本記事では、なぜ空き家が国にとって問題となるのか?放置された空き家がもたらす問題とはなにか?また、空き家問題に対して国が取り組む対策とはどんなものなのか?などについてくわしく解説してきます。
- 空き家は保有し続けることにリスクが高い
- 税金もかかるので処分したほうがよい場合が多い
「まずは家を売る基礎知識を知りたい」という方は、こちらの記事をご覧ください。
社会問題化する「空き家」
そもそも日本の空き家とはどういった不動産のことを呼ぶのでしょうか。
平成26年に交付された「空家等対策の推進に関する特別措置法」によると、空き家とは、建築物、それに付随するものが居住または使用されていないものを指します。
つまり、誰も住んでいない、使っていない放置された物件のことです。売却中、賃貸募集中の物件は該当しません。
特定空き家の定義は下記のように明記されています。
- 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
- 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
ここ数年、「空き家問題」が取り沙汰され、ニュースなどでも目や耳にする機会が増えてきています。
この記事を読んでいる方のなかにも、ご両親の家を相続するなどして所有した空き家をそのまま放置している……という方がいらっしゃるかもしれません。
2015年に、空き家に関する新しい法律が施行されたことをご存知でしょうか?
空き家を放置し続けたままだと、いずれ多額の税金がかかってしまうリスクがあるので注意が必要です。
日本の空き家率
5年毎に行われ、最新では、平成30年(2018年)に行われた、「平成30年住宅・土地統計調査」(総務省統計局)では、総住宅数は約62,41万戸のうち、空き家数は、848万9千戸で、平成25年(2013年の)調査時と比較し、3.6%増加(約6,063万戸)、空き家率は13.6%増加(820万戸)という結果になりました。
管理が行き届いていない空き家は地域に防災上、衛生上、景観上などの観点からさまざまな悪影響を及ぼします。
今後予想されるさらなる空き家増加に向けて、有効的な対策が求められています。
データから見る空き家の現状
総務省統計局により全国の空き家の数を集計したデータ(空き家数の推移)を見ると、188年以降空き家数と空き家率、どちらも調査のたびに上昇していることがわかります。引用元:総務省統計局(空き家の現状ー空き家数の推移)
上図のとおり、1998年に合計394万戸だった空き家は、2018年には849万戸と約2.15倍に増えています。
全国空き家率ランキング
総務省統計局の平成30年住宅・土地統計調査から、どの都道府県が空き家の上昇率や下落率が高いのかをまとめると以下のとおりになります。上昇率ランキングTOP5
高知県、鹿児島県、和歌山県他6県で、空き家率が10%を超えています。また、最も空き家率が低いのは東京都の2.4%でした。全住宅の中で、「その他空き家」の全国平均は、5.6%という結果となりました。
順位 | 都道府県 | 空き家率 |
---|---|---|
1 | 高知県 | 12.7% |
2 | 鹿児島県 | 11.9% |
3 | 和歌山県 | 11.2% |
4 | 島根県 | 10.5% |
5 | 徳島県 | 10.3% |
引用元:総務省統計局 平成30年住宅・土地統計調査 調査結果
下落率ランキングTOP5
順位 | 都道府県 | 空き家率 |
---|---|---|
1 | 宮城県 | 9.1% |
2 | 沖縄県 | 9.8% |
3 | 山形県 | 10.1% |
4 | 埼玉県 | 10.6% |
5 | 神奈川県 | 10.6% |
なぜ、空き家が増え続けているの?
