離婚時にローン中の家を売ることなく、離婚後も住宅ローンの支払いを続ける場合、住宅ローン控除をそのまま受けることができるのか気になる方はいるでしょう。
住宅ローン控除の適用要件の中に、「住宅ローンの名義人が家に住んでいること」という項目があるため、住宅ローンの名義人が家に住んでいる場合は住宅ローン控除を受けることができますが、非名義人が住む場合は住宅ローン控除を受けることができません。
しかし住宅ローンの非名義人が家に住むケースも多く見受けられます。住宅ローンの非名義人が家に住む場合に住宅ローン控除を受けるにはどうすればよいのでしょうか。
この記事では、離婚後の住宅ローンについて、住宅ローンの名義人を夫、非名義人を妻と仮定して、夫もしくは妻が家に住む場合の住宅ローン控除について詳しく解説します。
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離婚後に非名義人(妻)が住む場合の住宅ローン控除
離婚時の財産分与の話し合いの結果、住宅ローンの名義人である夫が家を出て妻が住み続けるケースが多くあります。
しかし、住宅ローンの非名義人である妻が家に住む場合は適用条件に当てはまらないため住宅ローン控除を受けることができません。
この章では非名義人の妻が家に住む場合、どうして住宅ローン控除を受けることができないのか、妻が住む際に住宅ローン控除を受けるにはどうすればよいのかについて解説します。
名義人(夫)が住んでいないので住宅ローン控除は受けられない
繰り返しにはなりますが、住宅ローン名義人が家に住んでいない場合は住宅ローン控除を受けることができません。
住宅ローン控除を受けるためには以下の条件に当てはまっている必要があります。
住宅ローン控除を受けるための要件
- 新築または取得の日から6か月以内に居住し、適用を受ける各年の12月31日まで引き続いて住んでいること
- 住宅の床面積が50㎡以上で、床面積の2分の1以上の部分が専ら自己の居住の用に供するもの
- 住宅ローン控除を受ける年分の合計所得金額が3,000万円以下であること
- 住宅ローンの返済期間が10年以上であること
- その居住の用に供した年とその前2年・後3年の計6年間に居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例などの適用を受けていないこと
- 建築後使用されたもの(中古住宅)
- 建築された日から築20年以下(マンションの場合は25年以下)であること(中古住宅)
- 耐震基準に適合する建物であること(中古住宅)
- 築年数が20年以上(マンションの場合は25年以上)で耐震基準に満たないものは、取得の日までに家屋が耐震基準に適合することにつき証明がされたものであること(中古住宅)
- 取得の時に生計を一にしており、その取得後も引き続き生計を一にする親族や特別な関係のある者などからの取得でないこと(中古住宅)
- 贈与による取得でないこと(中古住宅)
※詳しくは国税庁タックスアンサー「No.1212 一般住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)」、「No.1214 中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)」にてご確認ください。
要件の中に「適用を受ける各年の12月31日まで引き続いて住んでいること」と入っているように、住宅ローン控除を受けるためには住宅ローンの名義人が家に住んでいなければなりません。つまり、家に非名義人の妻が住み、名義人の夫が家を出ていく場合は住宅ローン控除の対象から外れてしまいます。
非名義人(妻)が家に住む際に住宅ローン控除を受ける方法
子どもの教育環境を変えたくないという理由から妻と子どもが家に住み続ける場合も多くあります。
しかし非名義人の妻が家に住む場合、住宅ローン控除を受けるためには対策をしなければなりません。妻が住む際に住宅ローン控除を受けるためにできる対策は以下の2つです。
住宅ローンの名義を妻に変更する
住宅ローン控除を受けるためには、住宅ローンの名義人が家に住んでいなければいけません。よって住宅ローンの名義人を家に住む妻に変更することで住宅ローン控除を受けることができます。
しかし、離婚時に住宅ローンの名義変更をすることは難しいとされています。住宅ローンは名義人個人の返済能力や勤務年数などを審査して融資を行うか判断しているため、融資後に銀行から名義変更の許可を貰うことは難しいのです。
新名義人の返済能力が旧名義人の返済能力と同等と判断された場合は銀行が名義変更の許可を得られることもありますが、妻の雇用形態や年収によっては名義変更できないことを理解しておきましょう。
妻が住宅ローンを借り換える
銀行から住宅ローン名義変更の許可が下りなかった場合、違う銀行で住宅ローンを借り換えるという方法もあります。
しかし名義変更の時と同様、住宅ローンの審査を通過しなければ借り換えをすることができないため、専業主婦の方では難しいこともあるでしょう。
住宅ローンを借り換える際は、返済期間が10年未満にならないように注意しましょう。住宅ローン控除の適用要件の中に、返済期間が10年以上という項目があるため借り換えの際に要件から外れないように返済期間を設定しましょう。
