軽量鉄骨造のアパートは、19年の法定耐用年数が定められています。
そのため築20年を経過するタイミングで建て替えを検討する方も多いですが、法定耐用年数が過ぎても十分住み続けられるケースも少なくありません。
建物の状況によっては、建て替えよりもリフォーム・リノベーションや、管理する不動産会社の変更を行う方が、収益性の改善につながることもあります。
そこで本記事では、軽量鉄骨造アパートの建て替え時期の目安と、建て替えるメリット・デメリット、建て替えにかかる費用について解説します。
アパート経営の初期費用や維持費用については、以下の記事をご覧ください。
軽量鉄骨造アパートの建て替え時期=法定耐用年数ではない
アパートの建て替えを検討する時期の目安となるのが、建物の耐用年数・寿命ではないでしょうか。
建物の耐用年数を判断する指標としては、税務上で使われる「法定耐用年数」があります。
法定耐用年数とは、建物の建築費用を毎年少しずつ経費に計上する「減価償却」で使われる期間です。
簡易的な例として、新築に1,900万円かかった軽量鉄骨造アパートの場合は、法定耐用年数が19年のため、1,900万円を19で割った100万円を毎年の確定申告で経費計上することが可能です。
このように法定耐用年数は、税務上の建物の寿命を指す目安に過ぎないため、物理的な建物の寿命とは一致しません。
法定耐用年数を過ぎると、減価償却費の経費計上ができなくなることから、節税面ではやや不利となりますが、すぐに建て替えが必要になるわけではない点を押さえておきましょう。
軽量鉄骨造アパートの建て替え時期の目安
税金対策のために減価償却費を計上する目的で、築19年を目安にアパートを建て替える選択肢もあります。
しかし収益性を向上させるためには、別の指標で建て替え時期を決める方が有利になるケースも考えられます。軽量鉄骨造アパートの建て替え時期の目安として挙げられるポイントは、以下の5点です。
- 築30年以上が経過している
- 空室率が50%以上
- リフォーム費用が高額化している
- デザイン・間取りが時代に合っていない
- 相続税対策を行いたい
それぞれ紹介します。
築30年以上が経過している
軽量鉄骨造のアパートの物理的な寿命は約30年とされています。
そのため新築から30年以上を経過している場合は、建て替え時期の目安となるでしょう。
軽量鉄骨造のアパートでは、10年〜15年ごとに外壁・屋根の工事や、水回りのリフォーム工事が必要となります。
リフォーム工事の2回目または3回目を迎えるタイミングで建て替えを行うと、費用対効果を高めることができるでしょう。
空室率が50%以上
空室率が50%を越えるなど、大半の部屋が空室で収益性が悪化している場合も、建て替え時期の目安です。
アパートの建て替えでは、入居者が残っている場合には立ち退き交渉や立ち退き料の支払いが発生します。
空室が多ければ立ち退きにかかるコストや労力も軽減できるため、空室率が50%を超えた時点で新規募集を停止して建て替えの準備を進めても良いでしょう。
リフォーム費用が高額化している
部屋や設備を維持・修繕するためのリフォーム費用が以前と比較して高額になってきたタイミングも、建て替え時期の目安になります。
キッチンやユニットバス、外壁や屋根など、住宅の設備にもそれぞれ耐用年数・寿命が存在します。
多くの設備は10年〜15年で寿命を迎えるため、10年〜15年ごとにリフォームが必要です。
築年数が経過すれば、建て替え費用とほぼ同等の費用がかかる耐震補強・断熱補強工事を必要とするケースも多くなります。
その場合には、リフォームではなく建て替えを行った方が費用対効果が高まるでしょう。
デザイン・間取りが時代に合っていない
建物や部屋のデザイン・間取りが時代遅れとなっており、入居者のニーズとかけ離れている場合にも建て替えのタイミングと言えます。
たとえば一人暮らし向けのアパートでは、トイレや洗面台が一体化した3点ユニットバスや和室は、入居者が見つかりにくい原因となります。
一方で近年は、若い世代の中にはロフト付きのワンルームアパートを好む人も増えています。
こうした入居者のニーズに対応する建て替えを行うと、収益性が向上しやすくなるでしょう。
ご自身の土地でアパート経営を考える場合は、今一度土地立地などについて確認しニーズにあったアパートを建てる必要があります。
相続税対策を行いたい
相続税対策を考えるタイミングも、アパートの建て替えが選択肢となります。
