経験したことのないこと方にとって、土地を売却にかかる費用っていくらなんだろう?とイメージしづらいかと思います。
土地売却にかかる費用は主に① 仲介手数料、② 抵当権抹消費用、③ 測量費用、④ 工事費用、⑤ 解体費用の5つに分けられます。
さらに、税金は① 印紙税、② 登録免許税、③ 譲渡所得税、④ 住民税を納税する義務があります。
しかし、条件によっては、特別控除を利用し、出費を抑えることも可能です。
この記事では、土地売却に伴う費用と税金を一覧表でわかりやすくまとめた後に、土地売却でかかる税金負担をケースごとに計算方法とともに紹介します。
最後にあなたの条件では諸々の費用がいくらになるのかシミュレーションが出来るようになっています。
土地売却にかかる収支を明確にして、賢い売却計画を立てるために役立てましょう。
「まずは土地売却の基礎知識を知りたい」という方は、こちらの記事をご覧ください。
土地売却にかかる費用
土地売却にかかる一般費用と税金を分けて解説していきます。
ケースによって必須でかかる費用と、必要となったりならなかったりする項目もありますので、1つ1つ確認していきましょう。まずは、費用の一覧をご確認ください。
内容 | 金額 | |
---|---|---|
一般費用 | 仲介手数料 | 上限:(売却額×3%)+6万円 |
抵当権抹消費用 |
| |
測量費用 | 35~45万円程度(面積が広いほど費用がかかる) | |
水道引き込み工事費用 | 相場は30万円~50万円 | |
解体費用 |
|
ここから先は、費用項目毎に具体的に解説をしていきたいと思います。
先に、一般費用に含まれる、「仲介手数料」「抵当権抹消費用」「測量費用」について説明し、その後に各税金の紹介をしていきます。
仲介手数料
仲介手数料とは、土地売却の仲介を依頼する不動産会社に支払う手数料です。土地や建物などの不動産を売るときは、不動産業者に依頼して買主を見つけてもらうことが一般的なため、ほとんどのケースで発生する費用と言えるでしょう。仲介手数料は、売却価格によって上限が設けられていて以下の計算式で求められます。売却価格 | 手数料の上限(速算式) |
---|---|
200万円以下の額 | 売却価格の5% +消費税 |
200万円〜400万円以下の額 | 売却価格の4% +2万円 +消費税 |
400万円を超えた額 | 売却価格の3% +6万円 +消費税 |
業者によって多少の差はありますが、上限額いっぱいの仲介手数料を取っているところがほとんどです。
「(売却額×3%+6万円)+ 消費税 」という金額はあくまで上限ですから、業者との交渉次第で値下げも可能です。しかし、不動産会社の収益はこの仲介手数料によって成り立っているため、値下げばかりにこだわるとサービスの品質が低下するリスクがあるだけでなく、トラブルのもとになる可能性があるため注意してください。
高く売れるかどうかは契約する不動産会社次第のため、不動産会社との無駄なトラブルは避けた方が結果的に大きな収益をあげることに繋がることを覚えておきましょう。
また、2024年7月1日より、仲介手数料上限が改正されましたので、注意してください。改正された点は、これまでの原則上限とは異なり、「低廉な空き家等の不動産価格が800万円以下の売買取引について、上限が「30万円」になりました。
例えば1,000万円の土地を売却するとき、手数料は下記のように計算します。
- 【200万円まで】→ 200万円×5%=10万円
- 【200万円〜400万円まで】→ 200万円×4%=8万円
- 【400万円以上】→ 600万円×3%=18万円10万円+8万円+18万円=36万円
- (1,000万円×3%)+6万=36万円
両方の式ともに仲介手数料の金額が一致しました。この通り、仲介手数料の複雑な計算も速算式であれば簡単に計算できます。豆知識として覚えておくと良いでしょう。
※平成30年1月1日の宅建業法一部改訂により、400万円以下の不動産売買の仲介手数料の上限が18万円となりました。
抵当権抹消費用
ローンが残っている土地を売却する際には「抵当権抹消」という手続きを行わなければなりません。抵当権抹消登記の登録免許税は、不動産1件つき1,000円です。土地のみなら1,000円ですが、土地と建物を別個に数える場合は、2,000円の費用が発生します。抵当権の抹消についても、所有権移転登記と同じく印鑑証明書や住民票などさまざまな書類を用意する必要があります。
