昨今、価格高騰を続けているマンション市場。新築・築浅のマンションはなかなか手が出づらい価格帯となってしまっているのが現状です。
そんな中でのリノベーションブーム以降、築30年前後などのいわゆる築古マンションに注目が集まっています。
(東日本不動産流通機構のデータを元に編集部作成)
このグラフをみると、右端うすい青色のグラフで示された築30年以上の中古マンションの成約数の割合は年々増えており、2021年にはマンション市場の約30%を占めていることがわかります。
これからマンションを買おうと思ったら、築30年以上のマンションも決して無視できない存在となっているのです。
Housiiでは、築30年前後のマンションをお探しの方にも物件提案をしていますが、築30年マンションならではのデメリットや注意点を押さえた上であれば、メリットも多く、購入をおすすめできます。
本記事では、築30年前後の中古マンションに着目して、
- 築30年の中古マンションはいつまで住める?
- 築30年の中古マンションのメリット
- 築30年の中古マンションのデメリット
- 築30年マンションの4つの注意点
- 築30年マンション購入の住宅ローンや税金
- 築30年マンション購入後の3つの選択肢
- 築30年のマンションはどこまでリフォームするべき?費用相場は?
このような内容について解説していきます。ぜひお役立てください。
築30年のマンションは何年住める?
築30年のマンションは新築マンションや築浅のマンションよりも圧倒的に購入価格を抑えられるというメリットがある一方で、やはりネックとなるのが「あと何年住めるのか?」という点ではないでしょうか。
築30年のマンションはあと30年住める
結論、管理状況が良ければ中古マンションは築60年程度までなら問題なく住み続けることができます。つまり「築30年のマンションを買ったらあと何年住める?」の答えとしては「あと30年程度住める」ということになります。
マンションが築60年まで住める2つの根拠
「マンションは築60年まで住める」と主張する根拠は以下の2つです。
- マンションの建て替えの決議は現実的ではないこと
- RC造マンションの寿命は50~150年と試算されていること
それぞれについて詳しく解説していきます。
マンション建て替えは現実的ではない
そもそもマンションの寿命とは「マンションが老朽化し建替えられること」を意味します。
一般的にマンション管理組合において建て替えの議案が出されるのは築30~40年のタイミング。では、築30~40年のマンションが必ず建て替えられてしまう、つまり寿命を迎えてしまうのかと言えばそうではありません。
国土交通省のマンション建替えの実施状況についての資料によると、令和3年4月1日時点で建替え工事完了済みのマンションは合計263件であるとされています。同じく国土交通省の分譲マンションストック戸数についての資料によると、令和2年時点での分譲マンションストック数は全国で約675.3万戸。仮にマンション1棟当たりの戸数を50戸として計算すると、全国に約13万棟のマンションがあるということになります。
これを踏まえると、これまでのマンション建て替え実績263件というのが、圧倒的に少数派の結果であることがわかるでしょう。
なぜ建て替えの実績がここまで少ないのかというと、以下の2つの要因が挙げられます。
- 建て替え費用を負担するのは区分所有者であり、反対多数になるため
- 法律改正によって建て替えが難しくなっているため
まず、建て替え費用を負担するのは区分所有者、つまり住人自身であるという点が最大のネックです。マンションの建て替えの決議には住人の5分の4以上の賛成が必要です。すべての住人が高額な建て替え費用を支払える余裕があるわけではない上に、近年は全国的に住人の高齢化も進んでいます。建て替え反対が多数となるのも無理のない結果でしょう。
さらに、新築からの30年間で建築基準法をはじめとする各法律が改正されていることも、建て替えを足止めする要因です。例えば、建築した当時は合法であったマンションが、現在の基準では違法建築にもなりうるのです。
以上の2つの要因が足かせとなり、築30年の段階でマンションが建て替えられるということは現実的ではありません。
とはいえ、実際にマンションの建物が限界を迎えてしまって住めなくなるのでは?という不安もあるかと思います。マンションの建物、つまりRC造建築は何年の耐久年数があるのでしょうか?
