築60年のマンションは耐震性やいつまで住めるか不安になる方もいるでしょう。しかし築60年以上でも、選び方さえ間違えなければ問題なく住める優良物件が手に入ります。
近年では価格の安さから、あえて築年数が長い物件をマンション選びの候補として挙げる人も多くなっています。
そこで本記事では、築60年のマンションがいつまで住めるのか、購入のメリットについて詳しく解説します。また、中古マンションは将来売却をする可能性もゼロではありません。そのため、記事後半では売却の方法についても紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
築60年マンションは本当に住める?
築60年のマンションでも、きちんとメンテナンスをしていれば住めます。国土交通省の調査によると。鉄筋コンクリート造のマンションの寿命は120年であり、定期的に修繕をしていれば150年以上になるとの試算です。つまり理論上は、築100年を超えても同じマンションに住み続けられるのです。ただし日本では地震が多く、細かい耐震基準が設けられているため、築100年以上のマンションは存在しません。多くの場合はまだ住める状態でも大規模修繕が行なわれたり、立て替えが行なわれます。
そのため築60年のマンションは住めるものの、住んだ後に大規模な修繕やメンテナンス、建て替えが必要となる可能性はあります。
また、マンションの寿命と勘違いされやすいものとして法定耐用年数があります。法定耐用年数とは、マンションの減価償却が0円になるまでの年数です。中古マンションの法定耐用年数は47年ですが、47年経ったから住めなくなるというわけではありません。
中古マンションの耐用年数について詳しくはこちらの記事もご覧ください。
中古マンションの耐用年数は何年?寿命が来たらどうなるかまで解説
築60年マンションを購入するメリット
築60年のマンションを購入するメリットは主に以下のとおりです。
- 物件価格が安い
- 立地条件がよい
築60年以上の物件を購入するのはリスクが高いと思われがちですが、実はメリットもあります。うまく物件を探せば、掘り出し物といえる優良な中古マンションに出会える可能性があります。
物件価格が安い
築年数が経過した中古マンションは、物件価格が安いことがメリットです。マンションの資産価値は築年数が経過するとともに下落していきます。
なぜなら、マンションには国税庁が定めた「法定耐用年数」があるからです。マンションは法定耐用年数に近づくにつれて建物の経年劣化が進むので価値が下落するのが一般的です。レインズマーケットインフォメーションのデータを見てみると、築年数が経過するにつれ価格が減少傾向にあることが分かります。
築年数 | ㎡単価(万円) |
---|---|
築0~5年 | 76.97万円 |
築6~10年 | 65.53万円 |
築11~15年 | 58.65万円 |
築16~20年 | 49.67万円 |
築21~25年 | 34.95万円 |
築26~30年 | 29.49万円 |
築31年~ | 31.19万円 |
立地条件がよい
中古マンションは新築マンションよりも、物件の選択肢が多いです。なぜなら中古マンションの建設は1960年代から始まっており、毎年建設され続けているからです。
つまり、新築より中古マンションの方が物件の絶対数が多いため、希望するエリアで条件の合う物件を見つけられる可能性が高いのです。
マンションの立地選びについて詳しくはこちらの記事をご覧ください。
マンション選びは立地が大切!重視すべき3つのポイント
築60年マンションを購入するデメリット
築60年のマンションを購入するデメリットは以下のとおりです。
- 耐震性に不安がある
- 住宅ローンの審査が通りにくい
- 修繕積立金が高い可能性がある
築60年のマンションにはデメリットもあります。そのため、購入を検討している方は物件を決める前にデメリットを必ず把握しておきましょう。
耐震性に不安がある
築60年前後のマンションは旧耐震基準で建てられているため、耐震性に不安があります。旧耐震基準とは1981年5月以前に設計された建物に適用される基準のことです。一方、 1981年以降に設計された建物に適用される基準は新耐震基準と呼びます。
旧耐震基準では震度5の揺れで倒壊しないことを基準としており、震度6以上の地震については特に定めがありません。一方、新耐震基準では震度7の大きな地震でも全壊しないことを基準として設計されています。
旧耐震基準 | 新耐震基準 | |
---|---|---|
震度5以下の地震 | 倒壊しない | 軽度なひび割れ程度に留める |
震度6~7の地震 | – | 倒壊しない |
築60年を超えるマンションは旧耐震基準で建てられているため、万が一大地震が来た際には倒壊のリスクがやや高いことを押さえておきましょう。中古マンションの耐震基準について詳しくはこちらの記事もご覧ください。
住宅ローンの審査が通りにくい
築60年のマンションを購入するときは、新築物件よりも住宅ローン審査が通りにくい場合があります。なぜなら中古マンションの場合は、担保にする物件の価値に重きを置くので築年数や立地などの審査が慎重に行わられるからです。
また中古物件によっては「条件を満たせずにローンが借りられない」「希望額借りられなかった」といった状態に陥る可能性もあります。金融機関によって条件は異なるので、購入時は複数の金融機関で相談してみましょう。
修繕積立金が高い可能性がある
修繕積立金の金額はマンションごとによって違いますが、築年数が古い物件ほど高くなるのが一般的です。築年数が古いマンションは大規模修繕などが必要になってくるため、修繕にかかる費用が高くなるのです。
マンションの修繕積立金について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
マンションの修繕積立金とは?管理費との違いや相場の目安を解説!
