離婚財産分与時の通帳開示って必須?開示請求されたらどうする?

離婚財産分与時の通帳開示って必須?開示請求されたらどうする?

離婚の際、財産分与は避けて通れない重要な手順です。

特に相手方の資産が正確にどれだけあるのかを知ることは、公平な分与を実現する上で不可欠です。そのために、通帳や金融資産の開示が必要になりますが、多くの離婚案件で争点となります。

この記事では、離婚に伴う財産分与で通帳の開示をスムーズに行うための具体的なアドバイスと、開示を否定されたときの対処法に焦点を当てて、より良い解決に向けた方法を提供します。ぜひ参考にしてください。

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離婚財産分与時に必要な通帳開示の役割

「通帳開示」とは、離婚をする夫婦が、共有財産(夫婦のどちらかが婚姻中に獲得した財産)の範囲と価値を明らかにするために行う手続きの一つです。具体的には、金融機関に対して個人の預金口座の履歴や残高情報などの開示を求めることを指します。

日本の法律では、離婚に際して財産分与を行う場合、夫婦共有の財産は原則として半分ずつ分けることが原則とされています。

しかし、それぞれの財産を正確に把握することなく公平な分与は困難です。特に、一方が財産を隠していたり、正確な財産状況が不透明な場合、公平な財産分与を行うためには各自の財産(預金、株式、不動産など)を明らかにする必要があります。

そのために通帳の開示が求められるわけですが、通帳開示を直接命じる法律はありません。したがって、開示を求める場合には、裁判所に対して開示を求める仮処分命令を申し立てることが一般的です。もしくは、離婚協議中に相手方の同意を得て開示を求めることもあります。

仮に相手が開示に応じない場合、離婚訴訟において裁判所が開示を命じることができます。仮処分命令を通じて通帳などの金融資産情報の開示を命じられれば、当該金融機関は法律に基づき必要な情報を提供することになります。

財産分与時に互いの預貯金額を把握するために必要

通帳開示は、夫婦間の預貯金の明確な把握を目的としています。離婚時には、共有財産としての預貯金を公平に分けるための手続きが求められるため、それぞれの金額の把握が不可欠です。

開示された情報を基に、財産の範囲を特定し、その価値を算定した上で財産分与が行われます。通帳だけでなく、不動産の登記簿謄本や株式の保有状況など、他の資産に関する情報も開示されることが一般的です。このプロセスを通じて、双方が納得のいく財産分与を目指すことが大切です。

例えば、A夫とB妻が別居を始め、財産分与の話し合いをする際、互いの通帳の残高を明らかにすることで、分与の流れや養育費、慰謝料の計算が容易になります。

財産分与時にどこまでの内容の通帳開示が必要か

基本的に、離婚前の全期間の通帳の内容の開示が求められます。財産の隠しや不正な取引、婚姻期間中の貯蓄の変動を確認するためです。のため、開示が必要とされる情報には以下のようなものが含まれることが一般的です。

  1. 口座残高の情報:
    • 離婚時点での預金残高。
    • 離婚協議を開始した時点での預金残高。
  2. 口座の履歴:
    • 結婚中の取引履歴。特に離婚が争点になった時点から遡る形での取引履歴が重要です。
    • 大きな出入りがあった場合(特に離婚の話が出始めてからの大きな出金や移動)の説明や証明。
  3. 定期預金や積立などの情報:
    • これらも婚姻中に形成された財産であれば、分与の対象となる可能性があります。
  4. 給与振込の情報:
    • 給与振込口座であれば、給与の振込情報も開示されることがあります。
  5. 投資に関する情報:
    • 株式や投資信託など、金融商品の購入に関連する口座の情報。

これらの情報は、どのような財産があり、どれが財産分与の対象となるべきかを明確にするために重要です。ただし、プライバシーの保護や過度な負担を避けるため、必要最小限の情報に留めるべきであり、開示が求められる範囲はケースバイケースで異なります。

例えば、婚姻中に大きな財産の変動がなかった場合、過去数年分の通帳の履歴の開示だけで十分な場合もあります。一方で、不透明な資金移動が多い場合や、相手が隠し資産を持っている疑いがある場合は、より詳細な取引履歴や関連する資料の開示が求められることもあります。

裁判所による命令や双方の合意に基づいて必要な情報が開示され、それに基づいて財産分与が進められることになります。

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離婚時の財産分与で通帳開示を請求された場合

離婚時の財産分与で通帳開示を請求された場合、以下の手順に従うことが一般的です。

応じるべきかどうかの検討:

  1. 法的助言を求める:
    • 弁護士に相談して、開示を求められている情報が妥当かどうか、また開示に応じる義務があるかどうかを確認します。
  2. 通帳の範囲を確認:
    • どの通帳、またはどの時期の情報が求められているのかを確認します。開示が求められるのは通常、婚姻中に作られた共有財産に限られることが多いです。

開示に応じる場合:

  1. 必要書類の準備:
    • 請求された通帳のコピー、または取引履歴の明細を用意します。
  2. 情報の整理:
    • 開示する情報が正確であることを確認し、必要に応じて説明や文書での補足を準備します。
  3. プライバシーの確保:
    • 開示が必要ない情報(第三者への送金情報など)は、プライバシー保護のために非開示にできるか相談します。
  4. 合意書の作成:
    • 相手方と共に開示する情報について合意し、その内容を文書化します。

開示に応じない場合:

  1. 法的根拠の確認:
    • 開示に応じない理由が法的に正当なものであるか弁護士と相談します。
  2. 回答の準備:
    • 開示に応じない旨を正式な手続きを通じて相手方に伝えます。
  3. 裁判所の介入の準備:
    • 相手方が仮処分命令や調停、訴訟を申し立てた場合に備えて対応策を準備します。

その他の注意点:

  • 相手方との協議:通帳開示を巡って争いがある場合は、双方が納得する形での協議を試みることが望ましいです。
  • 誠実な対応:開示に際しては誠実に対応することが重要であり、隠ぺいや偽造などは法的な不利益を招く原因になります。

離婚における財産分与は複雑な法的手続きを伴うことが多いので、通帳開示の請求を受けた際は専門家のアドバイスを仰ぐことを強く推奨します。専門家は法的な義務と権利のバランスをとりながら、最適な対応策をアドバイスしてくれます。

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通帳開示は義務ではないがいずれは開示することになる

通帳開示については、確かに日本の法律において、離婚時に自動的に配偶者が相手方の通帳情報を確認できる直接的な規定はありません。しかし、離婚訴訟や財産分与に関する裁判手続きにおいて、裁判所が金融機関に対して口座情報の開示を命じることができます。

義務ではないが開示する流れ

  1. 協議離婚の場合:
    • 相手方から通帳の開示を求められたときは、まずは協議によって解決を図ります。
    • 合意に至らない場合、相手方は仮処分命令や調停、訴訟を通じて開示を求めることができます。
  2. 裁判離婚の場合:
    • 調停や裁判を通じて、相手方が通帳開示を要求することが一般的です。
    • 裁判所は必要と認めた場合、開示命令を下すことがあります。

開示命令が出た場合の義務

  • 開示命令に従う:
    裁判所からの開示命令があった場合、これに従わなければ法的な強制力を伴う措置が取られることがあります。
  • 訴訟における証拠提出義務:
    法律上、訴訟においては証拠提出義務があり、相手方の正当な証拠請求には原則として応じる必要があります。

開示に応じるメリット

  • スムーズな手続き:通帳情報の開示に応じることで、離婚手続きがスムーズに進行し、双方が納得のいく解決に至りやすくなります。
  • 信用の保持:裁判所に開示を命じられる前に自発的に開示することで、信用性を保ち、訴訟等の進行においても好印象を与えることがあります。

開示に応じる際の注意点

  • プライバシーの保護:通帳開示の際は、第三者のプライバシーに関わる情報を保護するための措置を講じる必要があります。
  • 弁護士との相談:開示に関する法的な判断や手続きについては、弁護士との相談を通じて適切に行うことが重要です。

総じて、通帳開示が義務ではない場合でも、相手方からの請求に基づき、裁判所の手続きを通じて開示が求められることがあり、その際には開示する義務が生じることが一般的です。開示を拒むと、訴訟上の不利益を被る可能性がありますので、このような場合には法的なアドバイスを得ることが賢明です。

配偶者以外からの開示請求は拒否できる

通帳の内容はプライバシーに関わるため、配偶者以外からの請求には応じる必要はありません。

法律上、第三者に対し無闇に通帳の内容を明らかにする必要はなく、プライバシーの権利が守られています。

C氏がA夫の通帳の内容を知りたいとしても、A夫はそれを拒否できます。

離婚時の財産分与で通帳開示を拒否された場合

離婚時の財産分与において、配偶者が通帳や財産に関する情報の開示を拒否した場合、次のような手続きをすることができます。

  • 弁護士に相談する
  • 調査嘱託制度を利用
  • 仮処分命令を申し立てる
  • 訴訟を起こす
  • 金融機関へお問い合わせ
  • 証拠収集
  • 裁判所からの開示命令

