遠方で自分が住む予定がない実家を相続したけれども、思い出がたくさんあるので手放したくない時や、3年程度で戻ってくる予定の転勤を命じられた時などに、家を貸したいと考える方がいます。
しかし、賃貸経営など行ったことがない人にとっては、実家や持ち家をどうやったら貸し出せるのかよく分からないものです。
この記事では、実家や持ち家を貸したいと考えている方のために、家を貸し出すメリットや、賃貸に出したときの契約方法、家を貸し出すにあたっての注意点などについて詳しく解説します。家を貸したいと考えている方必見です。
「まずは家を売る基礎知識を知りたい」という方は、こちらの記事をご覧ください。
個人でも家を貸し出すことはできるの?
相続したり、転勤・同居によって、家に住む人がいなくなった場合、「家を貸す」ことは1つの方法として有効です。
そもそも個人で家を貸し出すことができるのか?心配する方もいるかと思いますが、結論からお伝えすると、個人でも家を貸す出すことは可能です。
個人で家を貸し出す際に、資格や免許などは特に必要ありません。
しかしながら、家を貸し出すにあたって、法律的な取引だったり、税金、手順など専門的な知識がどうしても必要になるため、個人で行う場合は手間がかかります。
そのため、「宅地建物取引士」などの専門知識を持った方がいる不動産会社に依頼し、サポートをしていただく場合が多くなっています。
家を貸し出すメリット
家をどうしたらいいのか迷った場合に、家を貸し出すことを検討してみましょう。ここでは、家を賃貸に出すメリットにはどのようなものがあるのかをお伝えします。
家賃収入を得ることができる
家を貸し出せば、賃貸収入を得られます。本業での収入の他に、家賃も入ってきます。賃貸に出さずに空き家にした場合には、誰かに定期的に窓を開けて風を通してもらわないと家が傷んでしまいます。
家の管理を誰にもお願いしていかずに、期間限定の転勤から帰ってきたら、家がひどく傷んでしまっていて、修繕に多額の費用が掛かったという方もいます。
しかし、転勤の間貸し出せば、借主が家の管理をしてくれるので、家が傷む心配はありません。その上、家賃収入も見込めます。空き家にしておくよりも経済的に大きなプラスとなるでしょう。
家を手放さなくて済む
遠方の実家を相続した場合には、自分では管理しきれないと言って、多くの方が売却してしまいます。しかし中には、思い出の詰まった実家を手放したくないという方もいます。
賃貸に出せば、家を売却しなくても持ち続けることができます。定年退職後に田舎に帰りたい場合や、親族の子供が大きくなった時に住めるようにしたい場合には、賃貸の期限を最初に決めておけば、問題ありません。
家の管理も借主にお願いできて、家賃収入も入ってくるので一石二鳥です。
家を貸し出すときの契約方法
家を貸したい場合の契約方法には、定期借家契約と普通借家契約があり、それぞれ契約期間などの条件が違います。将来的にその家に自分が引越したり、戻って来る予定があるのかどうかで、どちらの契約方法を選んだらいいのかと変わります。
こちらでは、定期借家契約と普通借家契約の違いについて詳しく解説します。
契約期間が自由に設定できる定期借家契約の場合
期間限定の転勤で、数年後に確実に戻ってくることが分かっている場合や、自分や親族が将来的にその家に引っ越して住むようになる可能性が高い場合には、定期借家契約がおすすめです。
定期借家契約は、契約の更新を行わない契約方法です。契約期間が終わったら、借主に確実に家を明け渡してもらえます。
しかし、家を借りたいという方の多くが、契約期限を定めずに借主の都合で住み続けたいという人たちです。期限が来たら引越さなくてはいけない定期借家契約ではなかなか借手が付かない場合もあります。
そのために、周辺地域の賃貸物件の相場よりもかなり安い金額で家賃を設定しなければ借手が付きにくく、思っていたような収入にならない場合もあります。
また、契約期限が満了する前に書面による通知が必要で、事務手続きが普通借家契約よりも複雑で面倒くさいというデメリットもあります。
あらかじめ契約期間を決める普通借家契約の場合
普通借家契約とは、借主から契約解除の申し出がない限り、自動で賃貸契約が更新されていく契約です。契約期間は1年もしくは2年で設定しますが、基本的に自動で更新されるので、戻る予定がない家を長期間貸したい場合には、こちらの契約方法を選びます。
