両親が福祉施設に入居したり、亡くなって相続したりした場合など、実家を空き家にして土地を遊ばせてしまうケースも多くなります。
家族や親戚も住む予定がなく、空き家として放置する可能性が高い実家は、そのままでは固定資産税や維持・管理のコストが大きな負担となる可能性もあります。
そこで検討したいのが、実家の土地の売却・賃貸、または土地活用への転用です。
本記事では、実家の土地を放置した場合のデメリットや、実家の土地の処分方法・活用方法、おすすめの土地活用などについて解説します。
「まずは土地売却の基礎知識を知りたい」という方は、こちらの記事をご覧ください。
実家の土地を放置した場合のデメリット・注意点
実家の土地をそのまま放置した場合、固定資産税の負担や、維持・管理の手間が増え、ご自身の生活を圧迫してしまう可能性があります。
実家の土地を放置するデメリットは、主に以下の5つです。
- 建物がある場合「特定空家等」に指定されるリスクがある
- 空き家は相続税の計算で不利になる
- 毎年固定資産税が発生する
- 維持・管理のコストがかかる
- 近隣トラブルの原因になる
それぞれ詳しく解説します。
建物がある場合「特定空家等」に指定されるリスクがある
実家の土地に住宅が建っている場合、空き家の状態が続くと固定資産税が最大6倍になる可能性があります。
これは2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」で、「特定空家等」に指定された場合のペナルティです。
「特定空家等」とは、そのまま放置することで倒壊などの危険性があり、衛生的にも景観上でも悪影響を及ぼす空き家のことです。
「特定空家等」に指定されてしまうと、「住宅用地の特例措置」の対象から外れ、固定資産税が1/6になる特例が受けられなくなる可能性があります。
また、自治体からの「命令」に応じなければ、50万円以下の過料が科せられることもあります。
そのため誰も住まない実家は放置せず、売却・賃貸や土地活用などを検討すると良いでしょう。
空き家は相続税の計算で不利になる
誰も住まない実家は、相続税を計算する際にも不利になり、納税額が高額になる可能性があります。
相続税の計算では、被相続人(亡くなった方)と同居していた相続人が実家を相続する場合には、「小規模宅地等の特例」によって土地の評価額が80%減額される制度を受けられます。
ただしこの特例を受けるためには、被相続人との同居などの条件を満たすことが必要です。
空き家のまま放置していた場合には特例の対象外となるため、相続税の負担が大きくなるリスクがあります。
毎年固定資産税が発生する
実家の土地・建物を所有していると、毎年固定資産税の納税義務が発生します。
固定資産税の金額は土地や建物の価値によっても変動しますが、戸建てでは平均で年間10万円〜15万円が相場となっています。
仮に10年間実家を放置し続ければ、およそ100万円〜150万円の税負担が発生することとなります。
実家に住んでいない場合にも固定資産税は課されるうえ、前述した「特定空家等」に指定された場合には、最大で6倍の税額になる可能性も出てきます。
これらの税負担を軽減するためには、譲渡・売却して名義変更をしたり、賃貸物件として賃料収入を税金の支払いに充てたりするなどの工夫が必要です。
維持・管理のコストがかかる
実家の土地は、空き家が建っている場合にも更地の場合にも、定期的な維持・管理が必要です。
実家に住む人がいない場合、定期的に足を運んで建物をメンテナンスしたり、雑草や樹木を刈ったりする必要も出てくるでしょう。
実家が遠方にある場合には、地元の不動産会社や空き家管理サービスを利用することも可能ですが、委託費用が発生する点に注意が必要です。
近隣トラブルの原因になる
老朽化した空き家や草木が生い茂る土地を放置した場合、悪臭・害獣の発生や景観を損なうなどの理由で、近隣トラブルが発生する可能性もあります。
地震や台風などで倒壊し、近隣に被害を及ぼした場合には損害賠償を請求される可能性も否定できません。
実家を定期的にメンテナンスできる見込みがない場合には、売却や建物の解体などを検討することをおすすめします。
実家の土地はどうするべき?5つの方法を解説
実家の土地をどうするか迷った場合、売却・賃貸・土地活用の3つの方法が主な選択肢となります。
他にもご自身で住むために引っ越したり、寄付という形で無償譲渡する方法も考えられます。
ここでは以下の5つの方法について詳しく紹介しましょう。
- 土地を売却する
- 土地を賃貸に出す
- 土地活用で収益化を図る
- 土地に家を建てて住む
- 土地を近隣や法人に寄付する
一つずつ詳しく解説します。
土地を売却する
相続した実家の土地を売却する場合、「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」を利用できる可能性があります。
相続開始から3年目の年末までに売却することで、売却金額から3,000万円を控除し、税負担を軽減できる制度です。
控除の対象となるのは、相続開始直前まで被相続人が一人で暮らしていた住居に限られます。
そのため被相続人との同居が条件となる「小規模宅地等の特例」が利用できない場合にも検討すると良いでしょう。
ただし、郊外や地方の実家は買い手が見つからない可能性も高く、希望する売却金額で売れない可能性もある点に注意が必要です。
土地を賃貸に出す
戸建ての実家をそのまま賃貸に出したり、実家を解体した土地を借地として貸し出す方法もあります。
立地条件に恵まれている土地や、建物の状態が良好な実家の場合には、借り手も見つかりやすいでしょう。
また、ハウスメーカーやデベロッパーに対して借地として貸し出すことで、アパートを建てる資金がない場合などにも土地の賃料収入(地代)を得ることが可能です。
土地の上に住宅を建てれば「住宅用地の特例措置」の対象となり、固定資産税の負担を抑えられるメリットもあります。
