任意売却する家の売却価格は、通常の売却と比較して1割〜2割程度安くなる傾向にあります。
任意売却の契約がまとまらず競売にかけられた際には、さらに売却価格が低下する可能性が高くなります。
それでは、家を任意売却する際の相場・適正価格は、どのように決まるのでしょうか。
本記事では、任意売却の際には一般的な価格相場よりも安くなる理由と、競売との差額、任意売却のメリット・デメリットについてご紹介します。
「まずは不動産売却の基礎知識を知りたい」という方は、こちらの記事をご覧ください。
任意売却とは?通常売却・競売との違い
任意売却とは、住宅ローンの返済が困難となった場合に、ローンを借り入れている金融機関の許可を得て、オーバーローンの状態の家を売却する方法です。
オーバーローンとは、家の売却代金よりも住宅ローンの残債の方が高額となる状況を指し、家を売却してもローンを完済できないケースのことです。
住宅ローンの返済が滞っている中で、任意売却を行わなかった場合、金融機関が裁判所に申し立てて「競売」に進むこととなります。
ここでは、任意売却・通常売却・競売の各特徴と、任意売却の流れについて詳しく解説します。
任意売却・通常売却・競売の特徴
家を売却してもローンを完済できない場合には任意売却が検討されますが、一方でローンを完済できる場合(アンダーローン)には通常売却を行います。
通常売却では、家の売却代金でローンを完済できるため、金融機関の許可は不要で、希望の売却価格・条件で売買を進めることが可能です。【オーバーローンとアンダーローンの比較】
オーバーローン | アンダーローン |
---|---|
住宅ローンの残債額>家の売却金額 | 住宅ローンの残債額<家の売却金額 |
家の売却に金融機関(債権者)の許可が必要 | 家の売却に金融機関(債権者)の許可は不要 |
任意売却:売却価格は市場価格の8割〜9割程度 | 通常売却:売却価格は市場価格 |
なお、任意売却の手続き自体は通常売却と同様で、不動産会社に仲介してもらい、買い手を探して内見に対応し、売買契約を締結する手順となります。
ただし、任意売却には期間が決まっており、期間内に買い手が見つからなければ競売へと進むことになります。
競売の場合、任意売却よりも売却価格が低くなるほか、競売物件であることが情報公開されるため、プライバシーが守られなくなり、強制的な退去も求められます。競売にかけられて安く売却された場合でも、ローンの残債が免除されることはないため、売却価格の下がりにくい任意売却を進めて返済資金に充てることで、任意整理や自己破産のリスクを軽減することが可能です。
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任意売却の相場と通常売却・競売との差額
任意売却は競売と比較すると、市場価格に近い金額で家を売却できるとされています。
しかし通常の売却とは条件が異なるため、市場価格とまったく同じ相場で売れるとは限りません。
ここでは任意売却の相場と、通常売却・競売との差額について解説します。
任意売却は通常売却の8割〜9割
家を任意売却する場合、通常売却の8割〜9割程度の売却価格が目安となります。
市場価格と比較して1割〜2割ほど低くなることが一般的です。家の債権者である金融機関の立場としては、できるだけ高値で売却して、住宅ローンの債権を回収したいと考えます。
しかし市場価格と同水準で販売した場合、売却期限までに買い手が見つからず、さらに売却価格の低い競売へ進んでしまうリスクも存在します。
そのため任意売却の相場は、市場価格よりもやや低めの水準で落ち着くことが一般的です。
また、詳しくは後述しますが、任意売却の場合は瑕疵担保責任を免責されることも、売却価格が通常よりも低くなる要因です。
競売は通常売却の6割〜7割
競売の場合には、市場価格の6割〜7割程度の売却価格が目安です。
場合によっては市場価格の半額程度になることもあり、住宅ローンの返済資金が大きく減少してしまう可能性もあります。たとえば、市場価格が5,000万円の家を所有していた場合は、任意売却であれば4,000万円〜4,500万円、競売の場合は3,000万円〜3,500万円で売却される目安です。
