親の死後、売れない家を処分する方法は、①不動産買取業者に買い取ってもらう、②解体して土地だけ売る、③売り出し価格を下げて売る、④自治体に寄付する、⑤3か月以内なら相続放棄するの5つです。
まずは、家が売れない原因や売れない家を放置するリスクをきちんと把握して、実家を処分するために必要なことを確認してください。
「まずは家を売る基礎知識を知りたい」という方は、こちらの記事をご覧ください。
- 家が売れない原因は立地や価格設定。
- 放置は固定資産税増や犯罪リスクを招く。
- 解体や相続放棄で処分可能性がある。
親の死後、処分したい家が売れない原因として考えられることは?
親の死後に実家の処分を検討する際、様々な売却障壁に直面することがあります。相続した不動産を売却する過程は、予想外の困難が伴うことも少なくありません。その中でも多いのが、遺された家が市場で売れ残ることです。これには複数の要因が考えられます。例えば、物件の特性、市場の状況、売却戦略の三つの要素が密接に関わっています。
家が売れない理由を理解することは、処分戦略を立てる上での第一歩となります。築年数、立地条件、設定価格など、売却に影響を与えるさまざまな要素を検証し、それぞれに合わせた適切な対応策を講じることが重要です。
本章では、そんな家が売れないという状況の原因を明らかにします。
築古すぎて改修が難しい
家が売れない原因の1つ目は、築古すぎて改修が難しいということです。
一般的に、建物の価値は築年数が経過するにつれて低下していきます。特に築30年を超える物件は、多くの場合で大規模なリフォームが必要となります。もし築年数が古く、改修に莫大な費用がかかると判断されれば、その家は買取り市場においても敬遠されがちです。
実際に、市場に出される多くの築古物件は、買主が見つかる前に多額の改修費用が見込まれ、これが売却を難しくしています。不動産の専門家によると、築30年を超える物件の売却相場は新築時の約30%にまで落ち込むケースもあります。さらに、古い家は最新の耐震基準に適合していない可能性があり、これが更なる売却の障害になることも考えられます。
このような状況下で、財産としての価値を保ちつつ、適切な処分方法を見つけることが、売り出しを成功させるためには必要不可欠です。売却に際しては、不動産の専門家と相談し、改修の可能性やコストを正確に評価した上で、適切な売り出し価格を設定することが重要になります。
立地や日当たりなどの条件がよくない
家が売れない原因の2つ目は、立地や日当たりなどの条件がよくないということです。
不動産の価値を左右する大きな要素として、立地や日当たりなどの物件固有の条件が挙げられます。良質な立地条件とは、交通の便が良い、商業施設や学校が近くにある、静かで治安が良いといった点が含まれます。これに対し、立地が不便だったり、日当たりが悪かったりすると、物件の魅力は大幅に低下します。
例えば、実家が遠隔地にある場合や、周囲に必要なインフラが整っていない「不便な立地」の場合、買い手を見つけるのが一層困難になります。同様に、「日当たりが悪い」場合にも、快適な住環境を求める買い手のニーズを満たすことは難しくなります。
不動産専門家としてのアドバイスとしては、これらの条件が悪い場合には、物件の他の魅力を強調するか、または価格を相場よりも低く設定して対応することが一つの方法です。例えば、自然が豊かであることや、歴史的な建築物であるなど、他にはない特色を前面に出すことで、ニッチながらもターゲットとなる買い手層を見つけることが可能になります。
売り出し価格が相場よりも高すぎる
家が売れない原因の3つ目は、売り出し価格が相場よりも高すぎるということです。
売却物件の価格設定は、成功の鍵を握る最も重要な要素の一つです。市場の相場よりも高く設定しすぎた場合、どれだけ物件の条件が良くても、買い手はなかなか現れません。特に相続した家を速やかに処分したい場合には、市場価格を正しく把握し、適正な価格設定が不可欠です。
実際の例を挙げると、相場価格が3,000万円の物件を、感情的な価値を加味して3,500万円で売り出しても、買い手はつきにくいです。買い手は多くの選択肢の中から最もコストパフォーマンスが高い物件を選ぼうとするため、市場と乖離した価格では競争力を失います。
したがって、相場をリサーチし、周辺の物件との比較検討を行いながら、現実的な価格を設定することが肝要です。不動産会社と共に、最新の売買情報をもとに価格設定を行い、物件の魅力を正確に伝えることで、売却の可能性を高めることができます。
再建不可物件で建て替えができない
家が売れない原因の4つ目は、再建不可物件で建て替えができないということです。
不動産の処分に際して見落としがちなのが、再建築不可の制限があるかどうかです。この制限がある物件は、建て替えができないため、買い手が新たに建物を建て直すことができません。このような物件は市場価値が著しく下がり、売却が困難になることが多いです。
例えば、法律の改正や地域の条例変更により、以前に建てられた家が現行の法規制に適合していない場合、建物を取り壊した後の再建築が許可されないことがあります。これは特に、土地の有効活用を計画している買い手にとっては大きなデメリットとなります。