土地活用で収益化を狙う
実家の土地にアパート・戸建てを建築したり、駐車場として整備したりすることで、土地活用による収益化を図ることもできます。
初期費用はかかりますが、ニーズのある立地であれば、収益性を見込めるアパート経営や戸建て賃貸とするほか、更地に戻して転売しやすい駐車場経営なども選択肢となるでしょう。
将来は実家の土地に家を建ててご自身が住む予定のある場合、資材置き場とすることなども選択肢の一つです。
土地に家を建てて住む
思い入れのある実家や土地を残したい場合には、ご自身や身内の方が引っ越してそのまま住み続けることがおすすめです。
相続税の計算上のメリットがある「小規模宅地等の特例」を利用できる家族の方が相続すれば、税負担も軽減できます。
築年数が経過している場合には、リフォーム・リノベーションや建て替えを検討しても良いでしょう。
遺産分割やリフォーム費用の負担などが解決され、家族や親戚が納得した上で住めるのであれば、理想的な選択肢となるのではないでしょうか。
土地を近隣や法人に寄付する
売却や賃貸が難しく、土地活用で収益化ができる見込みのない場合には、近隣や法人に寄付する選択肢もあります。
寄付先として自治体が思い浮かぶ方も多いかもしれませんが、特殊なケースを除いて自治体が土地の寄付を受け付けることは稀です。
そのため敷地が面している隣の土地の所有者に寄付したり、NPO法人や社団法人などの法人へ寄付する方が現実的な選択肢となるでしょう。
なお、寄付の際にも名義変更が必要になるほか、相手側に贈与税が発生する可能性があるため注意が必要です。
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実家の土地をどうするか迷った時のおすすめ活用方法3選
実家の土地活用で迷った場合におすすめなのは、以下の3つの活用方法です。
- 戸建て賃貸
- 駐車場・コインパーキング経営
- 資材置き場
それぞれの土地活用について、詳しく解説します。
戸建て賃貸
実家の建物をそのまま賃貸に出したり、古い実家を取り壊して新築の戸建てを建てたりすることで、戸建て賃貸経営を始める方法があります。
賃貸の戸建ては地域によっては希少性があるため、高い収益性を確保できる場合があります。
また、ファミリー層の入居者が集まることが多く、長期的に住み続けてもらえるため、入居してもらえれば広告・集客コストを抑えられるメリットもあるでしょう。
駐車場・コインパーキング経営
駐車場やコインパーキングは、更地のまま事業を始めることも可能なため、初期費用を抑えられる点がメリットです。
地域の駐車場ニーズを見極める必要がありますが、月極駐車場の契約者が集まれば、安定した固定収入も得られます。
立体駐車場を除けば、別の土地活用への転用や、売却を考えた際にも立ち退きを進めやすい点も魅力です。
資材置き場
資材置き場とは、建築会社や土木会社向けに、資材の保管所として貸し出す土地活用方法です。
こちらも更地のまま貸し出すことが可能で、初期費用がほとんどかからない点が最大のメリットです。
ご自身で住むかもしれない実家の土地や、資金が貯まったらアパート経営などの別の土地活用に転用したい場合に適しています。
実家の土地相続の流れと相続放棄の注意点
両親が亡くなり、実家の土地を相続で所有することとなった場合には、不動産の相続登記(名義変更)の手続きが必要となります。
また、相続放棄を検討する場合には申し立ての期限が設けられているため、速やかに判断しなければなりません。
ここでは実家の土地相続の流れと、相続放棄の注意点について紹介します。
詳しい実家相続の流れについては以下の記事をご覧ください。
相続発生から土地の登記までの流れ
実家を所有する両親が亡くなった場合、以下の流れで相続と相続登記を行います。
- 遺言書の確認
- 遺産分割協議を行う
- 相続登記(名義変更)をする
被相続人の遺言書が見つかった場合には、遺言書の通りに遺産を分割します。
そうでない場合には、法定相続人が全員参加する遺産分割協議を行い、実家の土地を含めた遺産の分割割合を話し合います。
協議の結果、ご自身が実家の土地を相続することが決まった際には、法務局で不動産の相続登記(名義変更)の手続きを行います。
なお、相続登記は2024年4月以降、不動産の取得を知った日から3年以内に行うことが義務付けられるため、相続後は速やかに相続登記を進めましょう。
相続放棄は3ヶ月の期限に注意
実家の土地を相続したくない場合には、遺産相続の権利を一切手放す相続放棄も選択肢となります。
相続放棄は、相続発生の事実を知った時から3ヶ月以内に、家庭裁判所で申し立てを行う必要があります。
また、実家の土地のみの相続放棄はできず、現金や有価証券、動産などを含めた一切の遺産相続の権利を失うことになる点に注意してください。
2023年4月からは相続土地国庫帰属制度が開始
相続放棄をせずに実家の土地を手放したい場合には、2023年4月から施行される「相続土地国庫帰属制度」を利用する選択肢もあります。
相続土地国庫帰属制度は、法務局の承認が下りた場合に、10年分に相当する管理費を負担金として納めることで土地を国に返すことができる制度です。
将来的に不要な実家の相続が発生する可能性がある方は、この制度を利用することも検討しておきましょう。
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実家の土地をどうするか迷った時には売却・賃貸などの検討を
実家の土地は、そのまま放置することで税負担や維持・管理の手間が発生するデメリットがあります。
そのため、誰も住まない場合は、売却や賃貸、土地活用などに利用することをおすすめします。
将来的にご自身で住む予定がある方や、アパート経営などに興味がある方は、更地で貸し出せる駐車場経営や資材置き場としての活用を検討してみるのも良いでしょう。
記事のおさらい