マンションの解体工事では、戸建てと比較して高額な解体費用がかかります。ご自身が所有するマンションの解体費用がいくらになるのか気になる方も多いでしょう。
そこで本記事では、マンションの解体費用の相場や分譲マンションの所有者が注意することなどについて解説します。
- マンションの解体費用ってどのくらいかかるの?
- 分譲マンションを建て替える前の注意点は?
マンションの解体費用は一戸につき200万円ほどかかると言われており、建て替えとなると1戸につき1,000万円ほどが相場です。そして、建て替えによる引っ越しの費用や仮住まい中の賃貸料金も含めると、総額1,400万円ほどかかります。
▼解体費用の基礎知識について知りたい方はこちらの記事をご確認ください。
マンションの解体費用はいくら?
マンションの解体費用は一戸につき200万円ほどかかると言われており、建て替えとなると1戸につき1,000万円ほどが相場です。
そして、建て替えによる引っ越しの費用や仮住まい中の賃貸料金も含めると、総額1,400万円ほどかかります。
ただし、分譲マンションでは区分所有者が、賃貸マンションの場合はオーナーがそれぞれ解体費用を負担します。
坪単価別のマンション解体費用
坪単価別のマンション解体費用相場は以下のとおりです。
構造 | 坪単価 |
---|---|
鉄骨造(S造) | 35,000円〜50,000円 |
鉄筋コンクリート造(RC造) | 40,000円〜80,000円 |
鉄筋鉄筋コンクリート造(SRC造) | 45,000円〜90,000円 |
私の家の解体費用はいくら?
鉄骨造(S造)
マンションの解体にかかる費用について、鉄骨造の場合の坪単価はおよそ35,000円〜50,000円であるため、坪数ごとの解体費用の目安は以下のようになります。
延床面積(一坪=約3.3㎡) | 一戸 | 一棟(12部屋) |
---|---|---|
20坪 | 70万円 | 840万円 |
30坪 | 105万円 | 1,260万円 |
40坪 | 140万円 | 1,680万円 |
50坪 | 175万円 | 2,100万円 |
鉄筋コンクリート造(RC造)
マンションの解体にかかる費用について、鉄筋コンクリート造(RC造)の場合の坪単価はおよそ40,000円〜80,000円であるため、坪数ごとの解体費用の目安は以下のようになります。
延床面積 | 一戸 | 一棟(12部屋) |
---|---|---|
20坪 | 90万円 | 1,080万円 |
30坪 | 135万円 | 1,620万円 |
40坪 | 180万円 | 2,160万円 |
50坪 | 225万円 | 2,700万円 |
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)
マンションの解体にかかる費用について、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の場合の坪単価はおよそ45,000円〜90,000円であるため、坪数ごとの解体費用の目安は以下のようになります。
tr>延床面積一戸一棟(12部屋)
20坪 | 120万円 | 1,440万円 |
30坪 | 180万円 | 2,160万円 |
40坪 | 240万円 | 2,880万円 |
50坪 | 300万円 | 3,600万円 |
マンション解体費用の内訳
仮設費用
仮設費用は、解体工事を行うための一時的な設備や施設の設置・撤去にかかる費用を指します。具体的には以下のような項目が含まれます。
- 仮設水道・電気の設置費用
- 仮設トイレの設置・撤去費用
- 工事現場を囲むための仮囲いの設置・撤去費用
- 養生シートの設置・撤去費用
- 仮囲いの設置・撤去費用
仮説費用は、解体費用内訳のおよそ5%を占めます。
労務費用
労務費用とは、マンションの解体作業を行なうために必要な人件費のことです。解体作業には、解体作業のスタッフや下請け業者の作業員、現場監督など、様々な人が関わります。
労務費用は解体業者によって異なることがあり、業者によっては人件費削減のために下請け業者を利用することもあります。しかし、下請け業者によっては適切な技能や安全管理を行なっていない可能性もあるため、業者選びには注意が必要です。
労務費用は、解体費用内訳のおよそ30%~40%を占めます。1日あたり10,000円~20,000円が相場です。