手続きが煩雑なため、所有権移転登記と一緒に司法書士に依頼することが一般的です。司法書士への依頼費用は数万円程度が目安です。なお、抵当権抹消費用は土地の譲渡費用には含まれません。譲渡所得税・住民税を計算する際は注意してください。
土地の測量費用
売却する土地について、隣の土地の境界があいまいな場合は測量を行って近隣の境界を明確に明示することとその面積を確定する必要があります。測量費用はその土地の広さや境界の明示が必要かどうかによって異なります。測量費用は売主が境界を明示する義務を負うことから売主が負担することが一般的となっています。また、土地の測量は仲介業者に紹介された業者や知り合いの測量事務所や土地家屋調査士に依頼することになります。内容 | 概要 | 金額 | 支払いの時期 |
---|---|---|---|
測量費用 | 土地と土地の境界が不明な場合 | 35~45万円程度(面積が広いほど費用がかかる) | 測量依頼の際に支払う |
確定測量について詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
状況によって変化する費用:水道引き込み工事費用
土地を売却する際に発生する費用として、水道引き込み工事の費用が考えられます。
水道引き込み工事とは、公共の水道管から土地内へ水道を引き込む工事です。
土地にまだ水道が引かれていない場合、この工事が必要になります。費用は次のような要素によって変動します。
まずは、公共の水道管との距離によって工事の規模感が変わってくるので、それに伴う費用も変わります。水道本管からの距離が遠いほど、また引き込みたい土地の広さが大きいほど、工事費用は高くなります。
内容 | 概要 | 金額 | 支払いの時期 |
---|---|---|---|
水道引き込み工事費用 | 公共の水道管から土地内へ水道を引き込む工事が必要な場合 | 相場は30万円~50万円 | 必要な時(最短でも1ヶ月間) |
次に、その土地の地形と地質です。地形が複雑だったり、硬い岩石を掘る必要がある場合などは、工事が複雑になりコストが上がる可能性があります。
最後に、地域によっては、水道引き込みに特有の規制や手数料が設定されている場合があるので規定の内容によっても費用が変わってきます。
状況によって変化する費用:解体費用
土地に古い建物があり、解体したほうが売れると判断した場合、それを撤去する解体作業が必要です。解体費用は次のような要素によって異なります。
まず、解体する建物の種類が木造、鉄骨造、コンクリート造かによって、また建物自体の大きさによって、工事の難易度と必要な機材が変わり、それに伴い費用も変動します。
次に解体後、廃材の処理にもお金がかかり、解体後の廃材の量と種類によって、廃棄費用が変わります。
有害物質を含む材料の処理には特別な手続きが必要で、費用が高くなることがあります。
内容 | 概要 | 金額 | 支払いの時期 |
---|---|---|---|
解体費用 | 撤去する解体作業が必要な場合 |
| 必要な時(最短でも1ヶ月間) |
最後に、土地の立地条件は解体作業の際にも関係してきます。
都市部やアクセスが難しい場所では、機材の運搬や作業の実施が困難になり、これが費用を普段よりの追加される可能性があります。
これらの費用は、売却前に正確な見積もりを取ることで、土地売却の全体的な費用計画を立てるのに役立ちます。地元の専門業者に相談することで、より詳細かつ具体的な見積もりを得ることができるでしょう。
その他:書類の取得費
土地の売買には主に下記の書類が必要です。いずれも300円から600円程度で高額ではありませんが、住民票等の交付手数料は各市町村で異なります。さらに市役所などに取りに行く手間もかかります。また、書類によっては「3カ月以内に発行した書類でなければ無効」などの規定が設けられているので注意しましょう。項目 | 料金 | 取得できる場所 | 注意事項 |
---|---|---|---|
登記済み権利書、または登記識別情報関する証明 | 300円 | 法務局またはオンラインでも申請可能 | ― |
