年収300万円で住宅購入を考えている方もいるでしょう。住宅金融支援機構による2020年度の「フラット35利用者調査」では、フラット35利用者のうち400万円未満の年収で家を買う方は22.1%となっています。
物件タイプ別に見ると、中古戸建てで43.1%、中古マンションで35.1%と、年収300万円台で家を買う方は少なくないことがわかります。
しかし、住宅ローンで借りられる金額は年収に応じて上限が決まるため、いくらの家なら買えるのかを知りたい方は多いでしょう。
そこで本記事では、年収300万円で借りられる住宅ローンの上限額や、住宅ローン以外に用意すべき自己資金、審査に通りやすくなるコツなどをご紹介します。
年収300万円あれば家を買える!
年収300万円の方もマイホームの購入は可能で、健康状態に問題がなく年齢の若い方であれば、審査でも有利になることがあります。
国土交通省が発表した「令和3年度 民間住宅ローンの実態に関する調査」でも、金融機関が住宅ローンの審査で重視する項目として、上位7つに以下のポイントが挙げられています。
- 完済時年齢(98.9%)
- 健康状態(98.5%)
- 担保評価(97.6%)
- 借入時年齢(97.1%)
- 年収(95.0%)
- 返済負担率(94.6%)
- 勤続年数(94.5%)
※( )内は項目を挙げた金融機関の割合を指します。
最も重視されるのは完済時年齢で、多くの金融機関では「80歳未満」を完済時年齢の上限としています。
定年後はローンの返済能力が下がることから、65歳までに完済する借入期間を設定することで、審査や借入金額が優遇されることもあるでしょう。
また、住宅ローンの申し込みの際には「団体信用生命保険(団信)」に加入する必要があり、健康上の問題を抱えていると加入を断られることがあるため、健康状態も重視されます。
年齢が若く健康な方は住宅ローンの審査に通りやすくなることも多いため、年収300万円でも家を買えると言えます。
年収300万円で家を買う際に用意するべき自己資金
年収300万円で家を買う場合、都心部の注文住宅や新築マンションの購入は難しくなる傾向があります。
しかし物件価格が高額な場合にも、十分な頭金(自己資金)を用意できれば住宅ローンを組める可能性が高まります。
また、家を買う時には手付金や諸費用などの初期費用も発生するため、ここではマイホームの購入に必要な自己資金の目安を押さえておきましょう。
頭金は物件価格の1割〜2割が目安
家を買う際に必要な頭金の目安は、物件価格の1割〜2割が目安です。
2,000万円の家を買う場合には、200万円〜400万円の現金が必要になる計算です。
ただし、近年では頭金なしで物件価格の全額を住宅ローンで借りる「フルローン」を組む方も多くなっています。
フルローンの場合は頭金なしで家を買うこともできるため、貯金を教育資金や老後の資金に回したい方や、自己資金が少ない方に適しています。
手付金100万円は現金で用意する
家を買う際には、住宅ローンを組む前に物件の売買契約の「手付金」を現金で支払う必要があります。
手付金は住宅ローンを組む前のタイミングで支払うため、ローンに組み込むことはできません。
「頭金なし」でも家を買える一方で、「貯金なし」で家を買うのは難しいと言われるのはこのためです。
手付金の額は物件によって異なりますが、100万円程度が必要となるケースが多くなります。
手付金は売買契約の締結後は購入代金に充てられるため無駄になることはありませんが、一定の現金が必要になることに注意しましょう。
税金や保険料などの諸費用に注意
家を買う際の初期費用には、税金や手数料、保険料などの「諸費用」も挙げられます。
諸費用の相場は、物件価格に対して新築物件は3%〜7%、中古物件は6%〜13%に相当する金額です。
諸費用も原則として現金での支払いが必要となりますが、金融機関によっては「諸費用ローン」が利用できることもあります。
ただし諸費用ローンを利用すると適用金利が高くなる可能性があるほか、月々の返済負担も重くなるため慎重な検討が必要です。
年収300万円の住宅ローン借入可能額
年収300万円で購入する家の予算を決める際には、住宅ローンでいくらまで借りられるのかを知っておくことが大切です。
ここでは「年収倍率」と「返済負担率」の計算から、適正な物件価格について解説します。
年収倍率で考えた場合
