家を貸すことは、引っ越ししたり相続したりして住まなくなった家を有効活用する選択肢のひとつです。
ローンや固定資産税の支払いがあるものの、将来のことを考えて保有しておきたくて「家を貸したい…」と考えた方もいらっしゃるかと思います。
ですが、初めて家を他人に貸す際は慣れない点や分からないことが多く不安を抱えることでしょう。
無事に利益を得られたら良いのですが、場合によっては借主が見つからないケースや、借主が見つかったとしても利益の出ないケースもあります。
他人に家を貸す際には、具体的にどのような点に注意して契約をする必要があるのでしょうか。今回は家を貸す際の契約の種類や管理の方法、家を貸す流れや注意点について解説します。
「まずは家を売る基礎知識を知りたい」という方は、こちらの記事をご覧ください。
【家を貸す注意点①】契約
家を貸す際は、はじめから全てを完璧にしようとせず、重要なポイントを押さえた上で賃貸借契約に臨むことが重要です。
特に賃貸借契約は、互いの権利や義務を明確にするものとなるため、専門家に相談しながら契約の中身を詰めると良いでしょう。
家を貸す場合には、貸し出す期間によって交わすべき契約の種類が異なります。
家を貸す借家契約には、普通借家契約と定期借家契約の2種類です。
この2種類の借家契約は、契約期間や更新が異なります。この借家契約についてご説明します。
普通借家契約で長期的に家を貸す
数年間単位といった長期間で家を貸し出す際、貸主は借主と「普通賃貸借契約」を交わします。一般的に、普通借家契約は契約期間を2年間と設定しています。2年後は自動更新制となり、貸主が解約の申し出をしない限り契約を更新するのが一般的です。
普通借家契約のメリットは、契約が自動更新制である点です。一度入居者が決まれば、入居者が解約して退去しない限り契約が更新され、長期間にわたり一定の家賃収入を確保できます。普通借家契約のデメリットは、再び自分が居住したいという貸主側の一方的な都合では解約できない点です。普通借家契約では、何らかの正当な理由がない限り貸主側からの更新拒絶はできないようになっています。
普通借家契約を交わす際は、これらのメリットやデメリットを総合的に考慮して判断することをおすすめします。
定期借家契約で一時的に家を貸す
長期間でなく一時的に家を貸す場合には、「定期借家契約」を設定するのが一般的です。定期借家契約では契約期間を自由に決めることができ、期間が満了すると契約は終了になります。
普通借家契約のような自動更新制ではないことから、貸主は必ずしも更新する必要はありません。例えば海外へ赴任している間のみ家を貸し出し、帰国したら再び自宅で生活したい場合には、この定期借家契約を選択すると良いでしょう。
契約期間が満了したら更新する必要がなく、必ず自宅が明け渡されるので、転勤が多い方には都合が良いと言えます。したがって定期借家契約は、賃貸に出した家に将来的に戻りたい方に都合の良い契約だと言えます。定期借家契約のデメリットは、自動更新されないことから借主が敬遠されがちになるため、普通借家契約と比べて借り手が見つかりにくい点があげられます。その結果家賃を下げることになりかねず、収益も少なくなる可能性があります。
【家を貸す注意点②】管理
家を貸す際には、管理方法について注意しておく必要があります。
家を貸す際の管理方法には以下の4種類があります。
- 自主管理方式:入居者の対応を自分でする
- 管理委託方式:
- サブリース方式:
- リロケーション方式:
ここからは、自主管理方式と管理委託方式、サブリース方式、リロケーション方式の特徴についてそれぞれ解説します。
自主管理方式
自主管理方式は、物件の所有者が入居者と直接賃貸借契約を交わして、所有者自らが物件の管理を行う管理方式です。
自主管理方式では、クレーム処理や家賃の回収、契約の更新作業などの管理作業を行う手間がかかります。一方、不動産会社に管理費用を支払わずに家賃を得ることができるので、余計なコストを抑えることが可能です。
自主管理方式であっても、入居者の募集から賃貸借契約の締結までは不動産会社に依頼するのが一般的です。
管理委託方式
管理委託方式は、不動産物件を賃貸する場合に発生する管理業務の全てを管理会社に委託する方式です。具体的には、入居者の募集や賃貸借契約の締結、家賃の回収や物件の清掃管理といった、あらゆる管理業務全般を管理会社に委託します。
管理委託方式は、家賃の5~15%前後を管理委託費として管理会社に支払う必要があります。
したがって、管理委託方式では管理業務の煩わしさから逃れられるメリットがある一方で、管理委託費を支払う必要があるため、手元に入る金額が自主管理方式よりも少なくなります。
サブリース方式