足場・養生費
足場・養生費はマンションの解体の際に欠かせない費用の一つであり、もし足場・養生がなければ作業員の安全や周辺環境に悪影響を及ぼす可能性もあります。
足場は建物の外側や内部に設置する構造物で、作業員が安全に作業を行うために必要です。費用は建物の高さ・面積や作業期間などによって変わるため、建物が大きいほど高くなります。
養生とは、建物をビニールシートや防水シートなどで覆って、周囲の環境に悪影響を与えないようにします。費用は、建物の大きさや形状、使用するシートの種類などによって変わります。
労務費用は、解体費用内訳のおよそ30%~40%を占めます。
産業廃棄物の運搬・処分費
廃棄物の運搬費とは、解体工事によって発生した廃棄物の運搬を行なう作業員の人件費のことで、処分費とは廃棄物を処理するために必要な費用です。
運搬費は廃棄物種類・処分場までの距離・運搬手段などによって異なり、許可が必要なケースもあります。処分費は、産業廃棄物の種類・量・処分方法などによって異なります。処分場やリサイクル施設など、場所によっても異なるため事前に費用の確認が必要です。
また、産業廃棄物を処分するために必要な許可申請手続きや検査・監視などの費用も運搬・処分費に含まれることもあります。
産業廃棄物の運搬・処分費用は、解体費用内訳のおよそ30%~50%を占めます。
費用の相場は以下の通りです。
廃棄物の種類 | 費用相場 |
がれき類 | 20,000円〜/1㎡ |
混合廃棄物 | 25,000円〜/1㎡ |
廃プラスチック | 17,000円〜/1㎡ |
石膏(せっこう)ボード | 15,000円〜/1㎡ |
一般的に、地方よりも都心部の方が処理費用の金額が高いです。
重機・設備費
重機・設備費は、マンションの解体作業に必要な機材や設備の購入・レンタルなどにかかる費用です。
重機の種類や数は、解体作業に必要な重機の種類に応じ、費用が変わります。例えば、大型クレーンやブルドーザーなどの大型機械を使用する場合、高額な費用がかかります。
産業廃棄物の運搬、処分費用に分類されることもあります。
活用事例:「Clair 荒町」 活気あふれる地域をリードする5階建の店舗併用賃貸マンション
エリア | 宮城県 |
土地面積(㎡) | 835.95 |
延べ床面積(㎡) | 1387.72 |
工法 | プレハブ工法 重量鉄骨ラーメン構造 |
マンションの解体費用が決まる要因
マンションの解体費用は構造によって異なりますが、他にも様々な要因によって決定されます。その要因については以下の通りです。
建物の規模
建物の規模や構造によって、解体に必要な作業や材料量が異なります。
例えば、高層マンションの場合は建物の高さに応じて足場を設置する必要があり、鉄筋コンクリート造の建物の場合は解体に特殊な工具が必要になる場合があります。
マンションの解体費用は建物の規模、つまり坪数が増えるほど高くなり、構造的にはS造、RC造、SRC造と素材の強度が増すほど高くなります。マンションの構造ごとに解体費用の坪単価をまとめると、下記の通りです。
マンションの構造 | 解体費用の坪単価 |
鉄骨造(S造) | 約3.5万円 |
鉄筋コンクリート造(RC造) | 約4.5万円 |
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造) | 約6万円 |
地域・立地条件
解体現場の地域・立地条件によって、運搬費や養生費、廃棄物処分費などが異なります。解体に必要な許認可の取得の仕方や、産業廃棄物の処分方法などが地域によって異なるもあり、それによっても費用は左右されます。
また、物件付近の建物や道路の状況なども費用を変える要因になります。閑静な住宅街で行なわれる場合は防音や振動への対策が必要になり、その分費用も上がりやすいのです。
そして、都市部なのか地方なのかによっても解体費用は異なります。なぜなら、そもそも都市部のほうが地方よりも人件費などが高いため、解体費用も高くなってしまうからです。
アスベストの有無
建物にアスベストが含まれていて除去が必要な場合、別途費用がかかるため解体費用は高くなります。アスベストは現在では禁止されていますが昔はよく使用されていたため、古いマンションには含まれている可能性があります。
