土地を売却する際に、「司法書士へ依頼してください」と言われたが、本当に依頼してもらう必要があるのかどうか悩んでいう方はいませんか?
この記事では、土地売却における司法書士の必要性や、司法書士を活用するメリットを紹介していきます。
「まずは土地売却の基礎知識を知りたい」という方は、こちらの記事をご覧ください。
土地売却において司法書士への依頼は必須?
土地売却のプロセスにおいて司法書士への依頼は通常必須ではありません。
しかし、日本の不動産取引では、登記の手続きが法的に重要であり、その正確な実施が求められるため、司法書士に依頼するのが得策と言えます。
司法書士は、基本的に土地の売却に関する業務を変わりにやっていただけるので、多くの方が司法書士に依頼する形になっています。土地売却の登記の際にサポートがあると楽で安心
わたしたちが司法書士と会う機会が最も多いのが、土地や建物などの不動産を売買するときです。
土地や建物などの不動産にはそれぞれ「登記簿」が備え付けられていて、どこにどのような不動産があり、誰のものなのか、どのような経緯で所有権が移ってきたのかなど、不動産に関するさまざまな情報が記載されています。
土地の売却時、司法書士は売主の依頼でローンを組んだときに設定された抵当権の抹消登記や、売却する土地の名義を売主の名前に変更する住所氏名の変更登記など、委任状を受け取って売主の代理人として登記を行ってくれます。
そのほか、土地や建物などの不動産を子どもや孫に贈与したときの所有権移転登記、不動産を相続したときの所有権移転登記、家を建てたときの所有権保存登記、離婚して不動産を財産分与したときの所有権移転登記なども、本人の代わりに代行してくれます。
登記簿は主に3部構成で手間がかかる
登記簿はどのくらい複雑なものなのでしょうか。
基本的に以下の3部構成になっています。
- 表題部……所在・地番・地目(宅地・畑・雑種地など土地の現況)・地積(土地の面積)などが記載されている
- 権利部(甲区)……所有者に関する事項が記載されていて、土地の所有者が誰で、いつ、どんな原因で、誰から所有権を取得したか記載されている
- 権利部(乙区)……銀行から融資を受けたときに設定される抵当権など、所有権以外の権利に関する事項が記載されている
例えば、土地の売買で所有者が変わる場合、登記簿の「権利部(甲区)」に新しい所有者の住所と氏名、所有権が移転した原因として「売買」などと記載されます。また、土地に設定された抵当権が外れる場合には、「権利部(乙区)」に記載されている金融機関の抵当権が抹消された旨の登記がされます。
こうした登記手続きはとても重要です。
しかし、専門家でない場合、記載することが難しいと感じたり、めんどくさいと思ってしまうのも無理がありません。
その点、司法書士に任せルと代行して手続きを不備なく進められるので、大きなメリットとなります。
総合的に見て司法書士に依頼する方が安心
登記は理論上「自分」でも提出することが可能ですが、先述したように書類が不雑なことが理由で、司法書士に依頼するケースが多いです。
登記手続きには、上記以外にも、土地や建物の所有権移転登記、抵当権設定・抹消登記など、複雑な法的知識が必要です。
素人だけで方法を探す事もできますが、司法書士は、もちろん手続きに関する専門的な知識と経験を持っており、正確かつ迅速に業務を進めることができます。
また、もしも登記で誤った部分があった場合、将来的な法的トラブルの原因となる可能性があります。
所有権移転が不適切に行われた場合、後日、買い主や売り主に法的な不利益を及ぼすことがありますが、司法書士は、このようなリスクを避けるために第三者という目線で重要な役割を担います。
実務上司法書士がほぼ必要不可欠である理由とは
不動産会社の仲介を依頼しない方は一定数いらっしゃいますが、司法書士さんに一切依頼せずに売却を完了させる方は珍しいです。
実務上司法書士がほぼ必要不可欠である理由とは一体何でしょうか?
