住宅ローンの返済が困難になった場合、任意売却という方法で家を売却し、ローン返済の資金に充てるという対処法があります。
しかし任意売却を行うためには、不動産取引や民法に関する専門知識が必要となるため、信頼できる相談先選びが重要です。
任意売却についての相談先には、不動産会社・弁護士・銀行の3つの選択肢がありますが、それぞれ強みや特徴は異なります。
そこで本記事では、任意売却の相談先として、不動産会社・弁護士・銀行に相談するメリット・デメリットと注意点、相談先選びのポイントなどをご紹介します。
「まずは不動産売却の基礎知識を知りたい」という方は、こちらの記事をご覧ください。
任意売却とは?
任意売却は、住宅ローンを借りている銀行からの許可を取った上で、オーバーローンの状態の家を競売と並行して売却することを言います。
オーバーローンとは、家の売却価格よりも住宅ローンの残債の方が高額となっているケースで、担保の家を売却してもローンを完済できない状態です。
オーバーローンの状態で家を売るには、まず住宅ローンの返済を滞納して金融機関からの督促を受けた後、任意売却・競売に進む必要があります。
しかし競売にかけられると、家の売却価格は市場価格よりも大幅に下落することから、ローン返済の資金を増やすためには任意売却を行う方が有利となります。
任意売却と仲介・競売の違い
住宅ローンの残債よりも、家の売却価格の方が高い場合には、「アンダーローン」と呼び、住宅ローンを完済できるため通常売却を行うことができます。
不動産会社に支払う仲介手数料や登記費用は発生しますが、任意売却のように金融機関の許可は必要ありません。
【オーバーローンとアンダーローンの比較】
オーバーローン | アンダーローン |
---|---|
住宅ローンの残債額>家の売却価格 | 住宅ローンの残債額<家の売却価格 |
家の売却に金融機関(債権者)の許可が必要 | 家の売却に金融機関(債権者)の許可は不要 |
また、任意売却を行う際には、競売が並行して進んでいることを意識しなければなりません。住宅ローンの返済滞納により、いずれ家の差し押さえ・競売へと進むため、競売の開札期日が任意売却を行える最終期限となります。
つまり、任意売却を行える期間には制限があるため、速やかに信頼できる相談先を選んで手続きを進めることが重要です。
任意売却の3つの相談先とメリット・デメリット
任意売却の相談先には、主に「不動産会社」「弁護士(司法書士)」「銀行(金融機関)」の3種類が挙げられます。
それぞれの相談先によって強みや専門分野が異なり、依頼する料金も変動します。
ここではメリット・デメリットとともに各相談先の特徴を解説しましょう。
不動産会社
任意売却は通常の不動産取引と同じ手続きで進めるため、不動産の売却に詳しい不動産会社が相談先の候補となります。
不動産会社の中には任意売却を専門としている会社もあり、その場合、金融機関との交渉のノウハウがあり、任意整理が相談できる弁護士・司法書士の紹介などにも対応してもらえる点がメリットです。
任意売却の目的は可能な限り家を高値で売却し、ローン返済の資金に充てることにあり、家の売買に強い不動産会社を選ぶことで債務を大きく減らせる可能性も出てくるでしょう。ただし、任意売却には専門知識を必要とすることから、一般的な不動産会社では対応が難しいケースもあります。そのため任意売却の実績が豊富な不動産会社を選ぶなど、相談先の見極めが重要となります。
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売ったら
弁護士(司法書士)
法律の専門家である弁護士や司法書士も相談先の一つです。
任意売却後のローン残債が支払えない場合には、弁護士や司法書士に依頼して任意整理・自己破産などの債務整理を行う必要があります。
ただし弁護士や司法書士は不動産取引の専門家ではないため、不動産売買に携わることはできません。そのため任意売却の手続きに関しては、提携する不動産会社に依頼することが一般的です。
なお、弁護士に依頼する場合には、高額な弁護士費用が発生する点がデメリットです。
銀行(金融機関)
任意売却の手続きを行うためには、まず住宅ローンを借りている銀行から許可を取る必要があります。
住宅ローンを組む際に、返済不能になった場合の担保として銀行が家に抵当権を設定しているため、銀行の合意を得なければ売却ができないためです。
銀行に相談することは、住宅ローンの返済が難しくなった際に、借り換えや返済方法の変更などの提案を受けられる点がメリットです。また、任意売却で住宅ローンを完済できなかった場合には、銀行で残債の分割払いなどを相談する必要もあります。
ただし、金融機関の中には任意売却を認めないケースや、積極的ではないケースもあるため、その場合には不動産会社などの専門家に同席してもらうと安心です。
任意売却の相談先を選ぶ際のポイント
任意売却の相談先として、ローンの返済が困難となった場合にはまず銀行に相談し、任意売却の手続きや売却価格の査定は不動産会社に依頼することが大切です。
任意売却後の債務整理に関しては、弁護士や司法書士に依頼しながら進めていきましょう。
では、任意売却を依頼する不動産会社はどのように選べば良いのでしょうか。
任意売却の相談先選びのポイントとしては、以下の4つが挙げられます。
- 任意売却に強みがあること