年収倍率とは、物件価格が年収の何倍にあたるのかを指す数値で、5倍〜6倍が無理なく返済できる目安とされています。
年収300万円であれば、1,500万円〜1,800万円が無理のない物件価格の目安です。
金融機関によっては年収の8倍以上の借入可能額が提示されることもあるほか、頭金を十分に用意すれば年収の10倍の物件価格を買えるケースもあります。
ただし年収倍率が高くなるほど毎月のローンの返済負担が重くなるため、返済プランをシミュレーションしながら予算を決めることが大切です。
返済負担率で考えた場合
返済負担率とは住宅ローンの審査や無理のない返済プランを作成する際に使われる数値で、収入に対するローン返済額の割合を指します。
たとえば年収300万円の方が年間60万円のローン返済を行う場合、返済負担率は20%です。
なお、住宅ローンの審査では額面(税込み)年収が使われますが、返済プランを立てる際には手取り年収をもとに計算しましょう。
たとえば年収300万円の場合に手取り年収が240万円とすると、年間60万円のローン返済を行う場合、約25%が返済負担率となります。
返済負担率は、手取りの25%以下が無理なく返済できる目安とされます。
そのため毎月のローンの返済額をシミュレーションする際には、手取り月収の25%以内に収まるかどうかをひとつの基準にすると良いでしょう。
住宅ローン審査の流れ
住宅ローンの手続きを行うときは、「事前審査」と「本審査」の2つの審査をクリアする必要があります。融資実行までにはいくつかのステップをふんで手続きを進めていかなくてはいけないため、あらかじめスケジュールを把握しておき、スムーズな手続きを目指しましょう。
住宅ローン審査の主な流れは以下の通りです。
- 購入の申し込み
- 金融機関の住宅ローン事前審査
- マンション売買契約
- 住宅ローン本申し込み
- 住宅ローン本審査
- 住宅ローンの承認と契約
- 融資実行・決済
- 引き渡し
住宅ローン審査や手続きの流れについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
住宅ローンの流れ|審査に必要な書類や融資実行のための準備
事前審査のポイント
住宅ローンの事前審査とは、本審査の前に行われる審査です。近年は書類への記入だけではなく、オンラインや郵送で手続きができる商品も増えてきています。
事前審査では年収や自己資金の割合、職場の勤続年数などが見られる傾向にあります。このステップを通過しないと、物件の売買契約手続きに進むことはできません。
住宅ローンの事前審査にかかる日数は金融機関によって異なりますが、1週間程度が目安です。事前審査の承認後に売買契約書類などを作成し、本審査に進みます。なお、結果は郵送で送られてくるケースが多いです。
本審査のポイント
本審査では詳細な審査が行われるため、およそ10日~2週間程度の期間を要すると考えておきましょう。
住宅ローンの本審査では、購入希望物件の詳細情報や団体信用生命保険(団信)に加入するための健康状態、申込者の人柄などについて審査されます。
なお、事前審査に通った場合でも、本審査に落ちる可能性はあるため注意しましょう。たとえば「仮審査通過後にクレジットカードの支払いを滞納した」「新しく借り入れをした」というときは、本審査に通らなくなってしまう恐れがあります。本審査が終わるまでは支払いを確実に行い、新しい借り入れはしないようにしましょう。
年収300万円で住宅ローンに通りやすくなるコツ
年収300万円で年収倍率が5倍〜6倍を超える物件を購入したい場合や、返済負担率が手取りの30%を超える場合などは、住宅ローンの審査に通りにくくなる可能性があります。
ご自身の返済能力を超える返済負担になると判断され、融資が断られてしまうケースです。
そうした事態を防ぎ、住宅ローンの審査に通りやすくなるコツとして以下の3つのポイントをご紹介します。
- 頭金を多めに用意する
- 借入期間を延ばす
- 収入合算・ペアローンを検討する
それぞれ解説します。
頭金を多めに用意する
住宅ローンにおける頭金は、借入額を抑える役割を果たすため、頭金を多めに支払うことで住宅ローンの審査も有利になります。
たとえば年収300万円で3,000万円の物件を購入する場合、年収倍率が10倍に達するため住宅ローンが組みにくくなります。
そこで頭金を1,000万円用意できると、借入金額は2,000万円に抑えられるため、住宅ローンの審査に通りやすくなるということです。
