アパート経営では家賃をどの程度に設定するのかが重要なポイントとなります。家賃は不労所得のベースである家賃収入に直結するからです。とはいえ経営者が儲けたいからという理由で法外な家賃に設定してしまうと入居者が集まらず空室だらけになってしまいます。
家賃の設定はどのように行うとよいのでしょうか。家賃設定ひとつでニーズにあった競争率の高いアパートにすることができます。
この記事ではアパート経営における家賃設定の重要な要素などを解説します。
アパート経営の利回りについては以下の記事をご覧ください。
アパート経営の家賃設定の目安
アパート経営の家賃設定は、アパート経営にかかる費用や周辺の競合物件と条件を比較するなどして行います。
アパート経営にかかる費用から考える
アパート経営の家賃設定は、毎月かかる費用の約3~5倍が目標として設定するべき目安と言われています。この費用には維持費用だけではなく、アパートローンの返済コストなども含まれます。
例えば、毎月かかる費用が20万円だとすると、家賃収入は60万円~100万円が目安となります。この金額を埋まってほしい部屋数で割ったものが一部屋の家賃になります。12部屋あるアパートで、目標の部屋数を6部屋と満室の12部屋で考えた時は以下のような家賃設定になります。
60万円 | 100万円 | |
---|---|---|
6部屋 | 10万円 | 17万円 |
12部屋 | 5万円 | 8万円 |
上記の表から分かる通り、アパート経営の家賃設定は目標とする収入や部屋数によって変わります。自分が所有している物件の部屋のうち何部屋が埋まっていれば目標の収入が得られるのかを考えて家賃設定することも大事です。
周辺の競合物件と条件を比較する
アパート経営で家賃設定をする目安で忘れてはならないのが競合アパートの実質的な家賃との比較です。同エリア内で同条件のアパートを探して、どの程度の家賃設定にしているのかを比較しましょう。また、家賃だけではなく所有物件と競合物件の「プラス部分」と「マイナス部分」を書き出して比較検討するようにしましょう。
家賃額以外で比較対象となるのは共益費・敷金・礼金・物件のパフォーマンスなどです。入居者は毎月の家賃額以外にもこうした項目もしっかりと比較して入居物件を決定します。敷金・礼金は地域などによって異なりますが、礼金を少なくして敷金を多くする傾向があります。共益費は家賃の4%前後が一般的です。
所有している物件と競合物件の「プラス部分」と「マイナス部分」を比較し、家賃を1000円単位でアップダウンさせるなどすると良いでしょう。
また、家賃相場との比較検討をする際は、建設費から年間総収入の割合を求めた単純利回りが12%前後期待できるか、空室が50%でも採算が取れるかといった面から考えることも大事です。
家賃設定に関してはシビアな部分もあるので、一度アパート経営のプロに相談してみることもおすすめです。
設備・性能
入居者が希望している設備や性能が備わっているかどうかで入居希望者を獲得できるかどうかも決まってきます。ニーズが高い設備については次のとおりです。
- バストイレ別
- エアコン完備
- Wi-Fi完備
- オートロックまたはモニター付きインターフォン
- ウォークインクローゼット
このように生活するにあたって安心して快適に暮らせる設備にニーズが集まるのは自然なことでしょう。これらの設備を初期投資でどこまで実現できるかで家賃設定にも影響が出てきます。
もうひとつ気にしておきたいのが性能です。性能とはいわゆるアパートの構造や工法のことです。構造は生活空間の快適性にも関係します。木造よりも耐久性が高い鉄骨造や鉄筋コンクリート造は建築費用も高額にはなりますが、その分、家賃を高く設定することもできます
間取り・広さ
同じエリア内でもアパートの間取りや広さによって家賃には差が生じます。
物件によって上下はありますが、部屋数が多く占有面積が広いほど家賃の相場は高額になります。そのため、家賃を決める際は部屋の間取りや大きさを考慮し、それぞれに合った設定をするようにしましょう。
立地
入居者がアパートを決定する際は周辺環境も欠かせない条件となります。たとえば次のような条件があげられるでしょう。
- 駅から近い
- 商業施設から近い
- 学校が近い
- 公共施設が近い
- コンビニが近い
- 病院が近い
このように生活しやすい立地にあるかどうかも重要なポイントです。立地がよければ家賃が少し高くても入居者を集めることができるでしょう。逆に生活するうえで入居者が敬遠しそうな施設が近くにある場合には家賃を値下げしなければ入居者が集まらない可能性もあります。
