アパート大家とは、アパート一棟を所有し部屋を貸すことで入居者から家賃収入を得る賃貸経営者です。一般的にマンション大家は区分マンションを所有するのに対し、アパート大家は物件1棟を所有します。
アパート大家は、何もしなくても収入が得られる不労所得のイメージが強いですが、実際は建物の清掃や、建物のメンテナンス、家賃の集金など多くの仕事があります。
本記事ではアパート大家について詳しく説明します。
アパート大家の平均年収は521万円!
アパート大家の主な仕事は「物件の管理」と「入居者の管理」
アパートの大家に向いている人とは
アパートの大家には適正があります。以下の人がアパート大家になるには向いています。
- 既に土地を所有している人
- 副業として始めようとしている人
- 金銭的に余裕がある人
- 長い目で経営を続けられる人
アパート経営を土地の購入から考えている人は、アパートの建築費以外に土地の購入費用がかかるため、初期費用が高額になってしまいます。よって、既に土地を持っている人のほうがアパート経営を始めやすく向いている人といえます。
また、アパート経営にはリスクがつきものです。リスクによって、収入が期待できない月もあるため、金銭的に余裕がある人か、アパート経営一本ではなく副業で考えている人が向いています。
さらに、アパート経営などの不動産投資は黒字化するまでに時間を要します。よって、アパート経営は長い目でみる必要があるため、手っ取り早く収入を得たい人よりも、長い目で経営を続けられる人がアパート大家には向いています。
アパート大家の仕事内容
実際にアパートの大家さんはどのような仕事をしているのでしょうか?
この章では、アパート大家の仕事内容について解説します。
アパート大家の仕事は、大きく分けて「建物の管理」といったアパート自体の管理と、集金や入居者への対応といった「入居者の管理」の2種類です。
それぞれ、どんなことを行っているか詳しく見ていきましょう。
建物の管理
「建物の管理」として行っていることは以下の通りです。
清掃
アパート大家の仕事として、最も重要で基本的な内容が日々の清掃です。
エントランスの清潔感や、廊下、駐車場や駐輪場といった共用部分のきれいさは、入居率に直結するといっても過言ではありません。
照明、エレベーター等設備の点検
共用部分の照明、エレベーター等設備の点検も大家さんの仕事の1つです。
電気の交換や、エレベーターに異常箇所がないかなど、問題が起こる前に対応します。
クリーニング・リフォーム
入居者が退去したあと行うのが、クリーニングやリフォームです。
クリーニングの内容は、台所、浴室、トイレなどの水回りの清掃、フローリングの床のワックスがけなどです。
リフォームの内容は、壁紙やフローリング、畳の張替え、蛇口やシャワーの交換、ペンキの塗り直しなどです。
大規模修繕
アパートは経年劣化によって資産価値が落ちてきます。
資産価値を維持するためにも、細かな修繕だけではなく、大規模な修繕が必要です。
大規模修繕の内容は、外壁の塗替えや雨漏りの修繕といった建物全体にわたるものです。
入居者の管理
「入居者の管理」として行っていることは以下の通りです。
入居者の募集・契約
アパートに空室が出た場合、入居者の募集をかけるのもアパート大家の仕事です。
入居者の募集は、不動産仲介業者を通じてポータルサイト等で広告を出すことによって行われます。
大家さんの仕事は、仲介業者に依頼を出すこと、また依頼の契約をすることです。契約には、1社だけに依頼する専任媒介契約と、複数の仲介業者に依頼する一般媒介契約があります。
また、広告費として仲介業者に家賃1ヶ月分を出すことによって、より早く入居者が見つかることもあります。
どの仲介業者に依頼するのか、また広告費はどうするかなどを決めるのが、入居者募集における大家さんの仕事になります。
家賃の集金
入居者から毎月の家賃が振り込まれているか、確認する仕事です。振り込まれていなかった場合、家賃の督促を行います。また、入居時の敷金礼金や、更新料の集金も行います。
家賃の集金のみを行う管理会社もありますので、金銭面のみ管理委託する選択肢もあります。
トラブル・クレームの対応
アパート大家さんの仕事には、入居者間のトラブルやエアコンの故障など設備トラブルのクレーム対応もあります。
