | 土地への電気・水道・ガスの引き込み工事にかかる費用。 |
解体工事費用 | 土地に家屋や建物が残っている場合、取り壊して更地にするための工事費用。元の建物の規模や構造によって相場は大きく変わる。 |
建築予定地の土地の状態や、アパートの設計によって、かかる費用が異なります。
本体工事に含まれなかった設備工事費も、付帯工事費に含まれます。
諸費用
アパートを建築する際には、工事に直接関係する費用以外にも、税金や手数料など、様々な支払いが生じます。これらをまとめて「諸費用」と呼びます。
諸費用は、全て合わせて費用全体の5~10%程度かかります。
以下は、諸費用に含まれる費用の例です。
費用の項目 | 概要 |
---|---|
アパートの設計料 | アパート建築を「設計施工分離方式」で行う場合、建築事務所に支払う。費用は本体工事費の5~15%ほど。 |
測量・地盤調査費用 | 土地にアパートを建てるにあたっての調査費用。測量費は約30万円、地盤調査費用は40~50万円が目安。 |
水道分担金 | 水道の引き込み工事を新規に行った際に、自治体に支払う費用。アパートの場合は戸数に応じて100万~数百万円かかる場合もある。 |
不動産登記費用 | アパート竣工後の登記申請にかかる費用。登録免許税として「固定資産税評価額×0.4%」、その他に司法書士への報酬がかかります。 |
印紙税 | 建築会社との工事契約やローン借入の契約書作成時に、契約金額に応じてかかる税金。1件数万円程度。 |
不動産取得税 | 新たに不動産を取得した際に支払う税金。アパートの竣工後に、「固定資産税×0.4%」の金額を支払う。 |
火災保険料・地震保険料 | アパートに付保する保険料。長期契約で加入すると割引があるため、初年度に一括契約するのが一般的。1年あたり数万円程度。 |
アパートローンの事務手数料 | 金融機関からアパートローンを借り受ける際にかかる手数料。数万~10万円程度。 |
アパートの建築時にかかる諸費用について更に詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
建築費の見積もりを確認するときの注意点
ハウスメーカーや建築会社に出してもらった建築費の見積もりを確認するときには、1つ注意点があります。
それは、企業ごとに費用の内訳が異なることがあるということです。
アパートの建築工事にかかる費用の仕分け方には、厳密な定義がありません。そのため、会社によっては本体工事費に含まれている費用が、別の会社では付帯工事費や諸費用に含まれているということがあります。
たとえば、A社では本体工事費に含まれている「仮設工事費」が、B社では「付帯工事費」に含まれていたり、共用部分の照明器具の設置費が見積もりに含まれておらず、別途かかるというケースがあります。
企業から提示される坪単価は「本体工事費の坪単価」であるため、坪単価のみを見ていると、工事内容に対する費用の比較が不十分になる可能性があります。
- 費用の内訳について疑問点があれば、各会社の担当者に尋ねてみましょう。
ここまででアパート建築費の内訳や、アパート経営を始めるまでに必要な費用について解説しました。
アパート経営を成功させるためには、ただ安くアパートを建てればよいというわけではありません。建築費用を適正価格に抑えながら、入居者のニーズを叶えられるアパートを建てることが重要です。
アパート建築を始める前に、最低でも3社以上から見積もりを取得して、建築費や想定できる収益性を比較しましょう。また、アパート経営の戦略についても相談してみましょう。
\建築費は?初期費用は?/
※建築プランの請求後、工事請負契約を締結するまで、費用は一切かかりません。
【予算別】建てられるアパートのシミュレーションと実例
この章では、一般的な住宅地(建ぺい率60%・容積率150~200%の地域)にアパートを建築する想定のもとで、各価格帯で建築できるアパートを実例を交えながらシミュレーションしていきます。
3,000万円で建築できるアパート
3,000万円を予算とすると、木造で延べ床面積40.5坪(約134㎡)の物件が建築できる目安となります。(坪単価74万円で計算)
一般的な住宅地(建ぺい率60%・容積率150~200%の地域)なら、約35坪の土地に総戸数4戸の2階建ての木造アパートが建てられるイメージです。
家賃8万円で、満室経営では年間384万円の家賃収入が得られます。
また地域によっては、もっと大きな規模の賃貸物件を建築できる可能性もあります。気になる方は、建築会社やハウスメーカーに見積もりを依頼してみましょう。