貯金の全額を頭金に使い果たしてしまう事態は避けるべきですが、可能な限り頭金の額を増やすことは住宅ローンの審査で有利になることを留意しておきましょう。
借入期間を延ばす
借入期間を長くすることで月々のローンの返済負担を抑え、住宅ローンが借りやすくなるケースがあります。
20年ローンや30年ローンと比較して、35年ローンを選んだ場合は月々の返済額が少なくなるため、年収が低い方でも返済負担率を下げることが可能です。
借入期間が短いほど金利の支払いが抑えられるため、総支払額は減少しますが、低水準の金利相場が続いている間は借入期間を短くするメリットは少ないでしょう。
ただし、前述の通り完済時年齢は「80歳未満」である必要があるため、45歳以上になると長期の35年ローンなどを組むのは難しい点に注意が必要です。
収入合算・ペアローンを検討する
共働きの配偶者がいる場合、収入合算やペアローンを利用することで、審査に通りやすくする方法もあります。
収入合算は、夫の住宅ローンで妻が連帯保証人になるなど、夫婦の世帯収入で審査を受ける方法です。
ペアローンは、夫婦がお互いに連帯保証人となる2つの住宅ローンを組み、借入金額を増やす方法です。
ただし育休・産休や失業などによって収入が減少したり、離婚で別居することになった場合でも、ローンの支払い義務は残るため慎重な判断が必要となります。
年収300万円で買った家のローンを無理なく返済するポイント
最後に、年収300万円で家を買った場合に、ローンの返済を無理なく続けるポイントとして、以下の2つをご紹介します。
- 親や祖父母から資金援助を受ける
- 住宅ローン控除を活用する
それぞれのポイントを解説します。
親や祖父母から資金援助を受ける
住宅購入のために親や祖父母から資金援助を受ける場合、500万円または1,000万円までの贈与税が非課税となる制度を利用できるケースがあります。
これは「住宅取得等資金の贈与税の特例」と呼ばれる制度で、利用できると相続税の負担なしで贈与を受けられるので、頭金や手付金の支払いに充てることが可能となります。
また、贈与税には毎年110万円の非課税枠があるため、数年に分けて贈与を受けられれば、マイホーム資金や、購入後の住宅ローンの返済に充てることも可能です。
住宅ローン控除を活用する
住宅ローン控除とは、年末時点での住宅ローン残高の0.7%の金額が、13年間にわたり所得税から控除される仕組みです(2022年度以降)。
住宅ローン控除を利用することで、払い過ぎた所得税が還付され、手元の現金を増やすことができます。
その資金をローン返済に充てたり、リフォーム資金として貯金したりすることで、無理なく快適なマイホームに住み続けられるでしょう。
住宅購入による減税措置を活用する
住宅ローンには控除制度があり、ローンを利用してマイホームの購入や増築を行った際に控除を受けられます。
所得や住宅の種類によって、控除が受けられるかどうかや、受けられる控除の内容が変わります。そのため、物件を購入する前に、購入予定の物件やご自身の所得と照らし合わせて住宅ローンの内容を確認しておきましょう。
住宅ローン控除と所得税控除について詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
住宅ローン控除により所得税額がゼロに?2022年度以降の新制度と併せて解説
年収300万で家を買うなら無理のない返済プランを
年収300万円でも家を買うことは可能で、1,500万円〜1,800万円の物件価格を目安にすると住宅ローンの審査にも通りやすくなるでしょう。
無理のない返済プランを立てるためには、頭金を増やして住宅ローンの借入金額を減らしたり、借入期間を伸ばして35年ローンを組んだりすることをおすすめします。
親や祖父母からの資金援助を受けられる場合は、非課税枠に収まる範囲で受け取り、頭金に充てるなどの工夫も検討してみましょう。また、住宅購入による減税措置や、住宅ローン控除も活用することをおすすめします。
なお、年収300万円で買える家探しの際には、ぜひHousii(ハウシー)もご利用ください。Housii(ハウシー)は、匿名・無料で住まい選びができる会員制のサービスです。
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