近年増え続けるタワーマンション市場
タワーマンションとは、一般的に20階以上で、高さが60m以上の高層マンションを指します。具体的な階数基準は国や地域によって異なることがありますが、多くの場合は、この基準がタワーマンションの基準となります。
タワーマンション市場は、都市部の人口増加と土地利用の効率化のニーズに応える形で発展し始めました。1970年にはすでに初期のタワーマンションは供給されていましたが、主にビジネス街に近い立地に建設され、限られた層の住民に向けた高級住宅としての位置づけが強いです。
1997年の建築基準法改正後に日影規制や容積率の緩和があっていこう、タワーマンションが年々人気を集めています。
2022年12月末で1,400棟を超える勢い
東京カンティの調査によると、全国でのタワーマンションの供給数は1,464棟を超えていて、首都圏において数が最も多いのは、東京で470棟。続いて、大阪府で263棟という結果でした。
2021年のデータと比較すると、2021年のタワーマンションの供給数は1,427棟であったため、増加しているが、年々急増しているわけではなく、緩やかな上昇が続いていることが分かります。
タワーマンションの修繕が難しいとされる理由
タワーマンションの修繕は、一般的な低中層マンションの修繕に比べて、いくつかの点で難易度が高い場合があります。これは、タワーマンションの特性と規模が修繕作業に以下のような課題が出るためです。
- 高所作業の必要性と風の影響による危険性が高まる
- 専門的な設備のメンテナンスが必要
- 住民への影響が大きい可能性がある
- コスト面での負担が大きい
タワーマンションの修繕が難しいとされる主な理由を詳しく説明します。
高所作業の必要性と風の影響により危険性が高まる
タワーマンションはその名の通り高層であるため、外壁や窓、バルコニーなどの修繕には高所作業が伴います。高所での作業には特別な機材や技術が必要となり、作業員の安全確保のための厳格な安全対策が求められます。
高所作業は、作業員にとって落下のリスクが伴うため、安全ハーネスやゴンドラなどの安全機材の使用が必須です。また、高所での作業は風や天候の影響を受けやすく、計画された作業が遅延する可能性もあります。これらの要因が作業の難易度を高め、修繕費用の増加にもつながります。
また、高層部では地上よりも風速が高くなる傾向にあるため、作業を困難にすることがあります。特に外壁の塗装や清掃、部品の交換作業などは風の影響を受けやすいです。風によって、作業用のゴンドラが不安定であったり、風によって作業材料が飛ばされるリスクもあり、これらの問題を避けるためには、風の状況を常にモニタリングし、安全を最優先に作業を進める必要があります。
専門的な設備の管理とメンテナンスが必要
タワーマンションには、集中冷暖房システムや高度なセキュリティシステム、大規模なエレベーターシステムなど、特殊な設備が含まれていることが多いです。これらの設備の修繕やメンテナンスには、専門的な知識と技術が必要です。
例えば、エレベーターの修繕には、特定のメーカーの認定を受けた技術者が必要になる場合があります。また、集中冷暖房システムのメンテナンスには、複雑な配管や制御システムの理解が求められます。これらの設備はタワーマンションの快適な生活に不可欠であり、専門業者による適切なメンテナンスが定期的に必要となります。
住民への影響が大きい可能性がある
タワーマンションには多数の住民が居住しており、修繕作業が住民の日常生活に影響を与えることがあります。騒音や振動、作業による通行の制限などが住民の不便や不満を引き起こす可能性があります。したがって、修繕作業を行う際には、住民への事前の通知や説明が重要となります。
また、作業の騒音や振動を最小限に抑えるための工夫や、住民の生活に配慮した作業スケジュールの計画が求められます。住民との良好なコミュニケーションと理解が、スムーズな修繕作業の実施には不可欠です。
コスト面での負担が大きい
上記のような特殊な条件や要求により、タワーマンションの修繕は一般的な住宅に比べて高額になることがあります。特に、高所作業に必要な機材のレンタル費用や専門技術者の人件費は、修繕費用を押し上げる要因となります。
タワーマンションの修繕については、個人で行える範囲とマンションの住人に広範囲に影響が出る作業があります。
マンション単位で修繕を行う際に一回の出費の負担をかけすぎないために、タワーマンションでは、管理費などと同じタイミングで、修繕費の徴収を行っている場合もあります。次の章で詳しく説明します。
タワーマンションの修繕費とは
住宅ローンを組んでマンションを購入した場合、管理費などは毎月の住宅ローンの返済額よりも少ないことが一般的ですが、マンションを所有している以上、このような支払いから逃れることができないのが現状です。
そもそもマンションの修繕費とは、外壁の貼り替えや配管の交換、通路部分などの共用部分の劣化によって修理が必要となった場合や維持管理に必要な経費のことを言います。
