物件を新築してマンション経営を始めることを検討している場合、マンションの建築費の推移が気になる方も多いでしょう。
マンション建築費の動向を把握しておくことで、最適な建築時期の目安を調べることも可能になります。
そこで本記事では、マンション建築費の推移を5つのデータから解説し、今後の動向やマンション建築費の内訳についてご紹介します。
マンション建築費の推移
マンションの建築費の動向を調べる際には、人件費や資材価格、坪単価の推移が参考となります。
次の5つの指数・データは、マンション建築費の推移を把握するのに役立つものです。
- 建設工事費デフレーター
- 建築費指数
- 建築費の坪単価
- 労務単価
- 建設資材価格
以下、それぞれ詳しく解説します。
建設工事費デフレーターから見るマンション建築費の推移
国土交通省が発表する「建設工事費デフレーター」によれば、鉄筋鉄骨コンクリート造の建築工事費の推移は、以下のような数値が発表されています。
年度 | 指数 |
---|---|
2012年度 | 94.3 |
2013年度 | 96.6 |
2014年度 | 99.5 |
2015年度 | 100.0 |
2016年度 | 99.9 |
2017年度 | 102.0 |
2018年度 | 105.4 |
2019年度(暫定) | 107.7 |
2020年度(暫定) | 107.4 |
2021年度(暫定) | 112.5 |
建設工事費デフレーターは、名目上の建設工事費用にさまざまな物価指数を勘案して算出される、実質的な建設工事費用の指標です。
これを参照することで、基準年度(2015年度)と比較して工事費がどれだけ増減しているかを把握することができます。
2022年に発表された上記のデータによれば、たとえば、2021年度は2015年度と比較して12.5%増加、2021年度の月別のデータ(鉄筋鉄骨コンクリート造)を見ると、下記の通りです。
年月 | 指数 |
---|---|
2021年4月 | 109.0 |
2021年5月 | 109.1 |
2021年6月 | 109.6 |
2021年7月 | 110.3 |
2021年8月 | 111.4 |
2021年9月 | 112.0 |
2021年10月 | 113.1 |
2021年11月 | 114.4 |
2021年12月 | 113.7 |
2022年1月 | 114.6 |
2022年2月 | 115.5 |
2022年3月 | 117.6 |
2021年度は一貫して上昇傾向にあることがわかるため、2022年度以降もマンション建築費は増加することが考えられます。
建築費指数から見るマンション建築費の推移
一般財団法人建設物価調査会が公表している「建築費指数」によれば、2011年を基準としたマンション建築費の動向は、2022年5月時点で下記のグラフの通りとなっています。
引用:建築費指数(2011年基準)|一般財団法人 建設物価調査会
建築費指数とは、同会が発表する工事費・資材価格・労務費などを踏まえて作成されたデータです。
2022年5月の指数では、鉄筋コンクリート造・鉄骨造・木造のいずれの構造でも、工事原価が上昇している結果が得られました。
こちらのデータでも、2021年以降の建築費指数は大きく上昇していることがわかります。
建築費の坪単価から見るマンション建築費の推移
マンションの建築費は、延べ床面積に坪単価を掛けることで大まかな目安が計算可能です。
全国平均のマンション建築費の坪単価は、国土交通省による「建築着工統計調査」にて公表されています。
鉄筋コンクリート造かつ賃貸マンションの建築費の坪単価は、過去11年間で以下のように推移しています。
西暦 | 坪単価(万円) |
---|---|
2011年 | 57.8 |
2012年 | 58.3 |
2013年 | 60.7 |
2014年 | 66.3 |
2015年 | 70.8 |
2016年 | 72.2 |
2017年 | 71.8 |
2018年 | 74.8 |
2019年 | 78.6 |
2020年 | 82.0 |
2021年 | 83.8 |
全国平均の坪単価も一貫して上昇傾向にあり、東京など人件費が高い地域では坪単価が100万円を超えるケースもあります。
ただし、建築費の坪単価は構造や地域ごとの差が大きいため、正確な坪単価はハウスメーカーからの見積もりで確認すると安心です。
労務単価から見るマンション建築費の推移
マンションの建築費では、職人や重機オペレーターなどの人件費が大きな割合を占めています。
しかし業界の人手不足や高齢化により、人件費が高騰していることが建築費にも大きく影響しています。
たとえば国土交通省が発表した公共工事の労務単価の推移は、以下の通りです。
適用期 | 単価(日額換算値) |
---|---|
2013年度 | 15,175円 |
2014年2月 | 16,190円 |
2015年2月 | 16,678円 |
2016年2月 | 17,704円 |
2017年3月 | 18,078円 |
2018年3月 | 18,632円 |
2019年2月 | 19,362円 |
