土地は、単に持っているだけではお金を生みません。固定資産税など税金がかかりますので、実質的にはある種の「負担」があります。
しかし、土地をうまく活用すれば、収益を生み出してくれる、価値のある資産になります。
土地活用の方法は様々ありますが、都市部のある程度広い土地をお持ちの方は、ビル経営は他の土地活用と比べて収益性が高いため、検討してもよいでしょう。
この記事では、ビル経営について、アパートやマンションといった賃貸住宅経営との違い、ビル経営に向いている土地、ビル経営のメリット、リスク、経営の注意点ついて解説します。
ビル経営と賃貸住宅経営の違いは、ーーその他、土地活用方法について詳しくは以下の記事もご覧ください。
ビル経営と賃貸住宅経営の6つの違い
ここでは、土地活用でメジャーなアパート経営やマンション経営といった賃貸住宅経営との違いを解説します。
- 物件の種類
- 需要のある地域
- 契約形態
- 安定した収益性
- 高い空室リスク
- 光熱費の支払い
物件の種類
種類 | 説明 | 特徴 | 成功のコツ |
---|---|---|---|
オフィスビル | 企業がオフィスまたは事務所として使用する。 | ・部屋の内部に仕切りがない。 ・シンプルなレイアウト。 | ・立地が重要。 ・交通の便が良い場所がおすすめ。 |
商業ビル | レストランや小売店などのテナントが使用する。 | ・オープンで広々とした空間。 | ・需要の見極めが重要。 ・テナントの需要や競合の把握が必要。 |
ファッションビル | ファッション系のテナントが使用する。 | ・明るく開放的なデザイン。 ・イベントやプロモーション等の実施。 | ・誘致するテナントが重要。 ・テナントによってビルの魅力を高められる。 |
メディカルビル | 医療事業系のテナントが使用する。 | ・快適で機能的なレイアウト。 | ・地域の医療ニーズの見極めが重要。 |
事務所として使うオフィスビル
オフィスビルは、企業のオフィス(事務所)として使用することが目的とされているビルです。
オフィスビルとしての活用パターンは一般的にも広く知られているため、「ビル経営」と聞くと、このビジネスモデルと思い浮かべる人が多いと思います。
オフィスビルの内装の特徴としては、いくつかの部屋があり、部屋の内部にはあまり仕切りがなく、トイレなどの共有設備が設置してあるというシンプルなレイアウトになっています。
商業施設が入る商業ビル
商業ビルと呼ばれるビルの場合、レストランや小売店などの商業施設が主なテナントとなります。
商業ビルの中には、レストランや居酒屋、カフェなどにテナントの業界を絞ったビルを経営することも多いです。こういった業界を絞った商業ビルを経営する場合、ビルの立地や周辺環境、競合ビルの経営状況などを調査してから方針を決めることが必要となります。
また、業界を絞らず、多種多様な業界のテナントが入居するビルのことを雑居ビルといいます。
ファッション系が多いファッションビル
商業ビルの中でも、主にファッションアイテムを取り扱う店をテナントとして入れているビルのことをファッションビルと呼びます。
ファッションビルでは、フロア全体を開放的なデザインにしていることが多く、ショッピングをしたい人の流れに沿うような内装デザインのことが多くなっています。
立地条件と規模によっては、多くの利用客を惹きつけることができることから、空室のリスクを大幅に減らすことができます。
医療系施設が多いメディカルビル
メディカルビルとは、医療事業カテゴリとして扱われるテナントが多く入っているビルのことを指します。
一般的には、診療所だけではなく、調剤薬局なども一緒に入居していることから、利用者のニーズを上手く汲み取ったパターンとなっています。
医療施設の利用者の数は景気に影響されることが少なく、常に一定の集客が期待できるため、テナントとは長期契約を結ぶことができ、安定した収入を得ることができます。
需要のある地域
ビル経営は、人通りが多い土地や駅までのアクセスのよい土地、大通りに面した土地で始めないと経営に失敗する可能性が高いです。
オフィスビルを経営する場合だと、駅からの距離が重視されますし、商業ビルを経営する場合には、人通りの良さや大通り沿いにあるかも大切になります。
