不動産売却時にはじめに売り主から買い主に支払われるお金である手付金。
手付金の金額設定の相場は、売却金額の3%から10%ほどです。
手付金は、買い主と売り主との間の売買契約が成立した時点で買い主から売り主に支払われるのが一般的です。
この記事では、手付金とは何か、そして手付金の相場や支払いのタイミングを解説します。
- 不動産売却時の手付金は売買契約の確実性を示すためのもの
- 支払われる手付金の目安は売却価格の3~10%程度
「まずは不動産売却の基礎知識を知りたい」という方は、こちらの記事をご覧ください。
不動産売却における手付金の基礎知識
手付金とは、不動産の売買契約を結ぶ際に買い主から売り主に支払われるお金です。
手付金には「証約手付」「違約手付」「解約手付」の3つの性質があります。
手付金の金額設定の相場は、売却金額の3%から10%ほどです。
手付金の支払いタイミングは、買い主と売り主との間の売買契約が成立した時点が一般的です。
手付金は場合によっては返還しなければいけなくなることもあるので、物件の引き渡しが完了するまでは使わないほうがよいお金です。
ただし、買い主が住宅ローンの審査に落ちてしまった場合には、手付金は買い主に返さなければいけないといった落とし穴がもるため、手付金を利用するタイミングについては十分注意する必要があります。
手付金とは?
手付金は法令上、支払うことが義務付けられているわけではありませんが、不動産売買においては手付金を支払うのが慣例になっています。
「手付金=売買代金の先払い」というイメージをお持ちの方が多いかもしれませんが、厳密に言うとこれは間違っています。
原則として手付金は、売買契約の締結時に買い主から売り主に預け、売買代金の全額を支払うときに売り主から買い主に返すもの。
しかし、決済時に売り主から買い主に手付金を返却し、そのうえで買い主から売り主に売買代金を支払うのは二度手間になってしまい面倒です。
そのため、「手付金を売買代金の一部として充当する」 という旨を不動産売買契約書に盛り込んでおき、決済時は手付金をいちいち返却することなく、手付金を差し引いた残金を支払うという形が一般的です。
手付金が持つ3つの性質
一般的に、手付金は以下のとおり、「証約手付」「違約手付」「解約手付」という3つの性質があるとされています。
手付金の性質について、過去の判例(昭和24年10月4日 最高裁判決)では 「契約において特に定めがない場合には、手付は解約手付であると推定する」 としています。
つまり、単に手付金として授受された場合は「解約手付」として扱われるということです。
証約手付
証約手付とは、不動産売買契約が成立したことの証拠として授受される手付金です。買い主による、「私がこの不動産を買います」という意思を証明する意味があります。
違約手付
違約手付とは、不動産売買契約で定められた債務を果たさないこと(=債務不履行)によって相手に損害を与えた場合に、損害賠償とは別にペナルティとして没収される手付金です。
具体的に、買い主から売り主に手付金100万円が支払われているケースを見ていきましょう。
買い主の債務不履行によって契約解除になる場合
手付金の100万円は違約金として、売り主に没収されます。
売り主の債務不履行によって契約解除になる場合
売り主は買い主に手付金100万円を返却するとともに、手付金と同額の100万円を違約金として支払わなければいけません。
解約手付
解約手付とは、売り主・買い主の双方に不動産売買契約の解除を認める手付金です。
不動産の売買契約が成立した後でも、契約の履行に着手する前であれば、以下を満たすことで相手方の承諾を得ることなく契約を解除できます。
ちなみに、この解除は 「手付解除」 と呼ばれます。
【民法第557条第1項】
買主が売主に手付を交付したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。具体的に、買い主から売り主に手付金100万円が支払われているケースでご説明します。
売り主が手付解除をする場合
受け取っている手付金の2倍(200万円)を買い主に支払えば、売買契約を解除できます。
これを「手付倍返し」と言います。
買い主が手付解除をする場合
支払っている手付金100万円を放棄すれば、売買契約を解除できます。
これを「手付流し」と言います。
手付金を設定する際の重要ポイント
不動産売買契約を締結してからも、「もっと良い物件はないだろうか……」と不動産探しを続ける買い主は少なくありません。
その結果、良い不動産が見つかれば買い主にとってはラッキーですが、売買契約を解除されてしまったら売り主としては大きな痛手 です。
このような状況になるのを回避するために用いられるのが、手付金です。
手付金は、不動産売買契約の際に売り主と買い主の合意によって取り決めるのが一般的です。
手付金を設定する際、売り主として気を付けるべきポイントは「手付金の金額」と「手付解除期日」です。
手付金の金額が妥当であること
不動産売却における手付金の金額に法的なルールはないため、売り主と買い主の合意があればいくらに設定しても問題ありません。
手付金が安ければ安いほど、買い主はキャンセルしやすくなります。
そのため解約されるのを避けたい売り主としては、手付金をできるだけ高く設定したいところです。