活用事例:広島県のメゾネットタイプの賃貸住宅
メゾネットタイプの賃貸住宅です。
エリア | 広島県 |
土地面積 | 330.0㎡ |
延べ床面積 | 244.63㎡ |
工法 | 木造在来工法 |
建築費用 | 3,000万円 |
(出典:株式会社日光ホームの土地活用事例)
建築費3,000万円で建てられるアパートについて、更に詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
5,000万円で建築できるアパート
5,000万円を予算とすると、木造なら延べ床面積67.5坪(約223㎡)、鉄骨造なら50坪(約165㎡)の物件が建築できる目安となります。(木造坪単価74万円、鉄骨造坪単価100万円で計算)
一般的な住宅地(建ぺい率60%・容積率150~200%の地域)で、1部屋7.5坪のワンルームなら総戸数8戸の2階建て木造アパートが建てられるイメージです。
家賃8万円で、満室経営では年間786万円の家賃収入が得られます。
また、1LDK(12坪)が4戸の鉄骨造のアパートを建てることもできます。家賃15万円で、満室経営では年間900万円の収入が期待できます。
活用事例:静岡県焼津市の店舗併用賃貸住宅
3店舗+1K3戸の店舗併用賃貸住宅です。
エリア | 静岡県 |
土地面積 | 300.97㎡ |
延べ床面積 | 203.64㎡ |
工法 | 鉄鋼系ブレース構造 |
建築費用 | 5,000万円 |
建築費5,000万円で建てられるアパートについて、更に詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
8,000万円で建築できるアパート
8,000万円を予算とすると、木造なら延べ床面積約108坪(約357㎡)、鉄骨造なら約80坪(約264㎡)、鉄筋コンクリート造なら約73坪(約240㎡)の物件が建築できる目安となります。
(木造坪単価74万円、鉄骨造坪単価100万円、鉄筋コンクリート造坪単価110万円で計算)
一般的な住宅地(建ぺい率60%・容積率150~200%の地域)で、約60坪の土地に2LDK(18坪)6戸の3階建て木造アパートが建てられるイメージです。
家賃収入18万円、満室経営で年間収入1,296万円が得られます。
また他にも、1K(9坪)が12戸の3階建て木造アパートや、1LDK(12坪)が6戸の2階建て鉄骨造のアパートを建てることもできます。
活用事例:北新宿の活用事例
エリア | 東京都 |
土地面積 | 168.95㎡ |
延べ床面積 | 271.25㎡ |
工法 | 木造2×4工法 |
建築費用 | 8,000万円 |
(出典:住友不動産株式会社の土地活用事例)
予算ごとのアパート建築プランに関しては、以下の記事もご参考になります。
▼予算別のアパート建築の記事一覧
以下の記事もご参考になります。
アパート建築に必要な自己資金
アパートの建築には、数千万円から億単位の費用がかかります。多くの方が、この費用を手持ち資金で支払うのではなく、銀行の融資も受けながらアパートを建築しています。
この章ではアパート建築に必要な自己資金割合とアパートローンについて解説します。
必要な自己資金は費用総額の2~3割
賃貸アパートを建築するにあたっては、建築にかかる費用の総額の約2~3割を自己資金として用意しておくのが望ましいです。
残りの資金は、金融機関に融資を申し込んで調達します。
自己資金を2~3割用意しておくべき理由は、諸費用の支払いや、融資の際の頭金に充てるためです。
- 頭金を入れずに「フルローン」で融資を受けるのは、昨今の不動産投資に対する融資の監視強化により、現在では難しくなっています。
資金調達には「アパートローン」を利用する
アパートの建築には「アパートローン」という不動産投資用のローンを利用するのが一般的です。
なお、アパートなどの賃貸住宅の建築には、居住用の住宅向けの住宅ローンを利用することはできません。
アパートローンとは
アパートローンとは、投資用不動産の購入や建築に利用できるローン商品です。銀行や信用金庫など、各金融機関が提供しています。
借り入れる資金は幅広い目的に利用でき、アパートの建築費だけでなく、リフォーム費用や解体費用、保険料、低地買い取り資金等にも用いれます。
アパートローンの借入時には、建築費用の20%程度を頭金として求められることが多いです。
アパートローンの審査基準
アパートローンは、住宅を建てる時に使える住宅ローンよりも金利が高く、厳しい融資審査が行われます。