なぜこれほどに空き家が増加しているのでしょうか?その背景について考えてみましょう。
新設住宅着工戸数と滅失戸数の比較
ものごとには「需要」と「供給」がありますが、住宅もしかりです。
家庭を持ったり、引っ越しをしたりして新しく住まいを得ようとする人がいれば、それだけ新築の家が必要になるのは当然のこと。
現に、新設住宅着工戸数は年々上昇しています。
問題は、住宅のように大きなものは不要になったからといって容易に処分ができないという点にあります。
住まいの解体にはかなりの費用がかかりますし、取り壊して住宅のない土地だけになった場合は固定資産税が高くなってしまうという問題も……。
そういった事情から、新しい家が増える一方で古い住宅も空き家のまま残されてしまうというわけです。
年度によって差はありますが、昨今の新設着工戸数のデータから、古い住宅は壊されず、新しい住宅がつくられている現状を見てとることができます。
戸建ての空き家が増え続ける現状
日本の不動産市場の現状を簡単におさらいすると、全国的に空き家は増加し続けており、そのなかでも特に「一戸建ての空き家」の増加が目立っており、一戸建て空き家の増加が深刻化しています。
H26年度 | H27年度 | H28年度 | H29年度 | H30年度 | R元年度 | R2年度 | R3年度 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
総戸数 | 880 | 921 | 974 | 946 | 953 | 884 | 812 | 866 |
持家系 | 514 | 531 | 541 | 531 | 555 | 543 | 502 | 530 |
借家系 | 366 | 390 | 433 | 416 | 398 | 341 | 310 | 336 |
※単位:千戸
※令和4年度 住宅経済関連データ – 国土交通省より作成
新築の過剰供給と中古住宅の不人気
新しい住宅を求めるときに、「新築ではなく中古住宅を購入する人が増えれば空き家は問題にならないのでは?」と思うかもしれませんが、中古住宅の人気はあまり高くありません。そうした背景もあって、新築住宅は毎年建築されています。
中古住宅をリフォーム・リノベーションするにもそれなりの資金が必要になります。
新しくキレイなものが欲しくなるという消費者心理からしても、中古市場の制度的な改革がないかぎり、新築が過剰に供給される現状は今後も続くでしょう。
高齢化の弊害
空き家が増加している背景には、「少子高齢化」や「地方の人口減少」の影響もあります。今後高齢化はますます顕著になり、高齢者のみの世帯や高齢者の単身世帯が増えていくでしょう。
地方から都会などへ出て行った子どもの多くが、実家には戻って来ないという現状もあります。
主がいなくなった住宅が空き家になって残ってしまい、相続した子どもなども遠方に住んでいるため使われなくなる――。
こうした流れにより、とくに戸建ての空き家率が上昇していると考えられます。
空き家の中でも放置された空き家が社会問題に
空き家であっても、比較的キレイな状態で新しい住人が見込める場合や、定期的に管理する人がいる場合などは今のところ問題にはなりません。問題となるのは、管理できなくなって放置された空き家です。
空き家が放置されると、周辺の景観を乱したり、害獣の発生源になったりするなど、周辺住民への悪影響が考えられます。
また、犯罪の温床になるという懸念も出てきます
豪雪地帯で屋根に積もった雪の重みで空き家となっていた住宅が倒壊したというニュースもありましたが、老朽化し放置されてしまうことで住宅は倒壊する危険性が増します。
とくに、地震などの災害が起こった際には避難経路を塞いでしまう可能性も高く、住民の生命の安全を守るという立場からも問題視されているのです。
こういったリスクのある空き家を「特定空き家」と呼び、自治体から「特定空き家」の指定を受けると、ただちに対策を取ったり解体をしたりする必要が出てきます。
_家の種類は4種類