売り手としては、再建築不可の物件を売却する際には、その制限を明確にし、建物ではなく土地としての価値を前面に打ち出すなど、販売戦略を工夫する必要があります。不動産会社や専門家と連携して、ターゲットとなる買い手層を特定し、そのニーズに合わせた販売方法を検討することが求められます。
家の良さをアピールできていない
家が売れない原因の5つ目は、家の良さをアピールできていない/underline]ということです。
不動産の売却において、物件の魅力を十分にアピールすることは売れ行きを左右します。時には売り手自身が家の良さを見落とし、それを買い手に伝えきれていないこともあります。家の良さをアピールすることは、売却活動の成功に直結します。
物件の歴史、建築様式、独自の設計、近隣のコミュニティの魅力など、物件固有の特徴を活かしたプロモーションは、買い手の関心を引くキーポイントになります。例えば、和風の庭園がある物件では、その静かで落ち着いた雰囲気を強調し、自然と一体になれる住環境としてアピールすることができます。
不動産会社と協力して、プロの写真家による魅力的な写真撮影や、物件の特色を活かしたバーチャルツアーの作成など、様々なマーケティングツールを駆使することで、物件のポテンシャルを最大限に引き出すことができます。また、オープンハウスを開催して実際に物件を体験してもらうことも、買い手の心を動かす強力な方法です。
親の死後、家が処分できなくて放置する危険性
親の死後、家を放置することの危険性は、しばしば見過ごされがちです。放置された空き家は、様々なリスクをはらんでおり、それらは所有者にとって予期せぬ負担となる可能性があります。
家を放置することは、経済的な損失だけでなく、法的リスクや社会的な問題を引き起こす可能性があります。空き家は犯罪の温床となることがあり、また、放置された家は時間と共に劣化し、周辺環境への悪影響を及ぼす原因ともなります。加えて、固定資産税の負担増や資産価値の低下も無視できない問題です。このようなリスクを避けるためにも、適切な処分計画を早急に立てることが求められます。
犯罪に利用される可能性がある
放置された家は、無防備な状態となり、不法侵入や犯罪の温床になることがあります。たとえば、空き家に侵入して住み着く者が出たり、不法投棄の場所として利用される例も少なくありません。これにより、家や土地は荒廃し、近隣住民とのトラブルの原因ともなり得ます。
具体的な数字を挙げると、国土交通省の調査によると、日本国内の空き家の数は2023年時点で約850万戸と推計されており、それらの一部が犯罪に利用されている実態があります。所有者としては、空き家管理の責任を意識し、適切な対策を講じることが必要です。
腐敗や倒壊によりご近所トラブルを招く
家が長期間放置されると、建物の劣化が進み、最終的には腐敗や倒壊に至るリスクが高まります。雨漏りが始まり、木材が腐ると、シロアリなどの害虫が発生する原因となります。また、台風などの自然災害が起きた場合、倒壊して近隣住民の財産や安全に損害を与えることも考えられます。
国土交通省が発表したデータによれば、空き家の約4割が劣化が進んでいるという報告があり、これらはいずれも重大な安全上の問題を引き起こす可能性が指摘されています。このような問題を防ぐためには、定期的なメンテナンスや早期の処分が求められます。
固定資産税が最大6倍になる
空き家の所有者は、固定資産税の面でも重大な影響を受けます。2015年に施行された空き家対策特別措置法により、放置された空き家には最大6倍の固定資産税が課されることがあります。これは、空き家の早期の活用や撤去を促進するための措置ですが、知らずに高額な税金を負担することになる所有者もいます。
例を挙げると、通常10万円である固定資産税が、特定の空き家には60万円に跳ね上がることがあるのです。このような財政的な負担を避けるためにも、空き家の状態を放置せず、適切な処分や活用方法を検討することが重要です。
資産価値が下がり更に処分が難しくなる
空き家が放置されると、時間とともにその資産価値は確実に下がります。劣化や社会の悪影響により、物件の魅力は減少し、それに伴って市場での評価も下がるためです。資産価値の低下は、将来的に処分や再利用を図る際にも、大きな障害となります。
不動産の専門家によると、適切な時期に売却やリフォームを行わない空き家は、年々その価値を大幅に減少させると指摘されています。所有者が亡くなった後、相続人が適切な手続きを怠ることで、財産としての価値は急速に薄れていくのです。
以上のように、親の死後に家を放置することには、様々なリスクが伴います。これらの問題を避け、資産を守るためには、積極的な対策が必要です。次の章では、売れない家を確実に処分するための具体的な方法を見ていきましょう。
親の死後、売れない家を処分する5つの方法
売れない家をどう処分するかは、多くの相続人が直面する問題です。
親が残した家が市場でなかなか売れない場合、相続人にはさまざまな処分方法があります。市場での需要が低い、状態が良くない、または特殊な設計であるなど、売れ残る理由は様々です。
