アパート経営に興味があっても、「アパート経営は儲からない」「アパート経営はやめたほうが良い」といった趣旨の内容を良く耳にするため、なかなか踏み切れない人もいると思います。
それでは、なぜアパート経営は儲からないなどと言われているのでしょうか。また、「儲からない」といった状況を回避するような対策・方法を本記事では紹介します。
アパート経営の始め方については以下の記事をご覧ください。
アパート経営が儲からないと言われる理由
「アパート経営は儲からない」と言われることが多いですが、結論から言うとアパート経営は儲かります。
もちろん、アパートを経営する人が皆、儲かるわけではありませんが、アパート経営の全国利回り平均は8%強と他の土地活用などと比べると高くなっています。
ではどうしてアパート経営は儲からないと言われるのか。アパート経営が儲からないと言われるのには、様々な理由が挙げられます。
本章では、そういった「アパート経営は儲からない」と言われている理由を紹介します。
入居者の維持が難しいから
アパート経営が儲からないと言われる理由の1つは、入居者を維持し続けるのが難しいという点にあります。
新築の段階ではある程度入居者も集まりますが、築年数がたつにつれて空室が目立つようになり、得られる家賃収入が減ってしまいます。特に、築15~20年を超えてくると、空室を埋めるのが急激に難しくなってきます。
さらに、野村総合研究所の調査によると、アパートの空室率が2015年以降増加していることもうかがえます。東京都内、地方を問わず全体的に空室率が増加してきており、東京都全域でみると2018年には約13%ほどの空室率となっています。このような高い空室率はアパート経営業界全体のトレンドであり、この中で空室を埋めていくのはかなり難易度が高くなっています。
家賃低下のリスク
アパート経営が儲からないと言われている理由は、家賃の相場が下がり続けていることにもあります。
総務省の小売物価統計調査によると、近年多くの地域で家賃相場が下がり続けており、地域によっては昨年対比80%ほどにまで下がっているところもあります。
アパート経営の収入は家賃収入が基本です。そのため、家賃が下がるとその分得られる収入が下がってしまいます。今後生産年齢人口がさらに少なくなり、家を借りる人の数も減ってアパートの供給過剰になる時代が来ることを考えると、儲かりづらい土地活用方法になってしまう可能性があります。
多額のローンが負担になる
アパート経営が儲からないと思われる一番の理由は、ローンの返済額がとても大きく、経営がうまくいかなかったときに結果マイナスになってしまうと考えるからでしょう。
アパート経営をするとなると数千万という単位の投資額になり、これを全て自己資金で賄える人は少なく、殆どの人が金融機関から融資を受けます。
普段そのような規模のローンを背負う機会のない人であれば、しっかり返済できるか不安になり、リスクやハードルの高さを考えて儲からないと考えてしまうのも納得できます。
アパート経営における知識不足
アパート経営に関する知識不足から本来得られるはずの利益を十分に得られない場合があります。
アパート経営でなかなか利益が出せない人の多くは、支出である経費に対する知識不足が目立ちます。アパート経営を始めるうえで重要なのは「支出」です。
例えば、アパートを経営するにあたり発生する修繕費、税金等のランニングコストや減価償却などの費用についてです。費用によっては経費として計上できます。こうした経費の知識について理解しておかなければアパート経営で利益を出すことは難しいです。
黒字化するまでに時間がかかる
アパート経営は黒字化するまでに時間がかかります。
アパート経営は初期投資に多額の費用がかかります。ローンを組むにも多額の自己資金が必要となり、自己投資分を回収、黒字化するまでに時間がかかるため儲かりにくいと言われています。
よって、アパート経営は長い目で運用する必要があり、今すぐに儲けを出したいという人には不向きになります。
活用事例:地震への備えを考えた 木造3階建て賃貸住宅
エリア | 東京都 |
土地面積(㎡) | 256.2 |
延べ床面積(㎡) | 480.36 |
工法 | 木造 |
東京都練馬区。新宿まで電車で20分という都心エリアに木造3階建ての賃貸住宅が完成しました。以前この土地には築20年を超えるミサワホームで建てた賃貸併用住宅と二世帯住宅がありました。都市計画道路ができるということで賃貸住宅の建て替え計画がスタートしました。
