親の死後、実家を処分する方法は「不動産仲介で売る」「不動産買取業者に売る」「家を解体して更地にして売る」「3ヶ月以内に相続放棄する」「自治体に寄付する」の5つです。
それぞれのメリット・デメリットを把握して方法を選択することで、実家を処分しないことで起こるリスクを回避することができます。
また、相続した家であれば処分のためにまとまったお金が必要になりますので、費用や税金についても確認しておきましょう。
「まずは家を売る基礎知識を知りたい」という方は、こちらの記事をご覧ください。
- 実家の処分を遅らせるとリスクが生じる
- 処分方法は5つある
- 各売却方法により必要な手続きと書類は異なる
親の死後、家の処分をしないことで起こるリスク
親の死後に実家を処分しないことで生じるリスクは様々です。
固定資産税の継続的な発生、物件の価値低下、ご近所や犯罪トラブルなど、できる限り避けて通りたいものばかりです。
以下で主なリスクを3つご紹介します。
固定資産税が発生する
不動産は所有し続ける限り固定資産税が発生します。そのため、放っておくと税の支払額が積み上がりいつのまにか大きくなっているリスクがあります。
もう少し具体的に説明すると、固定資産税「固定資産税評価額×1.4%」が年間10万円の家を相続した場合、処分を決断するまでに5年間放置したとします。その間、税金は累計で50万円に上りますが、滞納が続けば遅延税の発生も免れません。
日本では、遅延税は納税額の14.6%にも上ることがあり、この場合だと約7.3万円の追加負担が発生する計算になります。
実際の負担額は物件や地域によって異なるものの、相続人にとっては大きな負担となるでしょう。
年々資産価値が下がり売れなくなる
家は年々資産価値が下がるため、気づけば値が付かなくなってしまうという恐れがあります。
平均して1年間で4.5%ずつ価値が下がるため、3,000万円で立てた家だとすると1年間で約140万円も損することになります。
相続してなるべく早いタイミングで処分をすることが、相続人の財産価値を最大化することになると言えます。
ご近所トラブルや犯罪に巻き込まれる
空き家が犯罪の標的になるケースもあり、不法侵入による損害や盗難などのリスクも伴います。
人が住んでいない家というのは老朽化が速く進むものです。特に近くに住んでいない家の場合は、定期的な管理が難しくなりますので、家や庭が荒れてしまうこともあるでしょう。
庭の木がご近所に侵入してしまったり、腐敗が進み悪臭を発することもあります。また荒れた家は不審者の格好の隠れ場所となったり、何かしら犯罪に利用されてしまうケースがあります。
大切な親の家がこのようなトラブルに巻き込まれるのは大きなリスクと言えるでしょう。

親の死後、家の処分をする5つの方法
親の死後に実家の処分をしようとしている方は、まず初めにどのように処分方法があるのかを押さえることが大切です。
そもそも実家を処分しないと固定資産税が継続してかかったり、資産価値が低下したりと様々なリスクがあります。そのため、空き家になる場合は処分することは賢い選択になります。
家を処分する方法は複数あるため、できる限り費用を押さえられる方法を選べるかどうかが損をしないために非常に重要になります。
この章では5つの主要な方法を紹介し、それぞれのメリット・デメリットについても解説していきます。
親の死後に実家を処分する方法は次の5つです。
- 不動産仲介で売る
- 不動産買取業者に売る
- 家を解体して更地にして売る
- 3ヶ月以内に相続放棄する
- 自治体に寄付する
方法①不動産仲介で売る
親の死後に家の処分をする一つ目の方法は、不動産仲介で売るです。
不動産仲介で売るとは、不動産会社を介して買い手を見つけ、家の売買契約を結ぶことです。不動産仲介を通じて実家を売却する方法は、多くの相続人にとって一般的な選択肢になります。
売却期間は通常半年から1年ほどになりますが、家が売れやすいかどうか、適切な不動産会社を選ぶことができているかどうかなどにより、数年かかることもあります。
信頼できる不動産会社を見つけられるかどうかが成功のカギとなる方法です。
不動産仲介のメリット
不動産仲介を利用すると、専門知識を持った不動産会社が価格交渉や契約手続きを代行してくれるため、売主は専門的な知識がなくとも安心して取引を進めることができます。家の売却は人生で何度も経験するものではないため、特に不動産取引に不慣れな人にとっては不動産会社に頼れることは大きなメリットと言えるでしょう。
不動産会社の利益は家がどれくらい高く売れたかによって決まりますので、最も有利な条件で売れるために戦略的に動いてくれるはずです。そのため、高く売れやすい方法にもなっています。
不動産仲介のデメリット
不動産仲介では、売却価格に応じて仲介手数料が発生するため、費用がかかります。また、市場の状況によっては購入希望者を見つけるまでに長い時間がかかることがあり、すぐに現金化したい方にとってはデメリットになるでしょう。
