アパート経営を始める際、気になるのは「どのくらいの収益が見込めるか」ではないでしょうか。
本記事では、アパート経営における平均年収や収益に影響を与える要因について解説します。
収益を最大化するためのポイントやリスク管理の方法も紹介しますので、これからアパート経営を始める方や、運営を改善したい方にとって必見の内容です。ぜひ参考にして、成功に向けた一歩を踏み出しましょう。アパート経営については、以下の記事をご覧ください。
アパート経営の平均年収は540万円
令和3年の国税庁の調査によると、国内におけるアパート経営の平均年収は540万円です。令和2年は540万円、令和元年は約520万円、平成30年は約518万円と、平均年収は年々増えています。
この数字は、厳密には国内不動産所得の平均額のため、居住用アパートだけでなくオフィスビルなども含まれています。
アパート経営の収入額平均と必ずしも言えませんが、大きく外れていないと推測できます。
不動産所得を得ている36.6%の人が年収500~1,000万円であることもわかります。
年収がおよそ200万円でも月16万円程度の収入が得られるので、副業としてはじめる人もいます。
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アパート経営の年収になる5つの収入
ここではアパート経営の年収となるものを説明します。
▼アパート経営の年収になる5つの収入
家賃収入
アパート経営の基本は家賃収入を得ることです。入居者がいる限り、毎月安定した収益が期待できます。
東京のワンルームの家賃相場は、23区内で6~9万円、都下で3~7万円程度です。周辺の家賃相場を把握することは重要で、経営前に収益予測を立て、不動産会社と相談しておきましょう。
▼それぞれの地域の賃料相場
北海道・東北 | 北海道|青森県|岩手県|宮城県|秋田県|山形県|福島県 |
---|---|
北陸・甲信越 | 新潟県|富山県|石川県|福井県|山梨県|長野県 |
関東 | 茨城県|栃木県|群馬県|埼玉県|千葉県|東京都|神奈川県 |
東海 | 岐阜県|静岡県|愛知県|三重県 |
近畿 | 滋賀県|京都府|大阪府|兵庫県|奈良県|和歌山県 |
中国 | 鳥取県|島根県|岡山県|広島県|山口県 |
四国 | 徳島県|香川県|愛媛県|高知県 |
九州・沖縄 | 福岡県|佐賀県|長崎県|熊本県|大分県|宮崎県|鹿児島県|沖縄県 |
※出典:全国マンションデータベース / 2020年8月時点
共益費・管理費
共益費と管理費は、入居者が毎月支払う費用で、施設維持や管理業務に使われます。共益費は、廊下の電灯、エレベーター、外壁補修など共同設備の維持費です。管理費は、共用部分の清掃や管理人の人件費に充てられます。
表記方法は、共益費・管理費を分ける、どちらかにまとめる、家賃に組み込むなどさまざまです。
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駐車場の賃料
駐車場を設置すれば、駐車場の賃料収入を得られますが、需要は地域によって異なります。
東京都心では車離れが進み、駐車場より部屋数を増やした方が収益性が高いこともあります。
空きが多い場合は、入居者以外に貸し出すなど柔軟な活用も可能です。
礼金
礼金は、入居者が契約時にオーナーへ支払う費用で、家賃の1~2カ月分が一般的です。戦後の住宅不足を背景に定着した習慣で、オーナーの収益となります。敷金は家賃滞納や原状回復の担保として預ける費用で、契約終了時に未払い分を差し引き返還されます。
更新料
更新料は東日本で一般的で、東京では2年ごとに家賃の1~2カ月分を徴収することが多いです。法律で定められたものではなく、地域によって異なる商習慣の一つです。徴収する場合は契約書に明記し、入居者と特約を結ぶ必要があります。
アパート経営で必要になる6つの支出
それでは反対に、アパート経営で支出となる項目についてみていきましょう。
▼アパート経営で必要になる6つの支出
収入があっても支出が多すぎては年収は上がりません。
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ローンの返済費
アパート経営を始めるには、アパートの購入または建設が必要です。多くの場合、アパートローンを利用して資金を借り入れます。
アパートを建設するには1億円程度かかることが多く、住宅ローンでは上限額に達しやすいため、家賃収入を基に審査するアパートローンが利用されます。