「以前の賃貸住宅は権利者が5人もいて、さらに兄弟間の相続も絡み合い、どう整理すればよいか分かりませんでした」。
そんな中、賃貸管理をしていた縁で、ミサワホームに相談がありました。
「ミサワホームの岡村さんには大変お世話になりました。賃貸住宅の建替えを考える上で、権利関係の整理から相続、融資に至るまで、岡村さんは親身になって対応してくれました」。
計画道路ができることで、土地の面積が狭くなります。また、築年数も経っていたことから、オーナーさまは、「建て替えるなら、より収益性の高いものを建てたい」とお考えでした。(ミサワホーム株式会社の土地活用事例)
アパート経営が儲からない時の対策10つ
1章ではアパート経営が儲からない理由を解説してきました。できるだけ多くの利益を出すにどうしたらいいのでしょう。この章ではアパート経営が儲からない時の対策を紹介します。
賃貸需要のある立地で始める
アパート経営を始めるうで、立地が重要なポイントです。
例えば、通勤や通学に重きを置くなら「交通アクセスの良さ」は必須であり、周辺環境に重きを置くなら、「スーパー」「病院」「学校」などが求められるでしょう。
需要があるかどうかを判断する上では、ターゲットを選定した経営を心がけることが大切です。立地条件をベースとして、誰を狙うのかを考えましょう。賃貸需要が見込める立地でのアパート経営は比較的入居率を維持しやすいです。
入居者のニーズに合った設計をする
アパートを建築する際は設計にもこだわる必要があります。入居者にとって住みやすい環境を提供することができれば退去率も下がります。
例えば、女性専用アパートの建築を考えているのであればセキュリティ面を強化し、台所やお風呂などの水周りにこだわることで女性のニーズを埋めることができます。アパートを建築する際には、ハウスメーカーと相談しながら建物を考えましょう。
しかし、ハウスメーカーの場合、一から設計するのではなく、すでに商品としてあるものを提案されることがほとんどです。既存の設計のままだと他のアパートとの差別化が図れず、かつ入居者のニーズに合わない可能性もあります。
ターゲット層に合わせて設計は変化させる必要があるので「間取り」「設備」等、細部にもこだわるようにしましょう。メーカーによっては設計の変更が難しい場合もあるため、複数のメーカーと相談するのもおすすめです。
サブリースの利用をしない
アパート経営では一括借り上げのサブリースがありますが、家賃の値下がりリスクを考えるなら利用しないほうがいいです。
サブリースは一括借上げのことで、管理会社に対して保証料を支払うことで、一定割合の収益が得られるというものです。保証料は10~15%程度が相場で、「満室」「空室」に限らず、常に一定した収入を確保できます。
収入が安定するという面では魅力的に見えますが、空室が目立つと家賃の値下げが必須になります。家賃が下がっても管理会社に支払う管理費や保証料は変わりません。家賃収入だけが減るというデメリットがあります。
例えば、サブリースの契約をし、保証会社から得られる月々の家賃収入が50万円だとします。極端に入居者が一人で収入が5万円しかない場合でも、保証会社から50万円の収入は得られます。ただし、反対に満室で収入が500万円ある場合でも、保証会社から得らえる収入は50万円です。家賃収入が多いほどサブリース契約は損をします。
新築アパートを建築する
アパート経営にかかる費用は、初期投資よりも維持費のほうが高くつくことが多いです。その点新築の場合、メンテンスが中古ほど必要ないため、維持費が少なくて済みます。
仮に中古でアパートを購入した場合、購入費用は安くても設備の修繕に費用がかかり、結局新築で建てたほうが安くなることもよくあります。
そのため、維持費を最小限に抑えられる新築アパートを経営することで、管理費用を押さえつつ儲かるアパート経営にすることができます。
細かい収支シミュレーション
アパート経営初心者は表面上の利回りだけを計算し、空室率や賃料下落リスクを考えず収支計画を立ててしまいがちですが、少し厳しいくらいの収支計画を立てることが大切になります。
繰り返し収支シミュレーションを行い、本当にこの収支計画で問題ないのかを確認しましょう。
自己資金の割合を高くする