さらに、売却活動中は常に物件を見学できる状態に保つ必要があり、多くの見知らぬ人が自宅を訪れることになります。これが負担に感じられたり、プライバシーの侵害と感じることもあるでしょう。
方法②不動産買取業者に売る
親の死後に家の処分をする2つ目の方法は、不動産買取業者に売るです。
不動産買取業者に直接あなたの家を買い取ってもらう方法を不動産買取と言います。このサービスは、市場に出して買い手を見つけるのではなく、不動産会社が即座に購入するため、査定から契約、売却完了までの期間は通常、数日から数週間と非常に短く、急いで現金化したい場合に適しています。
不動産買取のメリット
不動産買取の最大のメリットは、売却完了までの期間がとにかく早く、確実に処分することができることです。
不動産買取は不動産市場に出して購入希望者を探すことことがなく、買取業者が見つかればすぐに買い取ってもらうことができます。また、市場の変動に左右されることなく確実に売却できるため、不動産市場が不安定な時期でも売却計画が立てやすくなります。
さらに、不用品回収や掃除も買取業者が請け負ってくれることが多いため、仲介に比べて費用が掛からない点も大きなメリットと言えるでしょう。
不動産買取のデメリット
不動産買取のデメリットとしては、市場価格の70%〜80%程度になることです。
買取は、不動産会社が買い取った家を高値で売れるよう修繕、リフォームして再販することで不動産会社に利益が出る仕組みになっています。
不動産会社はそのリスクを負うことになりますので、一般的な仲介と比較すると安価になるのです。
相場は物件の状態、立地、市場状況によって異なりますが、不動産買取で売ってしまう前に、複数の業者に査定を依頼し、比較検討することがおすすめです。
方法③家を解体して更地にして売る
親の死後に家の処分をする3つ目の方法は、家を解体して更地にして売るです。
具体的には、家の建物部分を取り壊し、土地のみを販売するという方法です。これには、家がかなり築古の場合におすすめの方法です。土地としての価値を高めることができます。
更地化の期間は、解体作業の規模や選ぶ業者によって異なりますが、一般的には解体に数週間から数ヶ月かかります。その後の売却期間も含めると、数ヶ月から1年程度の期間を要することが多くなります。
また、更地の相場は、土地の場所、面積、市場の需要、周辺の開発状況によって大きく変動しますが、建物がないことで、建築条件にとらわれず新たに建物を建てることができるため、通常は建物がある状態よりも土地としての価値が上がる可能性が高くなります。
更地にして売るメリット
更地で売る最大のメリットは、建物がないことで土地の魅力を際立たせやすく、買い手が求める土地の特性を前面に打ち出せるため、売買が成立しやすくなる点です。
古い建物があると、それを取り壊す手間やコストが購入者の負担になりますが、更地ならばその必要がありません。購入者が土地を自由に用途を決めて新築建設ができるので、購入者は購入後すぐに、使用を開始することができます。
更地は、特に住宅や商業施設の建設を考えている開発者や投資家にとって魅力的です。建物の状態による評価のバイアスがなく、土地自体のロケーションや広さ、形状が価値を左右するため、購入者のニーズに合わせやすいという利点もあります。
更地にして売るデメリット
一方、更地で売る際のデメリットは、解体にかかる追加のコストと時間です。既存の建物を取り壊すためには、解体業者への支払いが必要であり、場合によっては有害物質の除去や処分に特別な手続きが必要になることがあります。
これらはすべて費用に反映され、売却価格を下げる要因になりえます。また、建物の解体は周囲の環境に影響を与える可能性があり、騒音やダストが近隣住民の不満を引き起こすことがあるため、事前の周知と調整が必要です。
そこまで建物の状態が古いわけでなければ、場合によっては建物がある状態での方が費用がかからず高く売れることもあるため、市場の需要と供給をよく理解し慎重に判断しましょう。
方法④3ヶ月以内に相続放棄する
親の死後に家の処分をする4つ目の方法は、相続放棄するです。
相続放棄とは、相続人が法律で定められた手続きを通じて、故人からの相続を一切受け取らないことを選択する行為です。これにより、負債を含めたすべての遺産の相続を拒否することができます。財産の放棄は一部の財産に限定することはできず、全財産に対して行うものです。
相続放棄をするには、相続発生後3ヶ月以内に家庭裁判所に放棄の申述を行う必要があります。この期間内に申述を行わなければ、自動的に相続を承認したものとみなされます。また、相続放棄に「相場」という概念はありません。財産だけでなく負債の相続も放棄するため、金銭的な相場を考えるよりも、放棄によって避けられる負債や責任の大きさを考慮する必要があります。