登記簿謄本・登記事項証明書 | 書面請求:600円、 オンライン請求・送付:500円、 オンライン請求・窓口交付:480円 | 法務局またはオンラインでも申請可能 | ― |
売買契約書 | ― | 物件を購入した際に渡される | 再発行不可のため紛失に注意 |
重要事項説明書 | ― | 物件を購入した際に渡される | 再発行不可のため紛失に注意 |
固定資産税納税通知書および固定資産税課税明細書 | ― | 毎年4月1日以降、市町村役場・都税事務所から郵送される | 市町村役場・都税事務所から取り寄せも可能 |
土地測量図・境界確認書(地図等情報) | 書面請求:450円、 オンライン請求・送付:450円、 オンライン請求・窓口交付:430円 | 法務局またはオンラインでも申請可能 | ― |
本人確認書類 | ― | 自身で用意 | 運転免許証・パスポート、健康保険証など |
実印・印鑑証明書 | 市町村によって異なる | 市町村の役場で申請 | 発行から3ヶ月以内のものが有効 |
住民票 | 市町村によって異なる | 市町村の役場で申請 | 発行から3ヶ月以内のものが有効 |
その他、土地の条件によってローン残高証明書などが必要となる場合もあります。
その他:土地の環境によってかかってくる費用
売ろうとしている土地に、土壌汚染や何らかの埋設物がある可能性はありませんか?土地を売却する際に土壌汚染や埋設物について調査する義務はありませんが、売却後にそれらのトラブルが発覚すると、売り主が費用を賠償しなければなりません。土壌汚染の調査や浄化の費用は、汚れの度合や業者によって異なりますが、調査費用は20~30万円、浄化費用は土地1立方メートルあたり3~5万円程度のことが多いようです。
また、土地を宅地として売り出すケースでは、土地の造成や整地、水道管の引き直し・引き込み工事が必要になることもあります。
こうした工事費用の負担は売主の負担になるか、買主の負担になるかはケースバイケースです。したがって、売却前に工事を済ませておくか、工事費用を負担してもらうことを見込んで売却価格を設定するなどの対応が求められます。
売却前に土地の状態をきちんと調査し、どのような対応が必要か不動産会社に相談することが大切です。
土地売却にかかる税金
次に、土地売却の際に納税の義務がある4つの税金について紹介します。
ほとんどの税金が売却価格によって、税金額が変わります。
先に必要な税金の項目と
項目 | 税金額 | |
---|---|---|
税金 | 印紙税 |
|
登録免許税 | 固定資産税評価額 ✕ 税率0.4% | |
譲渡所得税 |
| |
住民税 |
|
それでは詳しく説明していきます。
印紙税
印紙税とは、収入印紙にかかる税金です。不動産の売買においては売主と買主の間で売買契約書を取り交わしますが、その契約書に収入印紙を貼付する必要があります。税額は国税庁によって下記の通り定められています。詳しくは国税庁のリーフレットをご覧ください。
契約書の記載金額 | 印紙税の金額 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
10万円以下 | 200円 |
50万円以下 | 400円 |
100万円以下 | 1,000円 |
500万円以下 | 2,000円 |
1,000万円以下 | 10,000円 |
5,000万円以下 | 20,000円 |
1億円以下 | 60,000円 |
5億円以下 | 100,000円 |
10億円以下 | 200,000円 |
50億円以下 | 400,000円 |
50億円以上 | 600,000円 |
記載金額がない | 200円 |
登録免許税
土地を売却する際に、土地の所有権を売主から買主へと移行することを「所有権移転登記」といいます。このとき発生するのが「登録免許税」で、土地の売却では土地の固定資産税評価額に対して0.4%と算出することができます。こちらは税率が定められているため、節約は不可能と言えます。令和3年度の税制改正により、登録免許税の税率の軽減措置について、その適用期限が令和 9年3月31日まで更に延長されています。詳しくは登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせをご確認ください。