ここでは、不動産をスムーズに処分するための戦略的なアプローチを紹介し、不動産処分の負担を軽減します。売れない家を処分する方法として厳選した5つの方法を見ていきましょう。
- 不動産買取業者に買い取ってもらう
- 解体して土地だけ売る
- 売り出し価格を下げて売る
- 自治体に寄付する
- 3か月以内なら相続放棄する
方法1:不動産買取業者に買い取ってもらう
市場で売れ残ってしまう物件でも、不動産買取業者なら即現金化が可能です。不動産買取は、一般的な売却方法に比べて迅速に手続きが進みますが、市場価格よりも低い価格での取引になることが多いです。
たとえば、相場価格が2000万円の物件が、買取では1500万円程度になるケースがあります。しかし、スピードを重視し、確実な処分を望む場合には、この方法が有効です。不動産会社を複数比較し、最も好条件の業者を選ぶことが重要です。
方法2:解体して土地だけ売る
建物の状態が悪く、売却が困難な場合には、解体して土地として売るという選択肢もあります。
特に、立地条件が良い場合には、土地としての価値が高く評価される可能性があります。
解体には費用がかかりますが、土地として売却することで、その費用を上回る収益を得ることが可能です。解体業者や不動産会社と相談し、費用対効果を考慮した上で判断しましょう。
方法3:売り出し価格を下げて売る
売れない主な理由の一つに、売り出し価格が相場よりも高すぎることがあります。
市場の動向を見極め、適正価格に調整することで、売却可能性を高めることができます。
価格の見直しは、不動産会社の専門家と協議することが肝心です。市場分析をもとに、売却しやすい価格に設定することで、処分へと繋がります。
相場に合わせても売れない場合は、ライバル物件よりも少し安価に設定することで選ばれやすくなる可能性が高まります。
方法4:自治体に寄付する
売れない家がある土地を自治体に寄付するという選択肢もあります。
この方法は、寄付を行った土地が公共の利用に供される場合に、税制上の優遇措置を受けることができます。
寄付を検討する際には、寄付後の税制優遇や自治体の受け入れ条件を確認し、不動産の専門家に相談することが重要です。公共のために役立てることで、社会貢献と財産処分の両方を実現することができます。
方法5:3か月以内なら相続放棄する
相続放棄は、相続が開始されたことを知った日から3か月以内に家庭裁判所に申し立てることで行うことができます。
相続放棄をすると、相続人がその財産を一切受け取らなかったことになり、売れない家の処分の義務から解放されます。
ただし、相続放棄には慎重な検討が必要です。なぜなら、負の遺産だけでなく、プラスの遺産も放棄することになるからです。手続きは専門家と相談の上、慎重に進めるべきです。
親の死後、売れない家を処分しきる重要ポイント
家を確実に処分するためには、十分な前準備と戦略的なアプローチが必須です。不動産市場の理解を深め、複数の不動産会社との比較検討を行い、賃貸という選択肢を含めた幅広い選択肢から最適な方法を選ぶ必要があります。
さらに、相続放棄という選択も検討に値します。それぞれの手段にはメリットとリスクがあり、専門家の意見を参考にしながら、家族の状況と財産の価値を慎重に考慮した上で、最善の道を選ぶことが肝心です。
その他で親の死後、売れない家を処分する上で、絶対に押さえておくべき重要ポイントはどういったものがあるのでしょうか。「動産会社は複数社を比較する」や「賃貸して収益化する」について詳しく説明していきます。
ポイント1:不動産会社は複数社を比較する
家を売る際には、一つの不動産会社だけに依存せず、複数社の査定を受けることが大切です。各社が提案する売却計画や条件を比較し、最も良い条件を提示する会社を選ぶことが成功への鍵です。
不動産市場は常に変動しており、会社によって得意とするエリアや販売戦略が異なります。複数の視点から適切なアドバイスを受けることで、売却の可能性を高めることができます。
不動産一括査定サイトの「イエウール」なら自分の家に適した不動産会社を複数社紹介してくれるので、膨大な不動産会社の中から自分で調べる手間を省くことができます。
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ポイント2:売れない場合は賃貸して収益化する
売却が難しい場合は、賃貸市場への参入を検討するのも一つの手です。家を賃貸物件として提供することで、定期的な収入を得ることができます。ただし、賃貸には適切な管理が必要であり、管理会社に委託するなどの手段が考えられます。
賃貸に出すことで、家を維持しながら収益を確保し、市場の状況が変わった際には、再び売却を検討することもできます。賃貸市場の需要を把握し、適正な賃料設定と管理体制を整えることが重要です。
以上が、親の死後に家を処分するための方法と、その際の重要ポイントです。どの方法を選ぶにせよ、専門家の助言を仰ぎ、慎重に進めることが成功へのカギとなります。家はただの物件ではなく、貴重な資産であると同時に、多くの思い出が詰まった場所です。最終的な処分方法を選ぶ際には、これらの感情も考慮に入れつつ、賢明な決断を下してください。