台風や地震など被災で住宅を失ったら住宅ローンはどうなる|保険を再検討しよう

台風や地震など被災で住宅を失ったら住宅ローンはどうなる|保険を再検討しよう

台風や地震で家が倒壊した場合でも、住宅ローンはそのまま残ります。

今回の記事では、災害で住宅を失ってしまった場合の住宅ローンに関する疑問に、Q&A形式でお答えしていきます。

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災害で家が壊れたら、住宅ローンはどうなりますか?

残念ながら、地震などの災害で住宅が倒壊したとしても、依然として住宅ローンは残ります。住宅ローンは「住宅の存在を保証するサービス」ではなく、あくまで「住宅を購入するためのお金を借りた契約」だからです。
これは他の買い物と同じで、購入したものが後でなくなってしまっても、支払いの義務はなくなりません。しかし、当人にとっては人生の一大事です。
ローンの免除とはならなくてもさまざまな救済措置はありますが、新しい住宅をローンで手に入れれば倒壊した住居のローンと二重に返済しなくてはならず、経済的に大きな負担になってしまいます。残った土地を売却する方法もありますが、その方法については後述します。

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国からの支援金はありますか?

はい、「被災者生活再建支援法」に基づく給付金があります。1995年の阪神・淡路大震災や2011年の東日本大震災の際に、多くの人が「津波で家を失ったため賃貸住宅に入居したが残ったローンの上に賃料を支払うので生活が成り立たない」といった経済的破綻に直面しました。
この法律による給付金は、住宅再建などのために最高で300万円まで支給されますが、大破した家の修復や新築には圧倒的に足りません。再建というよりは「生活の支援」と考えるべきでしょう。
また給付金額も、世帯人数や住宅の被害の程度、選択する住宅の再建方法によって金額が異なり、必ずしも十分な支援が受けられるとは限りません。

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地震保険に入っていれば安心ですか?内容を詳しく教えてください

地震保険は大きな助けになりますが、内容を正しく理解しておくことが重要です。中には漠然と「地震の時に(全額)保証してくれるものに違いない」と思って加入している人もいるかもしれませんが、そんな人こそ詳しく知っておく必要があります。

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地震保険はどのように加入するのですか?

地震保険は、地震・噴火・津波による災害で発生した損失を補償する損害保険の一種です。1966年に「地震保険に関する法律」の制定を受けて、国と民間の損害保険会社が共同で運営する制度として誕生しました。
大きな特徴として、地震保険は単独で加入することができず、必ず火災保険とセットで加入しなくてはなりません。そのため保証内容にも特別な決まりがあります。

保険金はいくら支払われますか?

地震保険で支払われる保険金の額は、セットになっている火災保険の保険金額の30%から50%の範囲内で加入時に設定します。ただし、建物は5,000万円、家財は1,000万円が上限となっており、ローンの返済に充当することもできますが、全額を賄うには十分とは言えない場合があります。
地震・噴火・津波による被害は大規模になることが多いため、政府が再保険することで保険金の支払いを担保しています。

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地震保険の更新で注意することはありますか?

はい、注意が必要です。地震保険は1年から5年ごとに自動継続される契約になっていますが、元になる火災保険は特約をつけない限り自動契約にはなりません。もし火災保険の更新をうっかり忘れてしまうと、付随する地震保険も自動的に解約になり、当然被害を被っても保険金は支払われません。
実際に2016年に起きた熊本地震でもこういったケースが発生しています。地震保険に入っているからと安心せず、契約がきちんと更新されているか定期的に確かめましょう。

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地震保険に未加入の場合、どうすればいいですか?

もし地震保険にまだ未加入なら、ご自身の身を守るためにもすぐに加入を検討しましょう。火災保険に加入していても、地震が原因の損害は保証されないリスクがあるからです。

地震が原因の火事も火災保険ではダメなのですか?

はい、その通りです。火災保険に加入していても、地震や火山の噴火、あるいはそれらによって発生する津波や火災で被害を被っても火災保険は適用されません。どんなに高額な火災保険でも地震保険に入っていなければ保険金は1円も受け取れません。
厳密にいうと、多くの火災保険には「地震火災費用特約」が組み込まれており、地震が原因の火災で家が半焼または全焼した場合、火災保険金の5%が支払われます。しかし5%では保険金額が低く、消失した住宅の撤去費用程度にしかならないことがほとんどです。だからこそ地震保険への加入が必須なのです。
現在加入している火災保険があれば追加で加入(付帯)することができますから、万が一に備えて加入しておくことをおすすめします。

加入する際のコツはありますか?

家財保険もあわせて検討することをおすすめします。後述する「自然災害債務整理ガイドライン」を利用すると、受け取れる保険金が自由財産の上限額である500万円に制限され、それ以上は金融機関に支払わなければならない場合があります。
そこで、あらかじめ地震保険の契約を工夫して家屋500万円、家財250万円の保険金が支払われるようにしておけば、全額が手元に残る可能性があります。これは、たとえ破産しても法律によって生活必需品である家財は取り上げられないことを利用した工夫です。災害にまつわる制度をきちんと把握しておけば、このように万全の備えも可能です。

 

ローン返済のために、他にどんな方法がありますか?

