土地の取引を考える際、その価格が適正であるかどうかを判断する基準となるのが「実勢価格」です。しかし、この実勢価格をどのようにして調べれば良いのか、多くの人が悩むところです。
実勢価格を調べる方法は、5種類あり、土地以外の要因に価格は変動するので、複雑に感じるかもしれません。
この記事では、実勢価格の算出方法はもちろん、土地の実勢価格を調べる上での注意点を解説していきます。
土地の実勢価格とは
実勢価格とは、過去の取引実績をもとに計算された平均価格をいいます。主に不動産業界で用いられる用語ではありますが、ほかの業界でも実勢価格はよく用いられます。例えば、過去のデータをもとに平均値を算出すれば業界に関係なく実勢価格と呼ばれます。
ただ、実勢価格のほかにも色々な「◯◯価格」は不動産業界に存在しており、実勢価格の定義についてややこしくなってしまいがちです。後ほど実勢価格によく似ている用語について解説しますが、これは、公示価格や固定資産税評価額とは異なり、実際の不動産市場の状況を反映した価格です。実勢価格は「市場で取引が成立した価格の平均値」であることを覚えておいてください。
公示地価や路線価との違い
土地の価格を表示する際、実勢価格以外にもさまざまな表現が使われます。
価格名 | 内容 |
公示価格 | 土地を取引する際に国が示す土地の正常な価格 を判定したもの |
相続税評価額 | 相続税や贈与税を計算する際に使用する価格 |
固定資産税評価額 | 土地の固定資産税を計算する際に使用する価格 |
以上の価格に関してはそれぞれ公的機関が公表しており、実勢価格とは意味が異なります。これから土地を売買したいと考えている方は実勢価格とその他用語について明確に違いを理解しておかなくてはなりません。契約書に記載されている用語がどういう意味なのかも理解しておいたほうがいいでしょう。
それぞれの意味を詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
土地の実勢価格の調べ方
土地の実勢価格は主に以下の5つの方法で調べることができます。
- 固定資産税評価額から算出する
- 公示地価や基準地価から算出する
- 相続税路線価から算出する
- 国土交通省が提供する不動産取引価格情報から算出する
- 不動産会社に査定を依頼する
どの算出方法を使ったとしても大きく実勢価格がずれることはありません。また、ほかにも細かく調べることはできますが、ここでは誰でも簡単にできる算出方法をご紹介します。
それぞれの方法について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
また、ネットで手軽に調べたい、正確に調べたいという方は以下のような方法から選ぶのがおすすめです!
査定方法 | 不動産一括査定 | AI査定 | 匿名査定 |
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おすすめ度 | 5.0 | 2.0 | 1.0 |
特徴 | 手間なく複数の不動産会社に査定依頼ができ、正確な価格や高く売るためのコツなどを知れる | 価格をその場ですぐにシミュレーションできる | メールアドレスの入力だけで誰にも知られずに価格を調べることができる |
仕組み | 入力情報を基に、ピッタリな不動産会社を複数提示。自分が選んだ不動産会社が直接査定を行う | 入力情報を基に、AIがデータから似た条件の不動産の価格を提示 | サイト内に溜まったデータをもとに入力された物件情報に近い査定価格を自動的に返す |
利用目的 |
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知れること | 正確な価格 自分の不動産が最も高く売れるのがいつか etc… | 大まかな価格 | 大まかな価格 |
所要時間 | 3~7日 | 1~3日 | 1~3日 |
不動産会社 からの連絡 | あり | なし | なし |
口コミ | 正確な価格を知れて、優秀な不動産会社とも出会えました。 | その場ですぐに価格を知ることができました。 | 家族に内緒で大まかな価格を調べることができました。 |
費用 | 無料 | 無料 | 無料 |
固定資産税評価額から算出する
固定資産税評価額とは、地方自治体が固定資産税の徴収のために定める土地の評価額です。通常、3年ごとに見直されます。公示地価の70%相当が評価水準となります。
