この記事では初めての人でも分かりやすく理解できるように、「不動産の名義変更とはそもそも何なのか」、「どういったときに不動産の名義変更が必要なケースなのか」について解説します。
では詳しく不動産の名義変更について理解を深めていきましょう。
不動産の名義変更とは
不動産の名義変更とは、不動産を売買したり、相続などで不動産の持ち主になった場合に登記簿に記載されている名義を変更することです。正式には、所有権移転登記と言います。名義変更をすることで、初めて不動産の所有者であることが公的に認められます。名義変更は必ず行う必要がありますので今すぐに必要でない方も、今後を見据えて抑えておくと良いでしょう。
不動産の名義変更が必要な4つのケース
名義変更にかかる費用や必要書類は、名義変更が必要なケースによって異なります。自分がどのような理由で名義変更をするのか明確にしておきましょう。以下でよくある名義変更の事例を紹介します。
まず不動産の名義変更が必要になるケースは4つ挙げられます。
ケース | 意味 | 事例 | 名義変更が必要なタイミング |
---|---|---|---|
相続 | ・亡くなった人(被相続人)の死亡時の財産を配偶者や子どもなど(相続人)が引き継ぐこと ・登記権利者が単独で名義変更を行う | 名義人が共有持ち分の買取、贈与を受ける、共有物分割請求、他の共有者の持分放棄のいずれかが 起こった場合に共有名義から単独名義への名義変更が必要 | 遺産分割協議書を作成されたら早めに |
財産分与 | 夫婦が婚姻期間中に協力して形成した財産を離婚に伴い分配すること | 「贈与税の配偶者控除」という特例により基礎控除110万円のほかに最高2000万円まで 控除することができるため、生前に妻もしくは夫に生前贈与をする場合が多い | 贈与されたら早めに |
贈与 | 双方の同意のもと財産を無償で与えること | 親が自身の不動産を子供に贈与する場合も名義変更が必要 | 財産分与が成立したタイミングで |
売買 | 財産を移転する際に相手方から代金の支払いを受けること | 家の購入が完了した場合売り主から購入者へ名義変更が必要 | 契約書に従うが支払い完了後が一般的 |
不動産の名義変更は、虚偽の登記がされるリスクを排除する観点から、原則として不動産の登記権利者と登記義務者が共同で行います。
登記権利者と登記義務者とは簡単に言うと不動産の所有権を渡す人と受け取る人です。相続の場合は所有者は既に亡くなっているので、不動産を相続した人が行います。
不動産の名義変更をしないとどうなる?
不動産の名義変更をすることで不動産の所有権を公的に主張、証明することができます。所有権を公的に主張できなければどのような不都合があるのでしょうか。ここからは不動産の名義変更をしないことで起こるデメリットを解説します。
不動産を売却できない
不動産を売却することができるのは不動産の所有者のみです。つまり不動産を売るためにはまず名義変更をしなければなりません。
相続の場面で名義変更を放置し続けると最終的に誰の所有物か分からなくなり不動産の処分が事実上不可能となる可能性すらあります。
固定資産税の課税対象となる
不動産には固定資産税という課税があり、毎年1月1日時点の所有者に課税されます。ここで言う所有者とは、原則として登記簿において所有者とされている者をいいます。
そのため、不動産を翌年の1月1日より前に他人に譲渡したのに名義変更をしないまま放置したりすると、既に不動産の所有者でないのに登記簿上の名義人であるとして固定資産税が課税されてしまう可能性があります。このような無駄な課税処分を受けないためにも、不動産を処分した場合は速やかに名義変更を行うべきでしょう。
不動産を担保にローンを組むことができない
不動産の名義変更をしないと不動産を担保に住宅ローンを組むことができない場合があります。
不動産を担保にしたローンは低金利で返済期間を長期に設定することができるため無担保ローンと比べて好条件でローンを組むことができます。ローンを組む前に名義変更の手続きを済ませておきましょう。
親から子に名義変更がない場合不動産の処分が難しくなる
親から子に名義変更が必要な場合として考えらえるのは相続・贈与・売買です。この中でも多いのは相続です。
相続の場合に名義変更をしないで放置すると、何度も相続が発生した場合でも、数代前の所有者名義のままとなってしまい、結局誰の所有物なのかがわからなくなってしまうことも珍しくありません。
このような事態となると、不動産の処分等が非常に難しくなるので、相続が発生した場合には必ず名義変更まで行うべきでしょう。
2024年4月から相続登記の申請が義務化
