相続不動産の売却時に確定申告は必要?税金や特例控除、必要書類を紹介

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「まずは不動産売却の基礎知識を知りたい」という方は、こちらの記事をご覧ください。

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相続時の節税にはいろいろな方法がある

親から「相続」や「贈与」の形で不動産を受け継いだ場合、現金での所得とは見られないため、基本的には「確定申告」はする必要がありません。

しかし、不動産を相続すると「相続税」と「贈与税」を支払う必要があります。

その節税法にはいろいろなものがあります。例えば生前贈与を活用することで、親が生きている間に財産の贈与を受けておき、相続税にかかる税金を抑えることで節税につなげることができます。

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生前贈与の場合にかかる税金

贈与税は贈与によって財産を受け取った人に課税される税金です。

土地や建物などの不動産の贈与を受けた時はもちろん、不動産を購入するための購入資金を贈与された時にも贈与税が課税されます。

贈与税の申告は1年ごとに行い、贈与を受けた年の翌年2月16日より3月15日までの間に確定申告して税金を納める必要があります。

贈与税の計算方法

贈与税の納税額を求めるには、以下の計算を行います。

課税価格=贈与財産価額-110万円(暦年課税の基礎控除)

税額=課税価格×税率-控除額

贈与税の税率と控除額

贈与税は累進課税の方式を採用しており、受け取った課税価格が大きくなるほど税率が高くなります。

贈与税の税率と控除額は一般贈与財産用特例贈与財産用とで異なっています。特例贈与財産用は直系尊属(祖父母や父母)から、その年の1月1日において20歳以上の者への贈与税の計算に使用されるもので、贈与税額が少し抑えられています。

一般贈与財産用はそれ以外の者からの贈与において適用されます。
一般贈与財産用

基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%
300万円以下15%10万円
400万円以下20%25万円
600万円以下30%65万円
1,000万円以下40%125万円
1,500万円以下45%175万円
3,000万円以下50%250万円
3,000万円超55%400万円

特例贈与財産用

基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%
400万円以下15%10万円
600万円以下20%30万円
1,000万円以下30%90万円
1,500万円以下40%190万円
3,000万円以下45%265万円
4,500万円以下50%415万円
4,500万円超55%640万円

例えば、祖父から2,000万円の課税財産価額を持つ不動産の贈与を受けた場合、特例贈与財産として{2,000万円-110万円(基礎控除) }×40%-190万円で566万円の税金を納める必要があります。

一方、配偶者から同じ財産の贈与を受けた場合は、直系尊属でないため、一般贈与財産として{2,000万円-110万円 }×50%-250万円=695万円の税金を納める必要があります。

不動産の贈与財産価額

土地・建物など不動産の贈与ではその贈与財産価額がそのまま相続税評価額となります。相続税評価額は、時価の80%程度となるよう定められます。

贈与税の配偶者控除の特例

婚姻期間20年以上の夫婦には、贈与税の配偶者控除の特例として、マイホーム、又はマイホーム購入資金のうち2,000万円(基礎控除と合わせて2,110万円)までは非課税で贈与を受けることができます。

贈与税の配偶者控除の適用要件は以下の通りです。

①婚姻期間20年以上(内縁関係は認められない)

②居住用不動産かその取得のための金銭

③翌年3月15日までに住み、その後も住み続けること

④一生に一度の適用

⑤申告が必要(贈与税が発生しない場合でも申告する必要があります)

相続した不動産の売却時にかかる税金:譲渡所得税

相続した不動産を売却して利益が出た場合には、譲渡所得税が課されます。

不動産の譲渡所得は、分離課税となっており、給与所得などとは別に計算されます。その税率は所有期間によって異なります。

譲渡所得税は所有期間に応じて税率が変わる

不動産の譲渡所得は、売却した年の1月1日時点において
  • 所有期間が5年以下の場合短期譲渡所得として39.63%(うち所得税30%、住民税9%、復興特別所得税0.63%)
  • 5年超の場合20.315%(うち所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)
    となります。

    譲渡所得税の計算方法

    不動産の譲渡所得税は以下の計算式で求めることができます。
課税譲渡所得=売却価格-取得費-譲渡費用-特別控除

税額=課税譲渡所得×税率

例えば、所有期間8年、売却価格8,000万円、取得費3,000万円、譲渡費用200万円の不動産に対して、居住用住宅の3,000万円特別控除の適用を受ける場合、以下の通り計算できます。

8,000万円(売却価格)-3,000万円(取得費)-200万円(譲渡費用)-3,000万円(特別控除)
1,800万円(課税譲渡所得)×20.315%(長期譲渡所得)=365.67万円