相続放棄は、故人の負債や管理が困難な不動産を引き継ぎたくない場合などに有効な選択肢になります。しかし、その決断には後戻りができないため、専門家と相談の上で慎重に進める必要があります。
相続放棄のメリット
相続放棄のメリットは、故人の残した借金や負の遺産を引き受ける必要がなくなることです。特に、故人が多額の債務を抱えていた場合、その返済義務から免れることができます。
また、財産が負債を上回っていない、維持費がかかる不動産を相続することによる経済的負担や、相続に伴う複雑な手続きや紛争のリスクを避けることができます。相続放棄は、相続人自身の財産状況や将来計画に合わない遺産を受け入れることなく、自己の資産を守る選択肢として利用されます。この行為によって、相続税の申告や支払い、不動産の管理といった責任からも解放されるため、経済的なみならず精神的な負担も軽減されるのです。
相続放棄のデメリット
相続放棄のデメリットは、一度放棄を選択すると撤回ができない点にあります。これにより、負の遺産だけでなく、価値ある財産や思い出の品まで手放すことになります。相続放棄は全ての遺産に適用されるため、選択的に良い財産だけを受け取ることはできません。
また、相続放棄を行うと、その相続分は次の相続人に移動するため、他の家族間での誤解や紛争を招く原因となる可能性があります。手続き自体にも家庭裁判所への申し立てが必要であり、一定の時間と労力が必要になります。放棄が経済的合理性を持つかどうかは、故人の財産と負債の全体像を把握した上で慎重に判断する必要があるため、専門家の助言を仰ぐことがおすすめです。
方法⑤自治体に寄付する
親の死後に家の処分をする5つ目の方法は、自治体に寄付するです。
不動産を自治体に寄付するとは、所有している不動産を地方公共団体に無償で譲渡することを指します。これにより、その土地や建物が公共の利益のために使用されます。
一般的には数ヶ月かかることが多いですが、寄付の内容や寄付を受ける自治体の手続きによって異なります。また、寄付は、通常、無償で行われるため、金銭的な利益を求めるものではありません。ただし、税制上のメリットを享受できる場合があります。
自治体に寄付する際の注意点として、寄付を行うことで税金の控除を受けられる可能性がありますが、これには適切な手続きが必要です。加えて、すべての自治体が不動産の寄付を受け入れているわけではないため、寄付する不動産が公共の利益に供されるよう、自治体との間で条件を明確に協議をし、寄付を受け入れ可能な自治体を見つけること必要があります。
自治体に寄付するメリット
不動産を自治体に寄付することのメリットは、税制上の優遇措置を受けられる点です。寄付により、所得税や相続税が控除されます。
また、自己の不動産が公共の施設や公園など、地域社会のために役立てられるという社会貢献の実感を得ることができます。特に維持が困難な不動産を持っている場合には、その負担を軽減できます。
寄付は、相続時の財産評価を下げる効果もあり、相続人にとっての負担を減らすことも可能です。これらの利点は、特に維持が困難な不動産を持つ所有者や、相続に際してトラブルを避けたい相続人にとって大きな魅力となります。
自治体に寄付するデメリット
デメリットとしては、不動産の市場価値に相当する資産をもらえないことです。市場で売却すれば現金化することができますが、寄付を選択するとそれはできなくなります。また、寄付は一度決定すると撤回が困難であり、後悔しても元に戻すことはできません。
税務上の控除を受けるためには、適切な文書の準備や手続きが必要となり、これらは専門的な知識を要するため、税理士などの専門家に相談する必要があることもデメリットと言えます。さらに、寄付を受け入れる自治体を見つけるのが困難であったり、寄付の条件に関する交渉が必要になることもあります。時間と労力がかかるため、場合によっては予想外のコストが生じることもあります。
親の死後、家の処分にかかる費用
ここからは、家を相続して処分するために必要な費用について紹介していきます。
処分にあたり、どのタイミングでどのような費用がかかるのかを把握しておきましょう。
- 相続税
- 相続登記費用
- 維持管理費用
- 測量費用
- 遺品整理/ごみ処分費用
- ハウスクリーニング費用
- 解体費用
- 相続放棄費用
- 仲介手数料
- 印紙税
- 譲渡所得税
先程説明した5つの処分方法はどれくらいの価格になるのかを計算できるはずですので、できる限りお金をかけたくないという方は費用感を押さえておきましょう。
【処分前】相続税
相続税は、被相続人から相続人に移る財産に対してかかる税金です。
計算方法は以下の通りです。
| (遺産総額 ー 基礎控除額) × 税率 ー 控除額 |
基礎控除額は、2025年の時点で3,000万円+(600万円×法定相続人の数)です。税率と控除額は以下の通りです。