RC造マンションの寿命は50年~150年と試算されている
国土交通省のRC造(コンクリート)の寿命に係る既往の研究例についての資料では、以下のような研究が紹介されています。
RC造(コンクリート)の寿命について、最も短い試算をしたのは篠崎徹らの研究例で「鉄筋コンクリート部材の耐久実態は50年以上」と結論付けています。
最も長い試算をしたのは大蔵省主税局の研究で、「鉄筋コンクリート部材の効用持続年数として、一般建物(住宅も含まれる)の耐用年数は120年、外装仕上により延命し耐用年数は150年」と結論づけています。
いずれの研究からも言えることは、マンションの建物自体(コンクリート)の耐久性は築30年程度で揺らぐものではないということです。
むしろ、マンションの寿命を大きく左右するのは管理状態の方です。いくらRC造が丈夫だと言ってもまともな管理がされず、放置されれば本来の寿命よりも早く劣化が進んでいくでしょう。反対に適切な管理・メンテナンスがされれば、大蔵省の試算のように100年マンション・100年コンクリートといった言葉も大げさではありません。
適切な管理・修繕がされているマンションの代表例としては渋谷の「宮益坂ビルディング」が挙げられます。宮益坂ビルディングは1953年に分譲された日本で初めての分譲マンションです。配管の劣化や渋谷の再開発に伴って築63年で建て替えがされました。
このように適切な管理がされていれば、築30年をはるかに超えるマンションでも十分に住める状態を保てることがわかります。
築10年からは室内設備のリフォームが必要
先述したように、マンションの建物としての寿命は100年以上という試算もあり、築30年の段階では建物自体については気にする必要はないでしょう。むしろ先に経年劣化が進むのは、キッチンや壁紙といった室内設備です。
例えば、キッチンやお風呂、トイレなどの水回り設備は10年~20年で部分的に故障し、パーツの交換が必要になるケースが多いです。壁紙の張替えの目安も10年程度だと言われています。
さらに、築30年を過ぎると床や天井などの老朽化も進みます。汚れや剥がれをリセットするためのリフォームが必要になるでしょう。
加えて、壁や床の中を通っている配管の交換も必要です。現在主流の樹脂管の寿命は30~40年ほどですが、つなぎ目の部分には金属製のパーツが使われていることもあります。金属性の配管は15~20年ほどで経年劣化し、漏水や赤水といったトラブルの原因となります。見えないパーツであるため確認しづらい点ではありますが、プロのホームインスペクター(住宅診断士)に同行してもらうなどして、配管チェックをしておくと安心でしょう。
築30年の中古マンションのメリット
一般的にはメリットが少ないとされる築古の中古マンションですが、築30年前後に注目するとこの年代のマンション特有の利点も多く、実は投資家やマンション通のあいだでも人気です。
具体的には以下の6つのメリットがあります。
- 価格が安く値崩れしづらい
- 駅近・好アクセス駅など立地のよい物件が多い
- 敷地が広い・土地の持分が大きくなりやすい
- 管理状況を把握しやすい
- 大規模修繕が済んでいる
- 新耐震基準で建てられている
それぞれについて詳しく解説していきます。
価格が安く値崩れしづらい
築30年前後の中古マンションのメリットは、築浅のマンションに比べてなんといっても価格が安いことでしょう。
以下のグラフは東日本不動産流通機構の2021年4月~6月のデータから作成した築年数と資産価値の推移を表したグラフとなりますが、築30年のマンションは新築時の約4割程度の価格で購入できることがわかります。
(出典:首都圏中古マンション・中古戸建住宅地域別・築年帯別成約状況)
仮に購入後にフルリノベーション(相場600~1000万円程度)をしたとしても、新築と比べて2000万円以上安く購入することができます。「予算が限られているけどマンションを買いたい」という方にとって、築古の中古マンションは希望条件に合えば良い選択肢と言えるでしょう。
また、新築や築年数の浅いマンションと比べて、購入後の値崩れが起こりづらいところも魅力のひとつです。仮に築30年のマンションに10年20年住み続けて、築年数が40年、50年と増えていったとしても、売却価格に大きく差が出ることはなく資産価値が下がりづらいメリットがあります。
駅近・好アクセス駅など立地のよい物件が多い
築30年の中古マンションのメリットとして次にあげられるものが立地の良さです。