しかし、アパート経営のような賃貸住宅経営では、地方都市であったとしても、交通の利便性があり、生活環境が整っていれば賃貸需要はあります。
そのため、ビル経営は向いている地域が賃貸住宅経営に比べて圧倒的に少ないといえます。
安定した収益性
ビル経営はアパマン経営などと比べて収益が安定しているという特徴があります。
その理由は、「賃料を高く設定できるから」と「フロアによって賃料に差がないから」です。
賃料を高く設定できる
ビル経営では、坪単価で賃料相場が決まっているため、ワンフロアの面積が広ければ広いほど、賃料を高く設定することができます。
一方で、アパート経営などの賃貸住宅経営では、間取りや地域によって賃料相場が決まっていることから、2LDKの広い部屋よりも1Rの部屋の方が賃料単価が高くなります。つまり、ビル経営では、1フロア当たりの専有面積を増やすことが高収益を狙うために大切になってきます。
また、専有面積の広いビルを求めるテナントの方が従業員が多く在籍していたり、経営が安定しているなど、企業自体の属性がよいため、賃料を高めに設定することも可能となっています。
フロアによって賃料に差がない
アパートやマンションといった賃貸住宅経営では、高層のフロアにいけばいくほど賃料を高く設定することができます。
これは、高層フロアの方が日当たりがよく、見晴らしがよいことが付加価値になっていることが理由といえます。
しかし、ビル経営では、上のフロアに行けば行くほど賃料が高くなるようなことはありません。
オフィスビルにおいては、フロアを3Fと4Fの2フロアを借りたいというような企業もいることから、フロアごとに賃料を分けないことでテナントが借りやすくなります。
もし、フロアによって賃料に差がある場合、上のフロアの賃料が高いという理由で入居を決めてくれないこともあります。
光熱費の支払い
ビル経営では、ビルオーナーがエネルギー会社や水道局と契約を結ぶことから、ビル全体の水道光熱費をオーナーが代表して支払うことが一般的です。
これは、各入居者がエネルギー会社や水道局と契約を結び、利用料を支払う賃貸住宅経営とは異なります。
ビルオーナーが代表して水道光熱費を支払うとはいえ、オーナーが立て替えているだけなので、テナントが利用した分は各テナントに負担してもらいます。
また、ビル経営では、入居者が利用した水道光熱費などをひとまとめにして、共益費という形で徴収します。
共益費は、共用部を維持・管理するための費用であり、入居者に一定の金額を家賃と一緒に請求することが多いです。これは、オーナーがエネルギー会社や水道局に支払う金額に必ずしも一致させる必要はなく、多少上乗せた金額を設定することができます。
高い空室リスク
ビル経営では、アパート経営やマンション経営のような賃貸住宅経営に比べて、賃料単価が高く、入居者数も少ないため、空室発生時のリスクが高くなっています。
賃貸住宅経営では、半年間、1部屋空室が発生したとしても、家賃収入にそこまで大きな影響はありません。しかし、ビル経営では、1フロアであっても、半年もの間、空室が発生してしまうと、数百万円の損失につながります。
そのため、ビル経営では、賃貸住宅経営よりも空室対策に力を入れる必要があります。空室を発生させないためにも、事前のマーケティングを入念に行い、需要のある土地で、魅力のあるビルを建設することが重要です。
お持ちの土地で、ビル経営を始めるとなったら新築のビルを建築するという選択肢も出てくるはずです。とはいえ、ビルの建築費用がいくらになるか想像がつかない方がほとんどなのではないでしょうか。
そんなときは、早い段階で複数の施工会社に相談しておくのが大切です。イエウール土地活用なら最大10社の大手の施工会社からビルの建築プランを受け取ることができます。
さらに、所有する土地の特性に合ったプランはビル経営ではない可能性もあります。土地活用の方法には、ビル経営以外にも戸建て賃貸や駐車場経営があります。最適な土地活用方法を選択するためにまずは簡単な情報入力で土地活用プランを取り寄せてみましょう。
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ビル経営のメリット
