住んでいる家を売却するときには、住民票を引越し先の住所に変更する必要があり、これを住民票異動と言います。
今回は住民票異動を問題なく適切に行うためにはどのタイミングでどのように行えばよいのかを詳しく解説していきます。
また、買主の都合などで家を売却する前に引越しをする場合は住民票異動前に印鑑証明書を発行しておく必要がありますが、発行した印鑑証明書の使用期限内に売却できない場合や発行をしていなかった場合にどうすればいいのかも合わせてまとめていますので、是非最後までお読みください。
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家売却で引っ越す時の住民票異動のタイミング
家売却に伴う住民票異動のタイミングは、原則引越し日から14日以内となっています。これは住民基本台帳法22条で定められた義務であり、この期間を逃すと最大5万円の罰金が科せられるため注意が必要です。例えば1月1日に引越しをする場合は、1月14日までに異動を完了させる必要があるということです。
住民票は引越し前後で市区町村が変わるかどうかによって異動の方法が変わりますが、それぞれの場合で住民票異動が完了したとみなされるのは以下の時点です。
引越し前後で市区町村が変わる場合 | 転出届を出した後に転入届の提出が完了した時点 |
引越し前後で市区町村が変わらない場合 | 転居届の提出が完了した時点 |
引越し前後で市区町村が変わる場合は転出届と転入届の2工程を踏む必要がありますが、両方を14日の間に行おうとすると何かトラブルが起きた際に期間を逃してしまう可能性があるため注意が必要です。
転出届は引越し日の2週間ほど前から提出が可能となっているため、タイミングを逃さないように計画的に住民票異動を行いましょう。
ただし、「引越し先に住む期間が1年以内である場合」「引越し先が生活拠点ではない場合」の2つのケースに限っては住民票異動しなくても良いことになっています。例えば単身赴任での短期居住やセカンドハウスの購入がこれにあたりますが、家売却で住み替えを行う場合はこの2つのケースに当てはまらない人がほとんどだと思いますので、きちんと法に則って住民票異動を行いましょう。
必要な書類は不動産の種類や状況によって異なります。そこで、必要書類を簡単にチェックしましょう!
必要項目を選択して「必要書類を見る」を押すと、ご自身の場合に必要な書類が一覧で表示されます。
タイミング | 重要度 | 書類 | 内容 | 取得方法 |
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家売却で引っ越す時の住民票異動の流れ
続いて、住民票異動の流れを説明します。
引越し前後で市区町村が変わる場合は、引越し前の住所の役所・役場で転出届を出した後に引っ越し後の住所の役所・役場に転入届を出すことで住民票が異動できます。
転出届と転入届に関しては郵送でも対応してもらえますが、必要書類が市区町村によって異なるため必ず確認するようにしてください。また、足を運ぶより時間がかかってしまうため余裕をもって動くようにしましょう。
引越し前後で市区町村が変わらない場合に関しては、住んでいる住所の役所・役場に対し転居届のみを出せば異動完了となります。
転居届は郵送での対応は不可となっています。
引越し前後で市町村が変わる場合
引越しにより住む市町村が変わる場合の流れは以下の通りです。
- 転出届提出に必要な書類をそろえる
- 引越し前の住所の役場・役所に転出届を提出する
- 転出証明書を受けとる
- 転入届提出に必要な書類をそろえる
- 引越し後の住所の役場・役所に転入届を提出する
転出届提出後に受け取った転出証明書は、転入届提出の際に必要となるので大切に保管しましょう。
引越し前の役所・役場で転出届提出が完了していないと転入届は手続きができない仕組みになっています。
転入届は引越し日から14日以内に提出する必要があるため、スケジュールに余裕をもって行動するようにしましょう。
転出届や転入届を提出するとき必要となる書類は以下の通りですので、必要なときまでに漏れなく準備をしておきましょう。
転出届提出に必要な書類 |
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転入届提出に必要な書類 |
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引越し前後で市町村が変わらない場合
転居届を提出する流れはいたってシンプルです。
- 転居届提出に必要な書類をそろえる
- 引越し後の住所の役所・役場に転居届を提出する
これも転出届や転入届と同じく引越し日から14日以内に提出を完了させるようにしましょう。
必要となる書類は以下の通りです。