金融機関にもよりますが、アパートローンの借入や借入可能額の審査基準は、主に次の5つです。
- 借主の年収
- 勤務先等の借主の属性
- アパートの収益性
- 借主の資産状況
- アパート経営の実績
このうち、特に重視されるのは建築予定のアパートの収益性です。
金融機関は借主から提出される「事業計画書」に基づいて融資可能額を審査します。
アパートローンに年齢制限はない
アパートローンの利用に年齢制限はありません。なぜなら、たとえ建築したオーナー本人が亡くなった後も家賃収入は継続するからです。金融機関は、アパートの相続人に返済を続けてもらうことができます。- 融資の審査にアパートの収益性が重視されるのも、以上が理由です。
ただし、法定耐用年数を超えてローン期間を定めることができない点には注意しましょう。また、最長期間は残存耐用年数にかかわらず30年に設定している金融機関も多いです。
- 法律によって、構造ごとに設定されている建物の寿命の年数のこと。実際の建物寿命は法定耐用年数と異なることも多いですが、税制度や法律上ではこの年数を参考にします。
構造 | 法定耐用年数 |
---|---|
木造 | 22年 |
鉄骨造 | 骨格材の厚さ~3mm:19年 骨格材の厚さ3mm~4mm:34年 骨格材の厚さ4mm~:34年 |
RC造 | 47年 |
アパートローンについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
ローンを利用したアパート建築は相続税対策にもなる
「ローンを借り入れてまでアパートを建築するのは気が引ける…」という方もいらっしゃるかもしれません。ローンを借り入れることで、子供の代に借金を引き継いでしまうことを懸念される方も多いでしょう。
しかし、預貯金とローンを合わせてアパートを建築することは、相続税対策にもなります。
まず、現金の形ではなく不動産で相続することで、相続税評価額を減じられるため、相続人の支払う相続税を抑えることが可能です。
また、アパート経営を3年を超えて行っている土地の相続であれば、評価額を更に減額できる特例を適用できるため、相続税の節税効果が高くなります。
ただし、節税効果を十分に得るためにはアパートを空室率の少ない状態にしておく必要があるため、ただアパートを建てるのではなく、利用者のニーズを押さえたアパートを建築することが望ましいです。
- 所有している土地や現金をそのまま相続するのではなく、相続税を抑えつつ、収益性の高いアパートとして相続することを検討してみてください!
\建築費は?初期費用は?/
アパート経営による相続税対策について、更に詳しくは以下の記事をご覧ください。
アパート建築にかかる費用の支払いタイミング
アパート建築にかかる費用は、建築の工程ごとに支払いを行います。
この章では、まず簡単にアパート建築の工期と流れを紹介した上で、建築にかかる費用の支払いタイミングについて解説します。
アパート建築の工期と流れ
アパートの建築にかかる期間は、着工から竣工までは4~5ヶ月が目安です。
アパートの建築は、以下の流れで進められます。
アパート建築を任せる施工会社の選定後、設計を決定していく期間を含めると、オーナー様にもよりますが、8~10ヶ月かかることが多いです。
アパート建築の工期や流れについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
費用の支払いタイミング
アパート建築の工事費は、一般的に完成前の着工、柱や屋根の骨組みができる上棟、建物の完成の3回に分けて支払うことが多いです。
また、着工前に工務店と建築請負契約を結んだ際に、建築費用の何割かを前払いする場合もあります。
工事費をいつどのくらい支払うかは、当事者の間で決めることが原則です。
特に工期の短いアパート建築では着工前に大きな金額を支払うこともあります。資金繰りに困ることがないよう、支払い条件は早めに確認しておきましょう。
アパートローンの融資が受けられるタイミング
融資が受けられるタイミングは民間融資と公庫融資で異なりますが、民間融資の方が比較的スムーズに早く融資を受けられます。
民間融資では土地を担保にした建物の先行融資として所定の融資が先に受けられるので、資金計画に組み込むことが可能です。
公庫融資では、原則として建物の最上階が完成する段階で30%の資金交付が受けられますが、公的な資金交付は建物完成後になります。
アパート建築費を安くするコツ