ここでは、ビル経営を始めるメリットについて解説します。
多くの利益を期待できる
ビル経営は、賃貸住宅経営よりも賃料を高く設定できることから、より多くの収益を期待できるというメリットがあります。
そもそもビルは、デベロッパーやゼネコンと相談して建てることになりますが、賃貸需要がないエリアにはビルを建築することはありません。
そのため、空室が発生するリスクも少なく、安定して多くの賃料収入を得ることができます。また一度、空室が発生しても、周辺環境がよほど変化しなければ、入居者に困ることは少ないでしょう。
建てられるビルの自由度が高い
アパートやマンションといったような賃貸住宅は、都市計画法で定められた用途地域によって、建てられる建物に制限がかけられることがあります。
ただ、ビルの建築では、13種類の用途地域うち、商業地域に建築することが多いため、こういった制限にかかることも少なく、自由度の高い建物を建築することが可能です。
また、アパートやマンションでは日当たりが悪く、建築できないような変形地でもビルを建築することができることはメリットになるでしょう。
相続税対策になる
ビル経営では、相続税に関しては減税が期待できます。
例えば、オフィスビルとして使用されている土地は、「貸家建付地」として区分されるため、相続税の評価が2割前後(注 : 物件により異なります)下がります。
ビル自体は固定資産税評価額で評価されますが、こちらも建築コストの約6割(注 : 物件により異なります)と言われており、節税が可能です。
ビル経営を長期間に渡って経営する予定の場合や、今後、親族などに相続する可能性も視野に入れている場合は、減税効果があると言えるでしょう。
しかし、ビル経営は、テナントは住居用建物ではないので、固定資産税や都市計画税の減税はなく、経営を始める前のままの金額になることに注意が必要です。
ビル経営のリスク
ここでは、ビル経営のリスクについて解説します。
経営が難しい
ビル経営は、初心者にはかなりハードルの高い賃貸ビジネスです。
特に、好立地な条件を持つビルや、成功しているビル経営は、その道のプロフェッショナルである大手不動産会社などが資本になっていることが圧倒的に多くなっています。
十分な面積と魅力的な立地を所有していても、経営の知識がなければビル経営で成功することは難しく、加えて競合となるのが大手不動産会社であれば、競り勝つのは難しくなります。
こうしたことを踏まえて、信頼できる専門の会社に委託して、管理や経営はお任せすることを検討してみましょう。
景気の影響を受けやすい
ビル経営は、意外と競争の激しいビジネスです。入居しているテナントの企業やお店が、常に景気等に影響を受けていて競争にさらされており、そこから賃料をもらうことで成り立っているビル経営も、必然的にテナント側のビジネスの影響を直接受けるためです。
景気が悪くなった場合、テナントの賃料の支払いが遅れたり、もっと条件の良いビルを探して引っ越してしまったりするケースもあります。また、今回の新型コロナウイルスのように自粛がかかり、一気に複数店退去となる場合もあります。
一方、賃貸マンションやアパートは不景気の中でも住居を必要とするため、景気の影響で一気に人がいなくなるということはありません。
不景気の影響下でテナントが退去になったとき、すぐに次の入居者が見つかるとは限りません。最初から貸しやすい条件を整えておくのも一つの解決方法です。
初期費用が高額
ビル経営を始めるにあたっての初期費用は、アパート経営や駐車場経営など他の土地活用と比べても高額です。
大きな建築物を作る必要があるだけではなく、ネット環境、電気や空調設備、セキュリティ設備、防音設備など、テナントが安心して使用できるようハード面も十分に整える必要があるからです。
また、定期的なクリーニング、トイレなどの公共の場所のメンテナンス、設備の故障、緊急時の対応など、ビルの設備のクオリティを維持させるための管理費用もかかってきます。
初期費用だけでなくこうした維持費も、他の土地活用の場合と比べて高額になります。
土地活用を検討している方は、イエウール土地活用で複数企業から土地活用プランを取り寄せ、比較することが可能です。
