マンション経営にかかる費用は一部を必要経費として計上できます。経費をうまく計上できれば節税効果も期待できます。
本記事ではマンション経営における経費について、計上できる経費とできない経費に加え、節税のポイントや節税目的で始める場合のリスクを説明します。
マンション経営の基礎知識を知りたい方は以下の記事をご覧ください。
マンション経営で経費になる費用
マンション経営にかかる費用で経費として計上できるものとはなにか、具体的な例を確認していきましょう。
修繕費・修繕積立金
建物は時間と共に老朽化していくことは避けられないので、維持管理が必要です。
付属設備、給湯器やエアコンなどの機械装置、器具備品など、通常の維持管理や修理のためにかかる費用は「修繕費」として経費計上できます。
具体的には以下の費用などは修繕費として経費計上可能です。
- 部屋のクリーニング代
- 原状回復のための内装工事費
- 壁紙の交換
- 床板の張替え
- 退去時の修理費用
また、区分マンションのオーナーは、建物の大規模修繕に備え修繕積立金を管理組合に支払います。この修繕積立金も経費として計上できます。
管理委託費用
マンション経営をする際、管理会社にマンションの管理を委託する人も多いでしょう。
この際に発生する委託費用も経費として計上可能です。
保険料
所有している区分マンションが加入している以下の保険料は経費計上ができます。
- 火災保険
- 地震保険
- 賃貸住宅費用補償保険
- 施設賠償保険などの損害保険
ただし、火災保険などの損害保険料のうちその年にかかった保険料のみが対象です。
1年ごとに掛けている保険であれば全額経費として計上できますが、例えば、10年契約など長期で掛けている場合は、保険料を資産計上し、毎年10分の1ずつを損害保険料として経費計上することが多いようです。
賃貸用の部屋のみ対象なので、自分で使っている部屋があるなど、賃貸事業用ではない部分は、経費計上できません。
税金
具体的には、以下のようなマンションを所有することにより生じた税金などは租税公課として経費計上が可能です。
- 不動産取得税
- 印紙税
- 土地や建物の固定資産税
- 都市計画税
- 登録免許税
- 事業税
- 自動車税
ただし、不動産取得税、固定資産税、自動車税などは事業で使用するもののみが対象です。
プライベートで使用するものは対象外になるので、事業とプライベートで併用している場合は按分する必要があります。
ローン手数料や利息分
マンション購入で発生したローンについて、ローン手数料やローン返済額のうちの支払利息分については経費として計上できます。
ただし、元本部分は経費にならない点に注意しましょう。
広告費用
物件の宣伝や販売促進などにかかる費用で、物件の入居率を上げるための広告宣伝費用であれば、入居者を確保するための必要経費として計上できます。
ただし、単にブランドイメージアップのための広告であれば、経費計上ができない場合があります。
減価償却費
減価償却とは、建物や付属設備など時間が経つごとに価値が下がる固定資産を取得した際に、その取得費用を固定資産の耐用年数に応じて経費計上する会計処理のことです。減価償却費は、建物や付属設備の法定耐用年数の間、毎年一定の金額を経費計上できます。減価償却費は実際に支払うものではありませんが、経費として認められている費用です。
マンションの建物や付属設備の減価償却費は、一般的には最も額が大きい経費です。しかし、減価償却費が少なくなっていくと、その分の税効果は小さくなっていきます。
司法書士・税理士報酬への報酬
マンションを購入するにあたって、不動産登記の手続きを司法書士に依頼するケースがほとんどです。また、マンション経営において確定申告などの財務関係の業務を税理士に委託する人も多いでしょう。
このような場合に発生する司法書士や税理士への報酬は経費扱いとなります。
立ち退き料・弁護士への報酬
賃料の未払い、近隣住民への迷惑行為などがあった場合、入居者に立ち退きをお願いすることがあります。
お願いしても退去をしてもらえない場合は、立ち退き交渉をすることになりますが、多くの場合、交渉には弁護士をたてて対応します。
このとき、交渉で決定した入居者に対する立ち退き料と弁護士への報酬が発生します。