アスベストの解体は専門業者や許可を持った業者でしか行えないため、アスベストが含まれている可能性があるなら、予め施工会社に相談しておくことをおすすめします。
除去にかかる費用は以下のとおりです。
アスベストの面積 | 費用相場 |
300㎡以下 | 20,000円〜85,000円/1㎡ |
300㎡〜1,000㎡ | 15,000円〜45,000円/1㎡ |
1,000㎡以上 | 10,000円〜30,000円/1㎡ |
参照:国土交通省「アスベスト対策Q&A」
付帯工事費
付帯工事費とは敷地内のマンション以外の構造物の撤去に必要な工事のことです。付帯工事費は撤去する構造物ごとに計算されるため、現地調査の際に見積もりを出してもらいます。
以下が主な構造物と撤去費用の相場です。撤去が必要な構造物がある場合、これらの付帯工事費が加わることも踏まえておきましょう。
構造物 | 撤去費用 |
カーポート | 6万円~/1台用 |
ブロック塀 | 5,000円~1万円/1㎡ |
植物 | 5,000円~3万円 |
門扉 | 2万円程度 |
倉庫・物置 | 2万円~3万円 |
解体作業の期間
解体作業の期間が長くなるほど、解体業者が使用する重機や設備、作業員の労務費などが増えるため費用も高くなりやすくなります。また、解体作業の期間は、足場や養生の期間にも影響を与えます。解体作業が長引くと、足場や養生の期間も長くなるためその費用も増加します。
しかし、解体作業の期間を短縮するために、作業員の安全や周囲の環境保護を軽視することはできません。作業員が十分な安全対策を講じた上で、解体作業を効率的に進める必要があります。
そのため、解体作業の期間を短縮するためには、事前に解体業者と打ち合わせを行い、作業のスケジュールや工程を確定させることが重要です。
解体の時期
解体の時期も費用が変わる要因となり、繁忙期に依頼してしまうと高くついてしまいます。繁忙期は人手不足になるため人件費が高くなり、廃棄物の処理にかかる費用や重機のリースにかかる費用も割高になります。
11月~3月の間は繁忙期となり、2月と3月は特に忙しい時期になります。逆に4月~10月の間は閑散期となるため、この時期を狙うのも良いでしょう。
ただし、例え閑散期であっても、梅雨や台風、猛暑や積雪などの天候や季節などの問題で解体工事に向いていない状況の場合、工期が伸びて追加で費用がかかることがあります。
解体業者の選定
解体を依頼する業者によっても費用が変わります。例えば、元請け業者に依頼した場合などは仲介手数料が上乗せされることがあります。
また、解体業者選びをハウスメーカーなどに任せるのではなく、自分で探して直接依頼することにより費用を抑えることができます。
解体業者の選定について一番大事なのは、1社の見積もりで判断せずに複数の業者から見積もりを貰うことです。可能な限り複数の業者に現地調査を依頼し、費用だけでなく担当者の対応や工事の実績などを踏またうえで決めることが大事です。
分譲マンションの建て替えの注意点
分譲マンションの建て替えに関して、所有者が知っておくべきことがいくつかあります。マンションの解体・建て替えについて後悔しないように、しっかりと頭に入れておきましょう。
マンションの解体費用は誰が払う?
分譲マンションの場合は、区分所有者が分担して解体費用を支払うため、入居者が負担するということになります。
分譲マンションを新築に建て替える場合も、解体費用は区分所有者の負担です。物件によっては、修繕積立金の一部を解体費用・建て替え費用に充てるケースもあります。また、老朽化が理由で解体し、敷地を売却する際も住民が費用を負担することになります。
因みに、従来は区分所有者全員の同意がなければマンションの解体は不可能とされていました。しかし「マンション建て替え円滑化法」の2014年の改正により、耐震性不足のマンションでは区分所有者の4/5以上の同意で解体工事を進めることが可能となりました。
区分所有者の権利がある
分譲マンションには住戸それぞれに所有者がいます。
通常、1つの建物に複数の所有者がいると建物は共有物になりますが、分譲マンションの場合、住戸部分は区分所有という名の単独所有の権利があります。これは民法の特別法として、区分所有法で定められています。
住戸部分は一般的な不動産と同じ権利設定がされ、売買もなども可能になります。こういった権利を区分所有権といい、この所有者を区分所有者と呼びます。
管理組合の役割とは?