例えば、固定資産税評価額が1,000万円の土地を売却する際にかかる登録免許税は下記のとおりです。
1,000万円×0.4%=4万円
なお、所有権移転登記は、法務局へ必要書類を提出することで完了します。しかし、売買契約書や売主の印鑑証明書、買主の住民票の用意など準備が煩雑なため、司法書士に代行を依頼することが一般的です。
仲介業者が司法書士へ登記申請を依頼するケースも少なくありません。報酬額は一般には2万~3万円程度といわれていますが、依頼する司法書士によって報酬額は異なります。自身で業者を探す場合はあらかじめ確認しておきましょう。
あまりお勧めができませんが、もし、自分で所有権移転登記を行う場合は、必ず代金の受け取りと同時、もしくはそれ以降に手続きを行ってください。これは所有権を移転したのにお金を払ってもらえないなどのトラブルを防ぐ目的があります。
譲渡所得税・住民税
土地を売って利益を得た場合、「譲渡所得税」と「住民税」が発生します。土地の所有期間によって税率が異なるため、計算時は注意が必要です。なお、購入金額よりも安い値段で売却した場合は、税金を支払う必要はありません。譲渡所得税は国に納める所得税の一種です。売却した翌年に確定申告で納付します。住民税は地方自治体に納める税金であり、売却した翌年に市町村から送付される住民税納付書で支払いを行います。特別徴収として、給与から天引きすることも可能です。
どちらの税金も「売却額」ではなく「売却益(課税譲渡所得金額)」、つまり売った際の土地の価格ではなく、売った時の金額と取得した時の金額の差に利益があった場合を元に税金が計算されます。売却益の計算方法は下記のとおりです。
売却益=売却額 -(取得費+譲渡費用)-特別控除
- 取得費には、土地や建物の購入代金や、購入時の仲介手数料、その後支払った改良費、設備費なども合計して算出します
- 譲渡費用には、土地や建物を売るために支出した費用。売却時の仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代、借家人などに支払った立退料、建物を取り壊すための費用などがあります。
また、土地の所有期間によって税率が異なります。
所有期間 | 所得税 | 住民税 | 合計税率 |
---|---|---|---|
所有期間が5年以下(短期譲渡所得) | 約30% | 9% | 39% |
所有期間が5年超(長期譲渡所得) | 約15% | 5% | 20% |
【計算例】
10年前に1,000万円で購入した土地を3,000万円で売却し、諸費用に200万円掛かった場合の税金を計算してみます。まず、売却益は下記のとおりです。
- 売却益=3,000万円-(1,000万円+200万円)=1,800万円
長期譲渡所得の税率は所得税:15%、住民税:5%なので税金額は下記のとおりです。
- 譲渡所得税=1,800万円×0.15=270万円
- 住民税=1,800万円×0.05=90万円
土地売却費用によって変わる税金負担額
土地売却にかかる費用と税金について理解していただきましたが「実際に〇〇万円で売却した際の税金負担はいくらになるのか」気になりませんか?
特に確定申告が今後必要になる方は、実際に計算例を抑えておくと良いでしょう。
次の章では、売却価格別に100万円と500万円、2000万円で売却した際の税金負担について実際の計算事例を紹介します。
100万円で土地を売ったときの税金はいくら?
例えば、10年前に、譲渡された土地を100万円で売却し、諸費用に10万円かかった場合にかかる主な税金は以下の通りです。
印紙税は、契約書の記載金額によって異なります。
今回の場合、100万円で土地売却したケースであるため、印紙税額は、1000円になります。
登録免許税売却価格は、「売却価格の1.5%」であるため、15000円になります。
100万円✕1.5%=15000円 |
次に譲渡所得税の計算です。まずは、売却益を算出します。
売却益=100万円ー(10万円)=90万円 |
長期譲渡所得の税率は所得税:15%、住民税:5%なので税金額は下記のとおりです。
譲渡所得税=90万円 ✕ 0.15 = 13.5万円 住民税=90万円 ✕ 0.05 = 4.5万円 |
そのため、100万円の土地売却から得られる収益は、80万円程度です。
800万円で土地を売ったときの税金はいくら?