これら立ち退き料と弁護士への報酬は、入居者とのトラブルを避ける目的達成にもなり、マンション経営をスムーズに行うことにつながるため、経費として計上することができます。
仲介手数料
マンションを購入する際、オーナーは不動産投資会社に物件を紹介してもらって購入する場合が多くあります。
このような場合、不動産投資会社に仲介手数料を支払いますが、この仲介手数料は経費として扱われます。
また、マンション経営を始めた直後や、空室が発生した際には入居者を募集する必要があります。
一般的に募集は不動産会社に任せますが、このときに不動産会社に対して支払う仲介手数料も、経費として計上可能です。
通信費
マンション経営のための通信費は経費扱いになります。
例えば、不動産会社や管理会社、税理士などとの電話代、郵便代、物件検索にかかったインターネット通信費が該当します。
交通費
物件を見るためや物件管理のため、接待やセミナー参加のために、電車やバス、自動車を利用することがあるでしょう。
このときにかかる電車代やバス代、自動車を使用した際のガソリン代、駐車場代などの交通費も経費の対象です。
接待交際費
管理会社や不動産会社や税理士などと打ち合わせをするための飲食費などは接待交際費として経費計上できます。
事務用品費・消耗品費
経理作業を行うために使用する事務用品や、マンション経営に関わる消耗品費も経費となります。
例えば、ノートやペンなどの文房具、物件撮影のために使ったデジカメ、チラシを作製したPC、プリンター、印刷用紙などがあげられます。
情報収集費
マンション経営に関する情報収集のために、セミナーに参加したり、新聞や図書・資料などを購入することがあるでしょう。
このような、自身のスキルアップや趣味目的ではなく、あくまでマンション経営のための情報収集にかかる費用は経費として計上できます。
\建築費は?初期費用は?/
活用事例:「THE BALCONY」 区画整理に合わせ建築された入居者視点に立った自宅併用マンション
エリア | 神奈川県 |
土地面積(㎡) | 824 |
延べ床面積(㎡) | 1744.36 |
工法 | プレハブ工法 重量鉄骨ラーメン構造 |
マンション経営で経費にならない費用
マンション経営に関わる費用でも、以下のような費用は経費として計上できません。
私生活にかかる費用
プライベートで使用した費用は経費として計上できません。例えば、飲食代について、接待交際費として計上できる不動産会社、管理会社の担当者と打ち合わせのための飲食代以外の、一人での食事や、家族など不動産投資と関係のない人との食事にかかる飲食代は経費として認められません。
所得税や法人税などの税金
マンション経営に関係する税金のすべてが経費になるわけではありません。
所得税や法人税・住民税は個人的な支出とされ、経費にはなりません。
罰則金
2章で解説したように、物件の管理やセミナー参加・接待などのために発生する交通費は経費として計上できます。
しかし、その際にスピード違反や駐車違反などで罰則金が発生した場合、その罰則金は経費として認められません。罰則金はオーナーの過失であり、本来であればマンション経営に必要のない出費であるためです。
ローンの元金
マンション購入で発生したローンについて、ローン保証料やローン返済額のうちの支払利息分については経費として計上できます。しかし、元金部分については経費として計上することができません。
元金部分の経費計上が認められていない理由は、マンション購入費用については、耐用年数で分割した金額を毎年経費として計上する減価償却が認められているためです。
資格取得費用
マンション経営に関する情報収集のためのセミナーへの参加費用や新聞図書費は経費として計上できますが、資格取得にかかる受験費等は経費として認められません。
マンション経営に役立つ不動産関連の資格は、宅地建物取引士やマンション経営管理士、賃貸不動産経営管理士など多くありますが、資格取得は個人のスキルアップになると見なされ、経費とはなりません。
このように、マンション経営に関係しそうな出費であっても経費として認められないケースが存在します。1章で解説した経費の基準をベースに、適切に計上するようにしましょう。
