親の土地でアパート経営をしたいと考えている方の中には、アパートの名義を迷っている方もいるのではないでしょうか。選択肢として、親名義・子名義・法人名義があります。子名義にすると家賃収入の全額を子供のものにでき、他の運用方法で資産を増やすことも可能です。
ただし、他の名義の方が得することもあるので、アパート経営の目的に合った名義を選ぶのがベストです。
そこでこの記事では、子名義のアパート経営を親の土地で始めるメリットとデメリットを詳しく紹介します。さらに、親名義・法人名義にした方がよいケースも解説しているので検討中の方はぜひ参考にしてください。
アパート経営の失敗談については以下の記事をご覧ください。
アパート経営を親の土地で始める3つのメリット
まずは、親の土地でアパート経営をはじめるメリットを3つ紹介します。
土地の代金分だけ初期費用が安い
一般的に土地を購入または借りてアパート経営を始める場合、初期費用は地代とアパートの建設代の両方が必要です。
しかし、親の土地でアパート経営を始める場合は、土地の借地代を相場よりも安く、もしくは無料にできます。もし無料で土地を借りられるなら建設費だけを支払えばよいので、通常よりも圧倒的に初期費用を安くできるのがメリットです。
アパートの建築費にかかる総額は、坪単価×延べ床面積で計算します。坪単価の水準は、木造なら坪77万~100万円、鉄骨造なら坪80万~120万円、鉄筋コンクリート造なら坪90万~120万円ほどです。仮に、坪80万の鉄筋コンクリート造で延べ床面積100坪のアパートを建てると、総額は8,000万円となります。
ここに地代もプラスとなると、全国平均の坪単価は49万円(令和3年基準地価)ほどなので、100坪なら4,900万円が上乗せになり、膨大な初期費用がかかってしまいます。
どちらにせよ初期費用はローンを組むことが一般的ですが、借入希望額が少ない方が融資も受けやすくなります。
早期に資産を増やしていける
土地は親名義でもアパートが子名義であれば、家賃収入はすべて子供のものになります。通常、第三者から土地を借りてアパートを建てる場合は、その対価を地主に支払わなければなりませんが、親が無償で土地を提供する場合はその必要がありません。
通常、贈与税がかからないように親から子へ財産を渡すとなると、控除額である年間110万円までが限界です。しかし家賃収入は子供の稼ぎなので、年間110万円以上の利益があったとしても贈与税を気にしなくて済みます。生前に子供に現金が渡るので、相続税分を貯めておくことも可能です。
さらに、子供は余剰資金で株式や投資信託など別の資産運用にも挑戦でき、うまくいけば子供の資産をさらに増やせます。
アパートを相続して経営を始めるより不動産価値が高い
親がすでに行っていたアパート経営を引き継ぐ場合、築年数によっては「負動産」を相続することになります。親が新築で建てたアパートでも子供が相続する頃には、築数十年がたっているケースがあるからです。
一般的に築10~15年で少しずつ建物の劣化が始まり、築16~25年で床が沈み始めたり壁紙の端が剥がれたりしてきます。築26年以降は、水道管なども劣化してくるので、年数がたつほど物件の価値は下がる一方です。
定期的に修繕、リフォームしたとしても新築時よりも家賃を低くしないと需要が見込めないため、十分な収入を得られません。また、相続税の負担が大きく改修する費用がないこともあり得ます。
築古アパートは不動産価値が低いため、売却も難しいのが現状です。更地にすれば売れる可能性が高まりますが、建物の解体費がかかってしまいます。
「負動産」は子供が背負う負担が大きいため、大きな利益を得たいなら不動産価値が高い新築アパートで経営を始められるのがベストです。
アパート経営を始める可能性が出てきたら、複数の企業にプランを提案してもらうのがおすすめです。
なぜなら、アパート経営は建築費の見積もりや賃料設定など経営プランによって収益が1,000万円以上変わることもあるからです。
建築費がいくらなら収益性の高いアパート経営ができるのか、利回りはどのくらいが適切なのか、気になるところを建築会社に相談してみましょう。
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アパート経営を親の土地で始める3つのデメリット