長期的な安定収入を得るためには、建築費をできるだけ抑えて収益を増やすことが重要です。この章では、アパートの建築費を抑えるために知っておきたいポイントを紹介していきます。
設計施工一貫方式で建てる
アパートを建てる前には、まずどんなアパートを設計するのか、デザインにまとめ図面に起こす必要があります。この設計業務は、ハウスメーカーに任せるか別途プロに依頼するかで、費用が変わってきます。
ハウスメーカーに設計を任せ、そのまま建築までまとめて依頼する方式は設計施工一貫方式(=デザインビルド方式)と呼ばれ、こちらの方が費用が安くおすすめです。
一方、設計を設計会社に依頼し、建築は建築会社に依頼する、という別々の発注スタイルをとるのが設計施工分離方式であり、この場合設計会社に依頼する分の設計料を別途支払う必要があります。
設計料を抑えつつアパート建築をしたい場合は設計業者と施工業者は統一するデザインビルド方式で建築する事がおすすめです。
設計方法 | 特徴 | 費用 |
---|---|---|
設計施工一貫方式(デザインビルド) | 設計から一貫して進められるためスムーズに進む費用を安く抑えられる | 本体費用の1%~5%程度 |
設計施工分離方式 | こだわったデザインで設計できる | 本体費用の5%~15%程度 |
中にはローコストアパートの建築に特化した建築会社もあります。費用を抑えてアパート経営を始めたい方はこちらの記事も参考にしてください。
必要以上に部屋を増やさない
部屋を増やして入居可能な人数を増やし、できるだけ多くの家賃収入を得ようと考えている方が多くいらっしゃいますが、むやみに部屋を増やすのは得策ではありません。
というのも、部屋を増やすほど、敷居に使う材料や追加した部屋分の設備代に費用がかかってしまい、全体的な建築費用は上がってしまいます。
さらに、部屋数を増やしすぎしまうと、1部屋当たりの広さが狭くなり、物件自体の魅力も下がってしまいます。必要最低限の部屋数にしておくことで、費用を抑えつつアパートを建築することができます。
設備や内装はシンプルに仕上げる
できるだけ安くアパート建築をする場合は、設備や内装をできるだけシンプルにする事をおすすめします。
アパートに用いる内装や外装、住宅設備は、グレードによって発注にかかる費用が大きく異なります。本体工事費が費用全体の7~8割の範囲に収まっているかチェックして、費用がかかり過ぎていないか確認してみましょう。
特に、ハウスメーカーや建築会社の規格化プランでアパートを建てる場合は、使用する建材や設備をまとめて生産・発注しているため、オーダーメイドで設計して建築する場合に比べて費用を抑えることができます。
また、シンプルなデザインは、費用面のメリットだけでなく、多くの入居者にアピールしやすいというメリットもあります。シンプルな内装は設置する家具を選ばないため、嫌がる入居者は少ないです。
アパートの設計に強いこだわりがない場合は、シンプルな内装と設備を導入することで、建築費を安く抑えられると同時に入居者の募集もしやすくなります。
複数社のプランを取り寄せて費用を見比べる
アパートの建築費をできるだけ抑えるためには、ハウスメーカーに建築費の見積もりを出してもらう際に、複数の見積もりを取り寄せて価格を比較することが大切です。
1社にしか相談していないと足元を見られて高く請求されることもあります。
そのため、複数社に相談しておき、値段が低かったハウスメーカーのプランを見せつつ値下げを要求する交渉ができると良いでしょう。
アパート建築に対応できる建築会社がどのような会社なのかよくわからない場合は、こちらの記事も参考にしてください。
建築費の見積もりは複数社で比較する
アパートの建築費をできるだけ抑えるためには、ハウスメーカーに建築費の見積もりを出してもらう際に、複数の見積もりを取り寄せて価格を比較することが大切です。1社にしか相談していないと、相場より高く請求されても気づくことができません。
そのため、複数社の建築プランを比較して値段が低かったハウスメーカーのプランを見せつつ値下げを要求する交渉ができると良いでしょう。
百戦錬磨の営業マンに交渉するのは少々腰が引けますが、実際に建築プランの見積書があれば有利に進めることができるかもしれません。
イエウール土地活用は複数社にまとめてプラン請求することができ、費用対効果をじっくり吟味しつつ自分に合ったアパート建築プランを探すことができます。
もちろん無料で利用でき、建設予定地を入力するだけで具体的な収益・費用・利回りまで教えてくれるため、一度プラン請求して見比べてみることをおすすめします。