マンション経営における節税ポイント
マンション経営では経費を上手に計上することで、所得税や住民税を抑える事ができます。この章では、節税面において抑えておきたいポイントを紹介します。
損益通算をする
確定申告時に損益通算を行うことで、所得を減らし、節税効果を得ることができます。
たとえば、給与所得が600万円で不動産所得が₋100万円の赤字だとすると課税対象となる総所得金額は600₋(₋100万円)=400万円になります。
このように複数の所得金額を合算して損益を相殺することを「損益通算」といいます。
領収書の保管・整理
確定申告時、1年間に利用した経費を漏れなく計上するためには領収書が必要になります。そのため、日頃からマンション経営に関する領収書やレシート類はきちんと保管、整理しておきましょう。
また、領収書の保管義務があります。青色申告における領収書の保管期間は原則で7年間です。
青色申告をする
確定申告の際、青色申告を行うことで、所得税や住民税での優遇措置を受けることができます。青色申告は最大65万円の控除や専従者給与を経費に計上できます。
また、不動産所得における損失合計所得金額がマイナスとなった場合はこれを3年間繰り越すことが可能になります。
法人化の検討
給与所得と不動産所得を合わせた課税所得が900万円を超える場合は法人化したほうが節税になります。
理由として、個人所得は所得が上がるほど税率が上がり最高45%までに達しますが、中小法人の場合、所得金額が800万円超の法人の法人税率は、一律で税率23.2%だからです。
所得税率が法人税率を上回る所得900万(税率33%)に達する場合は、法人化の検討を始めてもよいでしょう。
税理士に相談
これまで確定申告時、税金を抑える方法を紹介してきましたが、マンション経営初心者や不動産所得以外に複数収入がある場合、申告が複雑になります。
経費をミスなく計上するために、確定申告の際は専門家に任せることも、結果として所得税や住民税を抑えることに繋がります。
節税目的でマンション経営を始めるリスク
節税目的でマンション経営を始めると、節税以上に大損する可能性があります。ここでは節税目的でマンション経営を始めるリスクについて説明します。
収益が多いと税金が増える可能性がある
そもそも、所得税や住民税が節税できるのは、マンション経営が赤字であることが前提になります。
会社員の場合、給与所得と赤字の不動産所得を損益通算することによって税金を抑えることができます。
ですが、マンション経営の収益が多い場合は節税になるどころか、給与所得だけの場合に比べて多くの税金を払う事になります。
節税効果以上に支出が大きくなる
マンション経営では、経費を多く計上することで節税につなげることが可能です。ですが、経費が大きくなると同時に支出も大きくなります。
支出が大きくなると利益が出にくくなり、赤字になりやすいです。マンション経営で節税効果を得られても、それ以上に利益が出ない場合は本末転倒です。
資産価値が値下がりしマイナスになる
マンション経営は、所得税や住民税以外に相続税対策にもなります。理由は現金ではなく不動産を相続すると相続税評価額が低くなるためです。
ですが、資産価値が下落した場合、節税効果以上のマイナスになってしまう恐れがあります。
このように相続税対策としては有効であっても、資産価値が大幅に下落する場合、思うような恩恵を受けられなくなります。
マンション経営で適切な経費の目安
マンション経営を運営するにあたり、適切な経費の目安はいくらなのでしょうか。
経費の目安は家賃収入の15~20%
マンション経営にかかる経費の目安は家賃収入の15〜20%程度と言われています。
例えば、年間家賃収入が110万円であれば経費は16万5000円~22万円程度に抑えるといいです。
マンション経営において、必要な費用であれば経費として計上することができますが、経費を使いすぎるとキャッシュフロー悪化の原因にもなります。
適切な金額を必要なタイミングで使うことが良好なマンション経営をしていくうえで重要です。
収支シミュレーション
マンション経営を始める前に経費を見込んだうえで、実際に手元に残るお金はいくらになるのか収支シミュレーションしてみましょう。
【条件】
