人生で大きな買い物のひとつでもあるマイホームの購入には、住宅ローンを借り入れる方がほとんどでしょう。そこで「住宅ローン控除」が適用になれば、毎年の所得税から控除を受けることができ節税に繋がります。
そんなマイホーム購入をお考えの方には嬉しい「住宅ローン控除」ですが、中古マンションももちろん適用の対象となります。
しかし、もともと住宅ローン減税は消費税増税に伴って住宅購入意欲が減退することを防ぐ制度として設けられているため、一般的に消費税が課税される中古マンションと、建物に消費税が課税される新築住宅とでは扱いが若干異なります。具体的には、控除期間と控除額が異なるのです。
そこで今回は、第1章で住宅ローン控除の概要を、2章で中古マンションでの適用条件について、そして最終章では住宅ローン控除を利用する際の確定申告の際の手続きについて解説します。
住宅ローン控除は待っていても勝手に適用されるわけではないので、必ず申請手続きまで把握しておきましょう。
住宅ローン控除の全体像について理解したいという方はこちらの記事もご覧ください。
住宅ローン控除は中古マンションでも適用可能
住宅ローン控除、正式には「住宅借入金等特別控除」とは個人が住宅ローンを借り入れて住宅を購入した場合、その年の住宅ローンの年末残高の1%が一定期間、所得税額から差し引かれるという制度です。
控除を受けられる期間は原則入居してから10年間ですが、消費税率が10%にアップされたことに伴う政府の特例措置やコロナウイルスの影響で、条件によって10年間と13年間で分けられています。以下のフローチャートで自分がどちらになるのか確認しましょう。
基本的に中古マンションは所有者が個人であるため、建物自体に消費税はかかりませんので控除期間は10年間です。ただし、所有者が不動産会社などの課税業者である場合建物代金にも10%の消費税がかかるため、その場合は控除期間が13年間になる可能性があります。
消費税が課税されるかどうかは、年間の最大控除額にも影響してきます。
新築住宅のように消費税が課税される物件の控除額は原則としてローン残高の1%で、残高の上限が4,000万円です。つまり1年に控除できる金額は最高で40万円となります。これが原則、入居から10年間にわたって続くので、トータルで最高400万円の節税が可能です。
ただし売り主の大半が個人である中古マンションの場合は、個人間の売買になり消費税が非課税となり、残高の上限が2,000万円で、結果として毎年の控除額の上限は20万となります。よく「中古住宅の場合は上限が20万円」と聞きますが、正しくは消費税を払わずに取得したなら上限が20万円であることを覚えておきましょう。
中古マンション購入時に消費税はいくらかかる?課税対象の見分け方も解説!
中古マンションの住宅ローン控除の適用条件
住宅ローン減税の適用条件は、住宅ローンを借り入れて家を購入していることが大前提です。ここでいう家とは自宅のことであり、別荘や投資用の家は住宅ローン控除の対象とはなりません。
そして一定の条件を満たしておく必要があります。この条件は取得する住宅が新築なのか中古なのか、増改築のようなリフォームなのかによって異なります。今回は中古マンションの適用条件に限って紹介してきます。
控除を受ける人の条件
まずは住宅ローン控除を受ける人の条件です。
順を追って説明すると、「居住する目的で住宅を取得したこと」という適用条件は最初に述べた通り投資用マンションや別荘は対象にならないという意味です。必ず居住用の中古マンションである必要があります。
次に、「取得の日から6カ月以内に住み、なおかつ12月末まで住み続けていること」が必要です。ただし、転勤などでやむをえない場合は6か月が経過していても住宅ローン減税が適用になる場合もあるので、詳しくはこちらの国税庁のHPをご覧ください。
そして最後に「合計取得金額が3,000万円以下であること」という条件があります。ここで言う取得とは、給与だけではなく、不動産売買や株式の売買などによる譲渡取得も含むことに注意しましょう。
中古住宅の家屋の条件
次に、実際に居住する中古マンションの物件にまつわる適用条件を確認していきます。
こちらも順を追って説明すると、まず「総床面積が50㎡以上の家屋」であることが条件です。ただし、2021年の住宅ローン控除の改正で、年間取得が1,000万円以下の場合は40㎡以上であっても住宅ローン控除が利用できるようになりました。また、ここで言う床面積は必ず不動産登記簿上の面積で確認しましょう。
次に、「総床面積の半分以上が自己居住用の家屋」であることが必要です。これは、自営業などの場合に例えば2/3以上が営業スペースになっているときは住宅ローン減税の対象とはならないという意味です。
次に「築年数20年(マンションなどの耐火建築物は25年)以下であること。そうでないときは耐震性能証明が必要」とありますが、築25年以上の中古マンションでは以下の三つの耐震基準のうちどれか一つを満たしていれば住宅ローン控除の適用条件を満たすとされています。
【中古住宅購入の場合の適用条件】
● 住宅性能評価書(耐震等級1以上)を取得していること
● 耐震基準適合証明書を取得していること
● 既存住宅売買瑕疵保険に加入していること