売却価格

売却価格は不動産の売却価格で、売買契約書に記載された金額です。

取得費

取得費は売却した不動産を購入した時に要した費用のことで、建物売買価格から減価償却費を差し引き、仲介手数料や登記費用などの各種経費を計上することができます。

減価償却費は木造や鉄骨造、RC造など構造ごとに償却率が定められており、毎年減価償却費を計上しますが、売却時にはその償却した額を売買価格から差し引いて計算します。

なお、減価償却費は建物だけに適用されるため、土地と建物の按分が分かっている必要があります。
契約書でその按分が確認できれば良いですが、できない場合は消費税の額から、それもできない時は標準的建設費から建物の価格を求めます。

売買契約書の行方が分からないなど、取得費が不明の時は売却価格の5%を概算費用として計上できます。

特に相続財産を売却する場合、取得した時の書類が見つからないことが多いですが、取得費が5%だとかなりの額の譲渡所得税を支払わないといけないケースも少なくありません。できる限り書類を用意するようにしましょう。

譲渡費用

譲渡費用は、不動産を売却するのに要した費用のことで、仲介手数料測量費立退料解体費用などを計上することができます。

特別控除額

特別控除額は、一定の条件を満たすと課税価格から控除できるものです。例として、売却不動産がマイホームであった場合に適用される居住用不動産の3,000万円の特別控除が挙げられます。

特例を活用して節税する方法

ここでは、特例を活用して節税する方法をお伝えします。

3,000万円特別控除

3,000万円特別控除は、売却した不動産が居住用財産(マイホーム)であった場合に適用を受けられる制度で、所有期間の長短に関係なく課税譲渡所得から3,000万円控除することができます。

住宅ローン控除との重複適用ができないため、マイホームを売却して新たにマイホームを買い替える場合はどちらの適用を受ける方が得かを計算して判断する必要があります。

マイホームの定義

居住用財産の3,000万円特別控除の適用を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。

①現在主として居住している自宅を売却する時

②居住用に供さなくなった日から3年を経過する日の属する年の年末までに売却した時

③建物を取壊した場合は、上記②の範囲内で建物を取壊した日から1年以内にその敷地の売却に関する契約が締結されている時

④転勤等で単身赴任の場合、配偶者等が居住している家屋を売却した時

なお、以下で解説する居住用不動産(マイホーム)であることを条件とする特例のマイホームの定義は全て同じ条件を満たす必要があります。

10年超所有軽減税率の特例

10年超所有軽減税率の特例は、売却した不動産がマイホームで、かつ所有期間が売却した年の1月1日時点で10年超であった場合に適用を受けられる特例です。

10年超所有軽減税率の特例の適用を受けることで、課税譲渡所得が6,000万円以下の部分について**14.21%(うち所得税10%、住民税4%、復興特別所得税0.21%)**とすることができます。
10年超所有軽減税率の特例は、3,000万円特別控除と重複して適用を受けることができます。

特定居住用財産の買い替え特例

特例居住用財産の買い替え特例は、特定の居住用財産(マイホーム)を売って、代わりに新しくマイホームを購入した時に、買い替え代金に充当した額について課税が繰り延べられる制度です。
この制度は、繰り延べられた分については、売却時点では税金を納める必要はありませんが、次に売却する時には繰り延べられた分も負担する必要があります。
3,000万円特別控除や軽減税率、住宅ローン控除との重複適用はできません。

居住用財産の買い替え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除

居住用財産の買い替え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除**は、一定の要件を満たす居住用財産(マイホーム)を売却して、新しく居住用財産に買い替える時、売却したことで譲渡損失が出たら、その分を他の所得と損益通算できる制度です。

損益通算してもなおマイナスが残る場合は、翌年以降3年にわたり繰越控除することができます。

本特例を受けるためには、不動産を売却した年の1月1日時点において所有期間が5年超である必要があります。

特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除

特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除は、一定の要件を満たす居住用財産(マイホーム)を売却し、住宅ローンの残高を下回る価格で売却し、譲渡損失が生じた場合に損益通算できる制度です。
損益通算してもなおマイナスが残る場合は、翌年以降3年にわたり繰越控除できます。

なお、本特例は新しく居住用財産を買い替えなくても適用を受けることができます。

相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例

相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例は、相続した不動産を一定期間内に売却した場合に、相続税として支払った金額の一部を譲渡所得の計算上の取得費に加算して良いという制度です。

取得費加算を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。

①相続または遺贈によって財産を取得

②相続税が課税されている

③相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以降3年を経過する日までに譲渡している

取得費に加算できる相続税額は、以下の計算式で決められます。

取得費加算額=相続税額×売却不動産の課税価格÷相続した財産の合計額

相続税の申告期限から3年以内に売却しないといけませんが、この特例の適用を受ければ取得費が増えることで譲渡所得税の計算上、課税譲渡所得を抑えることができ、納税額を少なくすることができます。