空き家問題と聞くと、ボロ屋敷やゴミ屋敷といわれるような家を想像する方が多いのではないでしょうか。しかし、空き家の定義では別荘など年に数回しか人が利用しない住宅や、新築でも賃貸物件のために部屋が空いた状態の住宅も、「空き家」と分類されます。
それでは、空き家の種類にどんなものがあるのか、見てみましょう。
まず、空き家には4つの種類があります。
- 賃貸用住宅
- 売却用住宅
- 二次的住宅
- その他の住宅
なお、「平成30年住宅・土地統計調査」によると、種類ごとの割合は以下の通りです。
空き家の種類 | 空き家数(万戸) | 割合(%) |
---|---|---|
一戸建て | 431 | 50.9 |
売却用住宅 | 29 | 4.5 |
二次的住宅 | 38 | 3.5 |
その他の住宅 | 347 | 41.1 |
賃貸用住宅
賃貸用住宅は新築・中古を問わず賃貸のために空き家になっている住宅です。空き家のなかでも過半数の50.9%を賃貸用住宅が占めています。
賃貸用住宅は、具体的には人に貸すように建てられたマンションやアパート、戸建てのうち入居者のいないものを指します。
アパートやマンションのすべてが空室の物件というわけではなく、1室空いていればその部屋は空き家としてカウントされます。
売却用住宅
売却用住宅は新築・中古を問わず売却のために空き家になっている住宅です。不動産の売却には「住みながら売却する方法」と「空き家にしてから売却する方法」がありますが、基本的には空き家にしてから売却したほうがスムーズに売却しやすくなります。
ただし、家は売りに出してもすぐに買い手が見つかるかとは限らず、この状態の空き家を売却用住宅としています。
なお、空き家全体のうち4.5%が売却用住宅です。
「相続したが空き家になっているから売却を考えたい」という方は、売却に強い不動産会社に依頼しましょう。
手間なく複数の不動産会社に価格査定を依頼できる一括査定サイトを活用すれば、遠方にある実家の売却などでも手厚くサポートしてくれる不動産会社と出会えるでしょう。
二次的住宅
二次的住宅は別荘やその他(残業で遅くなったときの寝とまりなど)のように利用されている住宅(セカンドハウス)です。
賃貸用住宅や売却用住宅はつねに人が住んでいない状態ですが、二次的住宅には人が生活しているときと生活していないときがあります。
空き家全体のうち、二次的住宅は3.5%を占めます。
その他の住宅
上記3つ以外で、なんらかの理由により長期不在状態となっている住宅です。空き家全体のうち、その他の住宅が占める割合は41.1%です。
都市部が抱える空き家問題
空き家問題というと地方だけの問題にようにとらえがちですが、上記分類をあらためて見てみると都市部にも空き家が一定数あり、今後増えていく可能性が高いことが容易に想像できるでしょう。都市部で空き家化が進む理由としては、以下のような背景があります。
- 都市部の借地問題
- 地価の下落
- 登記の問題
- 建物の老朽化
- 人口減少と高齢化
- 新築の供給過多と中古市場のバランス
- 相続の問題
- 税制的な問題
まず、都市部では地方と比べて借地利用が多く、権利関係が複雑な場合があり、そのことが原因で土地活用が進まず空き地となっているケースがあります。
次に、都市部とはいえ地価の上がっているところ下がっているところがあり、とくに地価が下がっているところでは土地の売買がおこなわれず放置されてしまいます。
他にも家の所有者が死亡して本来ならば相続がおこなわれるところ、手続きがされず不明となっているケースがあります。
新築の供給過多と中古市場のバランス
そしてやはり、都心部だけでなく、地方でも空き家が増加し続けています。地方で空き家が急増する理由としては、核家族化の進展などさまざまな要因が挙げられます。
とくに地方に顕著な傾向として挙げられるのが「物価」です。
物価が安いために家を新築することが都市部に比べて金銭的に容易であり、まだ十分に使える空き家を活用するより住宅の新築を選択することが多いと考えられます。
日本においては新築住宅への人気が高く、一方で中古住宅はまだまだ流通量が少ないのが現状です。
まわりを見回してみても、「マイホームを買った」というほとんどの方が中古住宅ではなく新築住宅なのではないでしょうか?