| 遺産総額のうち取得する額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | なし |
| 1,000万円超3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 3,000万円超5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 5,000万円超1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 1億円超2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 2億円超3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 3億円超6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
相続税は、相続が開始された日から10ヶ月以内に納付する必要があります。納税地は、故人の最後の住所地の税務署になります。納付する際には、適切な評価額を算出するために専門家のアドバイスを受けることがおすすめです。
【処分前】相続登記費用
相続登記費用は、不動産の名義変更を行う際にかかる費用です。
相続登記は、相続があったことを法的に正式な形で記録するもので、この手続きには司法書士への報酬と書類のは発行手数料、登記費用が含まれます。
司法書士への報酬は、どの事務所に依頼するかよるもののおよそ7~10万円ほどが相場になります。
書類の発行手数料は約5,000円、登記費用は法務局の登記手数料表に基づきますが、基本的には物件の評価額×0.4%で算出されます。
【処分前】維持管理費用
維持管理費用は相続した家を処分するまでの間にかかる費用です。
家は誰も住んでいないとすぐに傷んだりホコリっぽくなったりするものです。そのため、処分するまではそれなりに綺麗な状態を維持しておく必要があります。
維持管理をご自身で行える場合であれば費用はかかりませんが、空き家管理サービスを利用する場合は1か月あたり5,000~15,000円ほどが相場となっています。
【処分時】測量費用
土地の境界をはっきりさせるために必要な測量の費用は、隣り合う土地が民間の所有地か公的機関の所有地かによって変わります。
| 100㎡当たりの相場 | |
|---|---|
| 隣地が民有地(民間の所有地)の場合 | 30~60万 |
| 隣地が官有地(公的機関の所有地)の場合 | 50~80万 |
【処分時】遺品整理/ごみ処分費用
遺品やごみ処分はそれぞれ別の業者に頼むことが多くなります。
遺品整理を専門の遺品整理業者に依頼する費用は間取りや遺品の多さによって変わります。相場は以下の通りです。
| 一戸建て(4LDK) | 20万~60万円 |
ごみの処分は不用品回収業者に頼むことになりますが、会社によってかなり幅があるため注意が必要です。
| 一戸建て(4LDK) | 15万~60万円 |
【処分時】ハウスクリーニング費用
目立つ汚れがある場合には、ハウスクリーニング費用も用意しておきましょう。
ハウスクリーニングの費用は①広さ、②掃除しやすさ、③クリーニング作業のの難易度、④駐車場の有無で決まってきますが、相場は大体以下ようになっています。
| 間取り | 一戸建て | マンション |
|---|---|---|
| 1K/1DK | – | 2万~5万円 |
| 2LDK/3DK | 6万~10万円 | 4万~9万円 |
| 3LDK/4DK | 7万~11万円 | 6万~10万円 |
| 4LDK/5DK | 8万~14万円 | 7万~12万円 |
【処分時】解体費用
家を解体して売る場合の解体費用は、建物の材質と広さによって変わります。
解体費用の相場は以下の通りです。
| 材質 | 坪単価の相場 |
|---|---|
| 木造 | 3万~5万円 |
| 鉄骨造 | 5万~7万円 |
| 鉄筋コンクリート造 | 6万~8万円 |
【処分時】相続放棄費用
相続放棄費用は、相続放棄をする場合にのみかかる費用になります。
相続放棄費用には、手続きにかかる申述書の作成費用と、司法書士に依頼する場合の代理費用の2種類があります。相場はそれぞれ以下の通りです。
| 申述書の作成費用 | 3,000~6,000円 |
|---|---|
| 司法書士の代理費用 | 20,000~30,000円 |
【処分後】仲介手数料
仲介手数料は不動産会社に仲介してもらって家を売却する場合に、その売却価格に応じて発生する手数料のことです。
この手数料は売却価格によって異なり、上限が法律で定められています。
| 売買価格 | 仲介手数料の上限 |
|---|---|
| 200万円以下の部分 | (売却価格×5%)+消費税10% |
| 200万円から400万円以下 | (売却価格×4%+2万円)+消費税10% |