親の土地でアパート経営を始めるメリットもありますが、デメリットもあります。ここでは、デメリットの具体例を3つ紹介します。
将来の土地にかかる相続税が安くならない
アパート経営を親の土地で行うとき、メリットで紹介した子名義でアパートを建てたり、地代を無料にしたりする方法は、相続税が安くならないためデメリットとも言えます。
相続税対策が目的なら、子名義より親名義でアパートを建てることが有効です。さらにローンが残ったままの負の資産として引き継ぐことで、物件の評価が下がり相続税を大幅に減らせます。
ただし、賃貸住宅が建っている土地の相続税を下げるには「賃家建付地評価減」の適用が必須です。適用の条件は、土地にかかる固定資産税の2倍以上を借主が貸主に地代として支払っていることです。
これよりも安い、もしくは無料で土地を借りていると、納税額が高い更地と同様の相続税がかかるので注意してください。一般的に借主が貸主に対して支払う地代は、土地の固定資産税の約3倍なので、2倍程度でも負担は少なめです。
土地が親名義だと売却が難しい
もし経営しているアパートを売りに出したいと思っても、親の土地を借りている場合は買い手がつきにくい可能性があります。なぜなら、アパートと土地で名義人が異なるからです。
仮にアパートだけを購入した人がいたとして、その人は親(地主)から土地を借りていることになります。そのため、毎月地代を納め続けなければならず、いつまでたっても土地はアパート購入者の資産にならないのです。
また、地代の値上げや、いつ退去を求められるかわからないといった不安があります。老朽化などでアパートを建て替えたいと思っても、地主の許可に加え、「建て替え承諾料」を支払う必要があるため負担です。
アパートだけを売却することはできますが、上記のようなデメリットがあるため買い手がつくまで時間がかかることが多いです。
相続でアパート経営を始めるより負担が多い
メリットでは、子名義でアパート経営をすれば家賃収入が子供の利益になると紹介しましたが、総合的に得しているかは判断が難しいところです。
建設費やローン関連の費用などがかかるため、子供の出資額は高くなります。そのため、相続税を支払ってでも親からアパートを引き継いだ方が安く済む場合がほとんどです。
相続税は、相続する資産の課税評価額に税率をかけて計算します。本来いくつかの式を組み合わせるため複雑ですが、ここでは簡易な計算で説明します。
たとえば、課税評価額1億円のアパートを相続する場合、借入金残債なし(相続税率:30%・控除額:700万円)で計算すると、相続税は以下のようになります。
(1億円-700万円) × 30% = 2,790万円
相続税は、2,790万円なので新築するよりも負担は少なめです。借入金がある場合は、さらに相続税が軽減されます。
アパート経営を親の土地で始める流れ
ここからは、実際に親の土地でアパート経営を始める手順をお伝えします。
親に土地でアパート経営を始めてもよいか相談
まずは地主である親に、アパート経営を始めてよいか相談しましょう。自分名義でない土地に建物を建てるには、地主である親の許可が必要です。更地だった場所に建物を建てるとなれば、景観が変わります。人流が増えることにもなるので、親が長年築いてきた地域との関係なども考慮せねばなりません。
また、賃貸住宅の経営は他の土地活用よりもやめにくいのが特徴です。もし親が将来土地の売却を考えていた場合、アパートが建っていると入居者の都合や解体の有無で土地を売りにくくなる可能性もあります。
もし親の土地が遊休地なら、税金を払うだけの負動産なので積極的に土地活用を持ちかけてみましょう。特に、更地にアパートを建てると固定資産税が最大6分の1になるため、親にもメリットがあります。
アパート経営に向いた土地なのかを調査
親の承諾を得たら、土地がアパート経営に向いているか調査を開始します。一般的にアパート経営に向いている土地の特徴は、駅やスーパー、学校などが近くにある利便性の高い地域です。ニーズがある土地なら、高収入が期待できます。
ただし、地域によって建物の延べ床面積や階数に制限があるので注意してください。また、工業専用地域・市街化調整区域・農地転用できない農地は、公法上の規制によって建物が建てられません。