多くの不動産が存在しているにもかかわらず新築住宅が選ばれる理由は、もちろん立地の問題などもありますが、日本人の「新築に対する思いの強さ」が背景にあるのかもしれません。
また、戦後の日本が復興していくなかで国策として住宅の新築をあと押しする施策がとられていたことも原因の1つと言えます。
現在でも、新築では住宅ローン控除や住まい給付金などの優遇策がとられています。
相続問題
空き家が増える理由の一つに、相続問題があります。
核家族化の進展により「親は親の家に、子は子の家に」という構図が当たり前になり、二世帯住宅や三世帯住宅は少しずつ珍しいものになっています。
昔は「親が死んだあとの家は長男が継ぐもの」でしたが、今では親が亡くなる頃には子はすでに自分の家を持っているケースが多く、相続したとしても住むわけではないが、かといって思い入れのある家なのですぐに解体したいとも思えない……というわけです。
また、相続問題にはもう一つの形があります。
それが、相続で親族間にトラブルが発生して「争続」になってしまうケース。
所有者が亡くなった家は相続人に相続されますが、相続人のうち誰が継ぐかについては、相続人間で話し合われます。
しかし、不動産は数人で割って所有するのが難しい資産で、この点から「争続」になってしまうことが少なくありません。
結果として相続人全員で家を共有することになった場合、将来その不動産を売却するときには共有者全員の同意が必要となってしまいます。
こうして「売却するのが難しい家」となり、空き家が放置されてしまうのです。
税制的な問題
空き家には、固定資産税の問題もあります。
空き家は使わなくても所有しているだけで毎年固定資産税を支払う必要があるのですが、固定資産税には「土地に建物が建っていると土地の面積200㎡までの分について6分の1に減額される」という特例があります。
つまり、空き家を解体して更地にするとこの特例の対象外になり、一気に固定資産税の負担額が6倍増になってしまうのです。
なお、2015年に施行された空き家対策特別措置法により「特定空き家」に指定されると、上記特例の適用を受けられなくなりました。
空き家対策特別土地法に関しては、後ほどくわしく解説します。
所有している空き家が大きな問題となる前に、売却してしまった方が良いでしょう。空き家を売却するのなら、信頼できる不動産会社に任せる必要があります。
また、都市計画法における市街化区域内であれば固定資産税に加えて都市計画税を支払う必要があります。
これら2つの税金は、市町村が定める「固定資産税評価額」に基づいて税額が決められ、その不動産の1月1日時点の所有者に対して請求されます。
不動産には固定資産税が課され、また市街化区域内であれば都市計画税が課されますが、これら2つの税金は「住宅用地の特例」を受ける形で優遇を受けています。
住宅用地の特例で受けられる優遇とは
具体的には、以下のような優遇を受けられます。
区分 | 固定資産税 | 都市計画税 | |
---|---|---|---|
小規模住宅用地 | 住宅1戸につき200㎡まで | 1/6 | 1/3 |
一般住宅用地 | 住宅1戸につき200㎡を超えた部分 | 1/3 | 2/3 |
この特例の適用を受けるための要件は、「住宅が建っていること」です。
つまり、空き家を解体して更地にしてしまうと、適用を受けるための要件から外れて固定資産税が一気に6倍にまでなってしまう可能性があるのです。
そのような事態になってしまう前に売却してしまうのが賢明です。
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空き家が抱えるリスク
では実際、空き家にはどのようなリスクが潜んでいるのでしょうか?
一般的に空き家問題は、外部不経済と機会損失を発生させます。
以下で解説していきます。
外部不経済
空き家による外部不経済には、大きく以下の3つが挙げられます。「外部不経済」は、取引の当事者ではない誰かに経済的負担や不利益がおよぶ状況を指す言葉です。
- 景観悪化など地域への悪影響
- 犯罪の温床となる
- 住宅の価値が下がる
地域への悪影響という側面からみると、雑草が伸びるなどして景観が悪化したり、老朽化した家屋が倒壊したり、不衛生な環境から悪臭が発生したりといった問題が発生します。
次に、犯罪の温床となるという側面から見ると、ホームレス・犯罪者などの不法侵入や不法占拠、粗大ゴミなどの不法投棄、放火の原因になるという問題があります。
そして人口が減少して住宅の需要が減っていくなか、空き家が増える一方で供給が減らないと住宅自体の価値が下がってしまうという問題もあります。
機会損失
建物が残っていながら解体もされず、利用もされないことで、その場にある土地と建物が有効に活用されない機会損失が発生します。「機会損失」とは、最適な意思決定をしないことによってより多くの利益を得られる機会を失うこと、またそれによって生じる損失のことです。
また、行政から見ると空き家の存続による住民税などの減少や空き家があることによる住宅施策の非効率化という問題にもなります。
複数社査定した?