2020年3月 | 20,214円 |
2021年3月 | 20,409円 |
2022年3月 | 21,084円 |
参考:令和4年3月から適用する公共工事設計労務単価について|国土交通省
2013年度の労務単価と比較すると、2022年3月の労務単価は約40%増加している計算です。
民間事業の人件費も同様に推移することが想定されるため、マンション建築費における人件費は今後も上昇傾向にあると言えるでしょう。
建設資材価格から見るマンション建築費の推移
人件費と同様にマンションの建築費を大きく左右するのが、木材やコンクリートなどの建設資材の価格です。
一般社団法人日本建設業連合会が発表した「建設業ハンドブック2021」のデータによれば、建設資材価格は下記のように推移しているとされています。
(引用:建設業ハンドブック 2021|一般社団法人日本建設業連合会)
このデータを参照すると、主に「鉄鋼」「木材・木製品」の2つの項目で、2020年後半から大きく上昇していることがわかります。
これらは後述する「ウッドショック」「アイアンショック」とも呼ばれている傾向で、マンション建築費に大きな影響を及ぼしています。
マンション経営を始める可能性が出てきたら、複数の企業にプランを提案してもらうのがおすすめです。
なぜなら、マンションの建築費の見積もりや賃料設定など経営プランによって収益が1,000万円以上変わることもあるからです。
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マンション建築費は今後も高騰し続ける
ここまで建築費の推移に関するデータをご紹介していきましたが、マンションの建築にかかるコストは今後も高騰し続ける見通しです。
理由は、主に以下の3つです。
- 世界的な資材需要の拡大
長期化するロシアウクライナ戦争
人材不足の深刻化
建材価格も人件費も高騰し続ける見通しであるため、建築費の上昇傾向に歯止めが効かない状況が数年は続くと予測されています。
この章では、建築費の高騰が続く理由について詳しく解説していきます。
理由①世界的な資材需要の拡大
コロナウィルス禍以降、世界的に住宅需要が増加し、住宅や住宅設備に用いられる木材および鋼材の価格が高騰しました。
これらはウッドショック、アイアンショックと呼ばれています。
建築資材の原料である木材および鋼材は、多くを海外から輸入しています。そのため建材価格は、国内だけでなく世界的な需給の影響を受けています。
世界経済は成長し続けており、特にインドや中国、インドネシアなどの人口の多い国の経済成長率の伸びは著しいです。今後も世界的な住宅需要は伸び続けることが予測されるため、建築用資材の価格は上昇傾向を維持するでしょう。
特に鋼材はほとんどを輸入に頼っているため、世界的に需給がひっ迫すると、価格高騰の影響を大きく受けます。
なお、木造建築の需要の高まりも相まって、国産の木材の供給量は増加傾向にあります。しかしながら、依然として国内の需要を満たしきることはできていません。
- 木材価格の高騰はやや落ち着きを見せ始めていますが、長期的には上昇し続けていくでしょう。
理由②長期化するロシア・ウクライナ戦争
2022年にロシアのウクライナへの軍事侵攻が始まって以来、欧米諸国や日本はロシアに対する経済制裁の一環として、輸入の制限を行っています。
日本がロシアからの輸入を禁止している品目の中には、住宅資材にも使われる単板や木材チップ、丸太などが含まれています。単板のロシアへの輸入依存度は60%に上っていたため、輸入禁止措置による価格への影響は大きなものとなっています。
また、ロシアから各国への木材輸出の減少によって、世界的な木材の供給量が減少していることも、木材価格の高騰を招いています。
戦争が長期化して先の見通しも立たない状況であるため、木材供給の低下による価格の上昇傾向は今後も続くでしょう。
理由③人材不足の深刻化
現在、建築業界では人材不足が深刻化しています。
理由の1つは、工事を行う職人の高齢化です。
以下は、建設業に携わる職人の数と年齢構成をまとめたグラフです。
(引用:建設業ハンドブック 2021|一般社団法人日本建設業連合会)
(引用:建設業ハンドブック 2021|一般社団法人日本建設業連合会)
以上の2つのグラフから、建設業全体で職人の数が徐々に減少しているだけでなく、29歳以下の割合が少なく、55歳以上の割合が多くなっていることがわかります。
つまり、今後数年以内に人材不足が更に深刻化していくことが懸念されます。
また、「働き方改革」による時間外労働の上限規制が、建設業界でも2024年から適用されるようになります。建設業界に対しては2019年の施行から5年間猶予されていましたが、2024年の4月からは建設業でも法定労働時間の超過が罰則の対象となります。これは「建設業界の2024年問題」と言われていて、企業が労働力を確保するためのコストは更に増加していくでしょう。
労働環境改善のための制度ではありますが、建築費の観点からすると人件費の上昇傾向は今後も続くことが見込まれます。
マンション建築費の内訳と計算方法とは?
