賃貸併用住宅は、鉄骨造や鉄筋コンクリート造だけではなく、木造で建築することも可能です。木造で建築する場合にはさまざまなメリットがありますが、同時にデメリットもあります。
メリットだけではなく、デメリットも把握しておくことで、自分の建築する賃貸併用住宅に木造が適しているのか判断できます。木造ならではの特徴や工法による違いなどを知り、どの構造で賃貸併用住宅を建築するか考えていきましょう。
賃貸併用住宅については以下の記事をご覧ください。
賃貸併用住宅を木造で建てる3つのメリット
木造で賃貸併用住宅を建築するメリットは、次の3つがあげられます。
- 他の構造より建築コストが安い
- 賃貸併用住宅にかかる固定資産税が安い
- 大がかりなリフォームの自由度が高い
3つのメリットから、木造ならではの魅力を知っていきましょう。
他の構造より建築コストが安い
木造は他の構造と比較すると、建築コストが安い点がメリットです。
坪単価は木造がもっとも安く、次に鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造の順に費用が上がります。
賃貸併用住宅は一般的な戸建て住宅よりも規模が大きいため、建築コストは高いです。木造を選ぶことで、賃貸併用住宅も割安で建築でき、コストを削減できます。
賃貸併用住宅にかかる固定資産税が安い
固定資産税は固定資産税評価額に税率をかけて算出し、建物が高価であるほど、固定資産税評価額は高くなります。木造住宅は他の構造よりも安価で固定資産税評価額が低くなるため、税金が安い点もメリットの1つです。
同じ間取りや規模でも、木造と別の構造では木造のほうが評価額は下がり、毎年かかる固定資産税を安く抑えられます。
大がかりなリフォームの自由度が高い
木造住宅は大がかりなリフォームも可能であり、自由度の高さが魅力です。鉄骨や鉄筋コンクリート造などでは、壁で建物の強度を確保している部分があります。そのため、一部の壁は壊すことができず、リフォームの際に制限が出ることもあります。
木造は壁を壊して間取りを変更できるため、リフォームの自由度は高いです。他の構造ではできない間取りの変更も可能な点から、将来性の高さは大きなメリットといえるでしょう。
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賃貸併用住宅を木造で建てる3つのデメリット
木造で賃貸併用住宅を建築する場合には、メリットだけではなくデメリットもあります。
- 高さのある賃貸併用住宅を建てられない
- 他の構造より耐久性に劣る
- ローンの融資期間が短い
デメリットを正しく理解して、木造での建築が適しているのかを考えておきましょう。
高さのある賃貸併用住宅を建てられない
木造では高さのある賃貸併用住宅を建てることが難しく、4階建て以上を建築するには高いハードルをクリアしなければなりません。4階建て以上で建築する場合は、一定の耐火基準を満たす必要があり、木造でクリアするのは難しいです。
基本的には3階建てまでが限度となるため、木造の賃貸併用住宅は高さを出して戸数を確保しづらいです。敷地面積が広いなら戸数は確保できますが、狭小地の場合は階数を増やすことが難しい点は覚えておきましょう。
他の構造より耐久性に劣る
木造住宅は他の構造よりも耐久性が劣る点も、デメリットとしてあげられます。耐用年数は構造によって違い、木造だと22年、軽量鉄骨造は27年、重量鉄骨造は34年です。鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造は47年とさらに長く、建物としての耐久度には大きな違いがあります。
また、木造だとシロアリの被害によって、建物の劣化が急速に進むこともあります。どの構造でも経年劣化はしますが、時間の経過以外でも劣化する可能性がある点も、木造のデメリットといえるでしょう。
ローンの融資期間が短い
耐用年数によってローンの融資期間は異なり、耐用年数の低い木造は他の構造よりも融資期間が短くなりやすいです。融資期間は耐用年数が長いほど上限も長く設定され、長期間かけてローンの返済ができます。
木造の賃貸併用住宅だと返済期間の上限が短くなりやすいため、短期間で完済を目指さなければならず、毎月の返済金額が増えやすい点はデメリットです。
木造の賃貸併用住宅の工法と特徴
木造の賃貸併用住宅を建築する工法には、さまざまな種類があります。
- 自由な間取りにできる木造軸組工法
- 品質が高いツーバイフォー工法
- 工期が短い木質系ユニット工法
工法によって特徴が異なるため、木造で建築するならどれが自分に合っているかを確認しておきましょう。
自由な間取りにできる木造軸組工法
木造軸組工法は在来工法ともいわれる、木造住宅を作る際の伝統的な工法です。柱と梁で骨組みを作って住宅を建築するため、柱の位置を移動することで間取りを自由に変更できます。
また、建築後のリフォームの選択肢も幅が広く、自由度の高さが大きな特徴です。ただし、自由度が高いゆえに、こだわってしまうと膨大なコストがかかってしまう点には注意しましょう。細部までこだわって建築すると、コストだけではなく時間もかかってしまいます。
品質が高いツーバイフォー工法
高品質な仕上がりを期待するなら、ツーバイフォー工法がおすすめです。ツーバイフォー工法では建築方法や使用する材料がマニュアル化されているため、依頼先による品質のブレが出づらいです。
また、断熱性や気密性が高いことも特徴であり、これは木材の間に隙間ができづらいことが関係しています。ツーバイフォー工法は木造でありながら壁や天井を面で支えるため、間取りの変更が難しいです。