ローン審査が通れば年収500万円でも1億円の融資を受けられる可能性がありますが、毎月の返済額は数十万円になるため、返済比率を計算して慎重に計画を立てることが重要です。
▼ローンの返済比率
満室時の収入を基準にするため、返済比率が高いと空室時の負担が大きくなります。返済期間を延ばせば比率を下げられますが、物件の老朽化が進むと経営リスクが高まります。
ローン返済はアパート経営の支出の約半分を占めるため、返済額や期間を慎重に検討し、無理のない計画を立てましょう。
アパートの管理費
管理費は、共用部分の光熱費や清掃費、修繕費などに充てられ、家賃の約5%が目安です。管理業務を業者に委託すると、別途委託費が発生します。電灯や備品の消耗品費も管理費に含まれるため、適切なコスト管理が重要になります。
建物の修繕費
退去時の原状回復にはリフォーム費がかかり、10~15年ごとに屋根や外壁の大規模修繕も必要です。
修繕を重ねると建物が老朽化し、入居率が低下する可能性があります。耐用年数に関わらず、建て替えの時期を見据え、資金計画と入居者管理を行うことが重要です。
不動産仲介手数料
入居者募集は不動産会社に依頼し、成約時に仲介手数料を支払います。法律では、居住用物件の仲介手数料は家賃0.5カ月分が上限です。ただし、契約時に承諾があれば0.5カ月を超えて受け取ることも可能です。
アパート購入時には、不動産売買契約の仲介手数料も発生するため、費用全体を考慮することが大切です。
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税金
税金の支払いはアパート経営で欠かせない要素です。開始時には、不動産取得税や登録免許税が発生し、翌年にまとめて納めます。毎年かかる税金として、固定資産税や都市計画税があり、土地の評価額に応じて課税されます。家賃収入の利益には所得税と住民税も課せられ、確定申告が必要です。
税金の支払い期限は翌年2月16日から3月15日までで、遅れると追徴課税の可能性があります。
広告費・宣伝費
入居者募集は不動産会社に仲介を依頼し、広告や宣伝を活用することが重要です。
広告費は年数十万円程度を見込み、効果的な集客を行いましょう。募集は専門業者に任せることで、オーナーは他の業務に集中できます。
インターネット広告の発展により、入居希望者は不動産会社を通じて契約に進むケースが増えています。
年収540万円を達成するアパート経営のシミュレーション
この章では、アパート経営で年収540万円を達成するシミュレーションをしていきます。
▼条件
- 物件価格 :8,000万円
- 頭金 :0円
- 想定家賃 :1室80,000円 / 月 × 10部屋
- ローン :30年
- 金利(固定):2%
▼計算例
- アパート購入価格:8,000万円 + 諸経費(8,000万円 × 7%)= 8,560万円
- 年間の家賃収入 :80,000円 × 10部屋 × 12カ月 = 960万円
- 諸経費 :家賃収入の17%(管理費5% + 修繕費7% + 広告費5%)= 163万2,000円
- 実質利回り :(960万円 – 163万2,000円)÷ 8,560万円 × 100 = 9.3%
- 年間の返済額 :354万8,000円
- 年間の収入 :442万円
アパート経営の年収は、借入額によって大きく変わります。融資の割合が高いほど返済負担が増え、手元に残る収益は減少します。
▼融資割合に応じた年間の収益
融資割合 | 年間の収益 |
10割(頭金0円) | 442万円 |
9割 | 477万5,000円 |
8割 | 513万円 |
7割 | 548万5,000円 |
アパート経営の年収は、頭金を増やすことで向上します。
ただし、満室かつ家賃が一定である前提のため、実際には空室や家賃の値下げが発生します。安定して年収540万円を達成するには、複数のアパートを経営するのが現実的です。
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アパート経営で手取りの年収を増やす4つのコツ
長期経営しやすいアパートの選定、節税対策、居住以外の収益確保、複数のアパート運営など、効果的な方法を紹介します。
▼アパート経営で手取りの年収を増やす4つのコツ
長期で需要が期待出来るアパートを建てる