定期借家契約よりも借手を見つけやすく、家賃も高めに設定できるというメリットがあります。入居者を見つけやすいので、家賃収入が定期借家契約よりも確保しやすいのがこちらの契約方法です。
しかし、普通借家契約では、オーナー側の都合による契約解除や契約更新の拒否がとても難しくなります。例えば、結婚することになった子供に住まわせたい、仕事を辞めて田舎に帰ることになったので自分が住むことにした、といった理由で明け渡しを求めることはまずできません。
また、万が一、借主がトラブルメーカーであっても、かなり重大な理由がなければ法律的に立ち退きを求めることはできません。家賃の滞納があったとしても、居住権を盾にされてしまい、問題がこじれてしまう可能性もあります。
普通借家契約を結ぶときには、本当にこの契約方法でいいのかをよく考えた上で、借手を厳選して本当に信頼できる人を選ぶことが大切です。
家を貸し出すときの手順
家を貸したいときには、どのような手順を踏めば貸し出せるのでしょうか。こちらでは、家を貸し出すときの手順について詳しくお伝えします。
管理会社を選定する
家を貸す必要がある場合とは、自分が貸し出している間その家を管理できない場合がほとんどです。近所に親族が住んでいる場合には、親族に管理をお任せする場合もあります。
しかし、不動産業界の素人では、万が一トラブルが起きた時に対応できないことも多いので、できれば管理会社に管理をお願いしましょう。
地元の不動産会社が、賃貸物件の管理を請け負っている場合があります。また、不動産の賃貸管理を専門に行なっている会社もあります。どのような種類の会社を選んでもいいのですが、大切な家をお任せできる信頼感が大切です。
できれば、複数の会社をあたってみて、どのような管理をお任せできるのか実際に担当者と話をしたり、管理手数料を比較したりして、管理会社を決めるといいでしょう。
管理会社と契約を結ぶ
賃貸に出す家の管理をお任せする管理会社を決めたら、その管理会社と契約を結びます。不動産の賃貸の管理を委託する契約には、媒介契約と代理契約があります。
媒介契約では、入居者の募集は管理会社が行いますが、オーナーが借手を選んで決めることができます。代理契約では、入居者の募集だけではなく、入居者の決定も管理会社が行います。
遠方の実家で自分の生活とはほとんど関係ないという場合には、代理契約でも問題ないでしょう。しかし、いずれ自分が帰る予定があったり、近隣に親族がいる場合には、トラブルメーカーに入居されると大変なことになります。
どちらの契約方法がいいのかは、貸す家や自分自身の状況などに応じて判断しましょう。
入居者の募集を開始する
管理会社と契約を結んだら、賃料を決めて管理会社が入居者の募集を開始します。入居希望者が現れたら、内覧を行いますが、賃貸の場合にはオーナーの立ち会いは不要です。
入居希望者が入居を決めたら、管理会社との間で契約書を交わして入居します。基本的に、入居者とのやり取りは管理会社にお任せできるので、オーナーとしてやることは特にありません。
家を貸し出すときのポイント
自分の家を貸し出す場合には、借主と何かとトラブルになることが少なくありません。また、入居者が見つからずになかなか家賃収入が得られないこともあります。
入居者を確実に見つけて、できる限りトラブルを少なくするためには、貸し出す前に考えておくことが大切なポイントがいくつかあります。
原状回復の取り決めをしっかり行う
借主が退去する時には、原状回復しなければいけません。しかし、長期間にわたって住んでいた家はどうしても傷みが進んでしまい、借り始めたときと全く同じ状態で退去することは難しいでしょう。
入居者が退去する時にトラブルにならないようにするためには、あらかじめ原状回復をどこまで入居者が負担しなければいけないのかを決めておきましょう。
原状回復にかかる費用の上限額や、最低限取り替えて欲しいものなどを契約時に決めておくと、トラブルが少なくて済みます。
周辺相場を参考にして賃料を設定する
入居者が見つからない場合には、設定した家賃を見直してみましょう。貸主としてはいろいろと思い入れのある家なので、他の家よりも高く評価されて当たり前だと感じるかもしれません。