一般的に、マンションなどの建物は年月が経つにつれて劣化していくものと考えられており、一定の年数毎に計画的な修繕が必要となっています。修繕費は、マンションの所有者が支払う修繕費を使って行われます。
修繕積立金は毎月将来の修繕費として徴収される
マンションの修繕に必要な修繕費は、建物の維持や一定の年数毎に必要な大規模修繕に備えるため、マンションの所有者から毎月徴収されて積立られていきます。多くのマンションでは、大規模修繕に対する修繕計画を作成し、試算に基づいた金額を徴収しています。
管理費とは別
マンションを購入すると、修繕積立金とは別に「管理費」の支払いが発生します。この管理費とは、マンションを維持するにあたって、日常的な維持などの管理に必要な経費のことを言います。管理費が充てられる用途には、以下のようなものがあります。
・清掃やゴミ処理など委託業者への費用
・共用部分で必要な水道光熱費や損害保険の保険料
・エレベーターなどの設備に対するメンテナンス費用
・マンション管理組合の運営費など
委託業者への費用には、マンション管理人やコンシェルジュなどの人件費も含まれます。修繕費とは用途が違うため、別々の支払いが必要になります。
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修繕積立金として月々支払わなければいけない
マンションを購入すると、管理費とは別に修繕費の支払いが発生します。修繕費は、日常的な維持管理とは違い、外壁の張り替えなどの大規模な工事が必要となるため、それだけ費用も高額になります。一括支払いでない理由
大規模修繕に備えた修繕費を一度に徴収してしまうと、百万円単位、マンションの規模によっては一千万円を超える費用が必要となり、住宅ローンの支払いや生活費を考慮しても大きな出費となってしまいます。そのため、予め大規模修繕に対する修繕計画を作成し、試算に基づいた金額を徴収することがほとんどです。また、大規模修繕に想定される費用も、その時期になってみないとわからないことや、想定外の災害なども理由の一つに挙げられます。
修繕費の相場
修繕費は、マンションの規模や築年数によって違いがあるのが一般的です。築年数の古いマンションの方が、修繕積立金が低いと考えがちですが、築年数が古いと、それだけ修繕に必要な部分が増えることもあり、一概には言えません。また、新築マンションを販売する際に、販売個数を増やす目的で、最初の修繕費や管理費を低く設定している場合もあり、年月が経つにつれて修繕費が増えるという可能性もあるため注意が必要です。
以下の表は、国土交通省が行った「平成30年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」を基に、修繕費積立金の平均金額を示しています。
修繕積立金の変化
年度 | 平均金額(月) |
平成11年度 | 7,378 |
平成15年度 | 9,066 |
平成20年度 | 10,898 |
平成25年度 | 10,783 |
平成30年度 | 11,243 |
この表を見ると、年々、修繕積立金の平均金額が増加していることがわかります。
また、戸数の多いマンションであっても、大規模修繕にはそれだけの規模の費用がかかり、空きの戸数が多いと、その分修繕積立金の負担が増える場合もあるので注意が必要です。
「平成30年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」によると、空き戸数の割合が20%を超えるものも年々増加傾向にあり、47.9%(+1.2%)ということがわかっています。
このようなことから、タワーマンションなどの戸数が多いマンションでは、大規模修繕にかかる費用と修繕積立金のバランスを保つことが重要だと言えるでしょう。
- 修繕費は月々支払う
- 年々増加傾向
- 空き戸数でも影響大
修繕積立金は値上がりしていく
マンションを購入後、毎月支払う修繕積立金がこの先どのように変化していくのか気になる人も多いのではないでしょうか。修繕積立金は、最初に決まった一定の金額を支払い続けることは少なく、その金額に変化があることを想定しておきましょう。大規模修繕の見直し
多くのマンションは、予め大規模修繕に対する修繕計画を作成し、試算に基づいた金額を算出した上で、修繕積立金を徴収します。しかし、新築マンションなどで、販売促進のために、最初の修繕積立金を低く設定していることが影響する場合があります。そのため、途中で大規模修繕に対する修繕計画を見直しすることとなり、結果的に修繕積立金が増加してしまうという可能性もるので注意が必要です。
築年数による値上がり
最近では、新築のマンションにおける初期の修繕積立金を低く設定している場合があり、築年数が古くなるにつれて修繕積立金も増加するという現象も起こっています。また、地震や台風などの災害による不意な修繕の際に、修繕積立金を使ってしまうと、大規模修繕に備えた修繕費が不足するため、値上げに踏み切る場合もあります。一時金の支払い