これまでは相続登記の申請は義務ではなかったため、土地を相続しても名義変更をする人が少ないことから、所有者不明土地の増加が問題となっています。平成29年の国土交通省の調査によると所有者不明土地の割合は22%にもおよび、今後も高齢化による死亡者の増加等によりますます深刻化すると言われています。
そこで所有者不明土地の発生を予防するために令和3年4月に公布された法令が相続登記の申請の義務化です。
この法令により、不動産を取得した相続人に対しその取得を知った日から3年以内に相続登記の申請が義務付けられ、正当な理由がなくその申請を怠った場合は10万円以下の過料が処されることになります。
相続登記の申請の義務化は令和6年4月1日から施行されます。
施行日前に相続が発生していた場合も登記申請義務が課される
相続登記の申請の義務化が施行されるのは令和6年からですが、それ以前に相続が発生していた場合も登記の申請義務は課されます。
施行日前に相続が発生していた場合は、法令の施行日とそれぞれの要件を充足した日のどちらか遅い日から相続登記申請義務の履行期間である3年間がスタートします。
不動産を相続して名義変更をしていない方は過料の対象になる前に名義変更を済ませるように準備を始めましょう。
名義変更完了までどのくらい期間がかかるか
名義変更は、法務局への申請を行えば完了というわけではありません。申請してから、審査に通常1〜2週間程度かかります。(相続による名義変更の場合は、必要書類が多いため、2~4週間程度かかることもあります。)
また、提出書類に不備があった場合は修正や再提出が必要となるため、追加で時間がかかることもあります。書類集めや再提出のことも考えると、完了するまでに全体で1カ月程度かかることになります。
名義変更はいつまでに済ませるべきか
不動産の名義変更をする際に気になるのは、名義変更をいつまでに行えばよいかではないでしょうか。
不動産の名義変更はいつまでにしなければならないという期限の決まりはありませんが、いつまでにしておいたほうがよいという目安はあります。
ケース | 期日 |
---|---|
相続 | 不動産の取得を知った日から3年以内 |
財産分与 | 離婚後すみやかに |
贈与 | 贈与後すみやかに |
売買 | 決済日当日 |
名義変更の手続きを行うタイミングの目安として相続は不動産の取得を知った日から3年以内、売買は不動産の決済日当日とされています。相続時の名義変更に関しては2022年現在期限は定められていませんが、今後相続登記の義務化が施行されます。
財産分与と贈与に関しては名義変更の手続きを行う期限はありませんが、離婚時の財産分与を求める権利は離婚から2年の経過で消滅するため必ず2年以内に財産分与の請求をしましょう。2年以内に請求すれば分与自体は2年経過後でも問題ありません。
名義変更を自分でするメリット・デメリット
そもそも不動産の名義変更は自分でも行うことができるのか気になっている方もいるでしょう。一般的には、どのように進めるのが良いのでしょうか。
結論から言うと、不動産の名義変更は自分でも可能です。例えば相続による不動産の名義変更の場合、当事者であれば問題なくご自身で名義変更を進めることができます。
しかし、物事にはメリットとデメリットがつきものです。以下で不動産の名義変更を自分でする場合とその他の専門機関に依頼する場合を比べてみましょう。
名義変更を自分で行うメリット
名義変更を自分で行うメリット1つ目は、費用が安く抑えられる点です。自分で名義変更を行うことで、司法書士への報酬を支払う必要がないため、格段に費用が安くなります。司法書士費用の相場は、相続によって名義変更が必要になる場合、約6万円~10万円程度費用がかかり、贈与の場合は約5万円~8万円程度かかることが多いようです。
名義変更を自分で行うデメリット
名義変更を自分で行う際のデメリット1つ目は、不動産の所在地である市区町村の法務局に何度も出向かなければならないのが、負担になる可能性があります。もちろん管轄の法務局初め市町村の役所はほぼ平日しか開庁しておりません。法務局に伺うタイミングは相談時→申請時→不備があるたびに→最後に完了時に伺わなければなりません。スムーズに行ったとしても最低2回は窓口へ行かなければならないため、お客様の状況によっては負担が大きくなります。
名義変更を自分で行うデメリット
名義変更を自分で行う際の2つ目のデメリットは、戸籍謄本は本籍地から取得しなければならないことです。もしも遠方であっても基本的に例外なく本籍地に出向かなければなりませんが、状況によっては、郵送で請求することになります。方法としては、戸籍請求の申請書を作成し、郵便小為替を費用の代わりに同封し、返信用の封筒も忘れず同封して輸送してください。時間のかかる作業になりますので、時間にゆとりをもって行う必要があります。