何を差し置いても住宅ローンを返済したい場合は土地を売却するという方法もあります。

住宅は損壊してしまうと最悪資産価値はゼロになってしまいますが、土地の価格がゼロになることはありません。住宅ローン完済の大きな力になってくれることでしょう。

地震後は土地の価格も大きく変動することが予想されます。まずは、市場動向に詳しい不動産会社に査定をしてもらい、土地の価格が現在いくらになるのか確かめましょう。この時気をつけたいのは、査定を1社だけに依頼しないこと。

実は、不動産会社の査定には明確なルールなどがなく、会社によって査定額が異なります。つまり、1社の査定結果だけを見て売却してしまった場合、売却相場より安く売ってしまう場合があるということです。住宅ローンを完済するためにも、なるべく高く売りたいものです。

値付けの際に損をしないように、不動産会社の査定は複数社に依頼するようにしましょう。複数社の査定結果を見ることで、高く売れる不動産会社を見つけることができますし、売却相場も把握できます。

不動産会社の査定を行う際は一括査定サービスを利用すると良いでしょう。一度の申し込みで複数社に査定依頼できるので、忙しい時期に何件も不動産会社を回らずに済みます。

ローンの減額や免除をしてもらえる制度はありますか?

はい、「自然災害債務整理ガイドライン」(以下「ガイドライン」)という制度があります。これは、地震や台風などの自然災害で甚大な被害を受け、保険や共済だけでは生活再建が難しい個人を救済するために策定された、民間の自主的なルールです。

「自然災害債務整理ガイドライン」とは、どんな人を支援するものですか?

このガイドラインは、まさに地震のような大災害による被害者個人を支援するために2015年12月に策定されました。対象となる債務は住宅ローンやリフォームローンだけでなく、自動車ローンやカードローン・消費者金融からの借入など幅広く、事業性のローンまでもが含まれます。

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ガイドラインでは、ローンはどのように減免されるのですか?

この制度は、金融機関との合意に基づいてローンが減免されるものです。例えば、住宅金融支援機構の住宅ローンを利用している個人に対しては、支払いの猶予や返済期間の延長、支払い猶予期間中の金利引き下げなどを行います。
また、自宅が完全に焼失しても残存期間については「住宅ローン減税」を継続できたり、住宅を再建したい人には返済負担が軽減されるよう融資金利の引き下げや返済期間の延長が可能な公的融資(災害復興住宅融資)を利用できたりします。
ただし、これらはあくまでローンなどを軽減する「減免措置」であって、ローンの「免除」ではありません。変わらず返済する義務は残っていることに注意しましょう。

ガイドラインを利用する手続きの流れを教えてください

災害の当事者は心身ともに疲れ切っているため、手続きはできるだけ分かりやすくなっています。「個人版私的整理ガイドライン運営委員会」のウェブサイトでは、手続きの流れが漫画で説明されていますので、参考にすると良いでしょう。大まかな流れは以下の通りです。

運営委員会に相談

住宅ローン完済前の不動産が、地震や津波などによって倒壊した場合、私的整理ガイドライン運営委員会に相談しましょう。現在、運営委員会は東京、岩手、宮城、福島に本部を開設しており、個別相談会も随時行われています。近くに運営委員会がない場合は、電話での相談も承っていますので、コールセンターに連絡してみましょう。

ガイドラインの確認

運営委員会に相談し、ガイドラインの条件に合致するか確認してもらいます。
ガイドライの条件は以下のとおりです。
・名義人が法人ではなく個人や個人事業主である
・震災前まで、支払いの延滞がない
・震災の影響により支払いが困難になっている

ガイドラインの条件をクリアすると、手続きを支援してくれる専門家(弁護士、公認会計士、税理士など)を紹介してもらえます。紹介された専門家と一緒に、申請書類等を作成していきます。

債務整理の申請

陳述書や申請書を専門家と一緒に作成し、運営委員会を通じて住宅ローンを借入れている金融機関に提出します。申請書を提出した後は、支払いを一時的に停止します。
この間、金融機関が督促を行うことや、被災者が該当不動産を処分することは禁止されます。

弁済計画案の提出

倒壊した後の自宅跡地を今後どうするのか、預貯金があればどのくらい返済に充てられるのかなど、弁済計画案を専門家と作成していきます。
このガイドラインは生活支援が目的なので、預貯金のうち500万円を目安とする生活資金や、義援金などは返済計画から除外して考えることができます。そして、完成した弁済計画案を運営委員会を通じて金融機関に提出します。

弁済計画の成立

金融機関より弁済計画の同意書が送られてくると、成立です。弁済計画にそって住宅ローンの支払いが免除・減額されます。これにより、再度マイホーム計画を立てるなど、未来への生活を守ることができます。

ガイドラインを利用するメリットは何ですか?

大きなメリットは2つあります。1つ目は、この手続きは自己破産ではないため、ローンが減免されても信用情報(いわゆるブラックリスト)に載らない点です。今後のクレジットカード作成などにも影響はありません。
2つ目は、手続きをサポートしてくれる専門家への報酬が不要な点です。専門家への報酬は国が援助してくれる支援策ですので、金銭的な負担を感じることなく相談できます。
  • 被災者を救済する
  • 住宅ローンを減免
  • HPで手続きを確認

万が一の災害に備えて、今からできることは?

最近は地震を含む大災害が各地で頻発し、今やどこでどんな災害に見舞われるか予想できません。災害そのものを防ぐことはできませんが、生命の危険はもちろん、住宅ローン被害のような経済的リスクから身を守るためにできることがあります。
これまで見てきたように、地震保険への加入や補償内容の工夫、そして公的ガイドラインによる支援などを十分に理解すれば、あなた自身のライフプランに合った備えが見えてくるはずです。
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