近年増え続けるタワーマンション市場
タワーマンションとは、一般的に20階以上で、高さが60m以上の高層マンションを指します。具体的な階数基準は国や地域によって異なることがありますが、多くの場合は、この基準がタワーマンションの基準となります。
タワーマンション市場は、都市部の人口増加と土地利用の効率化のニーズに応える形で発展し始めました。1970年にはすでに初期のタワーマンションは供給されていましたが、主にビジネス街に近い立地に建設され、限られた層の住民に向けた高級住宅としての位置づけが強いです。
1997年の建築基準法改正後に日影規制や容積率の緩和があっていこう、タワーマンションが年々人気を集めています。
2023年12月末時点でタワーマンション供給数は1,515棟
東京カンティの調査によると、全国でのタワーマンションの供給数は1,515棟、399,638戸となってています。
全国単位で2021年、2022年のデータと比較すると、2021年のタワーマンションの供給数は1,427棟、2022年は1,464棟という結果であったため、緩やかな上昇が続いていることが分かります。
首都圏においてタワーマンションの供給数が最も多いのは、東京で479棟。
これは、全国の31.6%に相当する値です。
東京に次いで、供給数が多かったのが大阪府で、273棟という結果でした。
これは、首都圏の埼玉件や千葉県を上回る値となっています。
参照:東京カンティ、全国における超高層マンションの供給動向&ストック数について調査
東京カンティの調査では、最高階数が20階以上の分譲マンションをタワーマンションとしています。
タワーマンションの修繕が難しいとされる理由
タワーマンションの修繕は、一般的な低中層マンションの修繕に比べて、いくつかの点で難易度が高い場合があります。
これは、タワーマンションの特性と規模が修繕作業に以下のような課題が出るためです。
- 高所作業の必要性と風の影響による危険性が高まる
- 専門的な設備のメンテナンスが必要
- 住民への影響が大きい可能性がある
- コスト面での負担が大きい
タワーマンションの修繕が難しいとされる主な理由を詳しく説明します。
高所作業の必要性と風の影響により危険性が高まる
タワーマンションはその名の通り高層であるため、外壁や窓、バルコニーなどの修繕には高所作業が伴います。高所での作業には特別な機材や技術が必要となり、作業員の安全確保のための厳格な安全対策が求められます。
高所作業は、作業員にとって落下のリスクが伴うため、安全ハーネスやゴンドラなどの安全機材の使用が必須です。また、高所での作業は風や天候の影響を受けやすく、計画された作業が遅延する可能性もあります。これらの要因が作業の難易度を高め、修繕費用の増加にもつながります。
また、高層部では地上よりも風速が高くなる傾向にあるため、作業を困難にすることがあります。特に外壁の塗装や清掃、部品の交換作業などは風の影響を受けやすいです。風によって、作業用のゴンドラが不安定であったり、風によって作業材料が飛ばされるリスクもあり、これらの問題を避けるためには、風の状況を常にモニタリングし、安全を最優先に作業を進める必要があります。
専門的な設備の管理とメンテナンスが必要
タワーマンションには、集中冷暖房システムや高度なセキュリティシステム、大規模なエレベーターシステムなど、特殊な設備が含まれていることが多いです。これらの設備の修繕やメンテナンスには、専門的な知識と技術が必要です。
例えば、エレベーターの修繕には、特定のメーカーの認定を受けた技術者が必要になる場合があります。また、集中冷暖房システムのメンテナンスには、複雑な配管や制御システムの理解が求められます。これらの設備はタワーマンションの快適な生活に不可欠であり、専門業者による適切なメンテナンスが定期的に必要となります。
住民への影響が大きい可能性がある
タワーマンションには多数の住民が居住しており、修繕作業が住民の日常生活に影響を与えることがあります。騒音や振動、作業による通行の制限などが住民の不便や不満を引き起こす可能性があります。したがって、修繕作業を行う際には、住民への事前の通知や説明が重要となります。
また、作業の騒音や振動を最小限に抑えるための工夫や、住民の生活に配慮した作業スケジュールの計画が求められます。住民との良好なコミュニケーションと理解が、スムーズな修繕作業の実施には不可欠です。
コスト面での負担が大きい
上記のような特殊な条件や要求により、タワーマンションの修繕は一般的な住宅に比べて高額になることがあります。特に、高所作業に必要な機材のレンタル費用や専門技術者の人件費は、修繕費用を押し上げる要因となります。
タワーマンションの修繕については、個人で行える範囲とマンションの住人に広範囲に影響が出る作業があります。
マンション単位で修繕を行う際に一回の出費の負担をかけすぎないために、タワーマンションでは、管理費などと同じタイミングで、修繕費の徴収を行っている場合もあります。次の章で詳しく説明します。