また、よくある勘違いとして「築25年までの上限があるなら、例えば築18年の中古マンションなら住宅ローン控除の適用期間は7年なの?」という築年数の上限から控除期間を引き算して考えてしまう方もいらっしゃいますが、正しくは上の三つの条件を満たしていれば例え築40年であっても10年間ないし13年間の控除を受けられることに注意しましょう。
最後に、住宅ローン減税は親族間売買では適用されないことに注意しましょう。
借入金の条件
最後に住宅ローンの借り入れに対する適用条件を見てみましょう。
まず、「10年以上の返済期間があること」という適用条件を満たす必要があります。
そして次に「借入金を住宅の購入または増改築などの資金に充てること」という適用条件に関しては、必ずしも住宅ローン控除は中古マンションの購入だけではなく、リフォームやリノベーション費用についても適用可能であることを意味します。
なお、リフォームやリノベーションの場合は工事費が100万円を超えているというのも条件の一つです。住宅ローン控除を受けるための工事に関してであれば、設置費用や設備機器などの費用も、この100万円以上の中に含めることができます。
中古マンションの住宅ローン控除額をシミュレーション
第3章では、実際に住宅ローン減税を利用した場合に最大でいくら金額が所得税(所得税から控除しきれない場合は住民税から控除)から控除されるのかシミュレーションしていきます。
改めて控除額の計算方法を整理すると、年末の住宅ローン残高の1%が所得税や住民税から控除され、中古マンションを不動産会社から購入した場合(建物に対して消費税を払っている場合)と個人から購入した場合(消費税がかかっていない)で最大控除額は異なります。
ここでは以下の条件のもと住宅ローン借入額別に1年目の控除額と10年間の最終的な控除額の合計額をシミュレーションしていきます。
【適用条件】
・金利:フラット35固定金利で年間1.33%
・返済期間:35年間
・所有権:一人で所有
・扶養人数:配偶者含め3人
・中古マンションの契約日:2021年7月1日
・物件価格は3,000万円
【シミュレーション結果】
年収/借入額 | 1年目の控除額 | 10年間の控除額 |
300万 | 1.1万円 | 11万円 |
400万 | 8.1万円 | 81万円 |
500万 | 16万円 | 160万円 |
600万 | 20万円 | 200万円 |
700万 | 20万円 | 200万円 |
800万 | 20万円 | 200万円 |
900万 | 20万円 | 200万円 |
1,000万 | 20万円 | 200万円 |
シミュレーション結果は以上の控除額となりました。基本的には中古マンションの場合、年間の最大控除額が20万円までと決まっているため、一定の年収があり所得税を20万円以上納めている方は物件価格に関わらず年間の上限は20万円になることが多いということがわかります。
逆に年収があまり高くなく所得税をそもそも多く納めていない場合は、自ずと控除額も少なくなっているのが住宅ローン控除の特徴と言えるでしょう。
他にも、詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
築10年の中古マンションがおすすめ理由と探し方のポイントを徹底解説!
中古マンション購入で住宅ローン控除を受けるための手続き
住宅ローン控除を受けるには、住宅を購入し入居した翌年に必要書類を揃えて確定申告を行う必要があります。
住宅ローン控除を受けるには確定申告が必要
確定申告とは、会社員にはなじみがないかもしれませんが、その年の所得にかかる所得税を確定させるために翌年の2月~3月に行われる手続きです。
住宅ローン減税を受けた1年目は確定申告が必要ですが、会社員などの給与所得者の場合、2年目以降は勤務先の年末調整で手続きができます。会社員が2年目以降、年末調整で手続きを行う場合は、金融機関等からの住宅ローン年末残高証明書に加え、税務署から送付される「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書」と「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」を勤務先に提出する必要があります。一方、源泉徴収の対象とならない自営業者などは、2年目以降も確定申告の際に住宅ローン減税の申請に必要な書類を提出しなければなりません。また会社員でも「年収が2,000万円以上」「給与所得や退職金以外の所得が年間20万円以上」などの場合は、2年目以降も確定申告を行うことに注意しましょう。
確定申告を忘れたら税金控除をしてもらえない?
年末調整での住宅ローン減税の申請を忘れたり、初年度での確定申告手続きを忘れてしまった場合でも、5年以内に確定申告の手続きを行えば5年分の還付が受けられます。ただし、借入時から申告する年数分までの書類を自分で準備しないといけないためなるべく忘れずに書類の準備をしておきましょう。
他にも、詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
住宅ローン控除は新築だけでなく中古にも適用される?条件と注意点
中古マンションの住宅ローン控除でよくある質問
最終章では、中古マンションで住宅ローン控除を組む際によくある質問にお答えしていきます。住宅ローン控除に対する疑問を解消したうえで申請に動き出しましょう。
よくある質問①リフォーム費用込みで住宅ローンを組んだのですが、リフォーム費用も控除の対象となりますか?