たとえば単身者向けのアパートの近くに幼稚園や保育園、学校があると夜勤の人などにとっては騒がしい声が日中の睡眠の妨げになる可能性があります。また、工場や墓地、火葬場なども敬遠されやすい施設であるといえるでしょう。
家賃収入の金額は地域の賃料相場によって変わります。以下はそれぞれの地域の賃料相場になるので、ぜひ参考にしてもらえればと思います。
北海道・東北 | 北海道|青森県|岩手県|宮城県|秋田県|山形県|福島県 |
---|---|
北陸・甲信越 | 新潟県|富山県|石川県|福井県|山梨県|長野県 |
関東 | 茨城県|栃木県|群馬県|埼玉県|千葉県|東京都|神奈川県 |
東海 | 岐阜県|静岡県|愛知県|三重県 |
近畿 | 滋賀県|京都府|大阪府|兵庫県|奈良県|和歌山県 |
中国 | 鳥取県|島根県|岡山県|広島県|山口県 |
四国 | 徳島県|香川県|愛媛県|高知県 |
九州・沖縄 | 福岡県|佐賀県|長崎県|熊本県|大分県|宮崎県|鹿児島県|沖縄県 |
※出典:全国マンションデータベース / 2020年8月時点
アパート経営を始める可能性が出てきたら、複数の企業にプランを提案してもらうことをおすすめします。なぜなら、アパート経営は建築費の見積もりや賃料設定など経営のプランによって将来の利回りも変わってくるからです。
建築費がいくらなら収益性の高いアパート経営ができるのか、利回りはどのくらいが適切なのか、気になるところを建築会社に相談してみましょう。
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場合によっては家賃の値上げ交渉ができる
アパート経営をしている人で、入居者や入居希望者から家賃の値下げ交渉を受けたことがある人は多いと思いますが、逆に大家側が値上げの交渉ができることはご存知でしょうか。大家は正当な理由がある場合、家賃の値上げ交渉を行うことができます。
その正当な理由というのは、「建物・土地の価値が上がり、固定資産税が増えた場合」、「周辺の競合物件の相場と比べて家賃が低い場合」です。これは借地借家法という法律で定められているものなので、アパート経営者に認められた権利となります。
しかしあくまで権利が認められているだけで、実際に値上げを行うのには入居者の同意が必要です。入居者からしたら当然家賃の値上げは嬉しい話ではないため、納得してもらえるようにしっかりとした準備が必要になります。
家賃値上げの目的を明確にして入居者へ伝える
単純に「家賃を値上げしても良い法律があるから」という理由で納得してもらうのは難しいでしょう。正当性のある理由を明確にして入居者に伝えることが大事で、書面だけでは納得してもらえないことが多いため、必要に応じて対面で交渉をすることも大事です。
それでも納得してもらえないことがあります。その場合は裁判所に調停の申し立てをする必要がありますが、入居者とのトラブルや軋轢を生むことは避けたいので、弁護士などの専門家に依頼するのが良いでしょう。
入居者にもメリットがあることを伝える
入居者に家賃の値上げ交渉を行う際は、入居者側にもメリットを作り、それを伝えると良いでしょう。
例えば、「値上げした家賃で防犯性を高める」や「交渉に応じてくれたら次回の更新料を無料にする」など、入居者側にも魅力があることをアピールして交渉に望みましょう。
アピールした手前、実際家賃の値上げに成功した後、入居者への還元を出し惜しむと不信感を与えることになるため注意しましょう。
適切な家賃設定にする
法律によって認められているからといって、大幅に相場より高い家賃に設定することはできません。そもそも、あまりにも値上げの額が大きい場合は入居者が承諾してくれることもないでしょう。
そのため、しっかりと周辺の競合物件の家賃相場を調査したうえで交渉に臨む必要があります。
また、家賃の値上げを考えた際はできるだけ早く入居者に通知することが大事です。入居者にも考える必要があるため、急に答えを出すことを要求するのは避けましょう。なるべく早く伝え、根気強く交渉するようにしましょう。
アパート経営で相場より高い家賃設定をするには
もしも相場よりも家賃を高く設定したいと考えているのであれば、それはかなりのチャレンジになることを覚悟する必要があります。家賃は入居者にとって毎月かかるコストです。そのためできるだけ安く抑えたいと考えるのが通常でしょう。
そこをあえて相場よりも高額な家賃で勝負するからには、競合物件にはない独自性のある強みを持つ必要があります。強い独自性と入居者が高くても入居したいと思える魅力があれば相場より高い家賃でも経営していくことはできるでしょう。
そのアパートならではの魅力を活かす
