「築20年の一戸建てを売却したいけど、建物は古いし、売れるのかな?」と不安に思う方もいるでしょう。
築20年を超えている一戸建ての建物の資産価値は、基本的には「ゼロ」と判断されてしまうため、基本的には土地の価格で売却を進めることになります。
一方で、不動産売買が成立した物件の平均築年数は築20年前後と、築20年の一戸建ては活発に売買されていて、人気が出やすいです。
この記事では、築20年の一戸建ての売却について、売却相場や売却成功のためのポイントを解説します。
「まずは家を売る基礎知識を知りたい」という方は、こちらの記事をご覧ください。
築20年の一戸建ての売却相場
一戸建てに限った話ではありませんが、不動産の価値は築年数が経過するにつれて低くなります。
築20年の一戸建ての売却相場は、一戸建ての建物部分の資産価値がほぼ「ゼロ」だと判断されてしまうため、基本的には土地の価格で売却を進めることになります。
木造一戸建ての価格減少率を表した濃いオレンジの線を見てみると、築20年の一戸建ての建物部分は新築時の約15%の価値しかありません。
木造一戸建ての耐用年数が22年のため、築20年を超えた一戸建ては、査定時に建物部分の価値がほぼゼロと判断されてしまい、ほぼ土地の価値だけで売却されることになります。
つまり、3000万円(建物価格2000万円、土地価格1000万円)で購入した一戸建てを築20年で売却する場合、売却価格は約1300万円(建物価格300万円、土地価格1000万円)まで下がってしまうのです。
建物の素材によって耐用年数は異なり、たとえば鉄筋コンクリートでは、財務省令で47年、レンガ外壁で約50年となります。またメンテナンスの頻度によっても不動産の評価は大きく異なります。
【早見表】築年数別・購入価格別の売却相場
築年数による下落率をもとに、一戸建てを新築で購入した時の価格別で売却相場をまとめてみました。
築20年の一戸建ては、3,000万円で購入した場合の売却相場は2,100万円、4,000万円の場合は2,800万円、5,000万円の場合は3,000万円となっています。
特に購入時の価格が高いほど、築年数が1年経過するごとに下落する価値は大きくなっています。
築年数について、5年ごとにどれくらいの価格差が出るのかも確認しておきましょう。
築年数 | 新築時に 対する相場 | 新築時の購入価格(建物部分) | ||||
2,000万円 | 3,000万円 | 4,000万円 | 5,000万円 | 6,000万円 | ||
築15年 | 約25% | 500万円 | 750万円 | 1,000万円 | 1,250万円 | 1,500万円 |
築20年 | 約15% | 300万円 | 450万円 | 600万円 | 750万円 | 900万円 |
築25年 | 約10% | 200万円 | 300万円 | 400万円 | 500万円 | 600万円 |
築20年の一戸建ての売却成約率は築浅と変わらない
ここまでに、築20年の一戸建ての売却相場について見てきました。
築20年の一戸建ては、売却相場が割安となっていますが、裏を返すと買い手にとってはお手頃価格だからこそ、築20年の一戸建ては需要が高く、問題なく売却することができます。
レインズが発表している最新データによると、2023年の成約した一戸建ての平均築年数は21.82年です。このように、築20年前後の一戸建てが活発に取引されていることが分かります。
出典:レインズ|築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2023年)
また、上のグラフを見ると、築16~20年の対新規登録成約率(成約件数/新規登録件数)は22.6%となっています。これは築11~15年の25.3%とほぼ変わらない数字となっており、築20年前後の物件であっても築10年以降の物件と売れやすさは変わらないということが分かります。
一戸建て住宅の築年数別構成比率を見てみると、2023年に新規登録された一戸建てのうち築16~20年の一戸建ての割合は11.7%であったのに対し、2023年に成約した一戸建てのうち築16~20年の割合は13.3%と、成約物件の構成比率が新規登録物件の構成比率を上回るほど需要があることが分かっています。
よって実際の売買成約率から考えても、築20年の一戸建ては問題なく売却できると言えるでしょう。
築20年の一戸建てが売却できる理由
ここまでで築20年の一戸建てがそれより築浅の物件と変わらず売れていることがお分かりいただけたと思います。
しかし、「築年数が経っているのになぜ人気があるのか?」と不思議に思いますよね。
築20年の一戸建てが売却できる理由は3つあります。
- 価値がほぼゼロの物件の中では築浅だから
- 残り40年は住めるから(平均)
- 土地の価値は変わらないから
理由①価値がほぼゼロの物件の中では築浅だから
日本人は新築を好む傾向があるにもかかわらず築20年の一戸建てが売れている理由を見ていきましょう。
まず一つ目の理由は、築20年以降の価値がほぼゼロになっている一戸建ての中でも築年数が少なく比較的綺麗な物件だからです。