ただし、手付金が高すぎると不動産売買契約そのものが成立しないというリスクもあるため、「契約が決まり、その契約が解除されない」程度の金額で設定する必要があります。
通常は、売買を仲介する不動産業者から提案があるため、売り主としてはその金額で納得できれば問題はありません。
もし買い主から手付金の値引き要求があったら、慎重に対処する必要があります。
不動産売買における手付金の相場
手付金の相場は、不動産の売買金額の3%~10%とされています。
例) 不動産の売買金額が1,000万円の場合:▶ 手付金は50万円~100万円 例) 不動産の売買金額が3,000万円の場合: |
手付解除期日が妥当であること
手付解除期日とは、不動産売買契約を解約できる(手付解除できる)リミットのことです。
手付解除は理由を問わず相手方の承諾なく契約を解除できる制度ですが、契約当事者は「いつ契約が解除されるかわからない」という不安定な状況に置かれることになります。
そのため、民法では手付解除期日を 「契約の履行に着手するまで」 と定めています。
後述しますが、民法の「契約の履行に着手するまで」という規定もじつは不明確であり、トラブルに発展するケースがあります。
そのため、売り主・買い主の合意によって明確な手付解除期日を決めておくのが一般的です。
契約から手付解除期日までの時間が長くなるほど手付解除されやすくなるため、売り主としてはできるだけ短く設定したいところです。
とはいえ、手付解除期日までの時間があまりにも短いと買い主に不安を与え、契約そのものが成立しないリスクも高まります。
不動産売買契約から決済までの期間にもよりますが、契約日から1ヶ月前後の日を手付解除期日とする のが一般的です。
売り主が手付金を返さなければならないケース
不動産の売買契約成立後に買い主が手付解除をする場合、売り主は受け取っている手付金をそのままもらうことができます。
しかし、買い主が「住宅ローンの審査落ち」によって契約を解除する場合は、売り主は受け取っている手付金を買い主に返却しなくてはいけません。
不動産売買では多くの場合、買い主は住宅ローンを利用し、金融機関から融資を受けて不動産を購入しますが、必ずしも買い主が住宅ローンの審査に通るとは限りません。
買い主が住宅ローンの審査に落ちてしまうと融資を受けることができず、不動産も購入できなくなります。
こうなってしまった場合、支払い済みの手付金が戻ってこないのは買い主にとって酷なので、買い主を保護するために「住宅ローン特約(住宅ローン条項)」を定めることができます。
住宅ローン特約とは、買い主が住宅ローンの審査に落ちた場合に売買契約を白紙にすることを定める契約事項です。売買契約書に住宅ローン特約の記載があれば、買い主が住宅ローンの審査に落ちた際、売り主は買い主に手付金を返却する運びになるので覚えておきましょう。
手付金のよくあるトラブルの原因
手付金に関して多いトラブルは、手付解除のタイミングに関するものです。手付解除が可能なタイミングについて解説します。
手付解除が可能なタイミングとは
手付解除期日を定めていない場合は、民法第557条第1項に従い、「当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して契約の解除をすることができる」 ことになります。
では、民法第557条第1項で言うところの 「履行に着手」 とは、どんなシーンを指すのでしょうか。「履行に着手」とは、売買を成立させるために必要な行為をしたときという意味であり、判例では以下のように示しています。
債務の内容たる給付の実行に着手すること、すなわち、客観的に外部から認識し得るような形で履行行為の一部をなし又は履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をしたこと(最高裁昭和40年11月24日判決)
具体的には、以下のようなケースが履行に着手した場合と判断されます。
- 売り主が所有権移転の仮登記申請をしたとき
- 売り主が売却を前提とした分筆登記申請をしたとき
- 売り主が抵当権を消滅させるために金融機関に借入金を返済したとき
- 買い主が内金(中間金)の支払いをしたとき
- 買い主が売買代金と引き換えで建物の引き渡し請求をしたとき
なお、売り主・買い主の一方が履行に着手した後に売買契約の解除を認めないのは、売買契約履行のために準備をはじめた相手方に不測の損害を被らせないようにする趣旨です。
その一方で、自ら履行に着手した当事者が、相手方の履行の着手前に解約をすることは可能であるとされています。
たとえば、売り主が抵当権を消滅させるために金融機関に借入金を返済したとしても、買い主が履行に着手するまでは売り主からの手付解除が可能だということです。
「履行に着手」したと言えるかどうかで、トラブルに発展するケースがあります。
繰り返しになりますが、不動産の売買契約においては売り主・買い主の合意によって手付解除期日を定めておく のが一般的であり、無用なトラブルを避けるには望ましいアプローチと言えるでしょう。
手付金と混同されがちな費用について
不動産売却に関連する取引には、「手付金」のほかにも 「申込証拠金」「頭金」「内金」「中間金」 など「○○金」と呼ばれるお金がいくつかあります。
意味を混同しているとトラブルの原因になりかねないため、違いを理解しておきましょう。
申込証拠金とは?