タワーマンションの修繕費とは
住宅ローンを組んでマンションを購入した場合、管理費などは毎月の住宅ローンの返済額よりも少ないことが一般的ですが、マンションを所有している以上、このような支払いから逃れることができないのが現状です。
そもそもマンションの修繕費とは、マンションの共用部分や設備の維持・修繕に必要な費用のことを指します。
主な修繕費の用途は以下の通りです。
- 外壁の補修・塗装:風雨や紫外線による劣化を防ぐために行われます。
- エレベーターの保守・点検:安全に使用するために定期的な点検と部品の交換が必要です。
- 空調システムの保守:大規模な空調システムは高額な修理が発生することがあります。
- 共用設備の修理:ロビーや共用廊下の照明、セキュリティシステムなどの修繕。
修繕積立金は毎月将来の修繕費として徴収される
マンションの修繕に必要な修繕費は、建物の維持や一定の年数毎に必要な大規模修繕に備えるため、マンションの所有者から毎月徴収されて積立られていきます。
多くのマンションでは、大規模修繕に対する修繕計画を作成し、試算に基づいた金額を徴収しています。
先述した通り、タワーマンションは、高層階であるため、外壁の貼り替えや配管の交換、通路部分などの共用部分の劣化に対してメンテナンスが必要です。
そのため、修理が必要となった場合や維持管理に使う修繕費は、比較的高額になる傾向があります。
基本的に修繕費は、マンションの所有者が支払う修繕費を使って行われます。
マンションの修繕費は一括支払いでない
大規模修繕に備えた修繕費を一度に徴収してしまうと、百万円単位、マンションの規模によっては一千万円を超える費用が必要となり、住宅ローンの支払いや生活費を考慮しても大きな出費となってしまいます。そのため、予め大規模修繕に対する修繕計画を作成し、試算に基づいた金額を徴収することがほとんどです。
また、大規模修繕に想定される費用も、その時期になってみないとわからないことや、想定外の災害が起こったときに備えて修繕費用は、毎月微収される仕組みになっています。
マンションの修繕費と管理費は別
マンションを購入すると、修繕積立金とは別に「管理費」の支払いが発生します。
この管理費とは、マンションを維持するにあたって、日常的な維持などの管理に必要な経費のことを言います。
管理費が充てられる用途には、以下のようなものがあります。
・清掃やゴミ処理など委託業者への費用
・共用部分で必要な水道光熱費や損害保険の保険料
・エレベーターなどの設備に対するメンテナンス費用
・マンション管理組合の運営費など
委託業者への費用には、マンション管理人やコンシェルジュなどの人件費も含まれます。修繕費とは用途が違うため、別々の支払いが必要になります。
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修繕積立金は値上がりしていく
マンションを購入後、毎月支払う修繕積立金がこの先どのように変化していくのか気になる人も多いのではないでしょうか。注意していただきたい点として、修繕積立金は最初に決まった一定の金額を支払い続けることは少なく、その金額に変化があるということです。
修繕積立金の額はマンションの規模や設備、築年数などによって異なりますが、同じマンションでも修繕費が年々かわることもあります。
基本的に以下の3つの要素を考慮して決定されます。
- 大規模なマンションほど修繕費用も高額になるため、積立金も多く設定されることが多い
- エレベーターや空調システムなどの高度な設備が多いほど、積立金も高くなる
- 築年数が経つほど、修繕が必要になる可能性が高いため、積立金も多めに設定される
マンションの修繕費相場と修繕積立金の変動
先述した通り、修繕費はマンションの規模や築年数によって違いがあるのが一般的です。以下の表は、国土交通省が行った「平成30年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」を基に、修繕費積立金の平均金額を示しています。
年度 | 平均金額(月) |
平成11年度 | 7,378 |
平成15年度 | 9,066 |
平成20年度 | 10,898 |
平成25年度 | 10,783 |
平成30年度 | 11,243 |
この表を見ると、ことがわかります。
また、戸数の多いマンションであっても、大規模修繕にはそれだけの規模の費用がかかり、空きの戸数が多いと、その分修繕積立金の負担が増える場合もあるので注意が必要です。
「平成30年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」によると、空き戸数の割合が20%を超えるものも年々増加傾向にあり、47.9%(+1.2%)ということがわかっています。
このようなことから、タワーマンションなどの戸数が多いマンションでは、大規模修繕にかかる費用と修繕積立金のバランスを保つことが重要だと言えるでしょう。
なぜ修繕積立金が変動するのか?