これらの調査は、専門業者に相談してみましょう。業者は地域ごとの消費者物価指数や家賃相場など、膨大な量のデータを持っています。そのためプロに任せた方が、正確な調査データを得られるので経営プランも立てやすくなります。
無料の見積もりサイトを使うと、簡単に情報を集められるのでおすすめです。
納得できるプランで業者と契約
ここまできたら、初期費用や収支計画などをまとめた経営プランをつくります。どのような間取りが土地に適しているか、どのくらいの収益が見込めるかを業者が提案してくれます。
プラン内容や総費用は業者によって異なるので、複数社に依頼し比較してみましょう。1社だけに頼むと、プランが妥当かどうか判断できません。いくつかのプランに目を通し、より希望に近い業者を選ぶとよいです。
業者とは何度も打ち合わせを行います。経営プランが決めるまでに、半年から1年以上かかることも珍しくありません。ここで妥協したり疑問を残したままにしたりすると、後から大きなリスクを背負う可能性もあるため、納得できるプランを完成させましょう。
満足いくプランこそが、アパート経営成功のコツです。
アパートの詳細を決めて建築を開始
建設に関わる各種申請は、基本的にハウスメーカーに一任できます。自ら行うことは、融資の申し込みです。経営プランや資金計画ができたら、金融機関に事業計画書を提出してください。
アパートローンに関しては、都市銀行よりも地方銀行の方が好条件のローンがある可能性が高いです。詳しくない方は、ハウスメーカーが提携している地方銀行を紹介してもらうとよいです。
工事費は、数回に分けて支払うのが一般的です。契約時・着工時・竣工のタイミングで3分の1ずつ支払います。工事開始までに大半を払わないといけないため、資金調達は早めに行いましょう。
建物が完成する時期を、新年度が始まる前の2月末から3月中旬に合わせると、入居者が集まりやすくなります。建設期間は4~5ヶ月ほどなので、秋頃から工事をスタートさせるのがベストです。
アパートの完成前に入居者を募集
入居者を募集するタイミングは、アパートが完成する3~4ヶ月前です。それまでに、敷金・礼金、家賃など入居条件を決めておいてください。
募集を成功させるには、ハウスメーカーとの連携が重要です。実際に入居者にアプローチするのはハウスメーカーなので、定期的に連絡を取り自分の物件をアピールしておきましょう。
実際に物件を探している人の特徴や希望を教えてもらい、自分のアパートのどんな点がマッチするかを具体的に伝えておくと、物件をおすすめしてもらいやすくなります。
また、物件探しの第一歩はインターネットが主流です。そのため、賃貸情報サイトに物件を登録しておくとよいです。外観や部屋がきれいに写った写真や設備条件を詳しく掲載すると、多くの人に興味を持ってもらえます。
完成したアパートで経営を開始
竣工から4日以内に建築主事宛てに「工事完了届」を提出してください。受理後、1週間以内にアパートの完了検査が行われます。クリアすれば「検査済証」が交付され、アパート使用の許可が下ります。原則、交付まではアパートを使用できません。
ハウスメーカーからアパートを引き渡してもらうための「立ち会い検査」は、ハウスメーカーの責任者と一緒に建物の全体を最終確認するものです。手直しが必要な場合は、再度、工事を依頼できます。検査後、各種書類と部屋の鍵を受け取ると引き渡しは完了です。
建物関連の手続きとしては、「建物の表示登記」と「所有権登記」、融資を受けて建築した場合は「抵当権設定登記」を行ってください。
すべてが終了すると、ついにアパート経営が始まります。
活用事例:SCENA Palazzo(シエーナ・パラッツォ)
アパート経営を始めようか考えたとき、どのようにアパートを設計すればいいのか見当がつかないのではないでしょうか。
例えば2階建てにするか3階建てにするか、間取りの設計をどうするかについては土地の条件やアパート経営の目的によって変わります。
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【Q&A】親の土地で始めるアパート経営
最後に、親の土地でアパート経営をする際によくある質問をまとめました。参考にしてください。
アパート経営のランニングコストはいくらか
アパート経営にかかるランニングコストは、毎月の家賃収入の20~30%くらいが相場と言われています。具体的にどのようなものに費用がかかるかを、下の表でまとめました。