| 400万円を超える金額 | (売却価格×3%+6万円)+消費税10% |
※低廉な空き家等(物件価格が800万円以下の宅地建物)の場合、仲介手数料の上限額は30万円(税抜)です。
支払いは売買契約成立時、または決済完了時に行われることが一般的です。支払先は仲介を行った不動産会社になります。
【処分後】印紙税
印紙税は、契約書などの重要な書面に貼付される印紙を購入する際に支払う税金です。
金額は、契約書の内容や契約金額によって異なります。
| 契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
|---|---|---|
| 10万円を超え 50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
| 50万円を超え 100万円以下のもの | 1千円 | 500円 |
| 100万円を超え 500万円以下のもの | 2千円 | 1千円 |
| 500万円を超え1,000万円以下のもの | 1万円 | 5千円 |
| 1千万円を超え5,000万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
| 5,000万円を超え 1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
| 1億円を超え 5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
※2027年3月31日までに作成された契約書の場合は、軽減税率が適用されます
印紙税は契約締結時に支払い、印紙は郵便局や印紙を取り扱う店舗で購入可能です。
【処分後】譲渡所得税
譲渡所得税は、不動産売却によって得た利益(譲渡所得)に対してかかる税金です。
計算方法は売却価格から取得費や譲渡にかかる必要経費を差し引いた金額に、以下の税率をかけるというものです。所有期間が5年超の長期所有物件の場合、税率は通常よりも低くなります。
| 所有期間 | 税率 | |
|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 39.63%(所得税 30.63% 、住民税 9%) |
| 長期譲渡所得 | 5年を超える | 20.315%(所得税 15.315% 、住民税 5%) |
譲渡所得税は、売却年の翌年の確定申告時に計算して税務署で納税します。
親の死後、家の処分をするためにやらなければならないこと
親が亡くなった後、告別式の準備などで忙しくなりますが、期限内に実施しなければいけないことが多々あります。そして、実家を処分する前にもいくつかの法的手続きを完了させる必要があります。次に説明するプロセスは、不動産の法的な売却や新しい所有者への正式な移転を可能にするために必ず必要なものです。
まず、死亡届の提出から始まり、遺言の有無の確認、相続に関係する方全員の遺産分割の合意形成、そして相続登記と名義変更を行うことが必要です。この章では、それぞれがそれぞれの項目において定められている期限や、注意点などを記載します。これらの手続きを適切に行うことで、後の紛争を避け、スムーズな実家の処分が可能になります。
死後7日以内に死亡届を提出する
親の死後、最初に行うべきは死亡届の提出です。これは、通常、死亡を知った日から7日以内に、故人の住民登録をしていた市区町村役場、もしくは本籍地、死亡地、届出人の所在地、いずれかの役所へ提出する必要があります。
死亡届は、相続手続きの開始を意味する重要な文書であり、これにより故人の戸籍が死亡戸籍に変わり、相続人が明確になります。適切に提出されなかった場合、相続手続きに遅延が生じ、不動産の処分にも影響を及ぼす可能性があります。
提出する市区町村役所にもよっても変わってきますが、基本的に夜間や休日でも届出できます。この際、医師が発行した死亡診断書を添付する必要があります。また、国外で死亡した場合はその事実を知った日から3ヵ月以内であれば受け取ってもらえます。 正当な理由なく届出が遅れた場合、戸籍法によって5万円以下の過料を徴収されますので、期限には注意しましょう。
遺言書の有無を確認し、遺産分割方針を決める
次に、遺言書が存在するかどうかを確認し、その内容に基づいて遺産分割の方針を決定します。遺言書がある場合、その指示に従って遺産を分割することが法的に要求されます。たとえば、故人が「実家は長男が継ぐ」と遺言していた場合、それに従います。
遺言書がない場合や、遺言が無効であると判断された場合には、相続人全員で遺産分割協議を行い、合意に至る必要があります。遺産分割協議では、不動産の評価額や相続人の希望を考慮し、公平な分割が行われることが重要です。