修繕積立金が変動する主な要因は、「大規模修繕費用の見直し」です。
多くのマンションは、予め大規模修繕に対する修繕計画を作成し、試算に基づいた金額を算出した上で、修繕積立金を徴収します。
しかし、新築マンションを販売する際に、販売個数を増やす目的で、最初の修繕費や管理費を低く設定している場合もあり、年月が経つにつれて修繕費が想定を超えてしまう可能性が高いのです。
そのため、途中で大規模修繕に対する修繕計画を見直しすることとなり、結果的に修繕積立金が増加してしまうという可能性もるので注意が必要です。
マンションの所有者が月々支払う修繕積立金とは別に、大規模修繕などのタイミングで、一時金として臨時で修繕費を徴収する場合があります。
築年数による値上がり
また、築年数が古くなるにつれて修繕積立金も増加するという現象も起こっています。建物は時間が経つとともに様々な部分が劣化していきます。
例えば、外壁は風雨や紫外線の影響を受けて、塗装が剥がれたり、ひび割れが生じたりします。こうした劣化を放置すると、建物全体の美観が損なわれるだけでなく、雨水が内部に侵入して構造自体を傷める原因にもなります。
住環境を快適に保つためにも、共用部分や設備の修繕は重要です。
築年数が経つほど修繕が必要になる可能性が高くなるため、修繕積立金を多めに設定することが一般的です。
さらに、修繕費用は、地震や台風などの災害による不意な修繕が必要な際にも使われます。
しかし、修繕積立金を災害時に使ってしまうと、大規模修繕に備えた修繕費が不足するため、値上げに踏み切る場合もあるのです。
値上がり前に売却も
マンションの修繕費が急激に値上がりしたり、一時金として徴収される前に、マンションの売却を考えている人もいるのではないでしょうか。イエウールでは、マンションの一括査定を無料で行っており、厳選された不動産会社が査定してくれるので安心です。
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大規模修繕のタイミング
マンションの大規模修繕は、構造物や設備によって耐用年数はさまざまです。また、その周期は、マンション毎に作成する大規模修繕に対する修繕計画がベースとなることがほとんどです。従来、マンションの大規模修繕は12年周期目安で行われることが一般的でした。その理由は、築10年を超えたタイル貼りのマンションでは、築13年までに外壁などの工事を行うことが建築基準法で定められていることにあります。
しかし、最近では、大規模修繕の目安である12年周期に囚われることなく、新築物件に限定して最長18年周期に延ばす傾向もあります。
その理由は、マンションの修繕積立金不足が深刻な中で、最新技術を用いることによって、マンションの維持をできる限り延ばすことができるようになったことが挙げられます。
マンション修繕に必要な期間
2000年始め頃から増加したタワーマンションは、2015年頃に大規模修繕を迎えたケースが多く、1フロアで約1カ月の修繕期間が必要だと言われています。
単純に考えても、50階建てのタワーマンションであれば、約50カ月の工事期間が必要だということがわかります。
タワーマンションや比較的戸数の多い大規模なマンションとなると、その分修繕する箇所が多いため、修繕工事にかかる費用だけでなく、工事にかかる期間も長くなる傾向にあります。
また、修繕期間中は住民に対する影響も大きいため、計画的なスケジュール管理と住民への情報提供が重要です。
修繕工事の円滑な進行と住民の負担軽減を図るために、管理組合や専門業者と連携して進めることが求められます。
- 12年周期に修繕を行うのが一般的
- 近年では最長18年周期に周期が延長傾向
修繕費が足りずマンションの修繕ができないことも
タワーマンションを含め、全国的にマンションのニーズが高い一方で、大規模修繕に伴う修繕費の不足が深刻化しています。その結果、修繕時期を迎えても修繕することができないというケースも発生しています。日本は、高齢社会という深刻な社会問題を抱えていますが、この影響はマンションの修繕費にも影響が現れていると言えるでしょう。
マンションの住人も高齢化が進み、毎月の管理費や修繕積立金を支払うことができず、滞納するケースが増加しているのが現状です。
そのため、修繕積立金が思うように徴収できず、修繕費の不足によってマンションの修繕工事が行えないという結果となります。
タワーマンションならではの問題点
タワーマンションの大規模修繕には、一般的なマンションで使用しないような大型の重機や屋上から吊り下げるゴンドラなどを使うことが多くあります。しかし、タワーマンションによっては、クレーンなどの重機が届かないということが発生し、計画通りに修繕できないというケースが発生しています。
また、高層建物の修繕には専門的な技術と知識が必要です。
特に、外壁の修繕や空調システムのメンテナンスなど、高度な技術が求められる作業が多く、信頼できる業者の選定が重要です。また、作業自体も高所で行われるため、安全対策が厳重に求められます。
修繕費の高騰
現在、建設のニーズが高まっている一方で、建設業界全体の人材不足が深刻化しています。また、大規模修繕に必要な資材費などの高騰も伴い、大規模修繕にかかる費用が予想を上回るケースが発生しています。
そのため、当初から計画していた大規模修繕に関わる費用では賄えず、修繕を見送るケースも発生しています。
また、不足した修繕費を臨時で徴収するにしても、住人全員の同意が必要となるなどの手続きが必要なため、なかなかスムーズに補填できないのが現状です。
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