離婚時に問題となるのは家と住宅ローンをどう対処するかです。
例えば、離婚時に家と住宅ローンの名義人である夫が家を離れ、非名義人の妻が家に住むケースがあります。
離婚後に非名義人が住み続けることは、様々なトラブルの要因となるため、妻に名義変更をすることが望ましいですが、そもそも家や住宅ローンの名義変更はできるのでしょうか。
結論、住宅ローンの名義変更は、原則不可となっています。公正証書を作成しても却下される可能性が高いです。
この記事では、住宅ローンと名義変更の関係性や、住宅ローン返済が残っているが名義変更をする方法を解説します。
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離婚時に住宅ローンの名義変更は可能か?
先述した通り、住宅ローンの名義変更は、原則不可というルールになっています。
夫と妻の共有名義で住宅ローンを借り入れる際は夫婦の合計年収から融資額を決定します。そのため、特に夫と妻の共有名義から単独名義への変更は難しいといえます。
また、公正証書を作成しても却下される可能性が高いですが、名義変更の理由が「離婚に伴う名義変更」だった場合、考慮されるケースもあります。
他にも、条件を満たすことができれば住宅ローンの名義変更も可能な場合もあります。
離婚時に住宅ローンの名義変更できる条件
住宅ローンの名義変更は、基本的に「借り換え」として扱われるため、新たな審査を経て金融機関の承認が必要です。
先述した通り名義変更は原則不可ですが、条件によっては認められるケースがあります。
つまり、以下の条件を満たさない場合、名義変更が難しいことが多いです。
新しい名義人に十分な収入と返済能力がある場合
離婚に伴い住宅ローンの名義変更ができる条件の1つ目は、新しい名義人に十分な収入と返済能力があることです。
住宅ローンは、返済する予定の方の年収から借入可能額を算出します。
そのため、夫が名義人で、妻に新しく名義変更をしたい場合、新しく名義人になる「妻」の収入が鍵になります。
妻の収入に対するローンの返済額を表す「返済負担率」が一定の基準を超えていれば、問題なく変更が認められる可能性が高くなります。
ただし、「連帯債務」という夫婦2人の収入を合わせて契約した住宅ローンだった場合は、1人の収入では返済能力が十分でないとみなされ、名義変更が出来ない可能性が高くなります。
返済負担率について詳しく説明すると、返済負担率は年収に応じて25%~35%以内に設定している金融機関が多く、その範囲ないであれば、返済できると考えられています。フラット35を例に挙げる場合、年収400万円未満の場合は30%、400万円以上で35%と上限が決まっています。信用情報に問題がない場合
離婚時に住宅ローンの名義変更できる条件2つ目は、「信用情報に問題がない場合」になります。
まず、新しい名義人のクレジットスコアが金融機関の基準を満たしていることが必要です。一般的に、クレジットスコアが高いほど審査に通りやすくなります。
また、過去にローンやクレジットカードの返済に延滞や滞納がないことが求められます。延滞履歴があると、信用力が低下し、名義変更が認められない可能性があります。
さらに、他の借入額が多い場合、住宅ローンの返済負担率が高くなり、審査に通りにくくなります。
オーバーローンでない場合
現在の住宅の市場価値を査定し、その金額がローンの残高を上回っていることが必要です。
査定額や売却額がローン残高を下回る状態を「オーバーローン」といい、その状態では、金融機関は担保としての価値を認めず、名義変更が難しくなります。名義変更を希望する場合、現在のローンを取り扱っている金融機関の承認を得る必要があります。
金融機関によっては名義変更の条件や手続きが異なるため、事前に相談して条件を確認することが重要です。
住宅ローンの名義変更パターンとその可否
住宅ローンの名義変更には、いくつかのパターンがあり、それぞれのケースによって可能かどうかが異なります。
以下、一般的なパターンを分けて、どのような場合に名義変更ができるか、またはできないかを説明します。
- 夫婦間での名義変更
- 夫婦共同名義から単独名義への変更
- 連帯保証人の変更
- 親子間での名義変更
パターン① 夫婦間での名義変更
例えば、離婚に伴う夫婦間での名義変更の場合、離婚後、どちらか一方が新たなローン契約者となり、審査を通過した場合は名義変更が可能です。
また、支払い能力や信用情報に問題がなく、物件の担保価値も十分であれば、借り換えとして名義変更が可能です。
一方で、片方が十分な収入を持っていない、信用情報に問題がある、もしくは担保価値が不足している場合は名義変更ができません。
次に、「結婚中に夫婦の名義を変更する場合」を紹介します。
夫婦間での合意があり、収入や信用情報、担保価値の条件を満たしている場合。配偶者の名義を主債務者に変更することが可能です。
一方で、収入が不十分、信用情報に問題がある、物件の担保価値が不足している場合は名義変更ができません。
