「まずは不動産売却の基礎知識を知りたい」という方は、こちらの記事をご覧ください。
不動産買付証明書とは
不動産買付証明書は、不動産の購入希望者が、その物件を購入する意思があることを売り主や売り主側の不動産会社に伝えるために作成する書類です。
買付証明書は、「この物件を買おうかな」と迷っていた人が、「この物件をこの条件で買うことを決めた」という場合に、購入意思を売り主に伝えるために作成されます。
買付証明書を買い主が売り主に提出した後は、本格的に不動産売買契約に向けて条件交渉を進めていくことになります。
なお、不動産買付証明書は、「買付申込書」「買受証明書」「購入申込書」などと呼ばれることもありますが、どの名称の書類でも同じ効力があります。
不動産買付証明書の提出義務・法的拘束力はない
不動産買付証明書には、提出義務も法的拘束力もありません。
そのため、不動産買付証明書には書式の決まりはありません。
とはいえ、多くの不動産会社には買付証明書のひな型があって、記載内容は物件の購入金額や購入条件など、一定の共通性があります。
たとえば、次のような買付証明書を見てみましょう。
参照:不動産投資DOJO「【フォーマットあり】買付証明書とはなにか?書き方のポイントを詳しく解説」
この買付証明書であれば、「物件情報(所在地や延床面積など)」、「売買金額」や「融資利用の有無」など、条件交渉のもととなる情報が記載されています。
買付証明書の有効期限
買付証明書の有効期限は1~2週間程度が一般的です。
有効期限は売主の意向で決まることが多いです。
買付証明書の提出後には、売り主側が、買付証明書の条件交渉に対しての回答や、売却意思と売却優先順位を提示する「売渡承諾書」を有効期限内に提出します。
売渡承諾書にも法的拘束力や提出義務はなく、あくまで売り主側が売却の意思があることを買い主に伝えるために発行する書類です。
買付証明書を提出するメリットとデメリット
法的拘束力がなく、提出義務もないにもかかわらず、買付証明書を提出するのはなぜでしょうか。
結論としては、買付証明書を提出して購入の意思を伝えることで、買い主側も売り主側もその後の売買活動をスムーズに進めることができるからです。
この章では、買付証明書を提出するメリットとデメリットを見てみましょう。
買付証明書を提出するメリット
買い主が買付証明書を提出するメリットは次の3つです。
- 購入意思を伝えられる
- 値下げのオファーが来る可能性がある
- 不動産会社に購入意欲が高いと認識してもらえる
買付証明書を提出する最大のメリットは、買い主側の不動産会社や、売り主に、購入する意思をアピールすることができるという点です。
購入意思や購入条件が明示されているからこそ、その物件を売ってもらえる可能性が高まります。
さらに、不動産会社に購入意欲が高いと認識してもらえれば、値下げ情報や他の物件の情報を優先的に提供してもらえる可能性が高いです。
買付証明書を提出するデメリット
買付証明書を提出するデメリットは、買付証明書に記載する条件次第では、他の購入希望者よりも条件が悪いと売り主から後回しにされてしまう可能性があるということです。
売り主は買付証明書の内容をもとに、優先順位をつけて売却交渉を進めています。
買付証明書の内容次第では、買付証明書を提出したことでかえって物件の購入から遠ざかってしまう場合もあるので、買付証明書の記載内容は慎重に検討した上で記載しましょう。
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買付証明書の作成方法
買付証明書には決まった書式はありませんが、一から作らなければいけないことは稀です。仲介業者がWordなどで雛形を用意していることが多いです。業者により形式は異なりますが、以下のような項目があります。年収
年収ですが、あなたが会社員なら源泉徴収票に記載されている支払金額を記載します。確定申告をされている方は収入の合計額を書きましょう。購入金額
購入額は、パンフレットやサイトで提示されている金額ではなく、あなたが希望する金額を書き入れましょう。地籍、地目、地番、延床面積、構造
これらの項目は物件の面積や用途、住所ですし、建物の延床面積や構造は図面を見なければわからないこともあるでしょう。わからない場合は空欄でも構いませんが、仲介業者に問い合わせて記入してもいいでしょう。手付金
手付金は、売買契約の頭金のようなもので後に購入金額の一部になるものです。売買契約締結時に支払うのが一般的です。金額は購入価格の5~20%くらいです。中間時金
中間時金は手付金と引渡し時金の中間において支払うものですが、これは物件によっても異なります。建売住宅の場合などは中間時金が発生することも多いです。しかし、中古住宅の売買の場合などは、あまり一般的ではありません。まずは0円と記入しておきましょう。
引渡し時金
引渡し金は、物件の引き渡しの時に支払うものです。一般に不動産の売買においては引渡時金の支払いと建物の明渡し(投資用不動産の場合は鍵の受渡し)は同時に行われるます。引渡時金の支払い時期に関して揉めることは少ないですが、気になる場合は、明渡と同時に引渡時金を払うという一文を入れても良いでしょう。依頼先
住宅ローンを組む場合は、住宅ローンを申し込む金融機関名を記入します。まだ、決まっていない場合は「未定」と入れておきます。具体的な金融機関名を記載した場合、仲介会社から当該金融機関とのやり取りの証拠を提出するよう求められる場合があるので未定の場合は未定といれておきましょう。
申込額
具体的に住宅ローンでいくら調達する予定かを記載します。無理に低い金額を書く必要はありません。不動産の購入はさまざまな経費も発生するので大きめの金額を記入しましょう。融資特約
融資特約とは、「融資がおりなかったら売買契約を白紙撤回に(無効に)する」という条項を入れるかどうか記載するものです。これは大切なことですから、もし融資特約の項目がなくても、その他の欄に「融資特約でお願いします」という一文を記入しましょう。有効期限
一般的には1~2週間ですが、仲介業者にどのくらいにすればよいのか確認してもいいでしょう。長くても1ケ月くらいの提示になることが多いようです。買付証明書の提出だけでは契約は成立しない
買付証明書には公的効力はありませんから、これを提出しただけでは契約は成立しません。買付証明書の役割を説明します。買付証明書は申込ではない
買付証明書には公的効力はないと判例上でも認められています。あくまでも「不動産を買い受ける意思があります」という意思表明をしただけという扱いになっています。ですから、売買の正式な申込とは認められていません。不動産取引の実務上でも、買取証明書は正式な契約の前の段階で交わされる文書という位置づけです。つまり、撤回可能な文書と理解されています。
仲介業者は買付証明書の着順で対応?