例えば、10年前に、100万円で購入した土地を800万円で売却し、諸費用に100万円かかった場合にかかる主な税金は以下の通りです。
印紙税は、契約書の記載金額によって異なります。
今回の場合、800万円で土地売却したケースであるため、印紙税額は、10000円になります。
登録免許税売却価格は、「売却価格の1.5%」であるため、12万円になります。
800万円✕1.5%=12万円 |
次に譲渡所得税の計算です。まずは、売却益を算出します。
売却益=800万円ー(100万円+100万円)=600万円 |
長期譲渡所得の税率は所得税:15%、住民税:5%なので税金額は下記のとおりです。
譲渡所得税=600万円 ✕ 0.15 = 90万円 住民税=600万円 ✕ 0.05 = 30万円 |
そのため、800万円の土地売却から得られる収益は、667万円程度です。
2000万円で土地を売ったときの税金はいくらですか?
例えば、10年前に、500万円で購入した土地を2000万円で売却し、諸費用に200万円かかった場合にかかる主な税金は以下の通りです。
印紙税は、契約書の記載金額によって異なります。
今回の場合、2000万円で土地売却したケースであるため、印紙税額は、20000円になります。
登録免許税売却価格は、「売却価格の1.5%」であるため、20万円になります。
2000万円✕1.5%=30万円 |
次に譲渡所得税の計算です。まずは、売却益を算出します。
売却益=2000万円ー(500万円+200万円)=1300万円 |
長期譲渡所得の税率は所得税:15%、住民税:5%なので税金額は下記のとおりです。
譲渡所得税=1300万円 ✕ 0.15 = 195万円 住民税=1300万円 ✕ 0.05 = 65万円 |
そのため、2000万円の土地売却から得られる収益は、708万円程度です。
土地売却でかかる費用を特別控除を利用して抑えよう
土地売却の際に一定の条件を満たせば、控除や特例が受けれる制度があります。
100万円~最大5000万円控除が受けられる特例があり、その内容や要件は様々です。ぜひ参考にしてください。
特別控除の種類 | 金額 |
収用等により土地建物を売った場合 | 5,000万円 |
居住用財産を譲渡した場合 | 3,000万円 |
特定土地区画整理事業などのために土地を売却した場合 | 2,000万円 |
特定住宅地造成事業などのために土地を売却した場合 | 1,500万円 |
平成21年および平成22年に取得した国内にある土地を譲渡した場合 | 1,00万円 |
農業経営基盤強化促進法の利用権等促進事業で農地を売った場合 | 800万円 |
低未利用地の適切な利用・管理を促進するための特例措置 | 100万円 |
収用等により土地建物を売った場合の5,000万円特別控除
土地収用法やその他の法律で収用権が認められている公共事業のために土地建物を売った場合には、収用などの課税の特例が受けられます。課税の特例には、主に2つあります。
- 対価補償金等で他の土地建物に買い換えたときは譲渡がなかったものとする特例
- 譲渡所得から最高 5,000万円までの特別控除を差し引く特例
ここでは、「譲渡所得から最高 5,000万円までの特別控除を差し引く特例」について紹介します。
収用等により土地建物を売ったときの売却益(譲渡所得)から、最高5,000万円特別控除を差し引くことができるというものです。
5,000万円の特別控除を受けるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
(1)売った土地建物は固定資産であること。 (2)その年に公共事業のために売った資産の全部について収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例の適用を受けていないこと。 (3)最初に買取り等の申出があった日から6か月を経過した日までに土地建物を売っていること。 (4)公共事業の施行者から最初に買取り等の申し出を受けた者(その者の死亡に伴い相続または遺贈により当該資産を取得した者を含みます。)が譲渡していること。 |
提出書類や詳しい手続きに関する情報は国税局の「No.3552 収用等により土地建物を売ったときの特例」をご覧ください。
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除
次に「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」について説明します。
この制度を使うと、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除が可能です。
控除を受け取るための要件は主に以下の6つに通りになります。