しかし、借りる家を探している人の目線では、家の間取りや築年数と家賃のバランスしか見えません。周辺地域の同じくらいの大きさの家の家賃の相場よりも高い金額で設定してしまうと、なかなか借手が付かないので注意しましょう。
そうかといって安すぎると、10年に一度の外壁塗装や水回りの交換など修繕費や固定資産税を捻出できなくなってしまいます。必要な経費とのバランスも考えて設定しましょう。
収支計画を確認する
家を貸すということは、家賃収入が入ってくるだけではありません。様々な経費や税金がかかります。意外に費用が掛かってしまい、期待していたほど利益が出ないことに悩んでいるオーナーも少なくありません。
家を貸したり、維持したりすることで生じる費用の内訳を確認して、収支計画を立ててみましょう。そうすれば、どのくらいの家賃を設定すればいいのかも見えてきます。
家を貸すときにかかる費用
家を貸せば家賃収入が入ってくると考えている方もいますが、手元にお金が入ってくるだけではなくて、様々な費用もかかります。
家を貸したり、家の状態を維持することで生じる費用にはどのようなものがあるのか、お伝えします。
家のリフォーム費用
築年数が経ちすぎた家は、水回りなどがかなり劣化しているので、基本的にリフォームが必要です。雨漏りなどもあれば修繕しましょう。水回りの設備を交換するのには、最低でも50万円ほどの費用が必要です。
また、家の状態によっては、床の張替えなどの大掛かりなリフォームが必要になることもあります。さらに、10年から15年に一度の外壁塗装や水回りの設備の交換などの費用もオーナー負担です。
所得税や住民税などの税金
家を所有し続けると、固定資産税が毎年課税されます。また、家を貸して家賃収入があった場合には、不動産賃貸で得た利益に対して所得税と住民税が課税されます。
会社員の場合には、給与所得だけであれば自分で確定申告をする必要はありませんが、家賃収入がある場合には確定申告をしなければいけません。
利益は、家賃収入から経費を差し引いたものです。かかった経費の領収書などは必ず保管しておきましょう。
管理会社への管理費用
管理会社へ支払う手数料も必要です。管理会社に入居者を探してもらった場合には、家賃の1カ月程度の金額を仲介手数料として管理会社に支払います。また、毎月の管理手数料として、家賃の5%から10%、もしくは1万円程度を支払います。
通常は、家賃は入居者から管理会社へ支払われるので、管理料を差し引いた金額がオーナーへ振り込まれます。
家を貸すときの注意点
家を賃貸に出す場合には、いろいろと注意しなければいけない点があります。ここからは、家を貸す場合の注意点についてお伝えします。
ローンがある場合は金融機関の承諾が必要
例えば、転勤の予定がなかったのでローンを組んで家を購入したけれども、転勤や長期の出張を命じられてしまい、貸すことを決断する場合もあるでしょう。
ローンを返済中の家を貸す時には、ローンを借りている金融機関の承認が必要です。
また、基本的に住宅ローンから事業用ローンに切り替えなければいけません。住宅ローンは、自分が住むための家を購入するためのものなので、賃貸に出す場合には事業用とみなされてしまうためです。
事業用のローンの方が金利が高いので、ローンの返済計画を見直す必要もあります。
借手がつかないリスクもある
家を貸したいと思い、管理会社も決めて入居者募集を始めても、必ずしも借手がつくとは限りません。家賃収入を当てにして、ローンの返済計画を立てている場合には、入居者が決まらない間のローンを貯金や給料から支払うしかありません。
現在住んでいる家の家賃も支払っている場合には、住居費の二重の負担にもなります。人口が減少している地方では、貸しに出してもなかなか借手が付かない家も少なくありません。
本当に貸しに出しても大丈夫か、売却した方がいいのかは、事前によく検討しましょう。
家を残したいなら賃貸を検討しよう
家を貸したいと思っても、借手が付かないと大変なことになります。貸し出すときには、本当に借手が見つかるかどうかを事前によく検討したほうがいいでしょう。
しかし、借手が確実につけば、経済的な負担を少なくしながら、大切な家を残すことができます。思い入れのある実家等をどうしたらいいのか悩む時には、自分がその家を残したいと考えているのかどうかをよく考えてみましょう。
その上で、他の人の手に渡すのは忍び難いと感じるようであれば、貸し出すことも検討しましょう。