一級建築士、インテリアプランナー、住宅性能評価員講習修了。
大学卒業後、総合建設会社の設計部で主にマンションの設計・工事監理、性能評価などを担当。独立後は生活者の視点から「安心・安全・快適な住まい」「間取り研究」をテーマに、webサイトや新聞・雑誌へのコラム掲載、マンション購入セミナーの講師として活動。
マンションを購入するときに新築と中古どちらを購入するべきか迷ってしまう方も多くいるでしょう。それぞれに長所、短所があるため特徴を比較して自分に合っている方を選択することが重要です。
本記事では新築、中古マンションそれぞれのメリット・デメリットについて解説するともに、価格差やどっちがお得かまで比較していきます。
マンションを購入してから後悔することがないように、ぜひ参考にしてみてください。
新築マンションのメリット・デメリット
新築マンションのメリット・デメリットは以下の通りです。
メリットは自分が最初の所有者になれることなど
新築マンションの最大のメリットとしては、自分が最初の所有者になれることが挙げられます。マイホームを手に入れたという高揚感を感じられるとともに、それまで誰かが住んでいた中古マンションと比べて、所有感や愛着もわきやすいでしょう。
建物が新しいだけでなく、キッチンや浴室などの室内設備やセキュリティ設備なども最新の高水準のものを使用できる点も新築マンションのメリットです。
また、新築マンションは物件価格については、どうしても中古マンションよりも高くなってしまいますが、それ以外の費用や税制面においては優遇されることも特徴です。
例えば、個人の売主から購入する中古マンションとは異なり、新築マンションはデベロッパーからの直販となるため、仲介手数料がかかりません。
また、マンションを買うと毎月支払う修繕積立金ですが、実は築年数が経つごとに値上げがされることがほとんど。新築マンションであれば、修繕積立金が最も安い時に入居することができます。
さらに、マイホーム購入をするなら必須で利用したい「住宅ローン控除」も新築マンションに有利な制度です。具体的には、築年数に応じて適用条件や最大控除額が変わってくる可能性があります。
住宅ローン控除についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
住宅ローン控除の制度内容や減税を受けるために必要な条件と書類を解説!
デメリットは購入前に実物を見られないことなど
新築マンション特有のデメリットとしては、購入前に実物を見られないことが挙げられます。というのも、多くの新築分譲マンションは、工事開始と同時に販売を開始し、完成までに完売を目指すのが一般的だからです。
もちろん、モデルルームやホームページでおおよそのイメージをつかむことはできますが、現地で実際の日当たりや眺望、風通しを確認することはできません。
いざ、住み始めてみたら思っていたよりも騒音がひどい、モデルルームほど日当たりが良くないということもあるかもしれません。
また、資産価値が下がりやすいことも新築マンションのデメリット。個人の売主と取引する中古マンションと異なり、新築マンションの販売価格には利益や人件費、広告費などが上乗せされています。そのため、ほとんどの場合、マンションは新築から5年ほどで10%近くも価格が下落してしまうのです。新築マンションは中古マンションと比べると物件数が少ないため、選択肢が少ないこともネックとなり得ます。
さらに、新築マンションではゼロからコミュニティを作っていくことになるため、お隣はどんな住人か、管理組合は適切に運営されていくか等は未知数です。
中古マンションのメリット・デメリット
中古マンションのメリット・デメリットは以下の通りです。
メリットは資産価値を維持しやすいことなど
下記の表は首都圏の中古マンションの資産価値の推移を表したものです。
引用元:東日本不動産流通機構
上記の表から読み取れるように、築6~10年以内では新築時の10%前後、さらに11~15年になると20%以上値下がりしています。その後は徐々に資産価値は下がっていき30年で下げ止まるのが一般的です。
つまり、マンションは築年数が経っているほどに、それ以降の価格の下がり幅が少なく、すなわち資産価値が保ちやすいといえます。購入時にも新築よりも安い価格で済みますから、その分の費用をリノベーションに充てて、理想の住まいを実現するということも視野に入るでしょう。
また、駅近など好立地の物件が多いことも中古マンションのメリットです。理由は単純で「先に条件の良い土地を選ぶできたから」です。再開発地域などの例外を除いて、既に人気のエリアで物件探しをするなら、中古マンションの方が豊富な選択肢から選ぶことができるでしょう。
さらに、実物をみて選べることも中古マンションの大きなメリットです。