まずよくある質問が「中古マンションを購入したタイミングで同時にリフォームして、リフォーム費用も込みで住宅ローンを組んだ場合は住宅ローン減税の対象となるのか?」と言ったものです。
結論から言うと、リフォーム費用込みの場合も住宅ローン減税の対象となります。ただし、以下のリフォーム工事の場合のみ対象となるので注意が必要です。
- 増築、改築、建築基準法に規定する大規模な修繕又は大規模の模様替えの工事(注) 「建築基準法に規定する大規模の修繕又は大規模の模様替え」とは、家屋の壁(建築物の構造上重要でない間仕切壁を除きます。)、柱(間柱を除きます。)、床(最下階の床を除きます。)、はり、屋根又は階段(屋外階段を除きます。)のいずれか一以上について行う過半の修繕・模様替えをいいます。
- ロ マンションなどの区分所有建物のうち、その人が区分所有する部分の床、階段又は壁の過半について行う一定の修繕・模様替えの工事(イに該当するものを除きます。)
- ハ 家屋(マンションなどの区分所有建物にあっては、その人が区分所有する部分に限ります。)のうち居室、調理室、浴室、便所、洗面所、納戸、玄関又は廊下の一室の床又は壁の全部について行う修繕・模様替えの工事(イ及びロに該当するものを除きます。)
- ニ 建築基準法施行令の構造強度等に関する規定又は地震に対する安全性に係る基準に適合させるための一定の修繕・模様替えの工事(イ~ハに該当するものを除きます。)
- ホ 一定のバリアフリー改修工事(イ~ニに該当するものを除きます。その増改築等をした部分を平成19年4月1日以後に居住の用に供した場合に限ります。)
- ヘ 一定の省エネ改修工事(イ~ホに該当するものを除きます。その増改築等をした部分を平成20年4月1日以後の居住の用に供した場合に限ります。
よくある質問②築20年の中古マンションだったら、25年までの5年間が控除期間となりますか?
いいえ、築20年から10年または13年の控除期間となります。
中古マンションの住宅ローン控除の条件として築25年という適用条件がありますが、適用期間は適用上限までの年数ではなく、適用開始から10年または13年間の控除期間となることに注意しましょう。
よくある質問③転勤で一時的に居住しなくなったらどうなりますか?
転勤等の事情によって居住しない期間が発生した場合は、転勤期間中は住宅ローン減税の適用を受けることはできません。
ただし、当初の控除期間である10年又は13年以内に再入居する場合は、改めて必要書類を添えて確定申告することによって、残存期間について住宅ローン減税の適用を受けることができます。
よくある質問④職場の社内融資を受けている場合も対象になりますか?
給与等の支払いを受けている勤め先からの借入金の場合でも、10年以上の返済期間の場合は対象となります。ただし、無利子又は0.2%に満たない利率による借入金は、住宅ローン減税の対象とはならないことに注意しましょう。なお、親類や知人からの借入金は、利率に寄らず、住宅ローン減税の対象となる借入金には該当しません。
よくある質問⑤夫婦で住宅ローン控除を受けることはできますか?
連帯債務型の住宅ローンであれ、ペアローンであれ夫婦それぞれが住宅ローン控除を利用することができます。ただし、それぞれが確定申告で必要書類をそろえる必要があることには注意しましょう。ただし、共有名義の住宅ローンを組んだ後に奥様が専業主婦になった場合などでは、所得がなくなったことで所得税を払うことがなくなるため住宅ローン控除を受けることができませんので注意しましょう。
よくある質問⑥中古マンションの購入前に何か気を付けることはありますか
頭金の額に注意しましょう。というのも、毎年の年末残高の1%が控除される住宅ローン減税では、所得が多い人であればあるほど頭金の額を少なくして住宅ローン減税のメリットをできるだけ多く享受するという方法も残されているからです。住宅ローン減税期間が終了次第、繰り上げ返済で金利負担を少なくするというやり方ができないかを考えておきましょう。
ただし、頭金が無ければ月々の返済額は当然増えることになるので、毎月の返済負担率が自分の年収とみあっているかどうかは必ずシミュレーションしておきましょう。
他にも、詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
築30年の中古マンションはあと何年住める?メリットから選び方のポイントまで解説
住宅ローン控除を利用してお得に中古マンションを購入しよう
住宅ローン控除は年末の住宅ローン残高の1%が控除される制度で、これから住宅を購入しようと考えている方にとっては強い味方となります。
そのため、お得にマンション購入をするなら、住宅ローン控除の適用条件である広さや築年数などの適用条件を満たすマンションに絞って探すことが重要です。
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