この章では、実務上司法書士がほぼ必要である理由を紹介します。
司法書士と不動産会社は契約しているケースが多い
司法書士は不動産会社と契約している場合がほとんどで、スムーズに売却を進めたい場合は、良い司法書士の前に、良い不動産会社を見つけることが重要です。土地の売却を少しでも検討しているのであれば、不動産一括査定を利用し、より多くの不動産会社を比較してみてください。
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登記については基本的に買い手が司法書士を依頼する
不動産の取引では、買主側が依頼した司法書士が中心になって手続きを行うのが原則です。
これは、買い主には所有権移転登記という重要な手続きがありますが、売り主には登記の手続きが必要ないことがあるということが理由です。
また、買い主側が司法書士に依頼するのは、不動産の取引では、買い主側に「代金を支払っても所有権を移転できないリスクがある」ことも理由のひとつでしょう。
そこで、買い主側が信頼する司法書士を自分で選び、取引の安全性を守るという考え方です。
住宅ローンに関する手続きには司法書士に依頼する必要がある
日本において、ローンでの不動産購入や大きな借入れの際には、通常、抵当権の設定が伴います。
この抵当権設定の登記を行うためには司法書士の関与が法律によって必要とされています。
抵当権設定には専門的な法律知識が必要であり、間違いのないように適切な手続きを行う必要があります。
司法書士は不動産登記の専門家であり、正確な登記手続きを保証できるため、依頼する必要性があります。
また、サポートを受けていることで、万が一、登記過程や金融機関とのやり取りで問題が生じた場合、司法書士は法的なアドバイスや支援を提供することができます。
買い手側が司法書士に依頼するケース
登記に関すること以外で売り主が司法書士に依頼する場合もあります。
例えば、抵当権が設定されている土地の抵当権抹消登記や、相続した土地で名義が自分のものになっていない土地の名義変更などです。
身内や知人に司法書士がいる人は、直接依頼しても題ありません。司法書士の知り合いがいなくても取引を仲介してくれる不動産屋業者に相談すれば、紹介を受けられる可能性が高いので、あまり不安にならないでください。
また、地域ごとに商習慣があり、不動産の取引では売主と買主の双方が司法書士を立てるケースもあるようです。不動産屋さんの仲介で土地の売却を進める場合には、あらかじめ聞いておくといいかもしれません。
司法書士に依頼する方法
土地の売却などの不動産取引に立ち会う司法書士は、登記に関する手続き以外にも重要な役割を担っています。
そのひとつが、当事者の本人確認と意思確認です。不動産取引の際は、事前に準備した書類をもとに取引の相手が本人なのか、売却の意思が本当にあるのか確認し、滞りなく買主に所有権移転ができるようにします。取引の中には、身内の不動産を勝手に処分しようとする可能性もあり、所有者本人の意思を事前に確認するなど、法律家の視点でチェックしてくれます。そして、取引に問題がないことが確認された時点で買主から売主に代金が支払われ、買主の委任を受けて所有権移転登記をその日のうちに済ませます。
また、司法書士は不動産取引の安全性も担保してくれます。不動産の取引では大きなお金が動くため、取引にかかわる全ての人がリスクを負っています。しかし、法律の専門家である司法書士が取引にかかわることで、売主・買主の当事者だけでなく、不動産を仲介する不動産業者、不動産の購入費用を融資する金融機関も安心して取引が行えます。
土地の取引に関する登記は、司法書士に依頼しなくてもできます。しかし、司法書士は登記だけでなく取引の安全性を守る重要な役割も担っていることから、司法書士に依頼して取引を進めていくのが一般的になっています。
決済当日の司法書士の業務の流れ
司法書士は不動産取引に関する登記申請の依頼を受けると、取引が行われる土地の登記簿を事前に確認し、取引をスムーズに進めるための準備を始めます。例えば、土地の売却では、該当する土地が誰のもので、本人が売却に同意しているのかといった意思確認に始まり、抵当権が設定されているのか、相続した土地の場合には名義が変更されているのかなど、取引の障害になる事柄をチェックしていきます。そのうえで、決済までに売主が準備しなければならない書類や手続きについて具体的に指示します。一方、買主にも所有権移転登記に必要な委任状など、決済に必要な書類を準備するように指示します。
土地の売却など不動産取引の決済は、融資が行われる金融機関の応接室や、取引を仲介する不動産会社の事務所などで行われます。その際は、あらかじめ指示した書類や手続きがそろっているのか、運転免許証などをもとに売主が本当に本人なのかなど、最終確認が中心になります。全てがそろったところで必要書類に署名押印をし、所有権移転登記が滞りなく進むことを確認して、買主側に売却代金の支払いのゴーサインを出します。
そして、司法書士は売主に実際にお金が支払われたことを確認し、預かった印鑑証明書や委任状など必要な書類とともに法務局を訪れ、代理人としてその日のうちに所有権移転登記を済ませます。
土地の売却でどのくらいの司法書士費用がかかるの?