ご近所トラブルを未然に防ぐためにも、入居者選びは慎重に行いましょう。入居者と直接面談することで入居審査をするのも1つの手です。
活用事例:プリエシェノン
(川木建設株式会社の土地活用事例)
アパートの大家の年収
アパートの大家になると、どのくらい儲かるのでしょうか。
アパート経営の収益性や必要な費用、実際のアパート事例から具体的な収益性を詳しくご紹介します。
アパート大家の平均年収
アパート経営をしている人は、全国各地に数多くいます。そのため、確実な数値については残念ながらわかりませんが、国税庁が毎年の不動産所得を公表しておりその統計からおおよその平均を推測することは可能です。
国税庁が公表する令和元年申告所得税標本調査結果を参考にすると、国内の不動産所得の平均額は521万円となります。この統計はアパート以外にも、ワンルームマンションやオフィスビルなどの不動産投資も含む金額となっています。
収入と所得の違い
収入と所得には以下の違いがあります。
- 収入・・主に給与や事業で得た売上金額のこと。年収ともいう。
- 所得・・収入から保険料や経費などを差し引いた額。所得税と住民税は所得をもとに計算する。
アパート経営での所得の計算式は以下の通りです。
給与所得とアパート経営による所得がある場合、両方を合算した金額によって所得税額が決定されます。
所得税は累進課税制度をとっており、不動産所得以外で得た所得(給与所得や雑所得)を合算して税率を決定します。
アパート経営における収入の内訳
アパート経営の収入の内訳の具体例は、以下の通りになります。
家賃収入
アパートの一室を入居者に貸し出すことで、入居者から得る賃料収入。アパート大家の主な収入源が家賃収入になります。
そのため、退去者をできるだけ出さないことは、目の前の家賃収入を減らさないだけではなく、将来的な家賃収入を守ることに繋がります。
家賃額と似た項目に、共益費や管理費という項目がありますが、毎月受け取っている場合には家賃収入と同様に考えても良いでしょう。
家賃収入以外の収入
家賃収入額以外の収入項目には、主に以下の4つが挙げられます。
- 礼金
- 更新料
- 太陽光発電による売電収入
- 駐車場代
- 自動販売機
礼金はオーナーと入居者が賃貸契約を交わした際に、初期費用として入居者から支払われる謝礼金のことです。礼金は入居者に返還されることのないお金となり、一般的に家賃の1~2ヶ月分が相場となっています。
更新料は、賃貸借契約書を更新する際に入居者から支払われる費用のことを指します。一般的に、更新時期は2年区切りとしている物件が多く、賃料の1~2ヶ月分が相場です。
\建築費は?初期費用は?/
アパート経営における支出の内訳
アパート経営には様々な維持費用がかかります。具体的にはどのような費用がどのくらいかかるのか紹介します。
建物修繕・設備交換費用
建物修繕費用とは、定期的な建物の修繕にかかる費用です。
建物修繕や設備交換にかかる費用は、タイミングや建物構造、戸数によって異なります。
目安としては、およそ家賃収入の10%~15%になります。
下記では修繕費としてよく使われる費用についてまとめています。
- フローリングの張替え費用:2~6万円/畳
- クロスの張り替え:750~1,500円/㎡
- トイレの便座交換・温水洗浄便座設置:5~10万円
- ハウスクリーニング:1万5千~7万円
さらに、築年数が経過するにつれ、修繕や交換が必要となる箇所や設備が増えるため、交換や修繕費用は年々増加していきます。
また、10年に一度の大規模修繕では、基礎工事や外壁塗装、屋根の張替えなどを行うため、小さめの木造アパートでも100万円以上の費用が目安になります。
管理費用
管理費用とは、賃貸経営を行う上で必要になる様々な費用のことを指します。
賃貸管理費用は、ほとんどが管理会社に支払う管理手数料です。目安としては、家賃収入の5%~10%です。
具体的には、以下の項目が賃貸管理にかかる費用項目です。
- 管理手数料:家賃の5%程度(毎月)
- 仲介手数料:家賃の50%(入居時)
- 広告料やバックマージン:家賃の20%程度(入居時)
- 光熱費:物件に応じて異なる
- 接待交通費:物件に応じて異なる
仲介手数料とは、入居者を紹介した不動産業者に対して、家賃の半月分を支払う費用です。