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ビル経営の注意点
ここでは、ビル経営に成功するために取り組むべきことについて解説します。しっかりと確認して、実際に経営に活かしましょう。
立地や周辺環境をチェックする
ビル経営に成功するためには、立地や周辺環境の調査は欠かせません。
まずは、自分の土地が2章で紹介したようなビル経営に向いている立地に当てはまっているかどうかを確認しましょう。これらを確認することで、そもそも所有する土地でビル経営を始めてもよいのか、どんなビルの種類が向いているのかなど、事前の調査を行うことでビル経営に失敗してしまうリスクを大幅に減らすことができます。
また、立地だけでなく、所有する土地の制限についても確認しておくべきです。土地には、都市計画法によって「用途地域」が定められており、高さ制限や建ぺい率・容積率が異なります。ビルを建設するなら、商業地域であることが望ましく、商業地域であれば、ある程度規模の大きい建築物を建てることができます。
テナントの又貸しを禁止する
ビル経営で成功するためにも、テナントの又貸しを禁止しましょう。
「本契約に基づく賃借権を第三者に譲渡し、または転貸すること。」
もし、又貸しを許可してしまうと、立ち退きのときに問題が発生します。A社に貸し出していたオフィスをB社に又貸ししていたとします。
このとき、ビルオーナー(賃貸人)とA社(賃借人)、B社(転借人)がいる状態になります。こうなった場合、ビルオーナーがA社に立ち退き料を支払って立ち退かせたとしても、B社が残っていしまい、B社にも立ち退き料を支払わなければなりません。
これでは、立ち退き交渉を2回も行わなければならず、立ち退き料も二重になることから、ビルオーナーにとってかなりのリスクになります。
また、契約書に記載されていなくても、賃借人の無断の又貸しは、民法によって禁止されています。
第六百十二条 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
そのため、賃借人が又貸しを行っていることが発覚したら、すぐに弁護士などに相談して、契約解除の手続きに移りましょう。
テナントの立ち退きには立ち退き料がかかる
ビル経営を成功させるためにも、立ち退き料がかかることも覚えておきましょう。
企業と賃貸借契約を結んでいる場合、入居者によほどの落ち度がない限りは、オーナー都合の立ち退きの強制が認められないことになっています。
これは、借地借家法にオーナー(借家権設定者)と入居者(借地権者)の関係が明記されており、正当事由がない限り入居者には立ち退きの要求を断る権利があります。
第六条 前条の異議は、借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。以下この条において同じ。)が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過及び土地の利用状況並びに借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、述べることができない。
また、正当事由のひとつでもある立ち退き料を支払うことで、立ち退きを要求することができます。
しかし、ビルの立ち退き料はアパートの立ち退き料とは異なり、かなり高額となっているため、よく検討が必要です。
過去の事例では、3,000万円の立ち退き料を認めたこともあることから、しっかりと契約内容を確認したり、悪質なテナントと賃貸借契約を結ばないように注意しましょう。
ビル経営の特徴を確認してから経営を始めよう
土地活用の選択肢の中でも、ビル経営に向いているのは立地や広さに恵まれた土地です。
ビル経営の初期費用も高額ですが、その分長期的に大きなリターンが返ってくることが期待できます。
しかし、専門的な不動産経営の知識が必要な活用法でもあることから、基礎知識を身につけることはとても重要です。
メリットだけではなく、最初からリスクがあることを念頭において、できるだけ賢い土地活用を行いましょう。
記事のおさらい