実のところ、築20年以降の一戸建てを安く購入してリフォームやリノベーションを行い、自分好みの家に住みたいという方は決して少なくありません。というのも、たとえば首都圏で土地付き注文住宅を新築で購入するとなると、少なくとも5,000万円以上かかりますし、都内であれば1億円以上かかるケースも少なくありません。
とはいえ、実際5,000万円の家を購入するにはかなり経済力も必要になるため、新築戸建ての購入を断念せざるを得ないという方も多くいらっしゃいます。
そこで、築年数が経過して売却価格が低くなっている一戸建てを購入してリノベーションすることで注文住宅を購入するより安く自分好みの家に住みたい人が増えているのです。
初めからリフォームやリノベーションを前提として一戸建てを探している方は築年数を気にせず購入しますが、その中でも家の造りにガタが来ていない可能性が高い築20年の一戸建ては人気があります。
そのため、売れ残ることなく売却することができるのです。
近年の不動産価格上昇に伴い、更に新築価格の高騰が見込まれている分、中古物件を買いたいという方はまだまだ増えて人気が続くでしょう。
理由②残り40年は住めるから
築20年の一戸建てが売れる2つ目の理由は、あと40年は住める可能性が高い家だからです。
人気があることや土地の価格で売れることはここまでで説明しましたが、家を選ぶうえであと何年住めるかは非常に大切にされるポイントです。
安いからと言って古すぎる家を買ってしまうと数年で壊れたり、修理が必要になることもあるため、家を探している人はあと何年ほど住めそうかは必ず見ています。
耐用年数が経過した後も、メンテナンスをすれば問題なく家に住み続けることができます。
一戸建ては平均60年以上は住むことができると言われるため、築20年であれば残り40年以上は住むことができます。
家を買いたい人にとっては実用性が十分にある物件と言えるでしょう。
理由③土地の価値は変わらないから
築20年の一戸建てが売れる3つ目の理由は、建物に価値がなくても土地の価値は変わらないからです。
確かに築20年の家自体にはほぼ価値がないと言われますが、少なくとも一戸建てが建っている土地は劣化することがありません。
築20年以上になると土地の価値で一戸建ての売却価格が決まると考えるのが一般的になっているので、土地に価値があれば売値はつくと考えて問題ないでしょう。
あなたの一戸建て、
売ったらいくら?
あなたの一戸建て、
売ったらいくら?
築20年の一戸建て売却を成功させるポイント
築20年の一戸建ては問題なく売却することができるとはいえ、さらに築年数の浅い物件に人気が集まることは事実です。
そのため、最後に築20年の一戸建ての売却をスムーズかつ効果的に進めるための具体的な成功ポイントを説明していきます。
- 一戸建ての売却が得意な不動産会社と契約する
- 家のアピールポイントをまとめておく
- 余裕のある売却スケジュールを組む
- ホームインスペクションをする
- リフォームをする前に売りに出す
- 自分で売却相場を調べておく
- 不動産買取の利用も検討する
一戸建ての売却が得意な不動産会社と契約する
不動産会社の中には、「マンションの売却が得意」「土地の売買を専門にしている」など得意不得意があります。築20年の一戸建てを売却する際には一戸建ての売却が得意な不動産会社と契約するようにしましょう。
一戸建ての売却が得意な不動産会社であれば、一戸建ての購入を検討している顧客を抱えていたり、家を高く売るためのアドバイスを貰うことができたりと、売却時の良きパートナーとなってくれることでしょう。
一戸建ての売却が得意な不動産会社であるか見分けるためには、不動産会社のホームページにある売却実績を確認します。一戸建ての売却実績が豊富な不動産会社であれば、安心して契約することができるでしょう。
家のアピールポイントをまとめておく
一戸建てを売却する際には、買主に伝えるアピールポイントをまとめておきましょう。特に周辺環境についてよい部分があればアピールするべきです。
駅からの距離が近い、一戸建ての周辺に生活便利施設が充実している、家の周りに街灯がたくさんあって安全など、実際に住んでみないと分からないアピールポイントがあればそのポイントを明確にすることで、求める売却価格がその価値に見合っていることを説得力をもって伝えることができます。
広告を打つときにも必要ですが、建てば内見時に直接伝えることもできます。事前にまとめておくことで、伝えるべきことを焦らずにスムーズに伝えることができるのでオススメです。
余裕のある売却スケジュールを組む
一戸建てを売却する際には、余裕のある売却スケジュールを組むようにしましょう。売却活動に使える期間が短ければ、売るために買主の値下げ交渉を受け入れたり、売り出し価格を値下げしたりと損をしてしまうことがあります。
レインズによると、一戸建てのレインズに登録してから成約に至るまでの日数は95.2日、レインズ登録前の準備期間や成約から引き渡しまでの期間も合わせると、一戸建てを売却するには約4~6か月かかると言われています。