そもそも分譲マンションは、1960年代後半~70年代に旧住宅金融公庫が融資制度を開始したことを皮切りに本格的に普及が進みました。それ以降、当時の建設ラッシュと相まって好条件の立地にはどんどんとマンションが建てられた結果、現在の築30年の中古マンションは駅近・高アクセスのエリアに位置していることが多いです。
立地が良ければ購入後に売却に出す可能性も増えてきますし、転勤などの理由で家を空けなくてはならない場合でも賃貸に出すという選択肢を取ることが可能です。賃貸の場合は購入に比べて築年数はそこまで重視されないため、購入後の資産運用も視野に入れることができるのです。
敷地が広い・土地の持分が大きくなりやすい
また、敷地が広かったり、土地の持分が大きくなりやすいところも魅力のひとつです。先述の通り、現在の築30年の中古マンションは建設ラッシュのタイミングで建てられた物件が多いため、新築マンションや築年数の浅いマンションよりも敷地が広い傾向にあります。
もともとの敷地が広いため土地の持ち分も大きくなりやすく、ヴィンテージマンションとして知られる「広尾ガーデンヒルズ」などはそのもっともたる例でしょう。他にも築30年以上の物件で人気のあるマンションはたくさんあります。
管理状況を把握しやすい
築浅のマンションでは10~12年に一度実施する大規模修繕をまだ実施していない可能性もありますが、築30年ともなればすでに何度か大規模修繕を実施しているマンションがほとんどです。
その際に、修繕積立金の追加徴収がなかったかや、大規模修繕をする際にスムーズに工事に着手していたかなどを議事録で確認することができます。
他にも、建て替えに関しての議論がどこまで進んでいるかなど、過去の管理実績を確認することができるのは「マンションは管理を買え」と言われる現在においては非常に大きな強みということができるでしょう。
大規模修繕が済んでいる
国土交通省のマンションの長期修繕計画作成ガイドラインによると、マンションの大規模修繕のタイミングは以下のように記述されています。
- 1回目が12~15年目程度
- 2回目が24年~30年目程度
よって、築30年のマンションを買った場合、順当にいけば2回目の大規模修繕がされて間もないマンションに住める可能性が高いでしょう。
それだけではうまみがないと思われるかもしれませんが、実は大規模修繕で「修繕」だけでなく「改良」も行われます。
こちらの図を見てわかる通り、大規模修繕を重ねるたびに求められる水準が初期性能よりも高くなっていることがわかります。
先述した国土交通省のガイドラインでも、大規模修繕時に新築時よりも性能を向上させる必要がある旨が言及されています。
既存マンションの場合、経年に伴う生活様式や社会環境の変化等の社会的な要因などか
ら、耐震性や断熱性など建物及び設備の性能・機能を新築時の水準から向上させること(改
修)も必要となります。
耐震性や断熱性の水準向上がされたマンションに住めることも、築30年のマンションを買うメリットといえます。
さらに昨年2021年(令和3年)、ガイドラインが改定されました。今回の改訂の要点は以下の3点です。
- 現行では25年以上としていた既存マンションの長期修繕計画期間を、新築マンションと同様、2回の大規模修繕工事を含む30年以上に変更
- マンションの省エネ性能を向上させる改修工事の有効性について追記
- 定期的にエレベーター点検を実施することの重要性について追記
これにより、今後ますます管理組合による、中古マンションの大規模修繕や維持管理に対する意識は高まっていくことが考えられます。
参考:「長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント」及び 「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」の見直しについて|国土交通省
新耐震基準で建てられている
地震大国日本において、購入するマンションの耐震性が優れていることは物件選びの要素において非常に重要なものの一つです。
その点で、築30年の中古マンションは1981年6月に改定された新耐震基準で建てられていることがメリットと言えるでしょう。1981年以前に建てられた中古マンションの耐震基準は旧耐震基準と言われますが、震度6以上の大規模地震で建物が倒壊しないことを条件としている新耐震基準に対して、旧耐震基準では震度5強程度の揺れで倒壊しないことを条件としており、震度6以上の揺れに対しては何も定めていません。