離婚後に名義人(夫)が住む場合の住宅ローン控除
離婚後に住宅ローンの名義人である夫が家に住むケースは、トラブルも起きずらく安心して生活することができます。
住宅ローン控除に関しても適用条件から外れていないため、そのまま受けることができます。
名義人(夫)が住むので住宅ローン控除を受けることができる
住宅ローンの名義人である夫が住むことは、住宅ローン控除の適用要件である「適用を受ける各年の12月31日まで引き続いて住んでいること」を満たすことができるため、住宅ローン控除をそのまま受けることができます。
住宅ローン控除を確実に受けたいと考えている場合は住宅ローンの名義人が住むという選択肢が1番最適な選択肢と言えるでしょう。
非名義人(妻)が住む場合は住宅ローン控除以外の点でも、住宅ローンの契約違反による一括返済のリスク、住宅ローン滞納による強制退去のリスクなど多くの問題が発生する可能性があることを踏まえても、名義人である夫が家に住むことが最適だといえるでしょう。
共有持分を追加取得した場合にも住宅ローンは適用される
離婚をきっかけに共有持分を追加取得した場合、新しく取得した持分についても住宅ローン控除を受けることができます。
新しく取得した持分についても住宅ローン控除を受けるためには、確定申告を再度行い申請する必要があるため、忘れずに行いましょう。
詳しく知りたい方は国税庁のタックスアンサー「No.1237 離婚による財産分与で居住用家屋の共有持分を追加取得した場合の住宅借入金等特別控除について」にてご確認ください。
離婚で共有名義の片方が家を出た場合の住宅ローン控除
現在は共働き夫婦の数が増え、共有名義で住宅ローンを借り入れている夫婦の数も増えています。
この共有名義で借り入れていた住宅ローンの返済中に離婚した場合、住宅ローン控除を受け続けることはできるのでしょうか。
離婚後も家に住み続ける名義人、離婚後に家を出る名義人それぞれの場合について解説しました。
家に住んでいる名義人は住宅ローン控除を受けることができる
婚姻期間中にペアローンで住宅ローンを借り入れていた場合、離婚後に家に住んでいる名義人は住宅ローン控除をそのまま受け続けることができます。
ペアローンは、夫と妻がそれぞれ住宅ローンを借り入れて返済していくものです。よって夫と妻のどちらも住宅ローン控除を受けることができるというメリットがあります。
離婚後も、家に住み続ける名義人は、住宅ローン控除を受けるための要件に記載されている「適用を受ける各年の12月31日まで引き続いて住んでいること」を満たすことができるため、引き続き住宅ローン控除を受けることが可能です。
家に住んでいない方の名義人は住宅ローン控除を受けることができない
反対に、共有名義を組み、離婚後に家を出た名義人は住宅ローン控除を受けることができません。繰り返しにはなりますが、前述した住宅ローンを受けるための要項に記載されいている「適用を受ける各年の12月31日まで引き続いて住んでいること」という条件を満たすことができないためです。
離婚をすることで住宅ローン控除を受けることができなくなることから、離婚と同時に住宅ローンの一括返済をすることや、家に住み続ける元妻(夫)に単独名義に借り換えてもらうなど対策を行うとよいでしょう。
離婚による財産分与で家を取得した場合の住宅ローン控除
離婚時に行う財産分与によって家を取得することになる方もいるでしょう。
家だけ取得する場合は住宅ローン控除について心配する必要はありませんが、家と住宅ローンどちらも引き取ることになった場合、離婚後に住宅ローン控除を受けることはできるのでしょうか。
財産分与で家を取得した場合は住宅ローン控除を受けることができる
財産分与によって家を取得し、住宅ローンの返済をしなければならなくなった場合は、住宅ローン控除を受けることができます。
例えば、婚姻期間中に夫の単独名義で住宅ローンを組み住宅ローン控除を受けていたとしても、離婚時に住宅ローンの借り換えにより妻名義になった場合は、今後は妻が住宅ローン控除を受けることができます。
しかし、住宅ローンを組み替える際には、返済期間に注目しましょう。
住宅ローン控除を受けることができるのは、返済期間が10年以上の場合です。住宅ローンを借り換えることができても、返済期間が短ければ住宅ローン控除を受けることができないため、事前に期間を確認しておきましょう。
負担付贈与の場合は住宅ローン控除を受けることができない
離婚後に財産分与ではなく負担付贈与として負担付贈与として不動産を取得した場合は、住宅ローン控除を受けることができないため注意しましょう。
負担付贈与とは、贈与を受ける代わりに住宅ローン返済義務といった一定の債務を負担するというものです。例えば、家を贈与してもらう代わりに住宅ローン残債の返済をするといった場合が負担付贈与に当たります。
負担付贈与は名前にもあるように「贈与」の扱いとなり、住宅ローン控除を受けるための要件の中の「贈与による取得でないこと」に反してしまうため、住宅ローン控除を受けることができません。
離婚前に家の所有権を移転した場合などが負担付贈与の対象となります。住宅ローン控除を受けるためには、財産分与として認められる離婚後2年以内に所有権の移転を行うとよいでしょう。