家が競売にかけられる場合、高額なローンの残債が残っているケースが多いため、可能な限り任意売却を行い、少しでも高値で売買契約を結び、残債の返済負担を減らすことが望ましいでしょう。
任意売却では相場よりも安く売り出される理由
前述の通り、任意売却では市場価格よりもやや低い価格で売り出されることが一般的です。
その背景には、通常売却とは異なる任意売却の事情が存在します。
任意売却の売却金額が相場よりも安くなる理由は、主に以下の3つです。
- 任意売却には期限があるため
- 現状のまま売却する必要があるため
- 瑕疵担保責任が免責となるため
それぞれ解説します。
任意売却には期限があるため
任意売却では売却期間に制限があり、競売が始まるまでの間に買い手を見つける必要があります。
任意売却ができる期間は、最大で1年程度が目安であり、期限を過ぎると競売の手続きが始まります。半年以上、任意売却で買い手が見つからない場合には、金融機関は少しでも債権回収の可能性を高めるため、競売によって強制売却へと進める判断をするのです。
そのため任意売却には時間的な余裕がなく、速やかに売却するために、売却価格の値下げに応じる必要が出てきます。
任意売却をする際の希望金額は、不動産会社などと相談しながら原則として売主が決められますが、速やかに売却を進めるためにも、市場価格の8割〜9割ほどの金額で折り合いをつけるケースが大半です。
現状のまま売却する必要があるため
通常売却によって家を処分する場合は、リフォームやハウスクリーニングなどで家の価値を高めることが可能です。
しかし任意売却の場合には、リフォーム費用を捻出することが難しく、現状のまま売却せざるを得ないケースが多くなります。
そのためリフォームやハウスクリーニングの後に売り出す通常売却とは異なり、売却価格が下がりやすい傾向にあります。ただし内覧や購入希望者への対応はご自身で行うことが可能なため、清潔さを感じられるよう、できるだけ清掃をしておき、汚れ・傷の補修や照明の交換なども済ませておくと良いでしょう。
不用品を処分しておき、家具や小物の配置でモデルルームのようなホームステージングを施しておくと、任意売却でも好印象を与えることができます。
瑕疵担保責任が免責となるため
任意売却と通常売却の大きな違いとして、売り手の「瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)」が免責となる点が挙げられます。
瑕疵担保責任とは、住宅の売却後に買い手が気づかなかった欠陥やトラブルを発見した際には、一定期間内であれば修復費用を売主が負担することを指します。売り手が個人の場合は2ヶ月、売り手が不動産会社の場合は2年の瑕疵担保責任を負担することが一般的ですが、任意売却の場合には瑕疵担保責任の負担が困難なため、免責(責任を負わない)されるのです。
瑕疵担保責任が免責される点は、売り手にとって有利、かつ買い手にとって不利な条件となるため、市場価格と同水準で販売することが難しくなります。
任意売却する家の相場は通常売却の8割〜9割が目安
任意売却をする家の売却価格は、通常売却の8割〜9割が相場となります。
一方で競売の売却価格は、通常売却の6割〜7割が相場となるため、可能な限り任意売却を行うことが、ローンの残債を返済する際にも負担が減ります。
任意売却が通常売却よりもやや低い金額となってしまう理由として、競売までの期限があるほか、リフォーム後の売り出しが難しい点、瑕疵担保責任が免責となる点などが挙げられます。
ただし競売と比較するとプライバシーが守られやすく、引っ越し費用や仲介手数料などを売却代金から出してもらえる可能性があるというメリットも得られるため、任意売却を検討されている場合は、不動産会社と相談しながら速やかに準備を進めましょう。
なお、お持ちの家が売却できるかどうかを判断する際には、「イエウール」を利用して家の査定価格を確認してみることをおすすめします。イエウールでは、最大6社の査定価格を調べ、信頼できる不動産会社に販売活動を依頼することが可能です。査定価格の診断は無料で利用できるため、お気軽にお試しください。
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