名義変更を司法書士に依頼するメリット・デメリット
名義変更をご自身で行わない場合、司法書士に依頼する方法が一般的です。次に不動産の名義変更を司法書士に依頼する場合のメリットとデメリットを比較してみましょう。
名義変更を司法書士に依頼するメリット
名義変更を司法書士に依頼するメリットは、時間と労力を削減することができることです。名義変更自体は、誰にでもできることですが、その分時間と労力がかかります。遠方であった場合、仕事を休んで必要な書類を1日で取得することはほぼ不可能です。司法書士に依頼すれば、司法書士が代わりにこれら全ての項目を完了してくださるので、大きく時間と労力を節約できます。
名義変更を司法書士に依頼するメリット
名義変更を司法書士に依頼するメリットの2つめは、法的アドバイスが受けれることです。一般的に、相続の遺産分割協議書などの作成時にトラブルが多いので、専門家が関与して作成した資料のほうが、裁判での証拠能力が高い可能性があります。そういった点から、第三者の関与が好ましい場合もあります。
名義変更を司法書士に依頼するデメリット
司法書士に依頼した名義変更に関するデメリットは、手続きする際に税金などが障害になることがあるという点です。特に贈与税の場合高税率になりますので、注意が必要になります。名義変更に必要な登記免許税も評価額の2%になるので、実際に費用を見てみると思ったよりも税金を取られている感覚になる方も少なくないようです。
司法書士の選び方の基準とは?この記事をご覧になれば分かります!
不動産の名義変更に必要な書類と費用
次に不動産の名義変更に必要な書類と費用に関する解説をします。
名義変更を行う際に必要な書類を一覧
名義変更の原因 | 必要書類 |
---|---|
相続 | 遺言書・遺産分割協議書、登記原因証明情報、登記識別情報、住所証明書、印鑑証明書、委任状、固定資産評価証明書 |
財産分与 | 登記識別情報、印鑑証明書、固定資産評価証明書、住所証明書、離婚協議書、財産分与契約書、戸籍謄本 |
贈与 | 登記識別情報、印鑑証明書、固定資産評価証明書、住所証明書、贈与契約書、贈与証書 |
売買 | 登記識別情報、印鑑証明書、固定資産評価証明書、委任状、住民票、売買契約書 |
名義変更の原因により必要書類は異なります。書類が不足していたり不備がある場合は法務局へ再提出をすることになり名義変更完了までにかかる時間が長くなります。
漏れがないか確認する、もしくは事前に法務局に相談して不備なく提出できるようにしましょう。
名義変更を行う際は、必要書類の取得に費用がかかったり、税金や専門家への依頼費用を納めないといけません。
費用 ① 登録免許税
まず、自分で名義変更を行った際にかかる主な費用として登録免許税が挙げられます。
名義変更をする際には必ず登録免許税がかかります。
登録免許税とは、法務局へ登記手続きを申請する際に収入印紙を購入して貼付する形で納めるのが一般的です。登録免許税は一律の金額ではなく、不動産の固定資産税評価額によって異なります。固定資産税評価額に一定の税率をかけ算して算出するのですが、名義変更をする理由によってかける税率が変わってきます。
理由 | 税率 |
---|---|
相続 | 0.4% |
離婚 | 2% |
贈与 | 2% |
売買 | 2% |
具体的に固定資産評価額を例に求めてみると以下のようになります。
固定資産評価額 | 相続の場合(税率0.4%) | 財産分与、贈与、売買の場合(税率2%) |
500万円 | 2万円 | 10万円 |
700万円 | 2.8万円 | 14万円 |
1,000万円 | 4万円 | 40万円 |
2,000万円 | 8万円 | 60万円 |
5,000万円 | 20万円 | 100万円 |
令和4年3月31日まで、一部登録免許税が減税措置の対象となっています。減税の措置の詳細は国税庁の公開しているpdf登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ|国税庁をご確認ください。
費用 ② 必要書類の取得費用
登録免許税のほかに必要書類を集める際にも費用はかかります。
主な必要書類1通の価格は以下の通りになります。
書類名 | 費用 |
---|---|
住民票 | 300円 |
戸籍謄本 | 450円 |
固定資産評価証明書 | 300円 |
不在住証明、不在籍証明 | 300円 |