サブリース方式とは、不動産会社が物件の所有者から家を借りた上で、入居者と賃貸契約を交わす「転貸借方式」(又貸し)です。
サブリース方式の場合、不動産オーナーと賃借人との間に不動産会社が介在していることから、賃料は相場よりも安くなります。
サブリース方式には、物件が空室の場合でも家賃の保証がある家賃保証型と、空室保証のないパススルー型があります。パススルー型は、物件が空室だった場合のリスクを不動産オーナーが負うことになることから、自主管理方式に近い方式です。
ちなみにサブリース方式は一軒家の場合には採用されず、マンションの一棟を丸々賃貸する場合に採用される方式となっています。
リロケーション方式
リロケーションとは、転勤などで留守となる家を一定期間レンタルとして貸し出す方法です。
リロケーションの契約方法には、入居者と所有者間の契約のみをリロケーション会社が代理する代理委託方式と、入居者の募集~管理までをリロケーション会社が行う転貸借方式の2種類があります。
基本的にリロケーションは、転勤や出張などの期間あくまで一時的に家を貸すサービスのため、長期の貸し出しには向いていません。
【家を貸す注意点③】税金など収支
家を貸す注意点のひとつに、税金など支出と収入について考えておく必要があります。
実際に家を貸し出す前に、収支の計算をしておくと良いでしょう。毎月の家賃収入はもちろんですが、家を貸し出した場合には避けられない支出が発生します。
収入
土他人に家を貸し出す場合、たとえその家が自宅であったとしても、他人に賃貸すれば「賃貸事業」としての取り扱いとなります。
賃貸事業とする場合、賃貸借契約を交わして契約上の義務を履行することが必要です。家賃の回収や入居・退去の管理、物件の清掃やクレーム処理など、賃貸借契約の貸主として行うべきことを誠実に実行する必要があります。
支出
家を貸しても、売却して手放すわけではないため、固定資産税の納付やローンの支払いが必要です。
家を貸して得た収入は所得となることから所得税の納付も必要となりますし、管理を委託すれば管理委託費が、リーフォームが必要となればリフォーム代金がかかってきます。
具体的には、以下のような税金や費用の支払いが必要です。
- 固定資産税・都市計画税
- 火災保険料
- 仲介手数料・管理委託料
- 清掃費用・原状回復費用
- 修繕費
家賃をあまりに低く設定すると収益が得られない場合もあり、最低限の支出すら払えない可能性もありますので、事前にある程度の収支計画を立てておくと良いでしょう。
また、住宅ローンがある場合には、収入からローンの返済を行っていきます。
住宅ローンの有無
転居などの理由で自宅を貸し出す場合、その家の住宅ローンが残っていると他人に貸し出すことができないことに注意が必要です。住宅ローンの有無を確認する必要があります。
一般的に、住宅ローンの支払いはあくまで契約者が居住していることが契約上の条件となっています。自宅を他人に賃貸して得た家賃は、住宅ローンの支払いにあてることはできないため気をつけましょう。
税金など確定申告を忘れない
自分の家を他人に賃貸し賃料収入を得る行為は、「事業」に該当します。この場合の賃料収入は不動産所得に該当するため、家の所有者は収入を毎年確定申告して税金を納めることを忘れないように注意しましょう。
なお、確定申告は自分でもできますが、申告作業が煩雑であれば税理士などの専門家に依頼すると手間が省けるためおすすめです。
家を貸すか迷ったら、自分で情報収集を進めるのと同時に売却を選択肢に入れ、良い不動産会社を選びましょう。
不動産会社を比較できるチャンスは査定の時。複数社に査定依頼を出し、査定までの対応や査定結果への質問に対する受け答えなどを確認して、より良い不動産会社を選びましょう。
複数社査定をする際は一括査定のイエウールが便利。一度の申込みで複数社に査定依頼を出せるほか、イエウールが審査した不動産会社のみの紹介となるので、悪徳不動産会社に会う心配がありません。
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一軒家を貸す流れ
初めて自宅を他人に貸し出す場合には、貸し出し準備から実際に契約が成立するまでの一連の流れを把握しましょう。
たとえ初めてだとしても、全体の流れを把握していれば、ある程度計画性を持って賃貸の手続きを進めることができます。
実際に家を貸し出す場合には、どのような手順で手続きを進めていけば良いのでしょうか。ここからは、他人に家を貸す場合の流れを重要なポイントごとに解説します。
契約や管理方法を考える
家を他人に貸す場合には、互いに賃貸借契約を交わし、その契約内容に沿って賃貸物件を管理する必要があります。管理業務は、家を借りた相手が気持ちよく日常生活を過ごせるように、貸主として必要な業務です。
