老朽化したアパートの建て替えには、アパートローンの融資が受けられます。
ただし、新築時とは異なり、建て替えには解体費用や立ち退き料が発生するほか、リフォームとの費用対効果を慎重に比較検討した方が良いケースもあります。
本記事ではアパートの建て替えを検討されている方に、ローンを組むメリットやデメリット、審査条件、審査に通りやすくなるコツなどを解説します。
アパート建築費については以下の記事をご覧ください。
アパートの建て替えで融資を受ける際の審査条件
アパートの建て替えに際しては、建築費用のほか、既存の建物の解体費用や、入居者への立ち退き料の支払いなど、諸費用が発生します。
物件によっては数千万円の資金が必要になる場合もあり、多くのオーナーがアパートローンを利用して建て替えています。アパートローンの基礎知識として、まずは次の4つのポイントを把握しましょう。
- 年齢制限
- 返済期間
- 融資限度額・金利
- 審査は厳格化へ
それぞれ解説します。
年齢制限
住宅ローンとは異なり、アパートローンでは原則として融資の年齢制限はありません。
アパートローンは投資用不動産を購入する目的で利用され、住宅ローンは居住用不動産の購入で使われます。そのためアパートローンでは、不動産の担保価値や収益性を中心に審査が行われ、住宅ローンに比べると、申込者の年齢・年収などの影響が少ないとされます。
そのため高齢のオーナーでも融資を受けやすいことから、後述のように、相続税対策としてアパートローンを組み、建て替えを行うケースも多くあります。
返済期間
アパートローンの返済期間は、一般に建物の「法定耐用年数」が上限とされます。法定耐用年数とは、建築費用を経費として計上する際に、減価償却の計算で使われる、税務上の使用期限を指します。
木造アパートであれば、法定耐用年数は22年のため、アパートローンを組む場合の返済期間は22年までとなります。
一方、鉄筋コンクリート造の法定耐用年数は47年ですが、アパートローンの返済期間は最長30年程度に設定されているため、返済期間は47年ではなく、最長期間に短縮されることとなります。なお、アパートの構造ごとの法定耐用年数は、以下の通りです。
構造 | 法定耐用年数 |
---|---|
木造・合成樹脂造 | 22年 |
木骨モルタル造 | 20年 |
鉄骨鉄筋コンクリート造 | 47年 |
鉄筋コンクリート造” | |
れんが造・石造・ブロック造 | 38年 |
鉄骨造(鉄骨材の肉厚が3mm以下) | 19年 |
鉄骨造(鉄骨材の肉厚が3〜4mm) | 27年 |
鉄骨造(鉄骨材の肉厚が4mm以上) | 34年 |
出典:国税庁ホームページ「主な減価償却資産の耐用年数表」
アパートローンの融資限度額・金利
アパートローンの融資の限度額は、金融機関によって1〜5億円が上限となっています。その範囲内で、物件の担保価値をもとに借入可能な金額が算出されます。
担保価値の評価額は金融機関によって異なりますが、路線価などを使って算出した市場価格の70%程度が目安となります。
そのため立地条件の良い土地は、融資の限度額も引き上げられる傾向にあります。なお、アパートローンの金利は住宅ローンと比較すると高めに設定されており、金融機関によって、1%〜5%ほどの幅があります。
住宅ローンと同様に固定金利・変動金利から選択可能であり、過去にアパート経営の実績があると金利が低く設定されやすくなります。
アパートローンの審査は厳格化している
2020年4月の民法改正により、大手銀行などでは、これまで必要だった「連帯保証人」をアパートローンでは不要とする方向としています。
連帯保証人を不要とすることが一般的になった場合、オーナー個人の属性や物件の担保価値のみで審査が行われるため、従来よりも審査に通りにくくなる可能性もあります。
オーナー自身が高齢で、相続税対策のためにアパートの建て替えを検討している場合などは、配偶者や子どもを連帯保証人に選ぶなど、審査に通りやすくする工夫も必要となるでしょう。
ローンを借りる際に、心強い味方になるのはアパートの施工会社です。金融機関との交渉に慣れており、資金繰りについてもローン以外の解決策も見つかる可能性があります。企業によっては、知見を生かして経営状態に応じた修繕や建て替えの提案を行ってくれる可能性もあります。
しかし、ローンや経営状態の相談をするため、信用できるかをきちんと比較しなければいけません。ただ、施工会社に一社ずつ問い合わせるのは手間がかかります。
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活用事例:老朽化に悩まされていた事業用ビルから賃貸併用住宅へ
エリア | 東京都 |
土地面積(㎡) | 304.27 |
延べ床面積(㎡) | 1549.09 |
工法 | 鉄筋コンクリート造(RC造) |