査定をちゃんと行う上で注意したいのが査定依頼を出す数です。すでに査定依頼を出した、査定をしてもらったという方で査定依頼を1社にしか出していないという方はいらっしゃらないでしょうか。
実は、不動産会社の査定は1社に依頼しただけでは不十分。不動産会社の査定には明確なルールがないため、不動産会社によって査定結果が異なります。
つまり、1社の査定結果を見ただけでは、不動産の売却相場を正確に判断することはできず、安く売却してしまう恐れがあるということです。
まだ、1社にしか査定してもらっていない場合は3社以上の査定結果を比較できるように追加で査定をしてもらうと良いでしょう。
追加で査定依頼を出す際は一括査定サービスのイエウールを利用すると手間がかからずカンタン。一度の申込みで複数社に査定依頼ができ、24時間査定依頼を受け付けています。
査定依頼は平日も可能なので、査定後のスケジュールが大幅にズレる心配もありません。
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空き家問題の解決法にはなにがある?
ここまで空き家問題について解説してきました。
少子高齢化や核家族化が原因となっているなど、簡単には解決できないことが問題となっていることもありますが、一方で解決できる問題もあります。
空き家対策特別措置法とは
国は増え続ける空き家問題に対処するため、2014年に空き家対策特別措置法を制定(2015年に施行)しました。空き家対策特別措置法では倒壊の危険や周辺環境の悪化につながる可能性のある空き家を「特定空き家」とします。
特定空き家に指定されると税金の優遇を受けられなくなり、所有者は空き家を所有し続けることの意味がなくなります。
なお、市町村は特定空き家の可能性がある空き家については、所有者に対して改善するよう指導・勧告し、所有者がこれに従わない場合は改善命令が下され、それでも従わないと特定空き家に指定されます。
特定空き家に指定されると、行政が撤去などの強制対処をとることもできるようになります。
- 管理されていない空き家を「特定空家」に指定
- 特定空家に対して罰金や行政代執行を行うことが可能
- 行政代執行で空き家が解体などされた場合、所有者は費用を負担しなければならない
空き家等対策計画の策定状況
国土交通省のホームページには、空き家等対策計画の策定状況が記載されています。空き家等対策予定計画の策定状況
市町村数 | 比率 | |
---|---|---|
既に策定済み | 774 | 45% |
策定予定あり | 753 | 43% |
平成30年度 | 327 | 19% |
平成31年度 | 38 | 2% |
時期未定 | 388 | 22% |
策定予定なし | 214 | 12% |
合計 | 1741 | 100% |
引用元: 空室等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について
「策定済み」や「策定予定」を含めると全体の90%近くになるように、多くの市町村が空き家対策に積極的であることがわかります。
空き家の適正管理とは
空き家は適正に管理されないとさまざまな問題を引き起こす可能性がありますが、この管理責任は所有者にあります。空室等対策特別措置法では、適正管理しない所有者に対して市町村が行政指導や命令を出すことができるようになりました。
郵送による行政指導があった場合はすぐに役所の担当者へ連絡し、改善をおこなう意思があることを伝える必要があります。
行政からのもっとも厳しい通告である「改善の命令」に背いた場合は、50万円以下の罰金が科されますので覚えておきましょう。
デッドラインは「30%」
平成25年の調査では日本の空き家率は13.5%ですが、空き家率が30%を超えると財政破綻が懸念されます。2007年に北海道夕張市が財政破綻しましたが、このときの空き家率は33%だったそうです。
また、アメリカで2013年に財政破綻したミシガン州デトロイト市は、こちらも空き家率が29.3%で30%に迫る数値でした。
今後、空き家率が上昇し続ければ財政破綻する自治体も出てくるでしょう。
そして日本全体の空き家率が進めば、自治体どころではなく日本全体が財政破綻する可能性すらあるのです。
空き家バンクの活用
空き家問題の解決策として注目されているのが「空き家バンク」です。空き家バンクは空き家の所有者と空き家の利用希望者をマッチングする仕組みで、自治体や自治体から委任を受けた団体によって運営されています。