申込証拠金とは、買い主が購入の申込みをする際に不動産業者に支払うお金のことです。
申込証拠金を支払うことで、買い主は優先的に購入する権利を確保できます。
申込証拠金の相場は、不動産価格には関係なく5~10万円です 。
申込証拠金を支払った後、売買契約に至ればそのまま手付金や諸費用に充当されます。
なお、申込証拠金を支払ったあと、売買契約が成立するまでに買い主が購入するのをやめる場合には、申込証拠金は全額返却されます。
頭金とは?
頭金とは、住宅ローンを使って不動産を購入する買い主が、手出しをする自己資金のことです。言い換えると、不動産価格から住宅ローンによる借入金を差し引いた額が頭金となります。
住宅ローンで満額融資を受ける場合は、「頭金は0円」ということになります。
内金(中間金)とは?
内金(中間金)とは、売買契約の成立後、契約が履行されるまでの間に不動産価格の一部として買い主から売り主に支払われるお金のことです。一般的な不動産売買では、売買契約時に手付金を授受し、決済・引き渡し時に残代金の支払いがおこなわれ、内金(中間金)の授受はおこなわないケースがほとんどです。
なお、手付金を支払っても不動産代金の一部が支払われたことにはならず、契約が履行されてからはじめて不動産代金に充当されます。
これに対して内金(中間金)は、買い主から売り主に対して不動産代金の一部前払いの趣旨で支払われるお金であり、支払いがあった時点ですでに不動産代金の一部 となります。
不動産売却で「お金が動くタイミング」を知ろう
手付金とはどんなお金なのか、ここまでに理解が深まったと思います。
つぎに、不動産の売り主の視点から、不動産売買においてお金が動くタイミング についてもう一度復習してみましょう。
不動産売却のおおまかな流れは以下のようになります。
査定
不動産業者や一括査定サイトなどに、売却したい不動産の査定を依頼します。
一般的に、無料の不動産一括査定などを利用し、簡易査定を行います。
媒介契約
売却を依頼する不動産業者と媒介契約を締結します。
売り主に入金・支払いはありません。
販売活動
不動産業者が買い主を見つけるために販売活動をおこないます。
売り主に入金・支払いはありません。
買い主・売却価格の決定
買い主が見つかったら、不動産の売却価格を決定します。
売り主に入金・支払いはありません。
売買契約
買い主との間で、不動産の売買契約を締結します。
- 買い主から「手付金」の入金があります。
- 不動産業者へ「仲介手数料」の半額の支払いがあります。
- 不動産売買契約書に貼る「印紙税」の支払いがあります。
決済・引き渡し
決済をおこない、不動産を買い主に引き渡します。
- 買い主から「売買代金」の残金の入金があります。
- 不動産業者へ「仲介手数料」の残り半額の支払いがあります。
- 住宅ローンの返済(抵当権抹消)がある場合は、「抵当権抹消登記費用」や「司法書士報酬」の支払いがあります。
なお、残金のなかには固定資産税・都市計画税などの精算金も含まれます。
確定申告
不動産の売却によって譲渡所得がある場合は、確定申告をおこないます。
- 各種「税金」(住民税、譲渡所得税、復興特別所得税)の支払いがあります。
【まとめ】売却における入金のタイミング
【手付金】
売買契約時に買い主から支払われます。
【売買代金の残金】
決済時に買い主から支払われます。
【まとめ】売却における支払いのタイミング
【仲介手数料】
売買契約時に半額を、決済時に残り半額を、不動産業者へ支払います。
【印紙税】
通常は、売買契約時に支払います。
【抵当権抹消登記費用・司法書士報酬】
通常は、決済時に司法書士へ支払います。
【各種税金】
納税のタイミングは税金によって異なります。
あなたの不動産、
売ったら
不動産売却を少しでも検討しているのであれば、「自分の家がいくらで売却出来そうか」を把握することが第一歩です。
売却相場を掴むなら、不動産一括査定サービスで不動産会社にまとめて査定を依頼しましょう。
不動産一括査定サービスの中でも、「イエウール」は、利用者数は1,000万人超、提携不動産会社は2,600社以上の実績があるサービスです。
まずは、自分の物件種別を選択してから査定依頼をスタートしてみましょう!査定依頼に必要な情報入力はわずか60秒で完了します。