不動産の評価額は専門家に依頼して算出してもらうのが一般的です。メリットとして、市場価値に即した正確な価格設定が可能になることがあります。専門家である不動産鑑定士は、不動産市場の動向、立地条件、物件の状態、法規制など多岐にわたる要素を考慮して評価を行います。これにより、相続税の申告額の正確な計算、公正な遺産分割、または適切な売却価格の設定が可能となります。実際の売買や相続において、適正な価値判断はトラブルを未然に防ぎ、すべての関係者間での合意形成を容易にします。
評価額算出の依頼相場は、物件の種類や立地、評価の複雑さによって異なりますが、一般的には数十万円から数百万円の範囲内です。
相続登記をする
不動産の相続が決まった後は、相続登記を行うことが必要です。これは、不動産の法的な所有権が相続人に移転したことを証明するためのものであり、登記されていないと不動産の売却ができません。2024年4月1日から相続登記が義務化されました。相続人は、不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をする必要があります。正当な理由なく申請を怠った場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。登記が遅れると不動産の売却や利用に影響が出る可能性があるからです。
相続登記は、相続人の身分証明書、死亡証明書、遺産分割協議書、戸籍謄本などの書類を用意し、法務局で手続きを行います。、特に戸籍謄本は登記申請の3ヶ月以内に取得したものでなければならないので注意が必要です。
相続登記は複雑な手続きであるため、専門家である司法書士に依頼するのが一般的です。司法書士を選ぶ際には、経験や専門知識、費用を比較検討して選ぶようにしましょう。
名義を変更する
最後に、不動産以外にも故人名義の財産があれば、それらの名義変更も行う必要があります。銀行口座、証券、自動車など、名義変更が必要な財産は適切に処理することで、後の問題を防ぎます。名義変更は、関連する機関に相続人としての権利を証明する書類を提出し、手続きを完了させることで行われます。これにより、すべての財産が正式に相続人のものとなり、処分や利用が可能になります。
名義変更には正確な書類が必要です。死亡証明書、戸籍謄本、相続関係説明図など、必要な書類を揃え、最新のものであることを確認しましょう。また、一部の名義変更には期限が設けられていることがあります。たとえば自動車の名義変更には特定の期間が定められているので、期限内に手続きを完了させましょう。
親の死後、実家を処分する流れ
親の死後、実家を処分するには、まず第3章「親の死後に実家を処分するためにやらなければならないこと」で説明した相続手続きを経て法的な権利を確立する必要があります。
その後、市場や自分に合わせた売却方法を選択し、不動産を処分します。今回は、一般的な「不動産仲介」を利用する方法と、「不動産買取」を依頼する売却方法の2つに大きく分けて解説していきます。それぞれの方法には独自の流れがあり、効率的かつスムーズに実家を処分するためには、その手順を正確に理解することが重要です。
不動産仲介で売る流れ
不動産仲介で売る流れの特徴として、売り出すタイミングが大事という点が挙げられます。
不動産仲介では市場価格に基づいて物件を売り出すため、適正価格での売却が期待できる一方で、不動産買取と比べて、適切な買い手を見つけるまでに時間がかかることがあるからです。
不動産仲介は、最大限の売却価格を望む人、時間に余裕があり市場での需要を待てる人に適しています。以下が不動産仲介で売る流れをステップ分けしたものになります。
- 仲介業者の選定: 信頼できる不動産仲介業者を選び、契約を結びます。
- 物件評価と価格設定: 仲介業者が市場分析を行い、実家の適正な価格を設定します。
- 販売準備: 物件の清掃、必要に応じた修繕を行い、販売のための準備をします。
- 広告と内覧: 仲介業者が物件の広告を行い、買い手候補との内覧を調整します。
- オファーと交渉: 購入希望者からのオファーを受け、価格や条件について交渉します。
- 契約: 条件に合意したら、売買契約を締結します。
- 決済と引き渡し: 契約に基づいて決済を行い、物件を引き渡します。
ステップ1. 仲介業者の選定
実家の処分には、信頼できる仲介業者の選定が不可欠です。評判や取引実績を確認し、地域に精通しているかどうかを調べましょう。売主の責務として、評判の良い仲介業者を選んだ後は、委任状を提出することです。また、仲介業者は売主の要望を理解し、市場に合った提案をする義務があります。
必要書類には、委任状や専任媒介契約書があります。費用は、成功報酬型で売却価格の数パーセントが相場です。注意点として、複数の業者と比較することがこのステップにおいて、最重要事項です。
ステップ2. 物件評価と価格設定