その点で、東日本大震災後に話題となった首都直下型地震などの将来的なリスクなどを踏まえると、マンションの耐震性が新しいというのは大きな安心材料と言えるでしょう。
築30年の中古マンションのデメリット
築30年の中古マンションを買う場合のデメリットを紹介します。
- 適切な周期で修繕がされているか
- 建て替えの予定がないか
- 過去の空室率や取引事例
デメリットを押さえておくことで、後悔のない購入ができます。チェックすべき観点についても紹介するので、参考にしてください。
適切な周期で修繕されていないことがある(長期修繕計画・履歴を確認)
【後悔した事例】
「築30年のマンションを購入したら、入居後しばらくしてエレベーターが故障していて修繕が必要なことが発覚。よくよく聞いてみると、大規模修繕がこれまで行われておらず、他にも修繕する必要がある箇所が続々と出てきました…。」
築30年前後のマンション選びにおいて最も重要な要素は、中古マンションの修繕が適切な周期で実施されているかどうかです。
マンションにおける定期的な修繕とは大規模修繕と呼ばれ、国土交通省のガイドラインによると12年に1度実施するべきとされています。そして、その大規模修繕のための費用を徴収する修繕積立金の徴収状況や徴収額を算出している長期修繕計画があるかをチェックしておきましょう。
ほとんどのマンションにおいて長期修繕計画は作成されていますが、5年に1度の定期的な見直しがされていなかったり議事録が適切に取られていない中古マンションは要注意です。個人でマンションの議事録を見せてもらったりすることは少々難しいと思うので、購入前には必ず不動産会社を通じて管理状況の確認を行うようにしましょう。
配管設備が劣化していることがある(修繕履歴の内容を確認)
長期修繕計画の他に、配管設備の状態も要チェックです。一般的に配管設備の寿命は25年〜30年程度であるとされているため、築30年のマンションの場合、何も手入れされていない状態では激しく劣化している可能性が高いです。
購入時にはできるだけ修繕履歴を確認するようにして、現在の状態や今後の修繕予定について把握しておくことをおすすめします。
建て替えが近い可能性がある(内覧時に確認)
【後悔した事例】
「築30年のマンションを購入したが、1年後に建て替えられることに。元々支払っている住宅ローンの支払いに加えて、建て替えの費用を負担することになり、家計を圧迫することになりました…。」
マンションは築年数が経ち老朽化すると、建て替えが行われることがあり、そのための費用は住人で負担する必要があります。築30年のマンションを購入するということは、その分近い将来に建て替え費用を支払う可能性があることに注意しておきましょう。
東京カンテイの調査によると、マンションの建て替えまでの年数は全国平均が33.4年、東京都は40.4年となっています。
下記は東京マンションポータルサイトが公開している、マンション建替えまでの年数についてのデータを円グラフにしたものです。
上のグラフを見るとボリューム層は築36~40年で30.2%となっており、全体を通じてみればやはり築35年以上のマンションが建て替えられていることがわかります。
したがって、マンションの建物寿命としては計算上100年以上と試算することができるものの、実際には管理状況や空室率の高さなどによって100年を待たずに建て替えられていることがわかります。
一般的にマンションの建て替えには、最初に話が上がってから実際の工事が始まるまで、5年から10年の期間がかかるものです。住人の中でも管理組合に積極的にかかわっている人や、長く住んでいる人であれば建て替えの予定を耳にしているかもしれません。内覧などのタイミングで確認しておけると良いでしょう。
ただし、実はマンションの建て替えはめったに行われることではありません。というのも、建て替え決定までにはいくつかの条件を満たす必要があるのです。
例えば、所有者の5分の4以上の賛成が必要になることや、各世帯1000~2000万円程度の費用負担が必要になってくるなどが挙げられます。国土交通省が発表している2020年7月時点での全国の建て替え件数は254件(1.9万戸)。全体の2%にとどまっています。
とはいえ、頭の片隅に入れておいて損はありません。
修繕積立金の貯蓄額が十分にないことがある(価格設定・貯蓄額を確認)
また、修繕積立金の貯蓄額にも注意が必要です。