- 提携先が豊富であること
- 事前の問い合わせで丁寧に対応してもらえること
- 任意売却後のアフターフォローが手厚いこと
一つずつ解説します。
任意売却に強みがあること
任意売却の相談先を選ぶ際には、任意売却の実績件数が豊富な不動産会社や、任意売却を専門とする不動産会社を選ぶことが大切です。
大まかな目安として、任意売却の実績が100件以上あるところを選ぶと良いでしょう。
任意売却の手続きでは、それぞれの事情や環境、家の査定価格によって必要な手続きは大きく変わります。
たとえば、夫婦の共有名義で購入したケースや、ペアローンを組んで購入したケース、親が連帯保証人になっているケースなどで、任意売却の対応方法も異なります。
ご自身の状況に合った最適なサポートを受けるためには、複数の事例で任意売却を手がけた実績を持つ不動産会社を選ぶことが重要です。提携先が豊富であること
任意売却を行った後も、住宅ローンの残債の返済義務が免除されるわけではなく、場合によっては任意整理・自己破産などの債務整理を必要とします。
そのため債務整理に関する経験や知識を持っている不動産会社であれば、長期的な視点でのアドバイスや対応が期待できるでしょう。
また、任意売却を専門とする弁護士や司法書士と提携し、任意売却後の支払いについて相談できる環境を整えている不動産会社もあります。
実績が豊富で任意売却に強い提携先を持つ不動産会社であれば、安心して任意売却を依頼できるでしょう。
事前の問い合わせで丁寧に対応してもらえること
任意売却について電話やメールで不動産会社に相談し、丁寧な対応や誠実な姿勢を感じられるかどうかも判断のポイントです。
担当者との相性や、どれだけ親身になって話を聞いてもらえるか、具体的なアドバイスを受けられるかを確認しておくと安心です。不動産会社の中には、電話やメールでの問い合わせに対し、来店を強く促すケースもあるため、そうした会社は候補から外して良いでしょう。
匿名での問い合わせにも丁寧に対応してもらえる会社であれば、実際に店舗に足を運んだ際にも誠実に対応してもらえる可能性が高まります。
任意売却後のアフターフォローが手厚いこと
任意売却を行った後も残債の返済を続け、新たな引っ越し先で生活する必要があるため、任意売却後のアフターフォローの手厚さで選ぶことも大切です。
任意売却した家にそのまま住みたい場合には、買い手が大家となって家賃を支払いながら住み続ける「リースバック」という選択肢を検討できるケースもあります。
また、任意売却では、売却価格から30万円程度の引越し費用の支払いを受けられるケースも存在します。
これらの選択肢は、銀行や金融機関との交渉次第で決まるため、交渉力が高く手厚くアフターフォローをしてくれる不動産会社を選ぶと良いでしょう。任意売却の相談先で確認するべきこと
最後に、不動産会社に相談する際にチェックしておきたいポイントについて解説しましょう。
ここでは以下の3点についてご紹介します。
- 任意売却の日程・スケジュール
- 引越し費用の支払い
- 任意売却後のローン返済・債務整理
それぞれの内容と注意点を押さえておきましょう。
任意売却の日程・スケジュール
任意売却の大まかな流れについては前述しましたが、ご自身のケースでは、どのようなスケジュールで任意売却が進むのか、相談する際に確認しておくと安心です。
任意売却は競売と並行して進むことから、任意売却ができる期間には制限があります。
そのため速やかに金融機関との交渉を進め、余裕を持って販売活動を進めることが重要です。その際には、家の査定額を調査するための訪問日なども決めておくと良いでしょう。
引越し費用の支払い
任意売却で家を手放した後の引越しに関しても、事前に相談しておくと安心です。
任意売却の際に、引越し費用を売却代金から出してもらえる場合には、その費用をもとに引越しの計画を立てるとスムーズに任意売却を進められるでしょう。ただし、引越し費用を売却代金から出すことは、債権者(銀行)の善意であって、義務ではないため、引越し費用の相談の際には誠意を持って、信頼関係を大切にして認めてもらいましょう。
任意売却後のローン返済・債務整理
任意売却について相談する際には、任意売却後のローン返済計画や債務整理について、銀行や弁護士・司法書士にも確認しておくと良いでしょう。
任意売却の手続きではローンを完済できることは少なく、ローン残債の支払い義務が残ります。
交渉次第ではローン残債の分割払いも可能ですが、支払いが困難となった場合、連帯保証人が支払い義務を負うこととなります。夫婦で互いに連帯保証人になっている場合などは、両者が自己破産・任意整理を行う必要も出てくるため注意が必要です。
任意売却の相談先には豊富な実績を持つ業者を選ぶ
任意売却の相談先には、不動産会社・弁護士(司法書士)・銀行の主に3種類がありますが、住宅ローンの支払いが困難となった場合にはまず銀行に相談することをおすすめします。
任意売却を開始する際の相談先は不動産会社、任意売却後の債務整理については弁護士(司法書士)に相談すると安心です。
任意売却を依頼する不動産会社を選ぶ際には、任意売却の実績や提携先の充実度、問い合わせの際の対応などを確認して信頼できる会社を選択することが大切です。
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