開示の仕方はさまざまありますが、その中から「弁護士会紹介制度」と「調査嘱託制度」について紹介していきます。

弁護士会照会制度を利用

弁護士会照会制度とは、日本の裁判所が離婚訴訟などで金銭的な利害関係を持つ案件において、特定の当事者の資産状況を知る必要がある場合に、裁判所が弁護士会に照会を行い、その当事者が弁護士に預けているであろう資産の有無を確認する制度です。

この制度は、一方の当事者が資産を隠していると疑われる場合や、財産分与・慰謝料・養育費等の算定を正確に行うために必要な情報を得るために利用されます。具体的には、以下のような流れで行われます。

弁護士会照会の流れ

  1. 裁判所の照会:裁判所が離婚訴訟などで財産分与等の必要がある場合、当事者の資産情報について知る必要があると判断したとき、弁護士会に対して照会を行います。
  2. 弁護士会の回答:弁護士会は、その照会に基づいて会員である弁護士に対し、当該当事者名義の資産が預けられているかどうかを確認します。弁護士は守秘義務に従う必要がありますが、裁判所からの正式な照会には応じる義務があります。
  3. 情報の提供:弁護士会を通じて、対象となる弁護士は保有している当事者の資産情報を裁判所に提供します。

この制度により、裁判所はより公平な財産分与や支払い命令を下すための情報を得ることができます。しかし、この制度は弁護士が預かっている資産に限定されているため、すべての資産情報を網羅するものではありません。したがって、他の手段と併用して資産情報を収集することが一般的です。

調査嘱託制度を利用

通帳の開示が必要な場合、調査嘱託制度を利用する方法もあります。
日本の法律における「調査嘱託制度」とは、主に家事事件に関連して、裁判所が事件の事実関係を明らかにするために、第三者の専門機関や専門家に対して調査を依頼する制度を指します。
この制度は、家庭裁判所の手続きにおいてしばしば利用され、子どもの福祉、親権や監護権に関する問題、養育費の算定、財産分与など、様々な問題について専門的な意見や情報を得ることを目的としています。

調査嘱託の対象となる事件

  • 親権や監護権の争い
  • 養育費や扶養費の問題
  • 成年後見開始の申立て
  • 離婚に伴う財産分与

調査嘱託の流れ

  1. 裁判所の判断:裁判所が事件についての詳細な調査が必要と判断した場合、調査嘱託の決定を行います。
  2. 専門機関や専門家の選定:裁判所は、必要な専門知識を持つ機関や個人を選定し、調査を依頼します。例えば、心理学者や社会福祉士、会計士などが選ばれることがあります。
  3. 調査の実施:委託された専門機関や専門家は、裁判所の指示に従って調査を行い、その結果を裁判所に報告します。
  4. 報告書の提出:調査結果は報告書としてまとめられ、裁判所に提出されます。
  5. 裁判所の判断材料:裁判所は、提出された報告書を判断材料の一つとして利用し、裁判の判断を下します。

利用される場面

調査嘱託は、特に子どもの利益を最優先に考えるべき事件や、当事者間の情報開示が十分でない財産分与のケースなど、公正な判断を下すために補足的な情報が不可欠な場合に利用されます。

調査嘱託制度を通じて、裁判所はより正確かつ詳細な情報を得ることができ、公正で適切な判断を下すための助けとなります。なお、調査嘱託に基づく調査は、当事者のプライバシーに関わる情報を含む可能性があるため、慎重に扱われるべきものです。

財産分与時の通帳開示に関してよくある質問

離婚時の財産分与の際の通帳開示に関してよくある質問を集めてみました。

開示したけど相手方の極端に通帳の残金が少ない場合はどうする?

相手方の通帳の残金が極端に少ない場合、それが離婚における財産分与の過程で疑念を呼ぶことはよくあります。相手方が資産を隠していると疑い、弁護士や裁判所に相談することが推奨されます。

隠し財産は、公平な財産分与を妨げる要因となります。

隠し財産は開示請求されてしまいますか?

離婚訴訟において財産分与を行う際には、原則として夫婦が所有する財産は全て開示する必要があります。これには明らかな資産だけでなく、いわゆる「隠し財産」も含まれます。隠し財産とは、片方の配偶者がもう片方に知られたくない、あるいは離婚時の財産分与から逃れるために隠している財産のことを指します。

もし片方の配偶者が隠し財産があると疑い、それを開示するよう請求することができます。

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