修繕積立金とは、修繕工事を行うときの費用に困らないよう、毎月少しずつ居住者のみんなで積み立てておく資金のことです。この修繕積立金が十分に貯蓄されていないと、実際に修繕工事を行う際に資金が足りなくなってしまい、居住者が追加で修繕費用を払わなければならない可能性があります。
修繕積立金が安く設定されている場合は十分に貯蓄されていないケースがあるため、価格設定や現在の貯蓄額をできるだけ詳しく確認しておきましょう。
空室率が高いことがある(過去の空室率・取引事例を確認)
【後悔した事例】
「空室が多いマンションであることは分かっていましたが、気に留めていませんでした。しばらくすると、必要な管理費や修繕費をまかなうための費用の徴収額を増やしたいと連絡が来ました…。」
中古マンションを選ぶ際には、過去に取引が頻繁に実施されているかどうかや現在の空室率の高さをチェックしておきましょう。
というのも、空室率が高いマンションでは自然と管理費や修繕積立金の徴収額が少なくなってしまうため、住民が多いマンションに比べて劣化も早くなります。結果的にマンションの寿命も短くなる可能性が非常に高いので、将来的な売却を見据えている場合や終の棲家としてマンションの購入を検討している方は現在の空室率や取引事例をチェックしておきましょう。
築30年時点での取引事例が活発でないマンションであれば、空室率や修繕積立金の徴収に難がある可能性もあるので、購入を検討しているマンションの取引事例は是非チェックしておきましょう。
将来売却できる可能性が低いこともある(類似物件の過去取引事例を確認)
資産価値としてマンションを購入する場合、将来的に売却できる可能性があるかも確認しておきましょう。一口に築30年の中古マンションといってもエリアによって評価額が大きくことなるため、過去の取引をから市場価格を調べるのがおすすめです。
「REINS Marketinformation(不動産取引情報サイト)」で購入を検討しているエリアの情報を入力し、直近で似た条件の物件取引が行われている場合はその取引価格をチェックしてみてください。
築30年のマンション物件を探すなら
先に紹介したデメリットを理解したうえで、条件をよく確認できれいれば、築30年マンション物件の購入はメリットが多いです。築30年前後のマンションも人気の物件はすぐに成約してしまうので、早めの物件探しをおすすめします。
築30年のマンション物件を探すなら、売り出し中の中古マンションを一覧で閲覧することができるサイトを活用する方法が一般的です。
築30年マンションの4つの注意点
築30年マンションを購入する前に確認しておきたい4つの注意点は以下の通りです。
- 修繕積立金が不足しているマンションに注意
- 買ってすぐ大規模修繕が始まる可能性も
- 住宅ローンに制限がかかることがある
- リノベーションに制限がかかることがある
それぞれについて詳しく解説していきます。
注意点1:修繕積立金が不足しているマンションに注意
建物の耐震性や寿命が心配されがちな築30年のマンションですが、実はそれら以上に気にするべきことは、マンションの管理状況です。特に適正な額の修繕積立金が集まっているかは注意して確認しておく必要があります。
なぜなら、修繕積立金が不足することで住人は様々な不利益を被る可能性があるからです。具体的には以下の2点が挙げられます。
- マンション管理が滞り建物の劣化が早まる、植栽や外壁が放置される、マンションの人気(資産価値)が落ちる
- 大規模修繕のための費用が足りず、値上げがされる、一時金が必要になる
検討しているマンションの修繕積立金の額が適正かどうかを見極めるには、国土交通省が作成しているマンションの修繕積立金に関するガイドラインと比較するという方法があります。
こちらのガイドラインによると、マンションの修繕積立金の目安は以下の通りとなっています。
例えば、検討しているマンションが20階建て未満かつ5,000㎡未満であれば、1㎡あたりの修繕積立金の月額が、
- 最低限235円以上であるか
- できれば平均値の335円以上であるか
を確認するとよいでしょう。不動産仲介業者を通して、マンション管理組合が保管している「長期修繕計画」を閲覧することで、確認することができます。
注意点2:買ってすぐ大規模修繕が始まる可能性も