(大東建託株式会社の土地活用事例)
融資を受けてアパートを建て替えるメリット
融資を受けてアパートを建て替えることで、以下のようなメリットが得られます。
- 収益性が改善する
- 節税対策に役立つ
- レバレッジ効果が得られる
それぞれ解説します。
収益性が改善する
老朽化して集客力が下がったアパートを建て替えることにより、空室率や収益性が改善し、家賃収入を増やせるメリットが得られます。
建て替えにより新築物件となるため、いずれ必要となる修繕費やリフォーム費用などの発生を先に延ばせる利点もあります。
また、集客効果が高まることで広告費を節約できるほか、入居者の入れ替わりを抑えて不動産会社に支払う仲介手数料を減らすことも可能です。
節税対策に役立つ
古いアパートの借入金を完済している場合、新たに融資を受けてアパートを建て替えることで、節税対策にもつながります。
所得税の計算時に、資産価値の減少を計上する「減価償却費」を用いて利益を軽減できることによります。しかし減価償却費を計上できるのは法定耐用年数までのため、たとえば木造アパートでは22年を超えると、利益が多く残り、所得税が増加する可能性もあるため注意しましょう。
アパートの建て替えにより、法定耐用年数がリセットされれば、再び減価償却費を計上して節税効果を高められます。また、相続税計算の際にも、財産総額から借入金を差し引けるため、課税金額を減らせるメリットがあります。
レバレッジ効果が得られる
自己資金のみではなく、金融機関からの融資を受けてアパート経営をすることにより、少ない資金で大きな収益性を得ることが可能です。
一般にレバレッジ効果(てこの原理)と呼ばれるメリットで、不動産投資の魅力の一つです。すでにアパート経営の実績がある方の場合、貯めてきた家賃収入により、100%自己資金でのアパートの建て替えが可能な方も少なくないでしょう。
その場合にも、金融機関からの融資を活かして、より資産価値の高いアパートを建築することで、高い収益性を得ることにつながります。
融資を受けてアパートを建て替えるデメリット
リフォームと比較すると、アパートを建て替える場合には以下のようなデメリットも発生します。
- 建て替えには多額の費用がかかる
- 入居者の立ち退きが必要
それぞれ詳しく解説します。
建て替えには多額の費用がかかる
アパートを建て替える場合には、リフォームと比較すると高額な費用がかかります。
ローンを組む場合には借入金額も増大するため、返済負担が大きくなるデメリットが発生します。
維持修繕リフォームを行っても入居者がつかない場合などは、建て替えも選択肢になりますが、その前に、家賃を引き下げたり、不動産会社を見直したりして空室対策を行うことも検討しましょう。
入居者の立ち退きが必要
アパートを建て替えたい場合に入居者がいると、入居者の立ち退きが必要となります。
立ち退きの打診は、建て替えの6ヶ月以上前から、貸主自身もしくは弁護士が行う必要があり、家賃の6ヶ月分程度を立ち退き料として支払う必要が発生します。
立ち退きについては、期間・費用・手間がかかるため、建て替えの時期をよく検討することが大切です。
老朽化したアパートの建て替えの場合、旧耐震基準のアパートでない限り「建物の老朽化による強度不足」という理由だけで立ち退き料なしに立ち退きを要求することは難しいでしょう。そんなときは、施工会社に立ち退きの進め方など相談してみましょう。
いずれにしても、建て替えを検討し始めた段階で施工会社から新しいアパートの建築費用の見積もりをもらう必要があるでしょう。建築費用の見積もりをもらうときは複数の施工会社に問い合わせて建築プランを比較するのがポイントです。
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アパートの建て替えで融資を受けやすくするコツ
アパートの建て替え費用の融資を受ける場合、借入金額を減らしたり、根拠のある収益性を示したりすることで、審査に通りやすくなります。審査のハードルを下げるコツとして、以下の3つを紹介します。
- 家賃収入の約50%を返済に充てる
- 融資額の10%以上の自己資金を用意する
- 事業計画書を作成する
家賃収入の約50%を返済に充てる
一般に、アパートローンの適正な返済比率は家賃収入の50%程度といわれています。
そのため家賃収入の50%程度を返済額とすることにより、融資を受けやすくなります。50%の返済比率であれば、仮に、空室率が全国平均の20%となった場合でも、まだ80%は稼働していることになり、返済は十分に可能となるためです。
融資額の10%以上の自己資金を用意する
アパートの建て替え費用の融資を受ける際には、融資総額の約10%以上の自己資金を用意することがポイントです。