司法書士費用について
土地を売却した場合に行う所有権移転登記は、登記義務者である売主と登記権利者である買主が共同で登記申請をするのが原則。しかし、ほとんどの取引で売主と買主から委任状を預かった司法書士が代理で行います。このとき、所有権移転登記に関する司法書士費用は買主が負担し、売主の負担はないのが一般的です。ただし、売却する土地に抵当権が設定されているときには抵当権抹消登記の費用が、所有者の住所や氏名の変更が必要な場合には住所・氏名の変更登記の費用などが売主に発生します。
司法書士の報酬は事務所ごとに規定があり、依頼する登記内容によって異なります。また、決済当日に司法書士に支払う費用には、登録免許税などの実費も含まれます。
- 司法書士に支払う費用=司法書士の報酬 + 登録免許税などの実費
売主が負担する司法書士費用
抵当権が設定されている場合
売却する土地に抵当権が設定されている場合は、抵当権抹消登記を済ませてから所有権の移転登記を行わなければなりません。このとき、売主が支払う費用は司法書士報酬と登録免許税は、抵当権抹消登記の司法書士報酬が1万円から3万円、登録免許税は土地1筆に対して1,000円です。そのほか、事前調査のために必要な登記簿謄本の取得費用や、登記完了後の登記簿謄本の取得費用、金融機関に出張する必要がある場合にはその報酬や交通費などの実費が必要になります。売主が支払う抵当権抹消登記の費用(土地4筆の場合)
- 司法書士報酬 1万円~3万円」+「登録免許税 4,000円(1000円×4筆)」+「その他実費」
売主の氏名・住所が登記簿と違う場合
転居をしたものの、土地の登記簿上の住所を変更していない場合や、結婚して姓が変わったのに登記簿上の氏名を変更していない場合は、所有権を移す前に「登記名義人住所・氏名変更登記」をしなければなりません。このとき、売主が支払う費用は司法書士報酬と登録免許税で、変更登記の司法書士報酬が1万円から2万円、登録免許税は土地1筆に対して1,000円です。売主が支払う変更登記の費用(土地4筆の場合)
- 司法書士報酬 1万円~2万円」+「登録免許税 4,000円(1,000円×4筆)
登記簿の所有者が違う場合
相続をした土地が父親の名義になったままの場合など、所有者が変更されていない場合に、現在の所有者に所有権を移す「所有権移転登記」が必要です。このとき、売主が支払う費用は司法書士報酬と登録免許税で、所有権移転登記の司法書士報酬が3万円から11万円、登録免許税は土地の固定資産税評価額に対して税率0.4%です。また、所有権移転に必要な遺産分割協議書などの作成が必要になる場合には、別途で実費が必要になります。例)土地の固定資産税評価額 2,000万円
- 所有権移転登記の司法書士報酬 3万円~11万円
- 登録免許税 2000万円×0.4%=8万円
買主が負担する司法書士費用
不動産の取引で買主が支払う司法書士費用は、買主へ名義を移す所有権移転登記の費用と、不動産をローンで購入した場合に金融機関が設定する抵当権設定登記の費用です。それぞれの金額は、所有権移転登記の費用は司法書士報酬が3万円から10万円で、実費として登録免許税が必要です。所有権移転登記の登録免許税は土地の場合、固定資産税評価額の2.0%(平成31年3月31日までは1.5%に軽減されます)になります。
一方、抵当権設定登記の費用は司法書士報酬が2万円から6万円で、実費として登録免許税が必要です。抵当権設定登記の登録免許税は設定する抵当権の債権金額の0.4%で、税額が1,000円に満たない場合は1,000円になります。
例)Aさんが購入した土地
- 固定資産税評価額 2,000万円
抵当権 3,000万円の抵当権を設定 - 所有権移転登記の司法書士報酬 3万円~10万円
登録免許税 2,000万円×2.0%=40万円(平成31年3月31日までは30万円) - 抵当権設定登記の司法書士報酬 2万円~6万円
登録免許税 3,000万円×0.4%=12万円
司法書士報酬は地域によって大きな差がある