登記簿謄本(登記事項証明書) | 600円 |
印鑑証明書 | 300円 |
戸籍の附票 | 300円 |
書類は状況や理由によって必要な種類や枚数が異なります。また、市区町村によって取得する際の費用は異なるのでこちらは事前に役所に確認すると良いでしょう。
費用 ③ 専門家(司法書士)へ依頼費用
不動産登記や不動産の名義変更についての専門家は、「司法書士」です。司法書士事務所に依頼し、手続きを代理で担当してもらうことができます。
第1章でも解説しましたが、司法書士への依頼費用や報酬は、自由化されており、事務所によって様々です。また、依頼内容によっても異なってきますので、一律に費用を出せませんが、名義変更だけならば約4~7万円、書類集めなどから依頼すれば10~15万円以上の費用が相場となっています。
詳細は、各司法書士事務所へお問い合わせください。
費用 ④ その他にかかる税金
無視できない出費として最後に抑えておくべきは、税金に関してです。変更の理由によっては名義変更を行うタイミングや変更後のタイミングで納めなければならない税金があります。
|
各税金についての詳細は、税理士に相談して確認することができます。
不動産の名義変更の手続き方法
次に不動産の名義変更の手続きの際にどこで行うのか、どのような手順で行うのか解説します。
名義変更の手続きは法務局で行う
先程も触れた通り、名義変更は法務局にて申請します。申請を行う法務局はどこでも良いわけではなく、不動産が所在する地域を管轄する法務局です。
疑問があれば最寄りの法務局に相談すれば親切に対応してくれます。法務局は現在窓口での案内を行っておらず、電話のみでの案内となります。完全予約制となっているため登記についての相談が必要な場合は前日までに忘れずに予約しましょう。
また、法務局の窓口が開いているのは平日8時30分~17時15分までとなり、土日は受け付けていません。
名義変更は、電子申請(オンライン申請)と書面申請の2つの方法で申請することができます。オンライン申請をする場合は法務局のホームページに行き、オンライン申請の案内のページにアクセスしましょう。事前準備として申請者情報の入力や申請用総合ソフトのインストールが必要となります。
書面申請をする場合は、申請書の作成や添付書類の準備が終わり次第、不動産の管轄の法務局に申請します。管轄区域以外の法務局に提出すると申請が却下されてしまうので、管轄の法務局を必ず調べてから申請するようにしましょう。
不動産の名義変更の手続きの手順
不動産の名義人が変わる原因によって、名義変更の手続き手順は変わってきます。
例えば、相続する不動産の名義変更の場合以下の手順で進めます。
|
土地の登記申請書を作成する際は、土地の最寄りにある法務局で取得します。登記の名義変更時に必要な書類として、戸籍謄本や印鑑証明書などがあります。
法務局で申請が可能で、申請方法としては、主に3つあります。申請方法によってそれぞれメリットがあるので合った方法を選ぶことができます。
①窓口で申請する
窓口で申請する場合、作成後の申請書、署名・捺印を持参すれば、もし書類に不備があってもその場で修正できるので安心です。
②郵送で申請する
土地や不動産のある最寄りの法務局での申請が条件になるため、遠方の方には、郵送で申請する方法もあります。
③オンラインで申請する
最後に、インターネットで申請する方法もあります。土日や夜の時間帯も申請できるので便利です。
まとめ
不動産の名義変更は面倒ですが、放置してはいけません。
もし独力での対応に困難を覚えるようであれば、費用はかかってしまいますが、無理せず早めに司法書士に依頼してしまいましょう。
費用が心配であれば、複数の司法書士事務所を比較して決めるとよいでしょう。
なお、自身が所有する不動産を売却する場合も不動産会社の相見積もりを取る方が高値での売却が可能となるかもしれません。
大切な財産ですので、慎重に決めていきましょう。
また、不動産の売却を少しでも検討しているのであれば、「自分の不動産がいくらで売却出来そうか」を把握しておくと良いでしょう。
そのためには、不動産会社から査定を受ける必要があります。「イエウール」なら不動産会社に行かずとも自宅で24時間申し込みが可能です。自分の不動産に適した不動産会社を紹介してくれるので、膨大な不動産会社の中から選ぶ手間も省くことができます。
まずは、自分の物件種別を選択してから査定依頼をスタートしてみましょう!査定依頼に必要な情報入力はわずか60秒で完了します。
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