管理手数料とは、アパートの管理を管理会社に任せる場合、発生する費用です。管理会社にどこまで依頼するかによって異なりますが、毎月の家賃の5%程度が一般的です。
また、共用部の電気代や水道代などの光熱費や、不動産会社との定期的な打ち合わせに使う接待交通費など様々な費用が諸費用として必要です。
保険料
建物の火災保険料や地震保険料などにかかる費用です。火災保険の契約は最短1年から最長10年です。
ワンルームタイプの部屋にかかる保険料は、基本の火災保険に施設賠償責任保険や地震保険を付けても年間2万円ほどです。1棟アパートの場合、月額10万円を超えます。
保険会社の違いによる保険料の違いはほとんどありません。保険料の細かな違いは、保険期間や補償範囲などによって異なります。
所得税・住民税
アパート経営で得た収入から経費を引いた所得にかかってくる税金です。
所得税は累進課税制度をとっており、不動産所得以外で得た所得(給与所得や雑所得)を合算して税率を決定します。そのため、税率は収入に応じて変わります。一方、住民税は課税所得の一律10%です。
固定資産税
固定資産税は不動産を所有することに対してかかる税金であり、アパート経営の場合は土地と建物にかかります。
なお、土地については敷地面積200㎡までについて、固定資産税を6分の1にできる住宅用地の特例の適用を受けることができます。
固定資産税は、地方自治体が評価した評価額に1.4%をかけた金額が固定資産税となります。
不動産所得税
不動産取得税とは、不動産の取得者に対して課される税金で、不動産取得時に一度だけ支払う必要があります。
不動産取得税は相続によってアパートや土地を引き継いだ際には発生しませんが、相続方法として生前贈与を選んだ際には、不動産取得税が贈与税に加えて課税されます。
消費税
消費税は、事業開始から2年間、もしくは1年間の課税売上高が1,000万円以下の場合には納める必要がありません。
しかし、課税売上高が1,000万円を超え、事業開始から2年が経っている場合には、受け取った家賃を納める必要があります。
【事例】都内2階建て8戸アパートの収益例
実際に大家としてアパートを経営する場合の収益例をご紹介します。
都内にある8戸の2階建てアパートの収益はどのようになるのでしょうか。
以下にその他の条件をまとめました。
条件 | 物件情報 |
---|---|
物件価格 | 1億円 |
家賃 | 7万/月 |
共益費・管理費 | 5千円/月 |
駐車場代 | 3万円/月 |
このアパートの収益性は以下のようになります。
項目 | 収益性 |
---|---|
年間家賃収入 | 約749万円 |
年間支出 | 約112万 |
年間手取り | 約637万 |
年間支出は、固定資産税や維持管理、修繕費などにかかる費用です。通常は年間家賃収入に対して15%程かかります。
体験談からアパート大家への理解を深めよう
実際にアパート経営を経験した大家さんの体験談を知ることで、アパート大家への理解度が高まると思います。
そこで本章では、下記3人のオーナーによるアパート経営を始めたきっかけや目的、ポイントや注意点、これから始める人へのアドバイスを紹介します。
- Aさん
40代男性
収益:月20万円~30万円
建築費用:5,001万円~6,000万円
利回り:12.5%
体験談詳細はこちら
- Bさん
40代男性
収益:月40万円
建築費:1億5,000万円
利回り:13.50%
体験談詳細はこちら
- Cさん
60代男性
収益:月20万円~30万円
建築費:3,001万円~4,000万円
利回り:8%
体験談詳細はこちら
きっかけ・目的
- Aさん
- Bさん
- Cさん
FIREの達成や親からの相続、相続税対策がアパート経営を始めたきっかけであり三者三様ではありますが、少なからず不動産投資についての知識があったり、明確な目的が合ったりという点は共通しているようです。
ポイント・注意点
- Aさん
- Bさん
- Cさん
「アパート経営を行なうエリアの状況を下調べする」「返済シミュレーションをする」「専門家に相談する」これらのことはアパート経営にとってとても重要なことです。よくネットで見る内容かもしれませんが、よく目にするということはやはりそれだけ大切であるということでしょう。
これから始める人へのアドバイス
- Aさん
- Bさん
- Cさん