(1)自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること。なお、以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。 (2)売った年の前年および前々年にこの特例(「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」によりこの特例の適用を受けている場合を除きます。)またはマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと。 (3)売った年、その前年および前々年にマイホームの買換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていないこと。 (4)売った家屋や敷地等について、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。 (5)災害によって滅失した家屋の場合は、その敷地を住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。 (6)売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと。 |
より詳しい情報に関しては、国税庁の「No.3302 マイホームを売ったときの特例」をご覧ください。
特定土地区画整理事業などのために土地を売却した場合の2,000万円特別控除
つぎに、特定土地区画整理事業などのために土地を売却したときの2,000万円特別控除の特例について紹介します。
これは、個人が所有している土地を、「国や地方公共団体の市街地のまちづくり活性事業」などのために売却した場合に、譲渡所得から最大2000万円まで控除が可能になる特例です。
控除を受ける要件は対象が以下の組合や団体に当てはまることや、面積に関する条件があります。
【対象組合・団体】
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特定住宅地造成事業などのために土地を売却した場合の1,500万円特別控除
つぎに、特定住宅地造成事業などのために土地を売却したときの1,500万円特別控除について説明します。
特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の1,500万円控除は、「土地等が収用対象事業等の事業用地の代替地として買取られた場合、又は公拡法に基づき事業用地または代替地として買取られた場合」に譲渡所得から最大1,500万円が所得控除されるというものです。
もう少し具体的に説明すると、農地保有の合理化などのために土地を売却した場合などが、この条件に当てはまります。
詳しい内容や要件については、国土交通省の「用地関係税制」をご覧ください。
平成21年および平成22年に取得した国内にある土地を譲渡したときの1,000万円特別控除
「平成21年および平成22年に取得した国内にある土地を譲渡したときの1,000万円特別控除」について説明します。これは、個人が、平成21年に取得した国内にある土地または土地の上に存する権利を平成27年以降に譲渡した場合、
または平成22年中に取得した土地等を平成28年以降に譲渡した場合には、その土地等に係る譲渡所得の金額から1,000万円を控除することができる制度です。
これは、リーマンション後の景気対策として創設された特例です。
譲渡所得の金額が1,000万円に満たない場合にはその譲渡所得の金額が控除額になります。
この控除を受ける要件は以下の項目になります。
(1)平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に土地等を取得していること。 (2)平成21年に取得した土地等は平成27年以降に譲渡すること、また、平成22年に取得した土地等は平成28年以降に譲渡すること。 (3)親子や夫婦など特別な間柄にある者から取得した土地等ではないこと。 特別な間柄には、生計を一にする親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。 (4)相続、遺贈、贈与、交換、代物弁済および所有権移転外リース取引により取得した土地等ではないこと。 (5)譲渡した土地等について、収用等の場合の特別控除や事業用資産を買い換えた場合の課税の繰延べなど他の譲渡所得の特例の適用を受けないこと。 |
より詳しい情報については、国税庁の「No.3225 平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除」をご覧ください。