築30年のマンションを買った場合、すぐに大規模修繕工事が始まる可能性があります。国土交通省が公表している長期修繕計画作成ガイドラインによると大規模修繕の目安は12~15年に一度。つまり、順当に計画が進んでいれば2回目の大規模修繕工事が近い可能性があります。
こういった大規模修繕前の物件がすべて悪いわけではないですが、選ぶ際には注意が必要です。具体的には、以下の2点には注意しておきましょう。
- 一時金を請求されるかも
- 工事による騒音に注意
検討しているマンションで十分な修繕積立金が集まっていなかった場合、大規模修繕工事に際して一時金が徴収されることがあります。一時金の額はマンションの財務状況によりけりで、数万円で済む場合から数十万円払うケースまであります。いずれにしても少額ではありませんから、マンション購入直後にはなおさら負担となるでしょう。
また多くの場合、大規模修繕工事は2か月以上は続きます。その間は工事による騒音に悩まされるかもしれません。また、眺望が気に入って買ったものの足場によって景色が見られないということも。
新居での生活を気持ちよく始められるよう、大規模修繕のスケジュールについては事前に把握して検討しておくとよいでしょう。
注意点3:住宅ローン控除は利用できない
住宅ローン控除は、一定の要件を満たしている場合に、中古マンションは最大10年間にわたり、ローン残債のうち0.7%が所得税や住民税の課税所得から控除してもらえる仕組みのことを指します。
ただ、中古マンションの場合、新耐震基準適合住宅である必要があります。新耐震基準適合住宅は、1982年以降に建築された住宅のことを指すため、築30年以上のマンションは要件を満たしていないため、住宅ローン控除を使うことはできません。
注意点4:理想のリノベーションができる確認する
マンションによっては、リノベーションに制限がかかっている場合もあるため、中古マンションを購入してリノベーションをしようと考えている方は注意が必要です。
特にある程度築年数が経過しているマンションでは、「天井が低い」「間取りの変更ができない」「配管設備の移動ができない」などの制限がかけられている可能性があります。理想のリノベーションがある場合は、あらかじめ実現が可能そうかどうか確認しておくと良いでしょう。
築30年マンション購入の住宅ローンや税金
築30年マンションを購入した際に、住宅ローンや税金がどれくらいの負担になるか、具体的に見ていきましょう。
住宅ローン計算の例
築30年のマンションで住宅ローンを組む場合は、返済期間・融資金額を制限される可能性があることがあります。
住宅ローンを提供する金融機関は顧客に多額の金額を融資する一方で、貸し倒れた時のリスクを担保するために物件に抵当権という権利を設定します。抵当権を設定した物件は返済不可能と判断された場合は、競売にかけられその金額で金融機関は元を取ることとなります。
つまり、担保として設定する不動産の評価額が低い物件、つまり担保評価額が低い物件は住宅ローンが自ずと通りづらくなります。
その一例としてあるのが築年数です。上でも解説したように中古マンションは築47年で法定耐用年数が来るため、多くの住宅ローンも最大35年ですが、「法定耐用年数(47年)ー現在の築年数」でしか借りれないと考えておきましょう。
そのため、築30年マンションの場合は、返済期間が47-30=17年となるため、
毎月の支払い額=物件の合計価格/17×12+利子
となります。
また、同様の原理で借入額も制限される可能性があるのが築30年のマンションの注意点です。購入後にリノベーションなどを検討している場合は、購入金額以外にも費用が必要になるため事前に借入をする金融機関に審査を通しておきましょう。
購入時にかかる税金と金額目安
購入時にかかる税金は、主に「印紙税」「不動産取得税」「登録免許税」の3つです。
「印紙税」とは不動産譲渡契約書に係る税金で、住宅の購入金額によって200円〜60万円と大きく変動しますが、1,000万円以上1億円以下の場合は2万円〜6万円で考えておけば問題ないでしょう。
「不動産取得税」とは、不動産を取得する際にかかる税金で、“固定資産税評価額×4%”で求められます(ただし令和6年3月31日までに取得した不動産については、軽減税率が適用されて3%が適用されます)。
「登録免許税」とは、不動産登記にかかる税金で、“固定資産評価額×0.30%”で求められます(ただし一定の耐震基準に適合している場合または昭和57年以後に建築された場合は軽減税率が適用されて0.15%が適用されます)。
購入後の固定資産税の相場・例