間取り変更の自由度は他の工法よりも低いものの、品質が安定して高いことはツーバイフォー工法ならではのメリットでしょう。
工期が短い木質系ユニット工法
使用する建材の多くを向上で生産しており、短工期で完成することが木質系ユニット工法の特徴です。木質系ユニット工法は建物に使用する建材の大部分が向上で生産されているため、現場での加工がほとんど必要ありません。
建材を組みわせて作るため工期は短いものの、可能な組み合わせが決まっているため、間取りの自由度はやや低いです。また、狭小地だと建材の搬入ができず、木質系ユニット工法での建築ができない場合もあることは理解しておきましょう。
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賃貸併用住宅を木造で建てて後悔しないコツ
木造で賃貸併用住宅を建てて後悔しないためには、さまざまなコツを押さえておく必要があります。
- 期待できる収支になりそうかシミュレーション
- 賃貸併用住宅の建築プランの比較
- 防音・遮音に優れた素材や間取りにする
- 出口戦略を立てておく
建築後に後悔しないためにも、コツを正しく理解しておきましょう。
期待できる収支になりそうかシミュレーション
賃貸併用住宅を建てるなら、期待できる収支になりそうか、事前にシミュレーションをしておくことが大切です。想定している戸数と家賃で希望通りの利益が得られるか、出費も考慮して計算してみましょう。
賃貸経営の出費としてはローンの返済だけではなく、管理費や建物の修繕費などがあげられます。また、毎年かかる税金として固定資産税や都市計画税などもあり、経営にはさまざまなランニングコストがかかります。
コストを正しく把握して収支を計算し、想定する期間で希望する利益を出せるのか計算し、希望を実現できる立地を選びましょう。
賃貸併用住宅の建築プランの比較
建築プランは複数の建築会社からもらい、各社が提案する内容を比較しておきましょう。似たような間取りや設備でも、依頼する建築会社によってかかる費用が異なることは多いです。
最初の1社だけで決めてしまうと、相場よりも高い建築コストがかかってしまい、割高になって損をする可能性があります。相場通りの適正金額で建築してもらうためにも、複数のプランを比較して、予算に合ったものを選びましょう。
防音・遮音に優れた素材や間取りにする
賃貸併用住宅は入居者とオーナーの距離が近いため、騒音トラブルが起きやすいです。トラブルを防ぐには、防音や遮音性に優れた壁材や床材、窓などを使いましょう。
また、間取りを工夫したりすることでも、防音性や遮音性は高められます。例えばオーナーの部屋の寝室の横に、入居者の部屋の収納スペースを配置するなど、間取りを工夫してお互いにストレスなく暮らせるようにしましょう。
出口戦略を立てておく
どうしても収益が出なかった場合に備えて、出口戦略を考えておくことも大切です。利益の出ない賃貸併用住宅をいつまでも所有し続けていると、その間も出費が発生し続けるため、損失は大きくなります。
利益の出ない物件は相続をしても子供に迷惑がかかるため、売却や別の方法での活用を考えることがおすすめです。賃貸併用物件は買主が見つかりづらいため、売却するなら早めに行動を起こしましょう。転用する選択肢としては、リフォームして自宅して利用することがあげられます。
また、賃貸併用住宅にしたことを失敗・後悔している事例を確認しておくとより後悔しない可能性が高くなります。
賃貸併用住宅を木造で建てるときの疑問
木造で賃貸併用住宅を建築するなら、小さな疑問も解消しておくことが大切です。
- 木造は他の構造より耐震性に劣るのか
- 住宅ローンは利用できるのか
よくある疑問と回答を知り、木造の賃貸併用住宅への理解を深めていきましょう。
木造は他の構造より耐震性に劣るのか
耐久性の面で他の構造よりも劣る木造ですが、耐震性には大きな違いはありません。そもそも構造に関係なく、建築物は建築基準法を守って建てられるため、構造による耐震性の違いはほとんどないと考えましょう。
ただし、他の構造では独自技術によって耐震性を高めているものもあり、鉄骨造などのほうが建築基準法の基準以上に耐震性を高めやすいです。
住宅ローンは利用できるのか
建物構造に関係なく、賃貸併用住宅でも住宅ローンは利用できます。賃貸併用住宅で住宅ローンを利用するには、自宅部分の床面積が全体の50%以上でなければなりません。アパートローンよりも金利は低く、返済の負担は減らせますが、賃貸部分の割合が減るため、家賃収入も減少することは覚えておきましょう。
また、金融機関によっては床面積の要件だけではなく、次の条件を満たさなければ住宅ローンを利用できないこともあります。
- 金融機関と提携している建築会社と契約する
- 金融機関の指定する管理会社とサブリース契約をする
金融機関によって詳細な条件は異なるため、住宅ローンを利用するなら、必ず確認しておきましょう。
木造のメリットデメリットに納得してから賃貸併用住宅を建てよう
賃貸併用住宅は木造での建築が可能ですが、メリットとデメリットの両方があります。木造で建築しようと考えているなら、自分に適しているかを考えてみることが大切です。
建物構造は複数あるため、必ずしも木造がよいとは限りません。得たい利益や建物の耐久性などを考慮して決める必要があります。メリットとデメリットを正しく理解し、納得できるなら木造で賃貸併用住宅を建てましょう。
また、賃貸併用住宅にはい自宅と店舗を一体化した店舗兼住宅も建てることができます。もし店舗を出店したいと考えている方は以下の記事をご覧ください。