どのような方法で家を貸すのが適しているか、貸す契約方法や管理方法について考えてみましょう。
管理会社や不動産会社の中には経験やノウハウが少ないものの、仲介手数料がやたらと高い会社や業務を誠実に行わない悪徳業者もあるため、管理方法については十分に考えて気をつける必要があります。
不動産会社もしくは管理会社を探す
管理方式を決めた後は、不動産会社たは管理会社の選定を行います。自主管理方式の場合は不動産会社を探し、管理委託方式の場合は管理会社を探します。
会社を探す段階でまだ管理方法が決まっていない場合には、いずれの管理方法になっても柔軟に対応できるように、不動産会社と管理会社を両方探すと良いかもしれません。
家を貸す条件を相談する
管理方法を決めて不動産会社や管理会社を見つけたら、家を貸す条件を具体的に相談しましょう。
家を貸す際には、近隣にある類似物件の相場を調査した上で、契約の種類や賃貸に関する諸条件を決めていきます。
具体的には、家賃や敷金・礼金、更新料や火災保険、管理費など、不動産会社や管理会社と相談しながら進めます。
何年何月から何年何月までを契約期間とするかなども定めておきましょう。
賃料(家賃)
家を貸す際に決めておきたいのは、以下の項目です。
- 賃料(家賃)
- 敷金・礼金
- 更新料
これは、相場から賃料を定めた上で何か月分として決めていきます。
敷金・礼金は賃料の1~2ヶ月分、更新料は約2ヶ月分が一般的です。
契約書
家を貸す契約書には、どの契約方法で借家契約を結ぶのかまとめておきます。
また、賃料など料金はどのようにするか、他にも契約を終えた場合にはどのように返済するか記載します。
契約書をしっかり作っておかなければ、場合によっては家を貸したまま返ってこなかったり、賃料をしっかりと支払ってもらえなかったりするケースもあるようです。
作成する契約書については、不動産会社や管理会社に詳しく相談してみると良いでしょう。
火災保険など管理費
家を貸す際に気になるのは火災などの災害。
まだまだ住める家、貸して収益を得られる家を失うのは、資産を失うことと同じです。
家を貸す際には、管理会社にしっかりと管理してもらえるように、管理費についても考えておきましょう。
また、可能なら火災保険に加入して十分に対策しておくことをおすすめします。
貸し出しに必要な準備をする
不動産会社や管理会社を探すだけでなく、同時に家の貸し出しに向けて必要な物を準備する必要があります。自宅を賃貸する際に必要な持ち物として、以下の物があげられます。
- 間取図
- 建物登記簿謄本
- 土地登記簿謄本
- 本人確認書類(運転免許証、印鑑証明書など)
- 入居時に入手したパンフレット
- 印鑑
- 家の鍵
これらはすぐに用意する必要はなく、最終的な賃貸借契約を交わす際に必要です。しかし余裕を持って手続きを進めるためにも、早い段階で取り寄せて契約までに全て用意することをおすすめします。
入居者を募集・審査する
貸し出しに必要な準備を終えたら、入居者を募集しましょう。
入居者からの申し込みを受けて、入居者として賃料をしっかり払ってくれそうか審査をしていきます。
入居者の審査を終えたら、契約へと進みます。
契約して入居してもらう
賃料や更新について不動産会社や管理会社とまとめた契約書を用いて、入居者と賃貸契約を結びます。
契約の際には、不動産会社などに依頼していれば代理してもらえるため、完了の報告を待つだけです。
契約を終えたら、定めた契約期間に沿って入居してもらい、賃料の受け取りも開始します。
家を貸すメリットとデメリット
家を貸すことを考えたら、メリットとデメリットから貸す目的に適しているか考えてみましょう。
家を貸すメリット
家を貸すメリットには、大きく以下の3つがあります。
- 家賃収入
- 家を手放さなくてよくまた住むこともできる
- 空き家リスクの回避
この3点について詳しくご説明します。
【メリット①】家賃収入
家を貸す1番のメリットは、家賃収入を得られる点です。
ローンの返済や固定資産税の納税で、ひたすらお金のかかるだけの家が、貸すだけで家賃収入を得られてローンと固定資産税を賄えるようになる可能性があります。
マイナスだけの家を、家賃収入によりプラマイゼロもしくはプラスにできるでしょう。
【メリット②】家を手放さなくてよくまた住むこともできる
転勤などで一時的に家を空けるために貸すのであれば、また住むことができる点もメリットでしょう。
家は資産のため手放さずに所有したままにおきたい、思い入れがありまた住みたいと考えている方には、この点は家を貸すメリットとなります。
転勤から戻ってくる期間に契約期間を合わせておくことで、帰ってきたらそのまま自宅に住むことが可能です。
また、子どもが住む家を残せる、相続できるなどの選択肢を持っておけることもあります。
