実家に住んでいた両親が介護施設に入所したり、亡くなったりした際には、相続する実家の扱いについて検討することとなるでしょう。
ご自身で実家に住み続ける場合には、不動産の名義を変更する相続登記の手続きを済ませ、相続税の申告・納付を行う必要があります。
そのため実家に住む予定がある場合には、早めに書類の準備や登記申請を進めなければなりません。
本記事では、相続した実家に住むための手続き・必要書類と、売却せずに住み続けるメリット・デメリットについて解説します。
相続した実家に住むために必要な手続き
相続した実家にそのまま住み続けたいと考える場合、不動産の名義変更や相続税の申告を行う必要があります。
また、相続人が複数いる場合には、家の相続に合意してもらうことも条件です。
ここでは相続した家に住むために必要な3つの手続きについて解説します。
遺言書の確認・遺産分割協議
実家の相続を行うためには、最初に遺産の分割について話し合わなければなりません。
被相続人が残した遺言書が存在する場合には、その遺言通りに遺産を分割します。
遺言書がなかった場合には、法定相続人全員が集まって話し合う遺産分割協議にて、どのような割合で遺産を分配するかを決定します。
ご自身の実家の相続に対して他の相続人が反対する場合には、相手の法定相続分相当を現金で補填(代償分割)したり、共有名義を提案したりして協議を進めなければなりません。
なお、ここで作成した遺産分割協議書もしくは遺言書がなければ、実家の名義変更が行えない点にご注意ください。
相続登記(名義変更)
ご自身が実家を相続することが決まった後は、名義変更に必要な書類を集め、法務局で相続登記を行います。
相続登記の申請に必要な書類は後述しますが、法定相続人全員分の戸籍謄本・印鑑証明書が必要となるため、取得に手間がかかることがあります。
遠方に住む相続人がいる場合などは、早めに準備を進めておく必要があるでしょう。
なお、令和6年(2024年)4月1日以降は相続登記が義務化され、不動産の取得から3年以内に登記申請を行わなければなりません。
相続登記を怠ると10万円以下の過料が科される可能性があるほか、売却したり賃貸に出したりする際にも手続きを進められなくなるため、忘れずに申請しましょう。
相続税の申告・納付
実家を含めた遺産総額が相続税の基礎控除額を上回る場合には、相続税の申告・納付を行う必要があります。
相続税の基礎控除額は、「3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)」の計算式で求めることが可能で、たとえば配偶者と子ども3人が法定相続人の場合、5,400万円が基礎控除額です。
実家の土地・建物の評価額や、現金・有価証券などの遺産の合計が、この金額を下回る場合には、相続税の申告・納付は不要です。
ただし、配偶者控除や「小規模宅地等の特例」により、相続税の軽減措置を受ける場合には、納付額に関わらず相続税の申告を必要とする点にご注意ください。
相続した実家に住むための必要書類
両親などの名義になっている実家を相続するためには、法務局で相続登記を申請する必要があります。
相続登記の際には、以下の書類を提出しなければなりません。
書類名 | 取得できる場所 |
登記事項証明書(登記簿謄本) | 法務局 |
相続登記申請書 | 法務局 |
被相続人の住民票の除票(本籍の記載があるもの) | 市区町村の役所 |
被相続人の死亡時から出生時までの戸籍謄本 | 市区町村の役所 |
相続人全員の戸籍謄本 | 市区町村の役所 |
相続人全員の印鑑証明書 | 市区町村の役所 |
不動産を相続する相続人の住民票 | 市区町村の役所 |
不動産の固定資産評価証明書 | 市区町村の役所 |
遺産分割協議書(遺言書) | 自身で用意 |
不動産を相続する旨がわかる遺産分割協議書・遺言書は、法務局にも提出する必要がある点にご注意ください。
また、戸籍謄本・印鑑証明書は、相続人全員分を取り寄せなければならず、郵送で取得する場合には1件500円程度の郵送料金が上乗せとなります。
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相続した実家を売却せずに住むメリット
実家を相続する方の中には、そのまま住み続けるのではなく、売却や土地活用を考える方も少なくありません。
ここでは売却・土地活用と比較して、実家にそのまま住み続けるメリットについて、以下の3つをご紹介します。
- 住居費・管理費を抑えられる
- 実家を手放すことなく残せる
- 「小規模宅地等の特例」で節税が可能
それぞれ詳しく解説しましょう。
住居費・管理費を抑えられる
現在賃貸物件に住みながら家賃を払っている方の場合、実家に引っ越すことで住居費の節約になるケースがあります。
職場や子どもの学校からの距離が近い立地にある場合には、生活に不便を感じることなく住み替えることができるでしょう。
また、空き家の実家を所有し続ける場合には、定期的なメンテナンスのために管理会社に物件管理を依頼することがありますが、ご自身で居住するのであれば管理費も不要です。
実家を手放すことなく残せる
幼少時代を過ごした思い入れのある実家を手放したくないと考える方にとっても、実家に住み続けるメリットは大きいでしょう。
実家に住むことで金銭的なデメリットや、交通の不便さが生じる場合にも、実家を手放すことに抵抗がある方は検討する余地があります。
なお、実家を手放すことなく所有し続けたいのであれば、実家を戸建て賃貸として貸し出す方法も選択肢です。
「小規模宅地等の特例」で節税が可能
実家などの建物が建っている土地を相続する際には、相続税を計算する際に「小規模宅地等の特例」を利用することができます。
小規模宅地等の特例を受けることで、実家が建つ土地の評価額を、330平米までの面積を上限に80%減額することが可能です。
特に資産価値の高い土地・実家を相続する際には、節税対策として大きなメリットが受けられるでしょう。