パターン② 夫婦共同名義から単独名義への変更
共同名義から片方の単独名義に変更する場合を考えてみましょう。
共同名義から片方の単独名義に変更する場合、名義人から抜ける方の住宅ローンを完済する必要があります。
例えば、夫婦で共同名義を組んでいたが、離婚後に妻だけが住み続けたいから、名義変更を希望する場合は、夫の残っている分の住宅ローンを完済しなければなりません。
共同名義は、単独名義で組めない金額のローンを組んでいるケースが多いため、切り替え時は、単独名義に変更したとしても、十分に返済能力があるかどうかが金融機関に審査されることになります。
単独名義にする人物が支払い能力を満たしていない、もしくは物件の担保価値が不足している場合変更ができません。
住み続ける人が家の名義人として登録されている必要がある
夫が住宅ローンの名義だったが、妻が名義変更することが不可能な場合、夫は家に住んでいないが住宅ローンを払い続け、妻が家に住み続けるということはNGとなっています。
住宅ローンを組む際、金融機関はローン返済保証として物件に担保権を設定します。この担保権は、借り手がローンを返済できなくなった場合に、金融機関が物件を売却して債権を回収するためのものです。そのため、物件の名義を変更すると、担保としての価値に影響を及ぼす可能性があります。
また、物件の名義変更は、基本的に金融機関の同意が必要です。これは、名義変更によってローン契約の条件が変わる可能性があるためです。例えば、名義変更後の所有者がローンの返済能力を持っているかどうか、金融機関は確認する必要があります。
さらに、住宅ローン契約は、特定の個人と金融機関との間で結ばれます。そのため、契約上の借り手である名義人を変更するには、新たな契約者の信用情報の確認、契約条件の再評価など、多くの手続きが必要になります。
住宅ローンを完済している場合、家の名義変更は自由にできる
離婚時に住宅ローンを完済している場合は家の名義変更を行うことができます。
離婚時に名義変更をする場合は、まず初めに財産分与の話し合いを行い、どちらが家を所有するか決めます。
財産分与の割合は原則2分の1とされていますが、夫婦間で合意がある場合は自由に割合を決めることができます。不動産の所有者が決定したら、法務局の登記所で有権の移転登記を行います。しかし、離婚時に住宅ローン返済中の場合は、家の名義変更を行うことはできません。
住宅ローン中の家の名義変更の手続き自体は行うことができますが、名義変更を行う前に借り入れしている銀行の許可が必要となります。しかし銀行から住宅ローン中の家の名義変更の許可を貰うことは難しく、名義変更を行うことは現実的ではないでしょう。
よって家の名義変更をするためには住宅ローンを完済する必要があります。
パターン③ 連帯保証人の変更
主債務者の名義は変更せず、連帯保証人のみを変更する場合は、名義変更ができるのでしょうか。
まず、連帯保証人を変更する手続きをしたい場合、主債務者が実行しなければなりません。
住宅ローンの名義変更に関しては、新たな連帯保証人が審査を通過すれば可能です。
通過する条件としては、信用情報の問題がないことや、収入が十分で返済能力があると評価できる点があります。
パターン④ 親子間での名義変更
親子間で名義変更をしたいと考える場合はどうでしょう。
新しいローン契約者(親または子)に十分な収入があり、審査を通過した場合。特に親が高齢であったり、子が若く十分な収入を得ていれば、名義変更が可能です。
一方で、子が未成年で収入がない、または収入や信用情報の要件を満たしていない場合や親が高齢で新たなローン審査に通らない場合も名義変更が難しいです。
離婚時に住宅ローンの名義変更をする方法
離婚時は、通常時と比べて名義変更が認められやすいため、以下のような方法を使いなるべく早く名義変更を行うことをおすすめします。
夫婦で共有名義を組んでいる場合は、できるだけ「単独名義」に変更できるようにしましょう。
家の売却を行う
離婚後に最もトラブルが起こる可能性を回避する方法としておすすめしたいものは、「家の売却を行う」です。
家を売却することで、銀行との契約違反のリスクを避けることができるだけでなく、離婚後の住宅ローン返済に関する夫婦間のトラブルの心配をしなくてもよいというメリットがあります。
また、家を売却し住宅ローンを完済した後に残った売却益は財産分与で平等に分けることができます。
そのため、家のまま財産分与をして所有権を決めるより、現金で等しく分けることができるため話し合いで揉める可能性が低くなります。
家を売ることで家を住み替える必要はありますが、家と住宅ローンの名義変更ができないという問題は解決できます。
どうしても家の名義変更をしたい場合、自己資金を使ってローンを完済する
住宅ローンが残っている際にどうしても家を名義変更したい場合は、住宅ローンの一括返済を行い、完済しましょう。