転居届提出に必要な書類 |
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家売却前に引っ越す場合は印鑑証明書の扱いに注意が必要
家売却時において売主が用意する書類の一つに「印鑑証明書」があります。印鑑証明書は家の所有権を移転する際に用いる書類です。
所有権移転で用いる印鑑証明書の住所は、売却する家の名義人の住所と同じでいいことから、売却してから引っ越す場合は名義人の現住所と印鑑証明書の住所が同じなので特別な手続きは発生しません。
印鑑証明書自体はいつでも発行できるので、必要になったときに発行すれば問題ありません。印鑑証明書の使用期限は発行日から3か月間ですので、必要なタイミングの3か月前から準備可能ということになります。
注意が必要なのは先に引越しをしてから家を売却する場合です。家の名義人の現住所と印鑑証明書の住所が異なることになるため、引越し後に印鑑証明書を発行しても使うことができないのです。例えば売却より先に新しい住所に引越し、住民票異動を行った場合は、転出届や転居届の提出が完了した時点で印鑑証明書のデータが消去され発行できなくなります。この場合は印鑑証明書の使用期限が3か月であることを利用して、売却する家の住所が住民票に登録されているタイミングで先に発行しておくとよいでしょう。
印鑑証明書を発行していない場合や有効期限内に家売却できない場合
もし家売却前に引っ越したにもかかわらず印鑑証明書を取得していなかった場合や、印鑑証明書を発行してから3か月以内に家を売却できなかった場合には、法務局で家の名義人の住所変更登記を行いましょう。住所変更登記とは売却予定の家の登記簿上の名義人の住所を現住所に変更する手続きのことで、これをすることにより問題なく売買契約締結や所有権移転登記を行うことができます。
売却する家の名義人の住所と家を売却しようとしている人の現住所が異なる状態では、整合性が取れず、書類上同一人物として認められないため支障が出ます。これを回避するために、名義人の住所を現住所にし、印鑑証明書を発行する際の住所(=現住所)と合わせるのです。
売却物件の登記情報となっている住所から複数回転居している場合には、住民票ではなく戸籍の附票が必要となるため注意が必要です。
住所変更登記に必要な書類は以下の通りです。
- 登記申請書
- 住所変更の事実がわかる書類
→ 売却予定の家に住んでいた時点から1回住所が変わった場合:住民票
→売却予定の家に住んでいた時点から2回以上住所が変わった場合:戸籍附票
- 不動産の家屋番号等が分かる書類(登記済権利証・登記事項証明書など)
住所変更登記を行う方法としては自分で手続きする方法と司法書士・弁護士に依頼する方法があります。以下でそれぞれの方法をご紹介します。
方法1:自分で変更登記を行う
自分で変更登記を行う場合、法務局に行って申請するパターンとオンライン上で申請するパターンの2種類があります。
流れ | |
法務局に行って申請する ※郵送可 |
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オンライン上で申請する |
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どちらでも可能ですが、よりシンプルに手続きを終えられるのは法務局に行って申請をする方法です。
遠方に引っ越した場合でも法務局宛に郵送で申請する方法があるので、是非活用してみてください。
自分で住所変更登記をする場合の費用は2,000~6,000円ほどですので、時間がある場合はご自身で行うのがおすすめです。
方法2:司法書士・弁護士に変更登記をしてもらう
所有者の情報を変更する登記申請を業務として代理できるのは司法書士か弁護士になるのですが、後に所有権移転登記の際に司法書士に依頼することになるため、同じ司法書士にお願いするケースが多いです。
この場合の費用は、自分で行う場合に加え専門家に依頼する依頼料が1~2万円ほど上乗せされることになります。
数万であれば手間を抑えるために専門家に依頼したいという方にはおすすめの方法です。
家売却に伴う住民票手続きで失敗しないために
家売却は一生に何度も経験するものではありません。そんな重要な機会でスムーズに手続きを進めるためには、住み替え時の引越しに伴う住民票異動のタイミングや流れを理解しておく必要があります。
引越しのタイミングがまだ決まっていない人であれば、書類集めや変更登記の手間を省くためにも家売却をした後に住民票異動をすることがおすすめです。
引越しの距離やタイミングによっても手続きは変わってくるため、住民票異動に伴う注意点までしっかりと把握したうえでスケジュールに余裕をもって売却に取り組むようにしましょう。