多額のローンがアパート経営をするうえで不安材料となるのであれば、自己資金の割合を高くするようにしましょう。ローンを借り入れた金額が少ないと、その返済金額が少なくなり、キャッシュフローが多くなります。
近年は建築費が高騰しており、経営開始に必要な借入金も増加傾向にありますが、借入金額が多くなると返済だけでいっぱいいっぱいになり、儲けがほとんど出ません。できるだけキャッシュフローを最大化させるために、できるだけローン借入金は減らして後々の負担を減らし、自己資金で経営できるようにしましょう。
ただ、もちろん多少のローン借入は必要になります。そのため、アパート経営のローン返済比率の目安として、40%~50%ほどを目指すような財務状況をキープしておくことがおすすめです。
減価償却・必要経費の理解
減価償却とは、固定資産の使用可能期間に応じて費用を分割し、経費にして計上することです。減価償却費を計上することにより所得を減らすことができます。結果、所得税・住民税を減らすことができます。
減価償却費以外にも、共用部の修繕費、入居者を募るための広告宣伝費などの費用は、アパート経営に直接関係するため、経費にあたります。一方で、事業に関係のない費用や支出は経費として認められません。
減価償却や必要経費をきちんと理解することは節税にもつながるのでアパート経営をするうえで重要です。
出口戦略で売却を検討する
アパート経営が儲からなければ、出口戦略として「売却」を考えましょう。
売却時に想定通りの価格でアパートを売るには、対象の物件に十分な価値があるかどうかの判断が重要となります。例えば、立地や空室率、利回りが重要なポイントとなります。
また、タイミングとしては金利が低い時期が適切です。金利が低い時期はローンが組みやすくアパートを購入したいという需要も高いので買い手が見つかりやすいです。
管理会社の変更
アパート経営が儲からないと感じているのであれば、管理会社に問題があるのかもしれません。
管理会社は物件の管理を行いますが、物件の管理が行き渡っていないとなると空室リスクは高まります。空室率が高いと家賃収入減へとつながります。
管理会社に不満があるのであれば思い切って変更するのも利益を出すためのポイントです。
部屋数を10戸以上にする
アパートを建てる際に部屋数を10戸以上にすることで、事業的規模とみなされ青色申告で65万円の控除を受けることができます。控除を受けることで納税額を減らすことができ、支出を抑えることができます。
他にも、アパートを10戸以上で建てることで、将来取り壊しをする際にそれにかかる費用を全額除却損として計上出来たり、空室によるリスクを軽減したりすることができます。
以上のことから、部屋は「広く少なく」ではなく「小さめで多く」することをおすすめします。
アパート経営を始めようか考えたとき、どのようにアパートを設計すればいいのか見当がつかないのではないでしょうか。例えば2階建てにするか3階建てにするか、間取りの設計をどうするかについては土地の条件やアパート経営の目的によって変わります。
日本最大級の土地活用プラン比較サイトイエウール土地活用なら土地所在地を入力するだけで複数の大手ハウスメーカーからアパート経営プランの提案を受けることができます。
\建築費は?初期費用は?/
アパート経営は何年で儲かるのか
アパート経営が儲からないと言われる理由の1つに「黒字化するまでに時間がかかる」といった事が挙げられます。
ではいったい何年で黒字化が見込めるのでしょうか。この章では黒字化するまでの簡単なシミュレーションを紹介します。
目安としては10年
アパート経営が黒字になるまでにかかる年数は、目安として10年です。
アパート建築費、購入価格、家賃設定、空室率など経営状況によって変わってきますが、巨額の初期費用が発生するので最初の数年は赤字覚悟が必要です。
早く資金回収をしようと焦るのではなく、長期的な視点でアパート経営の収支計画を考えてみましょう。
黒字化までのシミュレーション
実際に「何年後」黒字になるのか、以下の物件を情報を目安に黒字になるまでの流れをシュミレーションしてみましょう。
物件価格:4500万円(6戸・木造アパート)
年間家賃:432万円(家賃6万円/部屋)
年間経費:約86万円(年間家賃収入の20%程度)
自己資金:1000万円
融資金額:3500万円(金利2%)
融資期間:20年
ローン返済金額:約20万4000円(/月)
【年間キャッシュフローの計算】