農業経営基盤強化促進法の利用権等促進事業で農地を売った場合の800万円特別控除
基本的に、個人または農業生産法人が、農地を売り、利益が発生すると、譲渡所得益に対して所得税または法人税がかかりますが、農業経営基盤強化促進法の利用権等促進事業で農地を売った場合には、譲渡所得について800万円の特別控除が受けられます。
詳しくは、農林水産省の発表する「農地を売った場合の税金」をご覧ください。
農地保有の合理化などのために土地を売却したときの800万円特別控除です。
低未利用地の適切な利用・管理を促進するための特例措置
最後に、「低未利用地の適切な利用・管理を促進するための特例措置」について紹介します。
これは、国土交通省が創設した特別控除で、土地の有効活用を通じた投資の促進、地域活性化、更なる所有者不明土地発生の予防に向け、令和2年度税制改正において、低未利用地の適切な利用・管理を促進するためのものです。
本特例措置は、一定の要件を満たす譲渡価格が500万円以下または800万円以下の低未利用土地等の譲渡をした場合に、長期譲渡所得から100万円を控除するものです。
令和5年度税制改正により、令和5年1月1日~令和7年12月31日までの間に、市街化区域や用途地域設定区域内等における低未利用土地等について譲渡された場合に限り、上限が800万円まで引き上げられました。
詳しくは国土交通省の「土地の譲渡に係る税制」をご覧ください。
土地売却でかかる費用をその他の方法で抑えよう
特別控除などを使って費用を抑える他にも、土地売却でかかる費用を節減する方法があります。
仲介手数料を節約する方法
土地売却において費用を抑える方法として、手数料を値引く方法があります。
手数料は不動産取引において一般的に発生するコストの一部であり、これを削減することで負担を軽減することができます。
具体的な方法は、「不動産業者や不動産仲介業者と交渉し、手数料の割引を提案する」です。
特に、土地の売却に関する契約を結ぶ際に、手数料の割引交渉を行うことができます。ただし、交渉には十分な情報収集と準備が必要です。
また、複数の不動産業者や不動産仲介業者から見積もりを取り、手数料や提供されるサービスを比較することで、手数料を値引く余地がある業者を見つけることができます。
不動産仲介業者は、仲介手数料から利益を得るようなサービスになりますので、必ずしも値引きが成功するとは限りません。
また、値引きを行う際には、契約内容やサービス品質についても慎重に考慮することが重要です。
印紙税を節約する方法
印紙税は売買価格に応じて国で定められているため、減額は不可能です。ただし売主については印紙税を節約する方法があります。それは「買主の所持する不動産売買契約書の写し(コピー)を持つ」という方法です。
法律的には、買主が不動産売買契約書の原本を持ち、売主がそのコピーを持つことでも問題ないとされています。
この場合、コピーの契約書に収入印紙は必要ないため、売主は印紙税を払わずに済みます。
ただし、何らかのトラブルで裁判に至った場合、買主の持つ「原本」に対して「写し」が証拠として不利になる可能性があります。
さらに、契約書のコピーに「写しは原本と相違ない」などの証明文言が記載されている場合は、収入印紙を貼付する必要があります。トラブルのリスクが心配な場合は、収入印紙を購入し売主・買主ともに原本を所有しておくことが無難です。
自分の土地売却にかかる費用・税金はいくら?シミュレーションで出して見よう
土地売却には多くの手数料や費用がかかります。まずは、実際にどのくらいの費用や税金がかかるかシミュレーションしてみましょう。
おおよその「売却価格」と土地の「所有期間」と「取得費(取得時にかかった費用:購入価格)」と「諸経費」を入力すると、手取り金額が分かります。また、手取り金額の他にも、仲介手数料や印紙税・譲渡所得税などがそれぞれいくらかかるか分かります。
未記入(不明)の場合は5%で自動試算
未記入(不明)の場合は5%で自動試算
売却価格
0万円
仲介手数料
0万円
諸経費
0万円
印紙税
0万円
譲渡税
0万円
手取り金額
0万円
※このシミュレーション結果はあくまでも概算になります。
売却価格 | - | 0万円 |
仲介手数料 | - | 0万円 |
諸経費 | - | 0万円 |
印紙税 | - | 0万円 |
譲渡税 | - | 0万円 |
手取り金額 | 0万円 |
※このシミュレーション結果はあくまでも概算になります。
売却価格-(取得費+仲介手数料+諸経費+印紙税)=譲渡益(譲渡所得)
0-(0+0+0+0)=0万円
(譲渡益-特別控除) ×税率 (所得税+住民税)=譲渡税
(0-0) × 0% [0%+0%]=0万円
※上記所得税の税率には、復興特別所得税として所得税の2.1%相当が上乗せされています。