マンションの所有者が月々支払う修繕積立金とは別に、大規模修繕などのタイミングで、一時金として臨時で修繕費を徴収する場合があります。また、修繕の際に、積み立てた修繕費が足りない場合もあり、どのような計画がなされ、一時金の支払いが必要になるかということは、マンションの管理組合によってさまざまです。値上がり前に売却も
マンションの修繕費が急激に値上がりしたり、一時金として徴収される前に、マンションの売却を考えている人もいるのではないでしょうか。イエウールでは、マンションの一括査定を無料で行っており、厳選された不動産会社が査定してくれるので安心です。大規模修繕のタイミング
マンションの大規模修繕は、構造物や設備によって耐用年数はさまざまです。また、その周期は、マンション毎に作成する大規模修繕に対する修繕計画がベースとなることがほとんどです。しかし、マンションの大規模修繕は、12年周期で行われることが多くなっています。その理由は、築10年を超えたタイル貼りのマンションでは、築13年までに外壁などの工事を行うことが建築基準法で定められていることにあります。
また、2000年始め頃から増加したタワーマンションは、2015年頃に大規模修繕を迎えたケースが多く、1フロアで約1カ月の修繕期間が必要だと言われています。単純に考えても、50階建てのタワーマンションであれば、約50カ月の工事期間が必要だということがわかります。
最近は周期を延ばす傾向も
最近では、大規模修繕の目安である12年周期に囚われることなく、新築物件に限定して最長18年周期に延ばす傾向もあります。その理由は、マンションの修繕積立金不足が深刻な中で、最新技術を用いることによって、マンションの維持をできる限り延ばすことができるようになったことが挙げられます。修繕工事の内容
マンションの大規模修繕では、主に以下のような工事が行われます。- タイルの貼り替え
- 外壁のひび割れ補修
- 鉄筋爆裂補修
- シーリング工事
- 防水工事
- 屋上修繕
- 配管交換
- 耐震補強など
この他に、廊下やエントランスなどの床面工事やバルコニーの手すり根元爆裂補修工事なども行われます。
しかし、タワーマンションや比較的戸数の多い大規模なマンションとなると、その分修繕する箇所が多いため、修繕工事にかかる費用だけでなく、工事にかかる期間も長くなる傾向にあります。
- 12年周期が一般的
- 周期が延長傾向で、最長18年周期
- 主にタイルの張り替えや外壁、屋上を修繕する
修繕費が足りずマンションの修繕ができないことも
タワーマンションを含め、全国的にマンションのニーズが高い一方で、大規模修繕に伴う修繕費の不足が深刻化しています。その結果、修繕時期を迎えても修繕することができないというケースも発生しています。住人の高齢化
日本は、高齢社会という深刻な社会問題を抱えていますが、この影響はマンションの修繕費にも影響が現れていると言えるでしょう。マンションの住人も高齢化が進み、毎月の管理費や修繕積立金を支払うことができず、滞納するケースが増加しているのが現状です。そのため、修繕積立金が思うように徴収できず、修繕費の不足によってマンションの修繕工事が行えないという結果となります。
タワーマンションならではの問題点
タワーマンションの大規模修繕には、一般的なマンションで使用しないような大型の重機や屋上から吊り下げるゴンドラなどを使うことが多くあります。しかし、タワーマンションによっては、クレーンなどの重機が届かないということが発生し、計画通りに修繕できないというケースが発生しています。修繕費の高騰
現在、2年後の東京オリンピックに向けて、建設のニーズが高まっている一方で、建設業界全体の人材不足が深刻化しています。また、大規模修繕に必要な資材費などの高騰も伴い、大規模修繕にかかる費用が予想を上回るケースが発生しています。そのため、当初から計画していた大規模修繕に関わる費用では賄えず、修繕を見送るケースも発生しています。また、不足した修繕費を臨時で徴収するにしても、住人全員の同意が必要となるなどの手続きが必要なため、なかなかスムーズに補填できないのが現状です。
- 住人の高齢化問題
- 重機が不適応
- 修繕費の高騰
修繕費はこんな用途に使われる
マンションの修繕費は、住人が長い年月をかけて積み立ててきた大切な費用です。その用途は、定期的に行う大規模修繕に充てられます。しかし、社会情勢やマンションの特性によっては、決して安いとは言えない修繕積立金が値上がりする可能性も大いにあります。特に、タワーマンションを購入する際には、大規模修繕の周期を延長する工夫がされているものの、戸数が多いことなどが原因で修繕費の値上がりが懸念されるため、購入時よりも値上がりすることを想定しておく方が良いと言えるでしょう。
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