最後に、マンション経営の基礎知識として、建築費の内訳と計算方法について解説します。
マンション建築費の内訳
マンションの建築費の内訳としては、以下の3種類の費用項目があります。
- 本体工事費
- 付帯工事費
- 諸費用
本体工事費はマンションの建物自体を建築するための費用で、躯体工事・仕上げ工事・設備工事のための費用が含まれます。
マンションの敷地内の外構やライフラインの引き込み工事は、付帯工事費として計上されます。
諸費用には、税金・保険料・ローン手数料などの費用が計上され、ローンに組み込めず現金で支払う必要がある点に注意が必要です。
マンション建築費は坪単価・延べ床面積で決まる
マンションの建築費を大きく左右する本体工事費は、前述の通り、「坪単価 × 延べ床面積」の計算式で概算することが可能です。
たとえば、坪単価100万円、延べ床面積が200坪の場合には、建築費の目安は2億円となります。
ここでの注意点は、マンションの土地の広さや建築面積(建坪)ではなく、建物全体の「延べ床面積」を掛けることです。
そのため、階数が多く規模が大きなマンションになるほど、建築費は高額になる傾向にあります。
マンション建築費の坪単価を左右する要素
マンションの建築費を大きく左右する要素として、構造の種類と地域が挙げられます。
マンションの構造ごとの坪単価は、鉄骨造が最も安く、次いで鉄筋コンクリート造(RC造)、最も高額になるのが鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)です。
ただし、性能の高いマンションは法定耐用年数が長く、収益性が向上しやすいメリットがあるため、坪単価の安さ以外の要素も考慮して構造を決める必要があります。
また、賃貸物件のニーズが多く人件費が高額となる都市部ほど、坪単価も高額になりやすく、郊外や地方のマンションでは建築費が割安になる傾向もあります。
それぞれの地域によって坪単価は大きく異なるため、最終的な建築費はハウスメーカーから提示される見積もりで確認すると良いでしょう。
建築費の高騰下でも高利回りのマンション経営を実現する方法
建築費が高騰していると、マンションを建てて経営を始めるための初期費用が膨らむため、利回りが下がってしまいます。
そのため、建築費が高騰していても高利回りのマンション経営を実現するためには、戦略を持ってマンションを建てる必要があります。
ニーズを捉えた設計でマンションを建てる
土地の所在するエリアに、どのような賃貸需要があるかを見極めた上で建てるマンションの間取りを設計しましょう。
「どのような入居者がこのエリアに住みたいと思っているのか」を捉えたマンションを建てられれば、入居率を安定させられるため、マンション経営を軌道に乗せやすくなります。
なお、そもそも賃貸需要がない・少ない地域や、既に賃貸物件が飽和してしまっている地域では、マンション経営以外の土地活用を検討するという選択肢もあります。
- まずは土地活用のプロに相談して、あなたの土地に最適な土地活用プランを提案してもらうのがおすすめです。
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付加価値の高い設備・仕様を導入する
マンションの建築費をできる限り抑えることは、利回りをよくする上で重要なポイントです。
しかし、入居者から人気の高い設備や仕様を導入することで、付加価値の高いマンションを建てることで、周辺の物件に対する競合性を高められます。
新築のマンションはそれだけで入居希望者からの人気が高いものでありますが、経年劣化は避けられません。年数が経ってからも入居者に選ばれるようなマンションづくりをすることで、長期にわたって安定したマンション経営をおこなえるでしょう。
- 外壁や内装を耐久性の高いもので仕上げることで、修繕にかかるコストを抑えられるという側面もあります。
竣工時期を2~3月に合わせる
マンションを完成させる竣工時期が2~3月に合うように建築のスケジュールを立てることも重要です。
いわゆる引っ越しシーズンである2~3月は、マンションの入居が見込める「かき入れ時」です。新しく竣工したマンションに、まとめて入居してもらうチャンスになります。
管理委託方式でのマンション経営は、部屋が空室であれば家賃収入が得られません。また家賃保証型のサブリースでも、新築後1~2ヶ月間は家賃保証の免責期間を設けていることが多いです。そのため、完成後すぐに部屋が埋まらない場合は、その分の家賃収入が得られなくなります。
空室期間をできる限り抑えて高い入居率を維持できれば、利回り(実質利回り)が高くなります。まずは竣工の時期を2~3月に合わせて、マンション経営のスタートダッシュを切りましょう。マンション建築について知りたい方は以下の記事もご覧ください。
活用事例:モダンなデザインの10階建て賃貸マンション
マンション建築費の推移を把握して建築時期の検討を
マンション建築費の推移を各種のデータで確認すると、長期的にマンション建築費は高額化する傾向にあります。
特に2021年以降はウッドショック・アイアンショックや金利上昇の影響を受け、建築費が増大しやすくなる時期といえます。
そのため物件を新築してマンション経営を始める場合には、建築時期を十分に検討して建築プランを作成することが大切です。
なお、ハウスメーカーや建築会社に建築時期の相談をしたい場合には、「イエウール 土地活用」もご利用ください。イエウールは、大手10社のハウスメーカーと提携し、土地や予算に合わせたマンションの建築プランを一括請求できるサービスです。登録・診断は無料のため、お気軽にご利用ください。