固定資産税は土地と建物の両方にかかります。
【中古マンションの固定資産税の計算式】
・中古マンションの建物1戸の固定資産税評価額×税率=(a)
・マンションの敷地面積を戸数で割った土地の固定資産税評価額×税率=(b)
固定資産税合計額=(a)+(b)
マンションの敷地を戸数で割った土地面積が200㎡以下の場合は、軽減措置が適用されます。
【中古マンションの固定資産税の計算式】
・中古マンションの建物1戸の固定資産税評価額×税率=(a)
・マンションの敷地面積を戸数で割った土地の固定資産税評価額÷6×税率=(c)
固定資産税合計額=(a)+(c)
多くの自治体では、税率は1.4%となっています。また、戸数で割った土地面積が200㎡を超えることは少ないため、多くのケースで軽減措置が適用されます。
固定資産税評価額は、立地や築年数、床面積、マンションの戸数などで決まりますが築30年マンションは築古に分類されるため、固定資産税は安く済む傾向があり、5万円から、駅前や大通りでも10万円ほどに収まることが多いです。
築浅で戸内の床面積が広く、立地もよい中古マンションは固定資産税が高くなり、20万円を超えるケースもあるため、築30年マンションの固定資産税は安く抑えられると言えるでしょう。
以下に築年数による減価率をまとめているので、参考にしてみてください。
経過年数 | 減価率 |
---|---|
1年 | 0.9579 |
3年 | 0.9038 |
5年 | 0.8569 |
10年 | 0.7397 |
20年 | 0.5054 |
30年 | 0.3059 |
45年以上 | 0.2000 |
築30年のマンションの場合、建物部分にかかる固定資産税は新築時に比べて7割近く減額されることがわかります。
都市計画税がかかる場合も
マンションが市街地に建っている場合は、都市計画税も課せられます。
【中古マンションの都市計画税の計算式】
・中古マンションの建物1戸の固定資産税評価額×税率=(d)
・マンションの敷地面積を戸数で割った土地の固定資産税評価額×税率=(e)
都市計画税合計額=(d)+(e)
都市計画税にも軽減措置があり、これが適用される場合は、
【中古マンションの都市計画税(軽減措置適用)】
・中古マンションの建物1戸の固定資産税評価額×税率=(d)
・マンションの敷地面積を戸数で割った土地の固定資産税評価額÷3×税率=(f)
都市計画税合計額=(d)+(f)
税率は多くの自治体で0.3%ほどで設定されています。固定資産税の税率は1.4%のため、都市計画税は固定資産税の20%ほどの金額がかかると覚えておきましょう。
具体的には、固定資産税が10万円の場合は、都市計画税が2万円ほどになります。
築30年マンション購入後の3つの選択肢
築30年マンションを購入後は、そのまま入居する場合もあれば、リノベーションやリフォームを行う場合もあります。ここでは、築30年マンション購入後の3つの選択肢について解説します。
リノベーション・表層リフォーム・現状維持
築30年マンション購入後に考えられる選択肢は、大きく分けて「リノベーション」「表層リフォーム」「現状維持」の3つです。
「リノベーション」を行う場合は、費用がかかるものの理想の間取りや綺麗な状態で住めるメリットがあります。一方で、「現状維持」は費用がかからず、購入後は期間を置かずにすぐ入居できる魅力があります。また、これらの間を取った「表層リフォーム」では、キッチン・お風呂・トイレなど、古くなった一部分のみをリフォームすることが可能です。
予算や理想のライフスタイルにあわせて、ご自身に合った選択肢を選んでみてください。
リノベーション前提の場合の物件の選び方
リノベーションの内容に制限がかかることがあるため、リノベーション前提で築30年の中古マンションを購入する場合は物件選びに注意が必要です。
築30年のマンションを購入する際には、以下の項目に注意するようにしましょう。
- 耐震強度が基準を満たしているかどうか
- 間取りの変更が可能かどうか
- 床材の変更が可能かどうか
- 水回りの配置を動かすことは可能か
耐震強度が基準を満たしていない場合、リノベーションに制限がかかる可能性が高いため注意が必要です。また、マンションによっては間取り・床材・水回りの配置などを変更できないケースもあるため、理想のリノベーションがある場合は規約内容を確認しておくと良いでしょう。
築30年のマンションはどこまでリフォームするべき?費用相場は?