司法書士の報酬は、法で定められた相場があるわけではなく、自由に定めてよいことになっています。しかし、日本書士会連合会では司法書士の報酬を、「報酬額の算定方法や諸費用を明示し、依頼者との合意によって決定する」と、会則で定めています。事務所ごとにある程度の規定があることが一般的なので、依頼する前に問い合わせたりWebサイトを確認していたりするとよいでしょう。依頼する登記内容や地域によって異なります。日本司法書士会連合会が平成30年1月に実施したアンケート調査の結果をもとに、司法書士報酬の違いを見てみましょう。
抵当権抹消登記 全体の平均値
- 北海道地区15,532円
- 東北地区13,863円
- 関東地区15,613円
- 中部地区16,638円
- 近畿地区18,795円
- 中国地区15,289円
- 四国地区14,409円
- 九州地区13,821円
所有権登記名義人住所変更登記 全体の平均
- 北海道地区12,271円
- 東北地区10,836円
- 関東地区12,123円
- 中部地区12,933円
- 近畿地区13,196円
- 中国地区11,816円
- 四国地区11,232円
- 九州地区11,233円
売買による所有権移転登記 全体の平均値
- 北海道地区42,999円
- 東北地区42,585円
- 関東地区51,909円
- 中部地区51,065円
- 近畿地区64,090円
- 中国地区48,035円
- 四国地区51,369円
- 九州地区45,729円
抵当権設定登記 全体の平均値
- 北海道地区36,576円
- 東北地区35,377円
- 関東地区39,267円
- 中部地区38,798円
- 近畿地区46,219円
- 中国地区38,720円
- 四国地区38,303円
- 九州地区37,600円
査定がまだの場合は一括査定を使おう
土地の価格がまだ分かっていない場合は不動産会社に査定を依頼しましょう。土地の価格を調べる際、最も売却相場に近いのは不動産会社が行う査定です。不動産会社の査定を利用して土地の価格を調べてもらいましょう。
ただし、査定依頼を出す際は3社以上に依頼しましょう。実は不動産会社の査定に明確なルールはなく、不動産会社によって査定結果が異なります。
そのため、1社に査定してもらっただけでは、その査定結果が高いか安いかも分からないのです。3社以上に査定してもらえば、査定結果を比較することができるので、価格の幅を知り平均である売却相場を知ることができるでしょう。
複数社に査定依頼を出すのなら、一括査定サービスのイエウールを使うのが得策です。イエウールなら、一度の申し込みで複数社に査定依頼が可能。さらに、24時間申し込みを受け付けているので、貴重な休日の時間を使わなくて済みます。
あなたの不動産、
売ったら
登記に必要な書類は?
土地の売買契約が成立すると、司法書士から決済当日までに準備してほしい書類を告げられます。必要書類がすべてそろわないと所有権移転登記ができないため、司法書士から決済のゴーサインが出ません。司法書士の指示に従い、必要なものは早めに準備しておきましょう。
売主が準備するもの
- 土地の権利証または登記識別情報…土地の所有権を取得した際に発行されていた書類が権利証(登記済権利証)で、現在は登記識別情報が発行されています
- 委任状…司法書士に委任するための書類です
- 印鑑証明書…3カ月以内に発行されたもの
- 固定資産評価証明書…買主が登録免許税を納めるときの税額計算に使います
- 実印
- 住民票
- 免許証など…本人確認に使います
売主が準備するもの
- 委任状
- 住民票
- 免許証など…本人確認に使います
※土地に担保設定する場合は、印鑑証明書が必要です
司法書士に渡した書類はどのように使われるの?
不動産の登記ではなりすましを防ぐため、決済の際に免許証などの身分証明書で本人確認が行われます。それに合わせ、「登記済権利証・登記識別情報」「所有者の実印での捺印」「印鑑証明書」の3点で売主の本人確認をしています。なお、抵当権を抹消するために必要な書類は、融資を受けている金融機関が発行します。事前に債務を返済していれば決済までに入手できますが、土地の売却代金で抵当権を抹消する場合は事前に準備できません。そのときは、金融機関と司法書士と連絡を取りながら、抵当権抹消の手続きを進めていきます。
もし思い入れのある土地や、資産性のある土地なら手放さずに活用するという選択肢もあります。
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