築60年マンションを購入する際のポイント
築60年マンションの購入を検討している方は、物件選びの際に以下の点に注意しながら選んでいきましょう。
- 建物構造を確認する
- 長期修繕計画は適切であるか確認する
上記のポイントを押さえておけば購入してから後悔するリスクを抑えられます。
建物構造を確認する
築60年の中古マンションを検討する際は以下のポイントをチェックしましょう。
- マンションの外観にヒビがないか確認
- 配管の素材や劣化具合を確認
はじめにマンションの外観を確認しましょう。外観に大きなヒビがあったりする物件は、修繕の予算が足りていなかったり管理がずさんだったりする可能性があります。外観のヒビの程度は遠目から見る感じでよいでしょう。
次に配管の状態を確認します。配管が金属製の場合は劣化が早く、入居してからすぐに交換や修理が必要になるリスクがあります。一方樹脂製の配管であれば、金属製よりも耐用年数が長いため安心できます。
また配管を目で見て、明らかな水漏れや劣化がないかも確認しておきましょう。築年数が経っている中古マンションは、配水管がコンクリートに埋まっていたり、下の階の天井裏を通っているケースも少なくありません。しかしメーターボックスの周辺や給湯器の周辺は配管が露出している可能性があるため、確認しておくことをおすすめします。
中古マンションの構造や配管チェック方法についてはこちらの記事もご覧ください
中古マンションは配管チェック必須⁉配管チェックの具体的方法を解説
長期修繕計画は適切であるか確認する
検討している中古マンションの長期修繕計画を見て、管理状態が適切かを確認ましょう。国土交通省のガイドラインによると、マンションにおける定期的な修繕は12年に1度実施するべきとされています。
つまり12年おきの大規模修繕に向けて、計画的な修繕積立金の徴収状況や徴収額などを算出しているかが確認すべきポイントです。マンションの長期修繕計画について詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
マンションの長期修繕計画とは?その目的や注意点などをわかりやすく解説
築60年マンションが将来建て替えになったら?
築60年マンションの建て替えが決まった場合は以下3つの方法で実施されるのが一般的です。
- 居住者負担で建て替える
- 建物の容積率を上げて建て替える
- マンションの敷地売却制度を活用する
居住者負担で建て替えるにしても平均で1,000万~2,000万円必要となるため、建て替えになった場合は多額の費用が必要になることを覚えておきましょう。
マンション建て替えの気になる費用負担について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
ただし、国土交通省の調査によると、2020年7月時点で全国の建て替え件数は254件(1.9万戸)にとどまっており、全体の2%しかありません。つまり、マンションの建て替えは現実に行われているケースが少ないのです。
この背景には、マンションを建て替えるための条件が関係してます。たとえば、建て替えには所有者の5分の4以上の賛成が必要になることや、建て替え費用として1000~2000万円程度の必要になるなどです。こうしたハードルがあるため、建て替えが進んでいない中古マンションが多くあるのです。
なお東京カンテイの調査によると、中古マンションの建て替えまでの年数は全国平均が33.4年、東京都は40.4年となっています。
また、東京都が運営している「マンションポータルサイト」よると建て替え年数が築36~40年で30.2%となっており、全体を通じて築35年以上のマンションが建て替えられているとのことです。
築60年マンションは将来売れない?
築60年のマンションでも、将来売れる可能性は十分にあります。特に資産価値が落ちにくいマンションを選んでおけば少しでも高い値段で売却できるでしょう。
マンションの資産価値は一般的に築年数が経つにつれて下がっていきます。下記の表は首都圏の築年数別の資産価値の推移を表したものです。
上記の表でわかるように築25年までは資産価値が下がり続け、築25年以降は横ばい状態になっています。
しかし、築年数以外でもマンションの資産価値は変わってきます。資産価値が落ちにくいマンションの特徴は以下のとおりです。
- 人口が多い地域のマンション
- 立地条件がよいマンション
- 治安がよいマンション
- 将来性のあるマンション
中古マンションをできるだけ高く売却するには、購入前に上記のポイントを確認しましょう。今現在の価値だけでなく築年数や周辺エリアの将来性を見極めることが大切です。
マンションの資産価値について詳しくはこちらの記事もご覧ください。
資産価値が高いマンションの重要性とは?新築と中古の価値の違いや計算方法を徹底解説!
築60年マンションを高く売却する方法
築年数が経っているマンションをできるだけ高く売るには以下2つのポイントがあります。
- 販売価格を少し高く設定する
- 複数社に査定依頼を出す
上記のポイントを押さえた上で、売却相場より安く売ってしまわないように注意しましょう。
販売価格を少し高く設定する
中古不動産を販売する場合、最初の販売価格は希望売却額より少し高めに設定しておきましょう。なぜならの最終価格交渉の際に、買主が値引き交渉してくる可能性が高いからです。事実、最終価格交渉の際に売主が価格を値引くことは珍しくありません。
つまり最初から売却希望額にしてしまうと最終的な売却額が希望額より低くなってしまう可能性が高くなります。物件が売れない場合は値引きをして再度販売することもできますので、最初から値引き用の価格を販売額に上乗せしておくのが得策です。
複数社に査定依頼を出す
マンション売値を査定する場合は、複数社に依頼するようにしましょう。マンションを売却する場合、売却相場に最も近い価格の査定が最も適切です。しかし実は不動産会社の査定に法律などで決められた明確なルールはありません。
そのため、1社に査定を依頼しただけではその査定結果が安いか高いか分からず、マンションを安く売ってしまう恐れがあるのです。
こうした事態を避けるには、複数の不動産会社の査定結果を比較し、価格の幅と平均である売却相場を正しく把握することが必要です。中古マンションの売却の流れについて詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
中古マンション売却の流れを知ろう!スムーズに売るには準備が大切
築60年マンションを購入する際は慎重に選ぼう
築60年のマンションはまだまだ住めるうえ売却もできます。しかし、長く住むには元々の耐久性と適切な管理が必要です。築60年のマンションを購入する際は、本記事でご紹介したポイントをチェックし、長く住めるのか将来的に売却できるのかを見極めておくようにしましょう。