ただし特例を受ける要件として、相続が発生した際に被相続人と同居している必要がある点にご注意ください。
相続した実家を売却せずに住むデメリット
実家を相続した場合、不動産の所有者となることから、納付すべき税金や手続きなどが増加することとなります。
相続した実家に住み続けることで発生するデメリットとして、次の3つが挙げられます。
- 固定資産税が発生する
- 修繕やリフォームが必要
- 相続税の納税資金が不足するケースも
一つひとつ詳細に解説していきましょう。
固定資産税が発生する
実家を相続することで、不動産の所有者に対して課される固定資産税の支払いが発生します。
固定資産税は、毎年送られてくる納税通知書・課税証明書などの書類で確認できるため、次の年以降に必要な納付額を容易に調べることが可能です。
なお、相続した実家を空き家として放置してしまうと、「空家等対策の推進に関する特別措置法」における「特定空家等」に認定され、固定資産税が最大6倍になる可能性があります。
住まなくなった空き家は建物の傷みが早くなるほか、近所トラブルの原因になることも考えられるため、売却や土地活用を検討すると良いでしょう。
「今持っている不動産を現金化したい」という方は、売却という形で手放すという選択肢もあります。一括査定サイト「イエウール」を使えば、無料で最大6社から査定を受けられるので高く売ってくれそうな会社が分かります。
修繕やリフォームが必要
築年数を重ねた実家で快適に住み続けたい場合には、定期的な修繕やリフォームを必要とします。
外壁塗装や水回りの設備の交換など、場合によっては高額なリフォーム費用が発生するケースもあります。
そのため長期的なランニングコストを踏まえて、実家に住み続けるかどうかを考える必要があるでしょう。
相続税の納税資金が不足するケースも
資産価値の高い実家を相続した場合、高額な相続税が発生するケースがあります。
相続税の納付は、原則として現金での支払いとなるため、実家以外の財産を相続しなかった場合には納税資金が不足する可能性が出てきます。
相続税の納付は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内と定められているため、期限までに現金を用意できない場合には、家の売却も選択肢となるでしょう。
そのため相続が発生した際には、早めに納付する相続税の目安を調べておき、納税資金の調達方法を検討しておくことが重要です。
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相続した実家に住む場合の注意点
最後に、相続した実家に住み続ける際に注意したいポイントとして、以下の3つをご紹介します。
- 相続登記・相続税申告の期限に注意する
- 相続税は実家を含めた遺産総額で計算する
- 共有名義での相続は避ける
それぞれの注意点を詳しく説明しましょう。
相続登記・相続税申告の期限に注意する
令和6年(2024年)4月1日以降、相続登記には3年以内に期限が設けられます。
また、相続税の申告・納付期限は、前述の通り、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。
それぞれの期限を超過すればペナルティを受ける可能性があるため、十分に注意が必要です。
なお、実家を含めた遺産を相続しない「相続放棄」には、相続開始を知った時から3ヶ月以内の申請期限がある点も押さえておくと良いでしょう。
相続税は実家を含めた遺産総額で計算する
実家を含めた遺産に課される相続税は、不動産・現金・有価証券などのカテゴリごとではなく、すべての遺産を合算した金額で計算します。
実家の評価額のみで相続税を計算することがないよう注意しましょう。
なお、実家に課される相続税の計算方法は、下記の記事でも紹介しているため併せてご参照ください。
共有名義での相続は避ける
遺産分割協議でご自身が実家を相続することに対し、他の相続人からの合意を得られなかった場合や、実家以外の相続財産がない場合には、共有名義で実家を相続するケースもあります。
共有名義では、不動産の所有者を1人ではなく複数人で申請することとなります。
ただし共有名義の不動産は、名義人全員の同意がないと売却・土地活用を進めることができず、二次相続が発生した際には互いに面識のない人物が名義人となる危険性があります。
そのため共有名義での実家の相続は、可能な限り避けた方が良いでしょう。
相続した実家は土地活用する選択肢も
相続登記を済ませた実家は、ご自身の所有物として自由に活用することが可能です。
そのまま住み続ける以外にも、一時的に他人に貸して住んでもらったり、建物を解体して賃貸アパートを建てたりすることもできます。
結婚・出産や子どもの進学などに合わせ、ライフスタイルが変化したタイミングで売却・土地活用を検討してみると良いでしょう。
お持ちの土地に最適な土地活用方法を見つけるためには選択肢を広げて複数のプランを検討してみることをおすすめします。日本最大級の比較サイトイエウール土地活用なら、土地所在地を入力するだけで土地活用プランを取り寄せることができます。
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相続した実家に住むためには名義変更が必要
相続した実家に住み続けるためには、法務局での相続登記を行い、不動産の名義変更を済ませる必要があります。
相続登記では、相続人全員の戸籍謄本や印鑑証明書を取り寄せる必要があるほか、遺産分割協議書・遺言書の提出も必要となるため、早めに書類の準備を進めることが重要です。
また、相続登記には3年以内の期限が設けられるほか、名義変更していない実家は売却・土地活用が困難になるため、早めの手続きを心がけましょう。
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