昔からの慣例で、同物件に複数の買付証明書が提出されている場合は、買付証明書が提出された順番に交渉の対応をするということがありました。最近ではそういった対応をする会社はまれですが、老舗の不動産会社などに少ないけれども存在します。また、不動産会社の自社物件をメールマガジンなどで一斉に送っている場合は、買付証明書を出すスピードが要求される場合もあります。このような場合に備えてメールやFAXで作成したらすぐ送るようにすると良いでしょう。
- 買付証明書には公的効力はないと判例でも認められている
- 先着順のこともあるため、スピードが要求される
- FAX・メールを使って作成しすぐに送る
買付証明書を提出する時の注意点
買付証明書は公的な効力がないものですが、提出する時にはいくつかの注意点があります。一定の損害賠償責任が認められる場合もある
買付証明書に公的な効力がないといっても、合理的な理由もなく勝手に交渉を打ち切ってもいいというわけではありません。買付証明書を提出後、さらに交渉を進め売り主に「購入してもらえる」という期待を抱かせた後に、正当な理由もなく一方的に契約の売買契約の締結を拒んだ場合は、相手から損害賠償を請求されることがあります。これは「契約締結上の過失責任」といいます。取引を開始して契約準備に入った段階になると、当事者同士、お互いに相手に損害を与えないようにする義務があります。これに反して信頼を裏切る行為があれば賠償すべきとされているので注意が必要です。
したがって、買付証明書を提出する際は、自身の購入意思をしっかりと確認し、責任を持って行動することが求められます。また、提出前には不動産専門家や法律顧問と相談し、書類の内容を慎重に検討することが重要です。
安易なキャンセルは信用にかかわる
買付証明書を提出する際、重要なのはその書類が法的な強制力を持たないという事実です。しかし、これは安易な提出やキャンセルを意味しません。提出後に無断で交渉を中断すると、売り主や仲介業者との信頼関係が損なわれる可能性があります。仲介業者は、買付証明書を出してもらい、これを売主に伝えて、資料を準備してもらったり、買主の希望条件を伝えます。買付証明書に沿うよう配慮したり、他の人への売却を待ってもらうなど、売買契約の成立に向けた活動をしていきます。その中で買い主に特に理由もなく一方的に買付証明を撤回されたのでは売り主に対する信頼も失います。仲介業者として、そんな買主には信頼がおけず、今後の取引に影響が出ることも少なくありません。
やたらと契約や買付証明書の話をせまる業者に注意
仲介業者のなかには買主の意向はさておき「買取証明書」の提出を強要してくるところもあります。もちろん、強制力はありませんから断って構いません。無理やり欠かされたとしても法的効力はありませんから大丈夫です。買取証明書の後は、契約をせっつくような業者は、何かあると疑っても良いかもしれません。そもそも買主の意向を大切にしないような業者との取引はやめることをおすすめします。
- 契約締結上の過失責任が問われ「損害賠償を請求される」こともある
- 信頼関係が崩れる恐れがある
- 強要してくる業者は断って良い
買付証明書を提出することで希望の不動産を購入しやすくなる
買付証明書は公的な効力はないとはいえ、買主の意思を売り主に伝える大切なものです。これを提出するところから交渉始まるわけですから、自分の希望を素直に書いて提出しましょう。購入する気持ちが本当にあると仲介業者に伝える意味もあります。買付証明書を提出した物件が必ず購入できるわけではありませんが、購入できなかったとしても、仲介業者との間には信頼関係も構築されます。その後の希望の物件購入も優先的に案内されるようになり、あなたの希望にあう不動産を手に入れやすくなるでしょう。
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