長期的な需要を見込めるアパートを建てることが、安定した経営の第一歩です。学生向け、単身者向け、ファミリー向けなど、立地に適したターゲットを選びましょう。顧客層が決まれば、人気の設備やデザインを取り入れ、魅力的な物件を目指します。立地が不利でも、設備や住環境の工夫次第で入居者を確保できます。
\建築費は?初期費用は?/
適切な節税対策を実施する
▼アパート経営で発生する税金
- 所得税
- 住民税
- 事業税
- 固定資産税
- 都市計画税
- 不動産取得税
- 登録免許税
- 印紙税
建築時の税金は一度だけ発生するため、税対策に強い不動産会社へ依頼するのも節税の一つです。
所得税や住民税、固定資産税などは毎年の確定申告が必要で、申告方法には白色申告と青色申告があります。
青色申告を選んで、条件を満たせば最大65万円の控除が可能です。帳簿を整え、必要経費を適切に計上することで、課税対象を減らせます。アパートの敷地内で新たな事業を始める
参入しやすいのが太陽光発電で、電気代の削減や売電収入が期待できます。設備費が下がり導入しやすくなりましたが、立地や天候の影響を受けるため事前調査が必要です。
また、駐車場の空きが目立つ場合、トランクルーム設置も有効です。設置後の管理負担が少なく、安定した賃貸収入が見込めます。
経営するアパートの数を増やす
1棟目の経営が安定すれば、2棟目の購入が現実的になります。
複数棟を所有すると、建て替え時のリスク分散が可能です。収益が増えることで、リフォームや設備投資に資金を充て、入居者に選ばれやすい環境を整えられます。
活用事例:ペット愛好家の心をつかんだ賃貸住宅





エリア | 北海道 |
土地面積(㎡) | 332 |
延べ床面積(㎡) | 243 |
工法 | 木質パネル接着 |
「騒音の問題や、糞などの苦情も無いようです。やはり入居者のみなさんが動物好きで、しかもマナーが良いお陰で、問題が起きないのでしょう」とオーナー様。設備が行き届き、管理も徹底している物件には、自ずとマナーの良い入居者が集まるという典型的な例といえるでしょう。
敷地内には犬を自由に遊ばせることができるドッグランを設置するなど、ペット好きの心を掴んだこの物件は、完成を待たずして入居者が決まりました。(ミサワホーム株式会社の土地活用事例)
\建築費は?初期費用は?/
アパート経営のメリットとリスク
▼アパート経営のメリットとリスク
アパート経営のメリット
▼アパート経営のメリット
長期的で安定的な収入が得られる
長期的に安定した収入を得られる点がアパート経営の大きなメリットです。一度入居すれば一定期間住み続ける人が多く、頻繁な入れ替わりの心配は少ないです。節税効果が高い
アパート経営には所得税と相続税の節税効果があります。
また、現金より不動産の相続税評価額は低いため、土地や建物を購入すると相続税の負担を軽減できます。
生命保険の代わりになる効果がある
アパート経営でローンを組む際、団体信用生命保険に加入すると生命保険の役割を果たします。
契約者が死亡または重度の障害を負うと、残りのローン返済が免除されます。
アパート経営のリスク
▼アパート経営のリスク
\建築費は?初期費用は?/
空室が発生するリスクがある
アパート経営の最大のリスクは、空室が発生し収益が減ることです。家賃収入が主な収益源のため、空室が長引くと収益が大きく下がります。
さらに、空室中はオーナーの管理負担が増え、維持費もかかります。
追加の費用が発生するリスク
アパート経営では、建物の老朽化に伴い修繕費が発生します。
老朽化した部分の修繕には数十万~数百万円の費用がかかるため、計画的な資金準備が必要です。
また、20~30年ごとに大規模修繕が必要となるため、家賃収入から修繕費を積み立てることが重要です。
売却できないリスク
中古アパートは、更地や戸建てよりも買い手が少なく、売却が難しい傾向があります。
そのため、アパート経営を始める段階で「一定の収益を得たら売却する」など、明確な出口戦略を立てておくことが重要です。
アパート経営の収支を把握して年収を増やしていこう
アパート経営では、家賃収入のすべてがオーナーの利益にはなりません。収支を正確に把握し、データに基づいた経営判断を行うことで、安定した収益を確保できます。
経営が軌道に乗れば、太陽光発電やトランクルームなどの副収入を取り入れると収益が向上します。1棟目の経営が順調なら2棟目の融資も可能になり、リスク分散と柔軟な経営が実現できます。
記事のおさらい