実勢価格の推定方法:
- 固定資産税評価額の確認:
まず、対象の土地の最新の固定資産税評価額を確認します。 - 市場補正率の把握:
地域や土地の種類、市場の状況に応じた補正率を把握します。この補正率は、不動産業者や市場データ、過去の取引事例などから得られることが多いです。 - 補正率の適用:
固定資産税評価額に補正率を乗じて、実勢価格を推定します。
もう少し具体的に例を用いると、例えば、「固定資産税評価額が3,000万円」の場合、
2,000÷0.7×1.1=1,540万円(=実勢価格) |
公示地価や基準地価から算出する
公示地価とは、国土交通省が毎年公表する土地の価格で、不動産取引の目安とされます。
基準地価とは、各都道府県が公表する土地価格で、公示地価と同様に不動産取引の参考にされます。
実勢価格の推定方法:
- 公示地価や基準地価の確認:
対象の土地に関する最新の公示地価や基準地価を確認します。 - 市場補正率の把握:
地域や土地の種類、市場の状況に応じた補正率を把握します。この補正率は、不動産業者や市場データ、過去の取引事例などから得られることが多いです。 - 補正率の適用:
公示地価や基準地価に補正率を乗じて、実勢価格を推定します。
一般的に公示地価は、1.1~1.2倍程度かかってくるのが目安とされていますが、人気があるエリアですと、1.5倍からそれ以上費用がかかる可能性もあります。また、同じエリアであっても方角や日当たりなどの条件によって、実勢価格が変動することもあります。
また、特定の時点での土地価格を示しており、市場の動向や特定の地域の状況を反映していますが、実際の取引価格とは異なる場合がありますので、注意が必要です。
相続税路線価から算出する
相続税路線価は、国税庁が毎年公表する土地の評価基準で、主に相続税や贈与税の計算に使用されます。この価格は、一定の基準に基づいて算出されるため、実際の市場価格とは異なることがあります。
実勢価格の推定方法:
- 相続税路線価の確認: 対象の土地に関する最新の相続税路線価を確認します。
- 市場補正率の把握: 地域や土地の種類、市場の状況に応じた補正率を把握します。この補正率は、不動産業者や市場データ、過去の取引事例などから得られることが多いです。
- 補正率の適用: 相続税路線価に補正率を乗じて、実勢価格を推定します。
国土交通省が提供する不動産取引価格情報から調べる
国土交通省が提供する不動産取引価格情報を利用して土地の実勢価格を算出する方法は、実際の市場データに基づいた比較分析を行うことになります。この情報は、実際に行われた不動産取引の価格が記録されており、市場の実態をより正確に反映しています。
ただし、この方法も完全に正確な実勢価格を導き出すものではなく、あくまで参考値として利用することが重要です。
不動産取引価格情報の活用方法:
- データの収集:
国土交通省の不動産取引価格情報サービスから、対象地域の土地取引に関するデータを収集します。 - 類似物件の比較:
対象となる土地と類似の条件(場所、土地の広さ、用途、周辺環境など)を持つ物件の取引価格を比較します。 - 市場動向の分析:
取引された時期や経済状況など、市場動向を考慮して分析します。 - 平均価格の算出:
類似物件の取引価格から平均価格を算出し、これを実勢価格の参考値とします。
不動産会社に査定を依頼する
これまで紹介した、4つの方法は、市場の変動など、外部の要因によって、大きく価格が変わるため、「目安価格」と実際に取引をする際の乖離が大きく発生する可能性もあります。
そのため、不動産の専門家が市場データやその土地の特性を考慮して価格を評価してもらうのが最もスムーズです。この方法は、市場の動向や地域の特性を反映した比較的正確な価格評価を得ることができます。
不動産査定のプロセス:
- 査定依頼:
地元の不動産会社や信頼できる不動産業者に査定を依頼します。複数の業者に依頼することで、異なる視点からの評価を得ることができます。 - 必要情報の提供:
土地の所在地、面積、地目、利用状況、法的制限など、査定に必要な情報を提供します。 - 現地調査:
不動産会社は、実際に土地を訪れて現地調査を行います。この際、土地の形状、周辺環境、アクセスの良さなどが評価されます。 - 市場データの分析:
不動産会社は、類似の土地取引事例、地域の市場動向、将来の開発計画などを分析して価格を評価します。 - 査定結果の報告:
査定結果として、土地の推定価格が報告されます。この価格は、市場での取引価格の参考値となります。
査定の種類は、書類上の情報や簡単な現地調査に基づいて行われる、比較的迅速な簡易査定と、現地調査と詳細な市場分析に基づく、より正確な訪問査定があります。ご自身の目的や希望に合わせて査定の種類も変えることが可能です。
土地の実勢価格を調べる上での注意点
以上の方法で土地の実勢価格を調べることができます。
しかし、土地の実勢価格のまま価格設定をすれば売れていくわけでもありません。実勢価格はあくまで目安であり、その価格にすれば市場価格となるわけでもありません。
- 現在の地価が変動していることがある
- 土地以外の要因に価格は左右される
- 土地の売却価格は自由に設定できる
ほかにもいくつか注意点があるので解説します。
現在の地価が変動していることがある
土地の実勢価格はあくまで「過去」の取引実績をもとに算出した値にすぎません。
地価は日々変動をしており、実勢価格よりも高くなったり低くなったりを繰り返しています。また、なんらかの原因で土地の需要が急増した場合だと実勢価格を参考に販売価格を決めてしまうのは勿体ないといえるでしょう。過去のデータだけでなく、現在のデータや動向を反映させ売買する判断材料とする必要があります。
さらに、国や市区町村が公表する価格・価額には調査と公表までにタイムラグが生じます。
- 公示地価
- 基準地価
- 路線価
これらは長いもので半年以上のタイムラグが生じますので、当然ながら価格はその間も変動し続けます。現在の地価が実勢価格と大きく離れているケースもありますし、あまり離れていないケースもあります。タイムリーな地価は不動産会社に査定を依頼し、算出してもらうのが一番いいといえるでしょう。
実勢価格だけを頼りに土地の売買をして得をすることはほとんどありません。多くの場合は損をするだけですので日頃の情報収集は大切です。
土地を査定してみる
土地以外の要因に価格は左右される
実際にシステムを利用した方ならなんとなく感じているかもしれませんが、地価は色々な要素に影響されています。
- 土地の形
- 土地の方角
- 日当たりの良さ
これらは地価に大きく影響する要素です。一概に「この形がいい」「この方角だと価値が高い」とはいえません。その土地にどれくらいの需要があるのかにより地価は変動しますから、自分では「この土地の形はいい」「日当たりは抜群だ」と思っていても、そこまで高い値がつかないこともあります。あくまで需要があっての地価です。
また、土地のみならずマンションに関しても同じことが言えます。間取りや日当たりなどの条件が変わらないのにもかかわらず、価格が同じではないことの方が多いでしょう。これは管理している不動産会社が価格を決定する権利を持っているため、価格を自由に動かすことができるのが要因です。ただこれによりマンションの実勢価格が左右されるため、実勢価格だけを頼りにし過ぎるのはよくありません。
土地の売却価格は自由に設定できる
よくある勘違いとして「土地の売却価格は実勢価格に沿わなくてはならない」ことがあります。
実勢価格を調べ、周辺の地価を調べていくとだいたい同じような売却価格になっていることが多いです。そのため、「自分たちも実勢価格に沿って売却価格を決めないといけない」と思い込んでしまいがちですが、実は必ずしも実勢価格に沿った価格設定をしないといけないわけではありません。
もちろん、実勢価格よりも安く土地を売り出せば買い手がつきやすいのは確かです。しかし、土地の流通量が少ないケースだと、あえて土地の価格を実勢価格よりも高くしておくことで「この価格でもこの土地が欲しい」と考える方を待つことができます。これにより望まない価格での売却を避けることができるのです。
ただ、実勢価格を完全に無視した価格設定はよくありません。実勢価格が100万円の場所に1,000万円の価格設定をした土地を販売したとして誰が購入してくれるでしょうか。不動産だけに限った話ではありませんが、相場から著しくかけ離れた価格設定をするのはおすすめできません。
販売戦略を立てて土地の売買を行いましょう。
また、思い入れのある土地や、資産性のある土地なら手放さずに活用するという選択肢もあります。さまざまな土地活用方法を一括で比較検討したいとき「イエウール土地活用」を使えば、無料で最大10社の活用プランを受け取ることができます。