年間家賃(432万円)₋支出(必要経費86万円+ローン返済額245万円)₌約101万円
ここでは累計のキャッシュフロー1000万円(自己資金額)を上回ることが黒字化の条件とします。
初年度(赤字):アパート経営1~2年目はアパート建築費や購入費以外に、保険などの諸経費にお金がかかるため、ほとんどの場合が赤字になります
アパート経営4年目(回収率40%):アパート経営4年目終了時点のキャッシュフローは404万円{101万{年間キャッシュフロー}×4}になります。初期投資額から404万円を差し引くと596万円です
アパート経営8年目(回収率80%):アパート経営8年目終了時点のキャッシュフローは808万円{101万{年間キャッシュフロー}×8}になります。初期投資額から808万円を差し引くと192万円です
アパート経営10年目(黒字化):アパート経営10年目終了時点のキャッシュフローは1010万円{101万{年間キャッシュフロー}×10}になります。初期投資額1000万円を10万円上回ったので黒字化したといえます。
アパート経営が黒字化するには最低でも10年はかかります。
とはいえ、今回のシュミレーションはあくまでも計算上のもの。実際にはアパートの空室率増加であったり、家賃の減額で思った以上に家賃収入が得られなかったり、経年劣化などで思わぬ出費が重なることもあります。
さらに詳しく黒字化までのシミュレーションを知りたい人はこちらの記事をご覧ください。
アパート経営が儲からないと言われていても始めるメリット
アパート経営は儲かりにくいと言われていますが、アパート経営を始める人は多いです。
それはアパート経営を始めるうえで多くのメリットが存在するからです。ここではアパート経営を始めるメリットを紹介します。
長期的で安定的な収入が得られる
アパート経営は入居者さえ確保できれば、長期的に安定した収入が得られます。
通常、一度アパートに入居すると、人にもよりますがウィークリーやマンスリータイプの物件でない限り最低でも1年は同じアパートに住むことが多いです。1人でも入居すれば、1年は定期的な家賃収入が得られると考えてもいいでしょう。
また、コンビニの一棟貸しといったような事業用賃貸経営は、周辺に競合のコンビニが現れるとすぐに撤退してしまうリスクがあり、景気の影響も受けやすです。一方で、アパートなどの住宅用賃貸は、すぐに退去するといったリスクは小さく入居者さえ確保できれば長期的に安定した収入が期待できます。
建築規制が緩くどこでも建てやすい
アパートは、建築規制が緩く比較的どのような土地でも建てやすいです。
例えば、マンションのような高層建築物は建築できる場所に制限がありますが、2階建てのアパートは戸建て住宅を建築できる土地であれば比較的どこでも建てることができ、場所を選ばず土地活用が行えます。
相続税対策になる
アパート経営は相続税対策になります。アパートのような収益物件の相続税評価額は、時価よりも安くなります。
例えば都内などでは、アパートの相続税評価額は時価の30%程度になると言われています。不動産価値が5,000万円する資産であれば、アパートとして相続することで1,500万円程度の資産として相続税が計算されます。
将来アパートの相続まで考えるのであれば、相続税対策としてアパート経営を始めるのもいいかもしれません。
法整備が進んでいる
2020年6月19日に、ハウスメーカーや建設会社に不当なサブリースを勧誘することを禁止した法律「賃貸住宅の管理業務棟の適正化に関する法律」が公布され貸主を守る法整備が進んでいます。
借地借家法は借主の権利を強固に守る法律であり、貸主を守るための法律は存在しませんでしたが、借主とサブリース業者間でのトラブルなどが相次いだことから政府が動き出しました。
少し前までは、アパート経営は貸主に不利な条件が多かったですが、今では貸主を守る法整備も進められていて安心してアパート経営を行うことができます。
マンション経営よりもリスクが低い
アパート経営はマンション経営よりもリスクが低く、初心者にも始めやすい土地活用方法、投資になります。
都心部の区分マンション価格は高騰していて、初期費用は一棟アパートと大差ありません。空室リスクなどを考えると一棟アパート経営のほうがリスクを回避しやすいです。
また、税金対策の面でも区分マンションの場合は減価償却の期間が長いうえ、1回に計上できる減価償却費が少ないので節税効果が小さいとされています。