日当たりや風通し、周辺や隣人からの物音が気にならないか等を実際に住んでいることを想定してチェックしたり、駐輪場やポスト、ごみ集積所の状態から住人のモラル感を測ることもできます。
デメリットは修繕積立金が高いことなど
中古マンションのデメリットとしては、まず単純にマンションの構造や設備の仕様が古いことが挙げられます。
構造でいえば、1981年以前の中古マンションでは「旧耐震基準」で設計がされていました。また、床下構造は現在主流の2重床ではなく、直床工法であることも。直床工法は配管のリフォームが困難になる他、遮音性に難があります。
さらに、築年数が経っているほど修繕箇所が増えるため、修繕積立金も値上げがされていることが一般的です。
上記のような建物の古さに伴って、住宅ローンの審査に通りにくいケースもあります。住宅ローンの審査においては、担保にする物件の価値に重きが置かれることもあるからです。特に年収から考えてギリギリの借入を希望する場合には注意しましょう。
また、中古マンションは新築マンションと比べてマンション自体の数が多いことは強みですが、マンション内での物件の選択肢が少ないことはデメリットです。
新築マンションであれば、基本的に提供されているすべての階数、間取りから希望の物件を購入することができます。対して、中古マンションの場合は選べる階数、間取りは売りに出ている物件の中から選ばなくてはなりません。
特に人気の上層階や角部屋は売りに出ても競争率が高いため、購入するのは容易ではありません。
新築マンションと中古マンションの価格差を比較!
価格差の観点で新築マンションと中古マンションを比較していきます。
新築と中古の物件価格差
新築マンションと中古マンションの物件価格差の違いについては、東日本不動産流通機構と不動産経済研究所の調査によると、中古マンションの平均価格は3,668万円とのことです。
一方、新築マンションの平均価格は5,994万円となっています。一般的には新築マンションの方が物件価格は高いです。
しかし、条件が異なれば新築マンションよりも中古マンションの価格のほうが高くなるケースもあります。たとえば中古マンションであっても、駅チカや設備が充実している場合は、新築時よりも価格が高くなるケースは珍しくありません。
また、新築と中古の不動産価格は以下の表から読み取れるように2013年頃から上昇傾向です。
参考元:東日本不動産流通機構
新築マンションと中古マンションの不動産価格に大きな差が生じた理由としては、2013年以降続く住宅ローンの超低金利化や東京オリンピックによる建築費の高騰、そして富裕層による高級マンションの需要増などが考えられます。
引用元:国土交通省
そもそも、新築マンションと中古マンションの価格の決まり方は違います。
新築マンションはマンションの販売会社の利益や広告宣伝費などが上乗せされるのが一般的です。そのため、新築マンションの価格が高くなるのです。
一方、中古マンションの価格の決まり方は、周辺エリアの取引事例を参考に値付けが行われます。また、中古マンションは新築マンションと比べて物件数が多く、希少性がそこまで高くありません。
そのため、新築マンションと違い異常な値上がりを起こすことはないのです。
マンションを購入するときは単に「中古だからお得」と決めつけず、条件や設備などを複合的に考慮して新築か中古かを決めていくようにしましょう。
新築と中古の購入にかかる諸費用の違い
マンションを購入する場合、新築と中古を問わず登録免許税やローン手数料などの諸費用が掛かります。
新築マンションの場合は、不動産会社に支払う仲介手数料が無いことが特徴です。
また、登記費用も中古マンションよりも税率が低く設定されています。また、毎月支払う修繕積立金も入居当時は低く設定されていることが多く、維持費も中古マンションよりも低いです。
中古マンションの場合は、個人の売り主からマンションを買う場合は非課税となり、売買ともに消費税は不要です。
不動産業者に仲介してもらう場合も、売り主が個人であれば消費税はかかりません。
ただし、業者が所有するマンションを購入するときは消費税がかかります。
つまり、個人からマンションを購入する中古マンションの場合は消費税が非課税ですが、新築マンションの場合は消費税込みの価格となることに注意しましょう。
新築マンションと中古マンションの諸費用の違いをまとめと以下のとおりです。
諸費用 | 新築マンション | 中古マンション |
---|---|---|
消費税 | 必要 | 不要 |
仲介手数料 | 不要 | 必要 |
不動産取得税 | 必要 | 必要 |
登記費用 | 必要 | 必要 |
ローン手数料 | 必要 | 必要 |
中古マンションでは物件価格の6~13%程度の諸費用が掛かりますが、新築マンションでは物件価格の3~5%で済ますことができます。
中古マンション購入時に消費税はかかる?かからない?課税対象の見極め方を解説!