銀行のローンを利用してアパートを建て替える場合には、ローン残高を相続財産から差し引くことができるため、相続税の課税額を抑えることにつながります。
賃貸アパートの相続では、空室率が低い(満室に近い)ほど評価額が下がり、税負担を軽減できるメリットもあります。
築浅の収益性の高いアパートを建てることで、家族に残せる大きな資産ともなるでしょう。
相続税対策を重視する場合は、ローン残高を増やし、空室率を下げるためのアパートの建て替えを検討しても良いでしょう。
相続税対策を目的としてアパートの建て替えを検討する土地オーナーの方は少なくありません。ただ、土地の広さや立地によって「どのくらい節税できるのか」が異なってきます。
アパートの建て替えについて考え始めたら、早い段階で信頼できるパートナーを見つけることをお勧めします。
それはハウスメーカーの営業担当だったり、税理士だったりするでしょう。相続税対策として何が最適なのか、いろいろな立場の人から話を聞くことが重要です。
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活用事例:地元のニーズに応えて 新たな価値を生み出す土地活用
エリア | 東京都 |
延べ床面積(㎡) | 298.11 |
東京都・城南エリア。品川駅や羽田空港などへのアクセスに便利で、近年開発が進む地域に3階建ての賃貸住宅と3世帯が入るご自宅が完成しました。
オーナーさまご家族は、高齢のお母さまに代わり、賃貸住宅経営を行っています。
「元々この敷地には賃貸住宅と2軒の戸建が建っていたのですが、共に築40年以上経っており、耐震面も不安だったので建て替えを検討していました。以前の賃貸住宅には3戸すべて入居しており、単身者向けのニーズがありました」。
そこで単身者向けの賃貸住宅と自宅を一度に建て替えする計画がスタートしました。
「以前、自宅のリフォームを担当してくれた業者さんからミサワホームの評判を聞いており、相談に伺いました」。
広い敷地を活用して1棟の大きな賃貸併用住宅を建てる案もありましたが、ミサワホームが提案したのは、賃貸住宅と自宅を分けて建てるプランでした。ミサワホーム株式会社の土地活用事例
軽量鉄骨造アパートを建て替えるメリット
古い軽量鉄骨造アパートの建て替えには、リフォームや売却などの手段と比較して、以下の3つのメリットがあります。
- キャッシュフローが改善する
- 売却価格が高まる
- 所得税・相続税の節税効果が得られる
それぞれ詳しく紹介しましょう。
キャッシュフローが改善する
軽量鉄骨造アパートを建て替える場合は、キャッシュフローが改善し、収益性が向上するメリットがあります。
築古の軽量鉄骨造アパートでは、空室を埋めるための家賃の値下げやリフォーム代、不動産会社への手数料などが増加し、高い収益性は見込めません。
一方で新築アパートに建て替えると、入居者が集まりやすく家賃収入が安定する可能性が出てきます。
また、新築から法定耐用年数の期間は、減価償却費を計上して手元に残る現金が増えるのもメリットです。
売却価格が高まる
新築アパートを建てることで、土地の売却を考える際にも有利になります。
19年の法定耐用年数を過ぎた軽量鉄骨造アパートの資産価値は、建物の価値がゼロになり、土地の価値のみで評価されます。
そのためアパートを敷地ごと売却する際にも、売却価格が低くなりがちです。
そこで新築の軽量鉄骨造アパートに建て替えることで、将来の土地売却を有利に進めることが可能になります。
所得税・相続税の節税効果が得られる
前述した通り、ローンを利用して軽量鉄骨造アパートを新築し、空室率を改善することにより、相続税対策につながります。
法定耐用年数を経過した軽量鉄骨造アパートを新築に建て替えることによって、減価償却費を計上できるようになり、所得税を軽減できる点もメリットです。
アパートの建て替え費用でその年の不動産所得が赤字になったとしても、損益通算により給与所得・事業所得などにかかる所得税を減らせる効果もあります。
軽量鉄骨造アパートを建て替えるデメリット
高額な建て替え費用がかかる
軽量鉄骨造アパートの建て替えに際しては、古い建物の解体費用に加え、入居者がいる場合には立ち退き料が発生するほか、新しい建物の新築費用も必要となります。ローンを申し込む場合には、手数料などの諸費用も必要です。
不動産所得の赤字は、損益通算で他の所得と合算したり、繰越損失額の控除を利用して3年間赤字を繰り越すことも可能です。