区分所有法により区分所有者全体で構成された、管理組合というマンションを管理する組織が存在します。管理組合は共用部の保全・清掃・官公署や町内会などとの交渉・安全維持・広報連絡などのマンション管理に関する業務を行ないます。
管理組合では、組合全員で組織される総会を毎年最低1回開催されます。この場で収支決算や事業報告、事業計画などの管理組合に関する業務について話し合いが行なわれます。解体や建て替えの可否、業者の決定などもこの場で決められます。
入居者には区分所有法によってマンションの1室を所有する権利があります。そして、建て替えを行なう際は住民の5分の4以上の賛同が必要になります。
建て替えが決まった場合の選択肢
マンションの建て替えが決まった場合、区分所有者が取れる選択肢は二つあります。
それは、「建て替えに賛成して再入居する」と「建て替えに反対してマンションを売却する」の二つです。
建て替えに賛成して再入居する
新しく建て替えた分譲マンションに再入居するという選択肢になりますが、もちろん無料で入居できるわけではなく、建て替えの費用や仮住まいのための費用が掛かります。
建て替え費用の一部は修繕積立金の中から充当されますが、既に通常の修繕に利用されていることも多いため、修繕積立金で建て替え費用を賄うことができない可能性があります。また、売渡請求権の行使はマンション持分の売買になるため、立ち退き料を受け取ることができません。
それでも住み慣れた環境が良くて再入居したい場合、住宅ローンなどを利用して資金を用意する必要があるかと思います。
建て替えに反対してマンションを売却する
建て替え費用の負担が大きいため反対すると、管理者組合により売渡請求をされ、それを受けるとマンションを時価で売ることになります。ただ、建て替えが必要なマンションの時価ですから、売却代金はあまり期待できません。
加えて、建て替えに反対して立ち退く場合、引っ越し先を自分で見つける必要があるため、なるべく早めに新居へ移る準備をしておきましょう。
また選択肢として、建て替えが決定する前、売渡請求権を行使される前にマンションを売却するという手段もあります。建て替えが決まる前であれば、持分の売買よりは高く売れることが多いです。
区分所有者への税制措置を受ける
マンションの建て替えに関しては、賛成して費用負担をする人にも反対して退居する人にも経済的な負担がかかります。建て替えのためにローンを組む場合、住宅ローンの支払いと被り経済的負担が重くなることもあります。
そういった場合、区分所有者は円滑化法によって税制面で軽減税率や特別控除などの優遇措置を受けることができます。それは以下のような措置です。
- 新しいマンションに区分所有権の権利を移行しても譲渡所得税がかからない
- 建て替えにより退去する場合、譲渡益に関して住民税・所得税に軽減税率が適用される
- 権利変換により住戸を取得した場合、登録免許税が条件付きで非課税になる
- 権利変換により取得する土地の不動産取得税が一部控除される
- 特別な理由で施行者に買い取られて退去する場合、1,500万円の特別控除を受け、軽減税率が適用される
因みに、仮住まいへの引っ越し費用や、仮住まいの家賃は基本的に自分が負担することになります。ただし、管理組合と話し合いの際に検討することにより、一部補助金という形で支給されることもあります。
また、管理・建て替えにデベロッパーが関わっているなら、仮住まい先を斡旋してくれることもあります。まずは管理組合に経済的余裕がどれだけあるか、どのような企業が建て替えに関わるかを知り、協力を得られるかどうかを調べることをおすすめします。。
建て替え工事は1年以上の長期間に渡って行なわれることも多く、工事の進捗状況次第ではさらに伸びることもあります。そのため、仮住まいの確保や引っ越し費用の補助など、抑えられる負担は極力抑えられるようにしましょう。
高齢者向けの制度を活用できる
入居者が高齢者である場合、高齢者向けの返済特例制度を活用することができます。
高齢者向けの返済特例制度とは、満60歳以上の人が自宅の耐震改修工事を含むリフォームをする場合に使える制度です。1,000万円を限度に融資し、申し込み者が死亡した時点で、相続人が担保として提供された土地・建物を処分することで一括返済するという仕組みです。
高齢者の場合は特に解体や建て替えに賛同しにくいことが多いでしょう。そのため。こういった制度を活用することで納得して賛同をすることができるでしょう。
マンションの解体費用は高額になるケースが多い
マンションの解体費用は一戸につき200万円ほどかかると言われており、建て替えとなると1戸につき1,000万円ほどが相場です。そして、建て替えによる引っ越しの費用や仮住まい中の賃貸料金も含めると、総額1,400万円ほどかかります。
ただし、分譲マンションでは区分所有者が、賃貸マンションの場合はオーナーがそれぞれ解体費用を負担します。
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