自己資金を充てて借入金額を減らすことにより、審査に通りやすくなります。必要な自己資金の金額は、返済期間や物件の担保価値などによって変わるため、事前に金融機関と相談すると安心でしょう。
事業計画書を作成する
アパートローンは不動産投資事業を行う方向けの融資のため、「事業計画書」の内容が審査でも考慮されます。
事業計画書により、具体的な収支計画を伝えることで、金融機関にとっても、完済までの見通しが立ちやすくなります。
具体的な家賃の想定や解体費用を含めた事業費、空室が発生した場合のシミュレーションなどを客観的に盛り込むと良いでしょう。
アパートの建て替えにかかる費用の目安
最後に、アパートの建て替えに必要となる、下記の3つの費用について解説します。
- 立ち退き料
- 解体費用
- 建築費用
それぞれの相場をお伝えします。
立ち退き料
前述のように、建て替えるアパートに入居者がいる場合には、立ち退き料が発生します。
料金の定めは特にありませんが、一般的な相場は、一世帯あたり家賃の約6ヶ月分となっています。
具体的な金額については入居者との話し合いとなるため、入居者と良好な関係が築けている場合には安くなる可能性もあります。反対に、なかなか立ち退いてもらえず揉めてしまう場合には、追加費用として引越し費用の上乗せなどをするケースもあります。
解体費用
アパートの解体費用は、「アパートの延べ床面積 × 解体費用の坪単価」により概算できます。解体費用の坪単価はアパートの構造によって異なり、相場としては以下の通りです。
- 木造:4万円〜6万円
- 鉄骨造:7万円〜8万円
- 鉄筋コンクリート造:8万円〜9万円
なお、アパートローンを取り扱う金融機関の中には、みずほ銀行など解体費用も含めた金額で融資を受けられる場合もあるため、申し込む際に確認してみると良いでしょう。
建築費用
新しいアパートの建築費用は、解体費用と同様の計算式で、「アパートの延べ床面積 × 建築費用の坪単価」により金額の目安がわかります。アパートの構造ごとの坪単価は、全国平均で次の通りです。
- 木造:約56万円(平米単価17万円)
- 鉄骨造:約83万円(平米単価25万円)
- 鉄筋コンクリート造:約86万円(平米単価26万円)
- 鉄骨鉄筋コンクリート造:約90万円(平米単価27万円)
- コンクリートブロック造:約73万円(平米単価22万円)
実際にアパート建築費がいくらになるのか知りたい場合は、こちらのツールで試算してみましょう。
アパート建築費シュミレーター
新築アパートを建築する際は、アパート本体(躯体)、仕上げ、設備それぞれに建築費用がかかってきます。
試算条件を入力していただくと過去の建築事例をもとに、建築する際の概算費用を試算することができます。
試算条件を入力し、「この条件でシュミレーションする」をクリックしてください。 予想建築費が、画面下部に表示されます。
坪数
坪
建ぺい率
%
容積率
%
未記入(不明)の場合は建ぺい率60%、容積率200%で自動試算
土地所在地
構造
坪単価
万円
<参考>構造別坪単価
木造 : 坪単価 73万円
軽量鉄骨造 : 坪単価 125万円
重量鉄骨造 : 坪単価 108万円
鉄筋コンクリート造 : 坪単価 108万円
予想建築費 万円
内訳
(坪数 × 建ぺい率 × 容積率) × 構造別の坪単価*1 = 予想建築費
*1 構造別の坪単価は、建築着工統計調査 住宅着工統計 第34表中の 「共同住宅」における「工事予定額」に基づいています。
- 本当にシュミレーション通りの建築費用で建てられるかな?
実際の建築費用の見積もりは坪数やアパートの材質だけでなく、建築会社の工法や設備のグレードによって大きく変動します。
建築費用の見積もりをとる際は、複数の建築会社で相見積もりをおこなって比較・検討をしましょう。
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また、新しいアパートの建築費を抑えたい場合、以下の記事が参考になります。
アパートの建て替えで融資を受ける際はプロに相談を
アパートの建て替えには高額な費用が発生するほか、節税効果やレバレッジ効果なども見込めることから、アパートローンを組む方が多くなっています。アパートローンについては、金融機関によって返済期間や融資の限度額が異なるため、複数の金融機関に相談して比較検討すると良いでしょう。
また、アパートの建て替えを検討する際には、既存のアパートのリフォームや、別の土地活用への転用なども視野に入れると、さまざまなプランの中からより良い収益方法を選べるでしょう。
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記事のおさらい
他にもアパート建築のノウハウを知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。