他のアパートにはない魅力があれば、家賃設定を高くしても入居者を獲得することができます。魅力は下記のようなものがあげられるでしょう。
- 都会にありながらも緑に囲まれて自宅に帰ると異空間にいるような雰囲気を味わえる
眺望がかなりよく家にいながら花火大会が楽しめる
デザイナーがデザインしたおしゃれな間取りである
家具家電、インターネット通信が完備されている
このように競合物件にはない魅力を打ち出すことができれば高額な家賃設定を入居者に納得してもらうことができるでしょう。
敷金・礼金をゼロにする
敷金・礼金はともに家賃1ヶ月分が目安となるため、どちらもかからない場合は単純計算で家賃2ヶ月分を浮かせることが出来ます。これは入居希望者に取っては特に感じることだと思われます。
しかし家賃滞納者に狙われやすいというデメリットもあるため、借主の審査時は注意するようにしましょう。
アパート経営を始めようか考えたとき、どのようにアパートを設計すればいいのか見当がつかないのではないでしょうか。
例えば2階建てにするか3階建てにするか、間取りの設計をどうするかについては土地の条件やアパート経営の目的によって変わります。
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アパート経営での家賃収入の注意点
アパート経営で家賃収入を得ていくうえで考慮しておきたい注意点があります。ここでは確定申告とアパート経営のやめ時について解説します。
利益があるなら確定申告を忘れない
アパート経営を行うなら確定申告を忘れないようにしましょう。毎年2月から3月中旬にかけて前年度の収支を報告します。利益が20万円を超える場合には確定申告は義務となるため必ず行いましょう。逆に利益が20万円以下であったり赤字の場合には義務ではありません。
もしも義務である確定申告を忘れてしまうと故意ではなかったとしても無申告加算税や延滞税を追加して支払うペナルティを負うことになります。余計な出費でせっかくの利益を減らしてしまわないように確定申告は期日内に行うようにしましょう。
ニーズがなくなる前にアパート経営を辞めないと損失
アパート経営は長期的なプランを立ててからスタートします。ただ、いくらプランを立てていても実際には市況がどのように変動していくかは予測のつかないところも多くあります。そのため場合によってはアパート経営が苦しくなることも念のため想定しておくことが大切です。
ローンさえ完済してしまえばあとは収入を得るだけなので問題ないだろうと考えている人もいるかもしれません。ただ、ローンを完済してもアパートを経営しているうちは固定資産税などの固定費やランニングコストはかかります。
それらを支払うだけの収入とそれを差し引いても十分な利益が残るのであればアパート経営は継続できるでしょう。ただ、ここが苦しくなってくるとできるだけ早い段階でアパート経営を辞める決断をすることも必要です。
収益がまったく見込めなくなるとアパートの売却さえも難しくなります。まだ収益があるうちにうまく手放して新しいオーナーに経営の立て直しを任せるという考えも持っておくことが損失を最小限に留めるためには必要です。
アパート経営を始めるなら最初の情報収集が重要です。日本最大級の土地活用プラン比較サイトイエウール土地活用なら、土地所在地の入力だけでアパート経営のプランを取り寄せることができます。
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適切な家賃設定のアパート経営を実践する
アパート経営を長期的に安定して継続するためには適正な家賃を設定することが重要なポイントとなります。家賃設定を行う際には周辺の競合物件の家賃なども参考にすることが求められます。自分の一存だけで家賃を決めてしまうと相場とかなりかけ離れたものになってしまう可能性も出てきます。
相場よりも安ければ入居者が集まりやすくなりますが、経営が立ち行かなくなる可能性は高くなります。逆に相場よりも高額になってしまうとよほどの魅力がなければ入居者が集まらないという事態を招きます。
こうしたことを避けるためにも家賃設定を行う際には専門家の意見を参考にすることも大切です。たとえば周辺の競合物件の家賃相場を把握するには不動産会社に相談するのが早いでしょう。エリア情報に強く信頼できる不動産会社をみつけて相談できればアパート経営に関する全般的な相談をすることもできるでしょう。
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信頼できる不動産会社と相談しながら適正な家賃設定を行なって長期的に安定したアパート経営を継続していきましょう。
記事のおさらい