物件の市場価値を把握し、適切な価格設定が求められます。価格設定には、近隣の売却実績や物件の状態が反映されます。必要書類は、登記簿謄本や固定資産税評価証明書などさまざまです。売却をスムーズに進めるために、売主として、登記簿謄本や固定資産税評価証明書の群れがないように準備を徹底しましょう。仲介業者市場分析を行い、適切な価格を提案することが義務になります。売却において価格設定は最重要ポイントになりますので、価格設定の際は、現実的で売れる価格を設定することが大切です。
ステップ3. 販売準備
販売にあたっては、物件の掃除や修繕を行い、魅力を最大限に引き出します。キレイな状態を保つのが売主の責務になります。自身で掃除や修繕をすることが厳しい場合は、専門の方に依頼するようにしましょう。
必要書類には、エネルギー性能証明書や設備保証書があります。これは、仲介業者の方が、証明書の取得支援や販売戦略の立案をしてくださることが義務になります。費用は、物件の状態により異なりますが、修繕には予算を設けておく必要があります。注意点は、第一印象が重要であることです。
ステップ4. 広告と内覧
効果的な広告でターゲットとする買主を引き付けます。内覧の際は物件の良い点を強調し、疑問には正直に答えましょう。売主のやるべきこととして、大きいことは、内覧の際に物件を見せる準備を期間中は常に整えておくことです。いつ購入希望者が内覧を希望してきても受け入れられる準備をしておきましょう。
また、仲介業者は魅力的な広告の作成と実施、内覧の手配をする義務があります。スムーズな運営が進んでいるか、進捗を確認しながら進めると良いでしょう。
必要書類には、物件情報の概要説明書が含まれます。費用は、広告媒体によって変動しますが、インターネット広告がコストパフォーマンスに優れています。注意点は、広告内容が物件の実状を正確に反映していることが大切です。
ステップ5. オファーと交渉
買主からのオファーがあれば、価格や条件について交渉に入ります。この段階で法律的なアドバイスが必要になることもあります。一文が92文字と規定の66文字を超えており、読みにくくなっています。「独断で交渉に乗ると、想定外に低い価格を提示されたり、支払期間を延ばされたりする可能性があります。」のように、より簡潔な表現に修正してください。売主は、仲介業者と相談し、オファーへの対応を決定すると良いでしょう。仲介業者は、売主の代理として買主との交渉を行う義務があります。
必要書類は、売買契約書や重要事項説明書です。費用は、交渉によるもので、特に法律相談には弁護士費用が発生することがあります。注意点としては、相続人全員の合意が必要な場合があるため、事前に話し合いを行うことが重要です。
ステップ6. 契約
売買契約の締結時には、物件の引き渡し条件、支払い条件などが詳細に定められます。売主側もしっかり契約内容を確認し、質問や問題があれば、すぐに専門の方に相談してください。そして、全て合意の上で署名するようにしましょう。仲介業者は契約書の作成、説明、および契約の仲介の役割があります。
必要書類は、売買契約書や公正証書、収入印紙などです。費用としては、契約時に手付金が発生することが多いです。注意点としては、契約内容をしっかりと理解し、不明点は契約前に解消しておくことが大切です。
ステップ7. 決済と引き渡し
最終的に決済を行い、物件を引き渡します。この段階で残金の支払いと鍵の受け渡しが行われます。売主の責務は、決済を完了し、物件の鍵を引き渡しを行うことです。そして、仲介業者は決済プロセスの管理と引き渡しの調整を行います。
必要書類は、決済に関わる領収書や物件の鍵などです。費用は、登記費用や引越し費用が考えられます。注意点は、決済日までにすべての準備が整っていることを確認することが重要です。
不動産買取で売る流れ
不動産買取で売る流れの特徴として、 買取業者が直接購入するため、短期間での売却が可能な点が挙げられます。また、交渉と契約がスムーズに行えば、即座に現金を手にすることができます。物件の修繕や内覧の必要がないため、売主としても掃除の時間や内覧の時間を取る必要がなく、手間が少ないことも特徴のひとつです。
不動産買取は、現金化を急いでいる人、手間をかけずに確実に売却を完了させたい人、物件の状態に自信がない人に向いています。以下が不動産買取で売る流れをステップ分けしたものになります。
- 買取業者の選定: 複数の不動産買取業者に相談し、見積もりを取得します。
- 買取価格の交渉: 買取業者が提示する価格を基に交渉を行い、合意に至ります。
- 契約: 買取価格と条件に同意したら、買取契約を締結します。
- 決済: 契約に基づいて決済を行い、すぐに現金を受け取ります。
- 物件の引き渡し: 契約した日に合わせて、物件を買取業者に引き渡します。
ステップ1. 買取業者の選定