一部の空き家はこれまでも不動産会社によって売却されていますが、営利目的としては実入りが少ないため、あまり積極的でないケースも見られました。
一方で空き家バンクは、自治体が運営する仕組みなので営利を目的としていません。
また利用者側も空き家の活用を検討している方が多く、より空き家の活用に向けた取り組みがしやすくなっています。
空き家管理サービスの利用
空き家の適正管理については、空き家管理サービスの利用も考えてみるとよいでしょう。空き家管理サービスを展開するNPO法人空家・空地管理センターでは、毎月1回外部から建物を目視点検し、写真つきの報告をおこなうサービスが月額100円で受けられるなど、空き家に関するさまざまな悩みを解決するためのサービスを展開しています。
民間企業でも空き家管理サービスを展開している企業があるので、興味があれば相談してみましょう。
空き家の売却
空き家は所有している限り固定資産税を支払わなければなりません。適切に管理されないまま放置されるとさまざまなリスクが発生しますし、特定空き家に指定されると固定資産税が6倍になる可能性があることは先にお伝えしたとおりです。
一方で、空き家を売却してしまえば固定資産税を支払う必要はありませんし、当然ながら費用がかかる管理も不要となります。
空き家の売却には「不動産会社を頼って売却する方法」と「空き家バンクを活用して売却する方法」があるので、両方を検討してみるとよいでしょう。
どうしても売却が難しいようであれば、空き家バンクを活用して0円で売却するようなケースも見られます。
これは、買い手がつきづらい物件に関して、主に移住希望者に対して0円で家を売却(≒提供)するもの。
お金は得られない代わりに、空き家を保有することのデメリットからは解放されます。
不動産会社を頼って売却する場合、どこに依頼すべきか迷ってしまいますよね?
そういうときは、一括査定サイトが便利です。
物件データを入力するだけで手軽に複数の会社にまとめて価格査定依頼をすることができるので、忙しくて不動産屋を検索する時間がとれない人でも、簡単に売却活動をスタートすることができます。
空き家対策はいろいろある
空き家対策にはいろいろな方法があります。以下の表を参考にしてみてください。空き家の管理・有効活用なら、「リフォームをして賃貸物件にする」という方法があります。
家賃収入は大きなメリットであり、資産運用を通して不動産の価値も高まることでしょう。
それに対して、ハードルが高いのが解体です。
固定資産税の優遇措置が受けられなくなり、解体費用がかかります。
解体費用以外にも、工事の際に破片や砂ボコリがまわりに飛散するのを防ぐ処置、防音対策、廃材や不要家具・家電の処分などが別途かかり、解体に伴う費用は決して少なくありません。
解体費用を補助する制度を活用すべし
空き家対策の一環として、全国の各自治体によって解体費用が助成される制度があります。東京都の場合、平成30年4月時点で27の自治体で助成制度が確認できます。
こうした助成金・補助金に関する問い合わせや、解体業者とのマッチングができる「解体サポート」というWebサイトがあるので、解体を検討している方は利用してみましょう。
まとめ
深刻化する日本の空き家問題についてお伝えしてきました。空き家率のデータを見ると、財政破綻が懸念される30%のデッドラインに迫っていることが如実にわかるかと思います。
歯止めがきかない空き家問題に対して国や自治体もさまざまな取り組みをおこなっていますが、数年後には空き家率上昇がストップしているのかどうかはわかりません。
財産である不動産を空き家状態のまま放置し、「負の遺産」としてしまっていませんか?
空き家を持っている方、これから空き家を持つ可能性がある方は、「どうすれば一番得なのか?」をしっかり考え、使い道についてしっかり向き合っていく必要があるでしょう。
まとめ:放置空き家は国が抱える「負の遺産」!所有者は早急に対策を
- 空き家は全国的に年々増え続けている。
- 新築の供給過多と中古住宅市場の低迷が空き家増加の要因となっている。
- 空き家には4種類あり、賃貸住宅用空き家が5割を超える。
- 空き家対策特別措置法により、特定空き家所有者に対して行政指導が入る。通告を無視すると50万円以下の罰金が科される。
- 平成25年調査での全国の空き家率は13.5%だが、デッドラインは30%と言われている。
- 売却・賃貸活用・解体など、所有する空き家の使い道を要検討したうえで対策を講じる必要がある。