プロの意見が重要であり、不動産会社と連携をとって進めていくことが大切とのことです。ただしすべて丸投げしてしまうのではなく、あくまで経営の主体はオーナーであるため、当事者意識を持つのが大事だということも間違いありません。
アパート大家の失敗談
アパート経営で得られる収入は不労所得になり、働かずして稼げるイメージを持つ人も多いと思います。ですが、アパート経営には様々なリスクも伴います。
ここではアパート大家の失敗談と共にリスクについて説明します。
空室多数で大赤字
「それなりに立地条件の良い土地だったので、満室時の家賃収入を想定したうえでアパート経営を始めました。
しかし、実際は満室にするのは大変難しく、アパート経営を始めてから一度も満室になったことがありません。
満室時の家賃収入を想定していたため、当初の事業計画とは異なり赤字が続いています。」
アパート経営での最大のリスクが空室リスクです。アパート経営では常に満室であるとは限りません。
空室が発生した場合、本来得られるはずの家賃収入がゼロになります。よってアパート経営を始めるのであれば、空室が発生しないような対策を講じる必要があります。
ローンの返済が負担になり破産
「アパートローンを借りてアパート経営を始めました。自己資金が少なかったため、毎月の返済額は多いですが、満室時の家賃収入で十分に補える額でした。
しかし、実際に経営を始めてみるとなかなか空室が埋まりません。家賃収入は当初予定していた額よりも少ないため、当然毎月のローン返済額を補えるはずがなく、自分の貯蓄から返済していたためしばらくして貯金が底をつき破産しました。」
アパート経営では毎月の支出のうち、ローンの返済額が大部分を占めます。
よって、余裕を持った返済プランを立てなければ、上記の失敗例のようにローン返済の負担が大きく破産に追い込まれてしまいます。
節税目的で始めるも支出増
「アパート経営は税金対策になると聞いてアパート経営を始めました。
確かに所得税、住民税の共に節税することはできましたが、アパート経営にかかった出費が大きすぎたため、手元に残るお金はほとんどありませんでした。」
アパート経営は確かに節税効果は高いですが、それ以上にアパートの購入費など出費が大きくなります。
また、より節税効果を得られるのは1000万円以上の給与所得がある人とされています。
表面利回りだけで判断し失敗
「表面利回りの数字だけを見て、アパートを購入しました。
ですが、表面利回りはほとんど当てになりません。不動産会社は表面利回りを「高利回り物件」と称し、販売・営業してきました。
表面利回りだけを信じ込んでしまった自分も悪いのですが、アパート経営を始めるのであれば表面利回りでなく実質利回りを視野に入れるべきです。
高すぎる利回りは何かあると疑ったほうがいいです。」
アパート経営初心者は表面利回りで物件の収益性を判断しがちです。
ですが実際は、必要経費なども考慮した実質利回りで物件を選ぶ必要があります。
サブリースの理解不足で失敗
「空室でも一定額の家賃収入が保証されるとのことでサブリース契約を交わしてアパート経営を始めました。
しかし、アパート経営を始めてしばらくすると保証額が減額されました。聞いていた話と違うとは思いましたが、契約内容に保証額が変動する事は書いてあり、完全にこちらの理解不足でした。」
サブリース自体は、大家の助け舟となるような制度ですが、契約内容の理解が不十分の場合、痛い目にあう可能性があります。
また、サブリース契約上、満室であっても保証された一定額の家賃収入しか得ることができない為注意が必要です。
なかなか売却できない
「アパート経営が上手くいかなかったら、アパートを売却すればいいやと思い始めました。
しばらくして思うように収益が得られなくなったため売却を考えましたが、今だに売り手が見つかりません」
アパートの売却は空室率なども影響するため、空室率が目立ち始めてから売却を考えるのは遅いです。
売却まで考えているのであれば、高い入居率を保つ必要があります。
アパートの大家って儲かるの?
アパート大家は平均年収も高く、物件の立地条件次第では儲かりやすいといえます。ただ、アパート経営は修繕費用や管理費用などの維持費用がかかってくるため実際に手元に残るお金はそう多くはありません。
また、アパート大家は何もしなくても収入が得られる(不労所得)イメージもありますが、実際、大家がすべき仕事はたくさんあります。