【メリット③】空き家リスクの回避
家を貸すメリットの1つに、空き家リスクの対策ができることが挙げられるでしょう。
家を空き家のまま放置すると、害獣が集まってきたり草木伸び放題となったり荒れるリスクが高まります。
また、家は人が住まずに使わないでいると劣化が進むますし、使用していない家だからと不法侵入や不法投棄の被害に遭いやすいものです。
家を貸すことで、居住者が定期的に管理する、または管理会社がしっかりと管理することから、空き家リスクの対策ができ家を綺麗に保てるでしょう。
家を貸すデメリット
それでは、家を貸すデメリットについてご紹介します。
【デメリット①】入居者トラブル
家を貸すことによって、入居者とトラブルになる、または入居者がトラブルを起こすことも考えられます。
どれだけ入居者を審査しても、実際に住み始めたら家賃の滞納や退去費用でトラブルとなったり、入居者が近隣の住民とトラブルを起こしたりするかもしれません。
入居者トラブルが起こらないとは言い切れませんので、契約前にしっかりと審査して管理会社や不動産会社に対応の依頼をしておくことが必要です。
また、契約書に詳しくトラブルについて記載しておくことも良いでしょう。
【デメリット②】リフォーム費用
家を貸す際に、入居者からの要望でリフォームが必要となるケースもあるでしょう。
内装の状態や築年数によっては借り手が見つからず、リフォームをしなければいけないなんてこともあるようです。
火事など火災により修繕が必要となるケースも想定して、保険に加入するなど対策しておくことをおすすめします。
【デメリット③】所得税の発生と確定申告
家を貸すことは賃貸事業となるため、得た収入は不動産所得として確定申告が必要です。また、不動産所得として確定申告すると所得税の納税も必須となります。
家を貸して収入を得ようとしただけでも、不動産所得に所得税が課税されて支出項目が増える点には注意しておきましょう。
家を貸すのと売却どっちがいい?
家を使わなくなったら、家を貸すのと売るのどちらがいいか悩まれるのではないでしょうか。
ここでは、家を貸すのと売却どちらがいいか判断する際に考えておきたいことをご説明します。
家を貸す方がおすすめの場合
将来的に、また家に住みたいと考えている場合には、使用しない間だけ家を貸すことを考えましょう。
1度家を売ってしまうと、もう1度手に入れることは難しくなります。
老後はまた今の家で暮らしたい、愛着があって手放したくない、などであれば家を貸す方向で考えていきましょう。
とは言っても、賃貸の需要が見込めない地域では、借りる人が見つからず賃貸が成立しないケースもあります。
家を借りたい人がいるかどうか、不動産会社などに相談してみて考えることが重要です。
ただ、家を貸す際には管理会社への維持管理費用や不動産会社への手数料がかかる点、また固定資産税の納付が必要な点には注意しておきましょう。
家を売る方がおすすめの場合
今後、今の家に住む予定がない場合は、家を売ることを考えましょう。
家の価値は、築年数が経てば経つほど下がっていくもので、20年も経てば価値はなくなってしまいます。住む予定がなければ、売れるうちに売却して現金化してしまうのもひとつの手です。
売却を後にして、まずは貸して収益を得ようと考えても良いかもしれませんが、維持管理費など管理会社への支払いや固定資産税など税金の納税が必要な点には注意しておきましょう。収入を得るつもりが、マイナスが多くなる可能性もあります。
家を貸すか迷ったら、自分で情報収集を進めるのと同時に売却を選択肢に入れ、良い不動産会社を選びましょう。
不動産会社を比較できるチャンスは査定の時。複数社に査定依頼を出し、査定までの対応や査定結果への質問に対する受け答えなどを確認して、より良い不動産会社を選びましょう。
複数社査定をする際は一括査定のイエウールが便利。一度の申込みで複数社に査定依頼を出せるほか、イエウールが審査した不動産会社のみの紹介となるので、悪徳不動産会社に会う心配がありません。
あなたの不動産、
売ったら
家を貸すなら賃貸経営のプロに依頼しよう
家を貸す不動産賃貸を行う際は、事前にしっかりとリサーチしてから取り組むことが大切です。自宅を使っていないからと安易に賃貸を始めると、想像以上に手間や時間がかかり、負担になる可能性があるので注意が必要です。
賃貸経営を検討しているなら、収益性を上げられるかしっかり検討することが大切です。賃料収入を真剣におこなうなら、アパート経営やマンション経営という選択肢もあります。
イエウールは家を高く貸すための不動産会社や管理会社を探す賃料査定サービスではありませんので、注意してください。
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