築20年の一戸建ては、築浅の一戸建てと比べると成約までにかかる日数が多くなるでしょう。余裕のある売却活動を行うためにも、売りたい時期の約半年前から売却活動の準備を始めるとよいでしょう。
ホームインスペクションをする
築20年の一戸建てを売却する際には、ホームインスペクション(住宅診断)を必ず行いましょう。
ホームインスペクションとは、、不動産の売却前にホームインスペクター(住宅診断士)が住宅の欠陥や劣化状況、補修すべき場所やメンテナンス時期、費用などを調査してアドバイスを行うことです。
シロアリ被害がないか、水漏れしている部分がないかなど、見ただけでは分からない部分まで調査するため、築20年と築年数が古い一戸建てであっても安心して購入できることを買主に証明することができるのです。
また、広告を掲示する際も、ホームインスペクションをすることによって、他の物件よりも安心感があることをアピールすることができ、買主が見つかりやすくなるでしょう。
リフォームをする前に売りに出す
築20年の一戸建てを売却する際は、リフォームをしないで売り出しましょう。冒頭でもお伝えしたように、築20年の一戸建ての購入を検討している方は、購入後に自分の好きなようにリフォーム・リノベーションをしたいと考えている場合もあります。よってリフォームをすることが、必ずしも買主にとってプラス評価となるわけではないのです。
リフォームをすることで売却価格が上昇することもありますが、リフォームにかかった費用以上の価格が上乗せされる保証はありません。
まずはリフォームをせずに一戸建てを売りに出し、時間が経っても買主が見つからなかった場合に不動産会社と相談してリフォームを行うようにしましょう。
自分で売却相場を調べておく
築20年の一戸建てを売却する前に、必ず一戸建ての売却相場を調べておきましょう。
売却相場を把握していないと、相場より安い価格で売りに出してしまい損をする、相場より高い価格で売りに出して売れ残ってしまう可能性があります。
築20年の一戸建ての売却相場を調べるには、不動産情報ライブラリやレインズマーケットインフォメーションを使う方法がおすすめです。
売却相場を調べる際には、築年数・地域詳細・駅からの距離・面積といった条件を細かく設定することによってより実際の売却価格に近い売却相場を知ることができます。
また、築20年の一戸建ては主に土地の価格で売却されるため、土地の売却相場を調べることも重要です。
土地の売却相場は、不動産情報ライブラリや路線価図・評価倍率表を使って調べることができます。
不動産買取の利用も検討する
築20年の一戸建てを売りに出してしばらくしても買主が現れなかった場合、不動産買取の利用も検討してみましょう。
不動産買取とは、一戸建てを直接不動産会社に買い取ってもらう売却方法のことです。
不動産買取では買取後に不動産会社がリフォームやリノベーションを行うため、状態の悪い家でもそのまま買い取ってもらうことが可能です。また、買主は不動産会社と決まっているためスピーディーに売却することができます。
しかし不動産買取では、買取価格の相場が仲介の相場の約70%というデメリットがあります。なかなか売れない一戸建てを価格が安くてもよいから売却したいという方におすすめの売却方法と言えるでしょう。
築20年の一戸建ての売却事例
売却イメージをつかむためにも、都内・首都圏・関西圏のそれぞれのエリアについて、築20年の一戸建ての売却事例を1つずつご紹介します。
東京都練馬区平和台の築20年の一戸建て売却事例
東京都練馬区平和台では、築20年の一戸建てが次の条件で売却された実績があります。
売却価格 | 5,100万円 |
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駅へのアクセス | 東京メトロ 副都心線・有楽町線 氷川台駅 徒歩11分 |
売却時期 | 2024年 |
延床面積 | 65㎡ |
土地面積 | 70㎡ |
引用元:不動産情報ライブラリ|国土交通省
神奈川県横浜市旭区四季美台の築20年の一戸建て売却事例
神奈川県横浜市旭区四季美台では、築20年の一戸建てが次の条件で売却された実績があります。
売却価格 | 3,000万円 |
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駅へのアクセス | 相鉄線 二俣川駅 徒歩18分 |
売却時期 | 2024年 |
延床面積 | 125㎡ |
土地面積 | 95㎡ |
引用元:不動産情報ライブラリ|国土交通省
京都府京都市右京区西院清水町の築20年の一戸建て売却事例
京都府京都市右京区西院清水町では、築20年の一戸建てが次の条件で売却された実績があります。
売却価格 | 2,700万円 |
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駅へのアクセス | 阪急京都本線 西院駅 徒歩13分 |
売却時期 | 2024年 |
延床面積 | 45㎡ |
土地面積 | 75㎡ |
引用元:不動産情報ライブラリ|国土交通省