費用項目 | 金額の目安 | |
---|---|---|
建物管理 | 建物管理費(管理会社) | 家賃の5% |
修繕・リフォーム費 | 家賃の5~8% | |
共用部の水道光熱費 | 10万円ほど | |
火災保険 | 年間3万円ほど(月額換算2000~3000円) | |
賃貸管理 | 広告費 | 家賃1ヶ月分 |
家賃管理・滞納管理 | 建物管理費に含まれる場合が多い | |
税金関連 | 固定資産税・都市計画税 | 不動産評価額の1.7% |
所得税 | 家賃収入の額による | |
その他 | 通信費 | サービスにより異なる |
税理士費用 | 3万~10万円 | |
雑費・消耗費 | 変動 |
上記で削減できそうな箇所を考えると、入居者募集の費用です。満室をキープできればコストカットを狙えます。また、確定申告を自分で行えば税理士にかかる費用も削減できます。
ただ、最低でも家賃の15%くらいです。変動する費用もあるため、20~30%が常にかかると思っておく方が無難です。
家賃収入からコストを引くと70~80%が残りますが、ここからさらにローン返済分が引かれるため、手元に残る利益はもっと少なくなります。
アパートの建築費はフルローンを組めるか
フルローンを組めるか組めないかでいうと、融資の審査さえ通ればフルローンを組むことは可能です。ただし、キャッシュフローの悪化を招くため現実的ではありません。
アパート経営で最も重視すべきは、キャッシュフローです。これは、最終的に手元に残るお金の流れのことです。アパート経営で得た利益=手元に残るお金ではありません。利益は、家賃収入から経費を引いたものですが、経費には税金や減価償却費、ローン返済に充てる費用は含まれません。
プラス利益に見えても、ローン返済分などを引くと手元に残るお金がマイナスになることもあります。つまり、キャッシュフローが悪い状態です。
資金を貯めて頭金を支払った方が、毎月の返済額が減りキャッシュフローが改善されるのでおすすめです。
アパート経営が赤字でも確定申告は必要か
経営が赤字でも確定申告で損益通算をしてください。不動産における損益通算とは、アパートの運用で所得が赤字になったとき、本業の給与所得から赤字の分を差し引いて所得を計算することです。たとえば、給与所得が500万円、不動産所得の赤字が200万円なら所得を300万円に圧縮できます。
本業が黒字で不動産所得が赤字の場合は、所得税や住民税を少なくできるので節税になります。特に、アパート経営を始めた年は初期費用で不動産所得が赤字になることが多いですが、損益通算すれば悪い意味での赤字にはなりません。
損益通算をするには確定申告が必要です。不動産所得は、青色申告決算書を使用します。用意する書類は、売買契約書類、固定資産税の通知書、火災保険の証券など非常に多いため、早めに準備をしておきましょう。
法人名義でアパート経営を始めた方が得か
子名義でアパート経営するよりも、親が新たに会社を設立し、法人名義で経営した方がメリットが多くなります。なぜなら、子供を役員にすればアパート経営で得た収入を役員報酬として子供に渡すことができ、役員報酬は会社の経費になるため節税効果にもなるからです。
また、個人の所得税よりも法人税の方が税率が低いのも魅力です。さらに、相続の対象が不動産ではなく株式になるため、相続人が複数人いても財産を平等に分けられます。
ただし、個人よりも登記手続きや定款作成などの作業が増えることや、初期費用・維持費用が高くなることが多いです。もし複数人で会社を設立する場合は株主も複数人いるため、権利関係がややこしくなるリスクもあるので注意してください。
維持費については法人化させるとその対象範囲が広くなるというメリットがあります。
アパート経営を始めるなら最初の情報収集が重要です。一括プラン比較サービスイエウール土地活用なら、土地所在地の入力だけでアパート経営のプランを取り寄せることができます。
\建築費は?初期費用は?/
親の土地を使ったアパート経営で資産を増やそう
親の土地で子名義のアパートを経営するのは、一長一短です。初期費用を抑えられ、家賃収入で新たな運用を始められるなどメリットがありますが、税の優遇を受けにくい面もあります。
そのため、アパート経営の目的をしっかりと決めてから始めるようにしましょう。
記事のおさらい