新築と中古の税制優遇の違い
新築マンションの場合は資金面で税金控除が充実しています。具体的には、新築マンションを購入すると以下のような減税が受けられます。
- 固定資産税の軽減措置:新築マンションは5年間固定資産税が半額になる[注1]
- 長期優良住宅の不動産取得税の軽減:新築マンションは1300万円が控除される[注2]
- 住宅ローン控除:新築マンションは、毎年の住宅ローン残高の1%が13年間所得税や住民税から控除される[注3]
[注1]2022年3月31日までに建てられたもの
[注2]2022年3月31日までに取得したもの
[注3]2020年11月30日に契約しており、2022年12月31日までに居住する場合。それ以外は10年間の控除
一方、中古マンションの場合は固定資産税の軽減措置の適用はありません。また、住宅ローン控除についても適用条件を満たせない中古マンションもあります。
中古マンションを購入して住宅ローン控除を受けるためには、新築マンションの適用条件に加え、以下の条件を満たさなければなりません。
- 中古マンションの取得時が築25年以下であること(一定の耐震基準をクリアしていれば可能)
- 生計を共にする親族や特別な関係者からの取得ではないこと
- 贈与による取得ではないこと
税制上の優遇措置の違いでは新築物件に対しては税金面の優遇措置が多いです。
一方、中古物件に対しては新築物件より優遇措置が少ないです。新築か中古マンションどちらを購入するにしても、利用できる制度についてしっかりと確認しておきましょう。
新築マンションと中古マンションは結局どっちがお得?
マンションの購入は結局どっちがおすすめなのかはライフスタイルや目的ごとで異なります。この章では、マンション購入の判断材料として、新築と中古それぞれで向いている人の特徴を紹介します。
中古か新築かで迷っている場合は、ぜひ判断材料のひとつとしてお役立ててください。
新築マンションが向いている人
新築マンションが向いているのは、以下の条件に当てはまる人です。
- 誰かが住んだ住宅は避けたい
- 最新デザインの外観や内装がいい
- 最新設備の設備が欲しい
- 新しいコミュニティーを作り上げたい
- ランニングコストを抑えたい
新築マンションの価格は高いですが、手つかずのまっさらなマイホームが手に入るのは非常に魅力的です。
最新の設備で快適に過ごすことを優先したい人は、新築マンションが向いているでしょう。住人は新しく住み始める人ばかりなので、既存のコミュニティーに気を使う必要もありません。
また、購入後のランニングコストがかからない点もメリットです。思わぬ出費がないため、資金計画が立てやすくなります。
中古マンションが向いている人
中古マンションが向いているのは、以下の条件に当てはまる人です。
- 物件価格をとにかく抑えたい
- リノベーションで住宅を作り上げたい
- 立地にこだわりがある
新築物件を購入するほどの資金がない場合でも、中古物件なら購入できるというケースもあるでしょう。
諸費用は新築よりもかかってしまいますが、物件価格が安いため無理のない資金計画のもと、マンションの購入ができます。
築年数が古い物件でも、リノベーションをすれば新築と同じくらい綺麗になるだけでなく、こだわりの空間に仕上げることができます。
また、中古物件は立地などにこだわりがあるときも、物件数が新築よりも多いため最適です。
他にも、詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
新築・中古住宅の購入にかかる諸費用や抑えるコツを徹底解説
新築マンションか中古マンションか迷ったときは
本記事では新築と中古のどちらを選ぶべきか解説してきました。新築も中古もそれぞれメリットやデメリットがあり、自分がどこの優先順位を置くかによって住宅の選び方は変わってきます。
したがって、新築か中古かを考える時に最も意識しておきたいポイントとして、自分の年齢や年収、世帯人数や希望条件とマッチしている物件はどれかという視点を持つことです。
しかし、自分の目だけで自分にピッタリの物件を探し出すのはなかなか簡単ではありません。そこで、物件探しをするなら、自分の感覚で物件ポータルサイトを見るのではなく、プロからの提案をもらうことが重要です。
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