中古マンションをリフォームするといっても、リフォーム可能な箇所はたくさんあります。できれば、リフォーム必須な箇所に絞って費用や工期を最小限に抑えたいものではないでしょうか。
築30年のマンションを購入した場合に、リフォームしておくべきところと、その費用相場は以下の通りです。
リフォーム箇所 | 耐久年数 | 費用相場 |
---|---|---|
壁紙 | 10~15年 | 5~20万円 |
配管 | 10~20年 | 5~20万円 |
床 | 20~40年 | 1~20万円 |
キッチン | 10~20年 | 50~250万円 |
トイレ | 10~20年 | 15~50万円 |
バスルーム | 10~20年 | 50~150万円 |
壁紙・床のたわみ、軋みは放置すると危険
壁紙や床のリフォーム時期の目安は前回のリフォームから10~20年程度。このくらい経つと、壁紙は汚れや日焼け、剥がれが目立ってきます。床の場合はワックスがはがれたり、下地が傷んでくる可能性もあるでしょう。
見た目の劣化だけであれば住むには困らないため、そのまま放置してしまいがちですが、いざフローリングをはがしたら下地が腐ってしまっていたために、追加費用が発生するということも。簡単な張替えで済むうちに早めのリフォームを行っておくことがおすすめです。
リフォーム費用相場は5~20万円程度をみておくと良いでしょう。
配管リフォームの必要性は材質で判断
配管リフォームについてのチェックポイントは配管が金属製か樹脂製かという点です。現在マンションで主流の樹脂製の配管の耐用年数は40年程度あり、交換からしばらくは漏水などのトラブルの心配はありません。しかし、築30年以上の古いマンションの中には、まだまだ金属管を使用しているところもあります。金属管は樹脂管と比べて経年劣化が早く、20年ほどで赤水や漏水などのリスクが高まります。築30年マンションの配管については、
- 専有部分の配管は樹脂管か金属管か
- 前回の配管交換・洗浄は何年前か
- 漏水した場合の契約不適合責任は何年間有効か
これらの点についてチェックしておくと良いでしょう。
キッチン・トイレ・バスルームの劣化はこまめに修繕
キッチン・トイレ・バスルーム等の水回り設備の耐久年数は10~20年程度です。こちらも床や壁と同様、10年以上経ったからといって使用できなくなるわけではありませんが、水栓からの漏水やパッキンの劣化など、部分的な修繕が必要になってきます。些細な水漏れだからと放置してしまうと、湿気やカビ、シロアリ、基礎部分の腐食など、さらなる損害につながっていきます。こちらも早めのリフォームが重要です。
築30年のマンションを探すならHousii(ハウシー)
今回は、築30年のマンションを購入するメリットや注意点について詳しく解説しました。
築年数が30年以上の中古マンションはすでに価格がある程度下げ止まっているため、築浅のマンションと比べて手が届きやすいのがメリットと言えますが、売却時に売れる物件、つまり資産価値の高い家を買うことも重要なポイントです。これらのポイントを押さえていれば、築30年前後のマンションはおすすめです。
ただ、資産価値の低いマンションには十分な価格がつかないため、ライフステージの変化などいざというときに住み替えができないこともあるものです。
資産価値と言えば駅からの距離や築年数などが思い浮かびますが、実際には再開発の予定や法律で定められた用途区域など様々な要因で資産価値は決まります。そのため、資産価値の高い家を買うなら、自分で選ぶのではなく実績ある不動産会社からの提案やアドバイスが必須です。
とはいえ、いきなり不動産会社に行くのは少し気が引けるというのもよくあることでしょう。そこで、資産価値の高いマンションを選ぶならHousii(ハウシー)がおすすめです。
Housiiなら、予算や間取りとともに「資産価値重視」などの条件に合わせて、複数の不動産会社があなたにピッタリの物件をご提案。物件のご提案はすべてチャットで完結するため、仕事の空き時間にプロからの物件提案が受けられます。匿名だから、電話営業がくる心配もありません。
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記事のおさらい
築10年、築20年、築40年、築50年、築60年など他の築年数のマンションについても詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。