住宅ローンを一括返済することで、名義変更ができる以外にも、総返済額を減らすことができたり、状況によっては戻り保証金を受け取ることができたりと、離婚後に住宅ローン滞納に関するトラブルの対策を行うことができるというメリットがあります。
もちろん、一時的に自己資金が少なくなる、手数料がかかるというデメリットもありますが、将来的に起こるトラブルや総返済額の減少を考えると、離婚時に住宅ローンを一括返済することがおすすめだと言えるでしょう。
住宅ローンを一括返済するには手数料がかかります。手数料の金額は金融機関によって異なるため、事前に確認しておきましょう。三大メガバンクであるみずほ銀行・三菱UFJ銀行・三井住友銀行の住宅ローン一括返済にかかる手数料は以下の通りです。
手続き方法 | 手数料 | |
---|---|---|
みずほ銀行 | 窓口 | 33,000円(テレビ電話利用の場合は22,000円) |
三菱UFJ銀行 | インターネットバンキング・窓口 | インターネットバンキング:16,500円 窓口:33,000円 |
三井住友銀行 | インターネットバンキング・窓口 | インターネットバンキング:5,500円 窓口:22,000円 |
夫婦間で家の売却を行う
新名義人が現在の名義人から不動産を買い取るという夫婦間で売買することで家と住宅ローンの名義変更をすることができます。
懸念としては、まず、新しい名義人が家を買うことができる現金を用意するか新しく住宅ローンを契約する必要があるため、新名義人側に経済的負担のかかる点です。
また、家を売るためには、住宅ローンを完済し、抵当権抹消の手続きを行わなければなりません。
そのため家を住宅ローン残債以上の価格で売却することができるかどうかに注目して売却を進めましょう。
夫婦間で家を売買する場合であっても、家の売却相場にあった金額で売却することが重要です。
他の銀行で住宅ローンを借り換える
現在借り入れている銀行から名義変更の許可を貰えなかった場合、他の銀行で住宅ローンを借り換えることで、現在借りている住宅ローンを完済できれば名義から外れることができます。
そうすることで、住宅ローンの名義変更を新しいローンで組むことができます。
もし現在より金利の低い住宅ローンに借り換えることができれば、住宅ローン返済の負担も減らせることができるため金利の高い住宅ローンを契約している方は借り換えを検討してみるとよいでしょう。
しかし、住宅ローンを借りる際の審査に通らなければ借り換えることができません。
住宅ローンの新規借入の審査では、完済時年齢や健康状態のほかに、年収・勤続年数・雇用形態が考慮されます。専業主婦やパート勤務の方では住宅ローンの借り換えが行えない恐れがあるため注意しましょう。
妻の親族に名義変更をする
妻本人に名義変更ができない場合は、妻の親族に名義変更をしてもらう対処法もあります。
妻本人の名義にすることはできませんが、離婚後も夫名義のままにしておくよりもトラブルが起こりにくいと考えられます。
しかし、妻の親族に名義変更する場合も、住宅ローンの審査に通ることができなければ名義変更を行うことができません。
名義変更してもらう親族は慎重に選ぶようにしましょう。
離婚時の住宅ローンと家の名義変更にかかる費用
離婚時に家や住宅ローンの名義変更をする場合は、費用がかかります。
特に、住宅ローンを他銀行で借り換えることになった場合、高額な費用が必要となります。事前にどのような費用が必要なのか確認しておきましょう。
住宅ローンの名義変更にかかる費用
住宅ローンの名義変更は原則できないとされているため、住宅ローンの名義変更をする場合は、他の銀行で借り換える必要があります。
住宅ローンを他の銀行で借り入れる際には以下のような費用がかかります。
項目 | 費用の目安 |
---|---|
融資手数料 | 3~5万円 ※銀行によって異なる |
ローン保証料 | 借入額や返済年数によって異なる |
火災保険料 | 15~20万円 ※銀行によって異なる |
地震保険料 | 建物の構造、所在地によって異なる |
住宅ローンを借り入れる際に必要な費用は、最低でも借入額の約3%ほどかかると言われています。例えば、住宅ローンを3000万円借り入れる場合は、最低でも90万円の費用がかかるということです。
家の名義変更にかかる費用
家の名義変更をする際は、登録免許税と名義変更に必要な書類の取得費用が必要です。
財産分与が原因で家の名義変更を行う場合、登録免許税は家の固定資産税評価額の2%を納めなければなりません。
また、家の名義変更を司法書士に依頼する場合は、報酬として4~15万円必要となります。
必要書類の取得にかかる費用は役所によって異なるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
書類 | 費用 |
---|---|
印鑑証明書 | 300円 |
住民票 | 300円 |
固定資産評価証明書 | 300円 |
戸籍謄本 | 450円 |
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