売主は、買取業者を選ぶ際に、査定の正確性、取引の速さ、過去の買取実績、顧客からの評価などを考慮する必要があります。業者選定は、不動産の価値を最大化するための重要なステップです。売主が用意すべき書類は委任状や身分証明書、物件の登記情報などです。売主は複数の業者から見積もりを取り、最も好条件の業者を選定する責務があります。一方で、買取業者は正確な査定と買取プロセスの透明性を保証する責務があります。費用は発生しないことが一般的ですが、一部の業者が査定費用を請求する場合もあるため注意が必要です。
ステップ2. 買取価格の交渉
買取価格の交渉では、売主は物件の適正な市場価値を理解し、実際の物件状態や市場動向を踏まえたうえで、適正価格での交渉を行う必要があります。必要書類としては、物件の登記簿謄本や固定資産税評価証明書、設備やリフォームの履歴書類などが挙げられます。費用としては、通常、売主が負担するものはありませんが、専門の評価を依頼する場合はその費用が発生する可能性があります。売主は価格交渉を通じて最終的な合意を形成する責務があり、買取業者は市場データに基づいた合理的な価格提案の責務があります。
ステップ3. 契約
契約プロセスでは、売主と買取業者との間で合意に達した契約条件を明文化し、双方の合意のもとで契約書に署名します。契約書作成には、両者の合意が形成された後、具体的な契約条件を明記することが重要です。売主が用意すべき書類には契約書、重要事項説明書、身分証明書などが含まれ、契約時にはこれらの書類に基づいて契約が結ばれます。費用としては、売主が負担するものは通常ありませんが、登記に関連する費用が後に発生することがあります。売主は契約内容を完全に理解し、合意することが求められ、買取業者は契約内容を正確に説明し、法的な側面での支援を行う責務があります。
ステップ4. 決済
決済プロセスでは、売主は買取価格の支払いを受け取り、不動産の所有権を買取業者に移転します。この段階での必要書類は、決済関連の領収書、所有権移転登記の書類、および売主の銀行口座情報です。通常、買取価格の支払いに関連する費用は買取業者が負担しますが、登記に関する費用は地域やケースによって異なり、売主が一部または全部を負担することもあります。売主は適切な書類を用意し、決済に臨む責務があり、買取業者は支払いを行い、必要な法的手続きを完了させる責務があります。
ステップ5. 物件の引き渡し
物件の引き渡し段階で、売主は物件を空にし、必要なすべての鍵や関連書類を買取業者に渡します。この時点での売主が用意すべき書類には、保証書、取扱説明書、物件の鍵などがあります。引き渡しに伴う費用としては、売主が引越し費用を負担することが一般的です。売主は物件を適切な状態で引き渡す責務があり、買取業者は引き渡しを受け、物件の最終確認を行う責務があります。
親の死後、実家を処分するために必要な書類
親の死後に実家を処分する際には、複数の必要書類があり、それぞれが異なるタイミングで必要になります。以下は、基本情報として必要な書類についての概要です。
- 登記簿謄本:この書類は、不動産の正式な所有者が誰であるかを証明するものです。売買契約を結ぶ前や買取業者に不動産を査定してもらう際に必要になります。登記簿謄本は、最寄りの法務局またはオンラインで法務局の登記情報提供サービスを利用して取得できます。
- 固定資産税評価証明書:この書類は、不動産の固定資産税の評価額を示し、物件の価値を示す一つの指標となります。買取価格の交渉時に重要となるため、査定時や買取業者との価格交渉前に準備する必要があります。この書類は、物件が所在する市区町村の役場や税務署で発行を依頼できます。
- 相続登記済証明書:親名義の不動産を子どもが相続する場合には、相続登記が必要です。売却や買取に先立って、相続が発生したことを証明し、正式な所有者であることを示すためにこの書類が求められます。相続登記は法務局で行い、済証明書も同局で取得可能です。
- 住民票の除票:故人の住民票の除票は、相続関係を証明するために必要です。相続人全員の同意が必要な場合や、相続登記をする際に必要になります。この除票は、故人が最後に住民登録されていた市区町村の役場で取得できます。
- 遺産分割協議書:相続人が複数いる場合、誰がどの財産を相続するかを定める遺産分割協議書が必要です。不動産売却の際、売主が相続人全員の同意を得ていることを示すために必要となります。この書類は、相続人が自身で作成するか、または弁護士等の専門家に依頼して作成します。
これらの書類は、不動産売却や買取の正当性を確保し、取引をスムーズに進めるために欠かせないものです。不動産取引においては、書類が不備な場合には契約が無効になるリスクがあるため、事前にしっかりと準備をすることが重要です。また、これらの書類の取得には時間がかかる場合が多いため、早めに手続きを進めることをお勧めします。
必要な書類は不動産の種類や状況によって異なります。そこで、必要書類を簡単にチェックしましょう!
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