そのため税制面での大きなデメリットはありませんが、ご自身の資産状況を十分検討して、負担にならない範囲で建て替え予算を決めると良いでしょう。
家賃収入ゼロの期間が発生する
一般にアパートの建て替えでは、古いアパートの解体に1週間〜1ヶ月、新しいアパートの新築に3ヶ月(2階建ての場合)の工期が必要とされます。
また、立ち退き交渉の6ヶ月前〜1年前には新規募集をストップするほか、立ち退き交渉が難航する可能性も踏まえると、6ヶ月〜1年半ほど家賃収入がない期間が生まれます。
アパートローンの残高が残っている場合や、多額の出費の予定がある場合などは、建て替え時期に注意が必要です。
入居者の立ち退き交渉が必要
建て替えるアパートに入居者がいる場合には、立ち退き交渉や立ち退き料の支払いが必要です。
この立ち退き交渉は、不動産会社や管理会社に代行を依頼することができず、オーナー自身で対処しなければなりません。
弁護士に依頼することも可能ですが、弁護士に依頼しても立ち退き料の減額は難しいほか、弁護士費用が必要となるためコスト増となります。
立ち退き交渉や立ち退き料の支払いを避けるためには、定期借家契約への切り替えを検討することも選択肢です。
また、老朽化したアパートの建て替えの場合、旧耐震基準のアパートでない限り「建物の老朽化による強度不足」という理由だけで立ち退き料なしに立ち退きを要求することは難しいでしょう。そんなときは、施工会社に立ち退きの進め方など相談してみましょう。
いずれにしても、建て替えを検討し始めた段階で施工会社から新しいアパートの建築費用の見積もりをもらう必要があるでしょう。建築費用の見積もりをもらうときは複数の施工会社に問い合わせて建築プランを比較するのがポイントです。
イエウール土地活用ならアパートやマンションの建築実績豊富な大手ハウスメーカーに一括で問い合わせをすることができます。
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軽量鉄骨造アパートの建て替え費用
最後に、軽量鉄骨造アパートの建て替えにかかる費用として、以下の3つの費用の相場をご紹介します。
- 古いアパートの解体費用
- 新しいアパートの新築費用
- 入居者への立ち退き料
それぞれ解説します。
古いアパートの解体費用
アパートの解体費用は、解体費用の坪単価に延べ床面積を掛けることで概算できます。
軽量鉄骨造の1坪あたり解体費用の相場は、約7万円〜8万円です。
延べ床面積が100坪だった場合には、700万円〜800万円が解体費用となります。
新しいアパートの新築費用
アパートの新築費用も、坪単価に延べ床面積を掛けて費用目安を計算します。
軽量鉄骨造の新築の場合、1坪あたりの新築費用の相場は約76万円で、延べ床面積100坪の場合は7,600万円が新築費用です。
ただし、坪単価は地域によって異なるほか、ローンを組む場合には手数料などの諸費用も必要となる点に注意しましょう。
入居者への立ち退き料
入居者がいる場合に必要な立ち退き料は、家賃の約6ヶ月分が相場です。
家賃5万円の軽量鉄骨造アパートの場合には、一戸あたり約30万円が立ち退き料の目安となるでしょう。
ただし、立ち退き料には法的な根拠はなく、オーナーと入居者との間で話し合いで決めることになります。
そのため建て替え時期を前倒ししたい場合には、数ヶ月分の上乗せや引越し費用の上乗せなどによって、迅速な退去を交渉するのも選択肢です。
軽量鉄骨造アパートの建て替え時期は築年数・空室率をもとに考える
軽量鉄骨造アパートの法定耐用年数は19年ですが、実際の建物の寿命は約30年とされます。
10年〜15年ごとに必要な大規模リフォームも踏まえれば、築30年以上を経過した場合に、建て替えを検討するケースが多くなるでしょう。
また、所得税や相続税の節税を考える場合も、新築への建て替え時期の目安となります。
空室が多ければ立ち退き交渉・立ち退き料の負担も減るため、空室率をもとに建て替え時期を考えるのもおすすめです。
なお、軽量鉄骨造アパートの建て替えを依頼する会社選びでは、「イエウール土地活用」をご活用ください。「イエウール土地活用」では、お持ちの土地にとって最適な土地活用プランを、大手ハウスメーカーや建築会社から一括で取り寄せることができます。
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