物件購入価格:3500万円(頭金1000万円)
家賃:12万円/月
ローン返済額:9万円/月
経費が家賃収入の15%
経費が家賃収入の15%の場合、手元に残るお金はいくらになるのでしょうか。
(年間家賃収入144万円)-(年間経費17万円+年間ローン返済額108万円)=19万円
経費が家賃収入の25%
経費が家賃収入の25%の場合、手元に残るお金はいくらになるのでしょうか。
(年間家賃収入144万円)-(年間経費36万円+年間ローン返済額108万円)=0万円
シミュレーションして分かる通り、区分マンション経営の場合は収益性が低く手元に残るお金は少ないです。経費計上は節税効果がある一方で使いすぎるとキャッシュフローの悪化につながるので経費の使いすぎには注意が必要です。
マンション経営で経費を計上する際の注意点
マンション経営において経費を計上する際には以下のようなポイントに注意しましょう。
按分して計上する
マンション経営とプライベートで併用している物品やサービスにかかる費用は、その費用を按分して経費計上することができます。
例えば、インターネット利用などによる通信費、自動車のガソリン代などがあげられます。
これら併用しているサービス等にかかった費用の半分がプライベートで利用されたものであれば、その費用の50%が経費となります。
修繕費と資本的支出の違いを理解する
マンション経営において、修繕費を計上する際は「資本的支出」との違いを理解しておく必要があります。
例えば「インターネット回線を設置」「高機能設備の導入」のような資産価値を高めるとされる支出の場合「資本的支出」に分類されます。
資本的支出の場合、一度に計上できるわけではなく減価償却という形で毎年一定額を計上します。
修繕費と資本的支出の違いは修繕費か資本的支出か判断が難しい場合でも、60万円未満であれば修繕費として計上できます。
適正な計上時期の確認
経費は、実際に支出が発生した時点で計上する原則があります。ただし、支払い時期や契約内容によっては、経費の計上時期が異なる場合があります。
適正な計上時期を確認し、正確な経理処理を行うようにしましょう。
支払い先の確認
支払い先が個人名義や不明な法人名義など、不適切な支払い先になっていないかを確認することが重要です。
また、支払い先と契約内容が一致しているかも確認しましょう。
マンション経営を成功させるための工夫
ここまで経費について解説してきましたが、ここからは、マンション経営の収益を上げるためにできる工夫をご紹介します。
好立地な土地の物件を選ぶ
マンション経営をする上で大切なことは、どのようなリスクがあるかを知ることです。例えば、「空室が埋まらない」「家賃下落」「老朽化」など、さまざまなことが起こる可能性があります。
しかし、好立地で魅力的なマンション物件を選ぶことで、これらのリスクを抑えることができるのです。
立地が良ければ入居者希望者が多くなり、空室や家賃下落のリスクは少なくなります。時間が経つごとに建物が老朽化することは防ぐことはできませんが、立地が良く、部屋がしっかりと管理された魅力的な物件であれば、入居者は入ります。
もしもの時に備えて保険に加入する
マンション経営を始めるのであれば火災保険の加入をおすすめします。火災保険とは火災に限らず、台風・洪水といった自然災害にも備えられる保険です。
また、区分マンション経営向けの保険としては地震による損害に備えられる地震保険や、災害や死亡事故により空室になった際の家賃保証もあります。
さまざまな保険会社が火災保険を販売していますので複数の商品を比較して自分に合うものを選びましょう。
リフォームやリノベーションを検討する
いくら立地条件がよい物件であっても、築年数が経過するにつれて老朽化が進むと空室が目立つようになり、そうなれば家賃価格の見直しは避けられません。
家賃低下のリスクを回避するためには、適切な時期にリフォームやリノベーションを行います。
リフォームで新築同様の内容にすることで新たな入居者を確保できます。また、リノベーションにより流行りの間取りを取り入れることで入居率アップが期待できます。
マンション経営を始めるのであれば適切な時期にリフォームやリノベーションを行うことも視野に入れておきましょう。