被相続人の居住用財産(空き家)を売った時の特例

相続した不動産が空き家となっていたような場合には、被相続人の居住用財産(空き家)を売った時の特例の適用を受けることができます。
本特例の適用を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。

・昭和56年3月31日以前に建築された家屋

・相続の開始直前に被相続人(亡くなった方)以外に居住していないこと

・平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間に譲渡しているもの

・相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡しているもの

・譲渡の対価の額が1億円以下のもの

この特例の適用を受ければ、課税譲渡所得から3,000万円の特別控除を受けることができます。

譲渡所得の確定申告方法

相続した不動産を売却して譲渡により利益を得た場合、確定申告して税金を納める必要があります。
譲渡所得の確定申告は、売却した年の翌年2月16日?3月15日の間に行う必要があります。

譲渡所得の確定申告を行うには、通常の申告書B第一表申告書B第二表に加え、申告書第三表(分離課税用)譲渡所得の内訳書を作成する必要があります。

上記書類の他、特例の適用を受けるためには、その条件を満たしていることを証明する書類や、特例専用の申告書を提出する必要があります。

申告書第三表(分離課税用)

不動産の譲渡所得は給与所得などとは異なり、分離課税のため、分離課税用の申告表を作成する必要があります。
申告書第三表の収入金額・所得金額の部分にそれぞれ記入するとともに、所有期間に応じて短期譲渡か長期譲渡かを選択しましょう。

譲渡所得の内訳書

譲渡所得の内訳書は、売却した不動産の所在地などの詳細や、売却や取得した際の金額を記載するためのものです。
譲渡所得の内訳書で計算した結果を、申告表第三表に記入します。

居住用財産の3,000万円特別控除の適用を受ける際の必要書類

居住用財産の3,000万円特別控除の適用を受けるにあたって、以前はマイホームの定義を満たすかどうかの確認のために住民票の写しの提出が必要でした。現在では、マイナンバー制度の導入によりその提出は不要となっています。
つまり、何も提出する必要はありません。

所有期間10年超の軽減税率の特例の適用を受ける際の必要書類

軽減税率の特例の適用を受けるためには、売却した家屋・土地の登記事項証明書の提出が必要です。

特定居住用財産の買い替え特例

特定居住用財産の買い替え特例の適用を受けるためには、以下の書類を準備する必要があります。

・売却不動産が居住用財産であることを称する書類

・売却不動産が所有期間10年超であることを証する書類

買い替え資産の面積の分かる書類

・売買契約書の写しなど(売却代金が1億円以下であることを証する書類)

・耐震基準適合証明書など

居住用財産の買い替え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除

居住用財産の買い替え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の適用を受けるためには、以下の書類を準備する必要があります。

居住用財産の譲渡損失の金額の明細書(確定申告書付表)

居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書(租税特別措置法第41条の5用)

・売却資産がマイホームであることを証する書類

・売却資産が所有期間5年超であることを証する書類

買い替え資産の床面積の分かる書類

買い替え資産の年末における住宅ローンの残高証明書

特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除

特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の適用を受けるためには、以下の書類を提出する必要があります。

特定居住用財産の譲渡損失の金額の明細書(確定申告書付表)

特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書(租税特別措置法第41条の5の2用)

・売却資産が所有期間5年超であることを証する書類

・売却資産の住宅ローンの残高証明書(売買契約日の前日のもの)

相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例

相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例を受けるためには、以下の書類を提出する必要があります。

相続税の申告書の写し(第1表、第11表、第11の2表、第14表、第15表)

相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書

被相続人の居住用財産(空き家)を売った時の特例

被相続人の居住用財産(空き家)を売った時の特例の適用を受けるためには、以下の書類を提出する必要があります。

・売却資産を相続により取得したことを証する書類

・売却資産の家屋が昭和56年3月31日以前に建築されたことを証する書類

被相続人居住用家屋等確認書

・耐震基準適合証明書又は建設住宅性能評価書の写し

・売買契約書の写しなど、売却代金が1億円以下
であることを証する書類

 

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逆瀬川 勇造
監修者:逆瀬川 勇造(さかせがわ ゆうぞう)
宅地建物取引士、2級ファイナンシャルプランニング技能士 (AFP)。 地方銀行にてリテール業務に従事した後、住宅会社にて新築住宅や土地造成、土地仕入れに携わる。 金融知識を活かした住宅ローン提案、綿密なヒアリングからのライフプランニング、 税金や相続のアドバイスから税理士への橋渡しなど、新築住宅、不動産売買にまつわる金銭問題の解決を得意とする。

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