マンションを購入するときは、「住宅ローンの借り入れ額を安定的に返済できるかどうか」というポイントが重要視されます。
もちろん、その判断基準のひとつに年収も含まれているので、「年収300万円だと住宅ローンの審査には通らないかな…」とマンション購入に踏み出せない人もいるかもしれません。
はたして、年収300万円の人は住宅ローンの借り入れができるものなのでしょうか。この記事では、年収300万の人がマンションを購入する際のポイントについて解説します。
マンション購入は年収300万でも可能
まずは、年収300万円でもマンションが購入できるかどうかについて見ていきましょう。国税庁の「令和元年分 民間給与実態統計調査」によれば、年収300万円超400万円以下の人は全体の17%で、もっとも割合が多い年収であることがわかっています。[注1]
約5.9人に1人が年収300万円台であるため、特別年収が低すぎるということではなさそうです。
次に、住宅金融支援機構が発表する「住宅ローン利用者の実態調査」を見てみると、400万円以下で住宅ローンを組んだ人の割合は6.4%存在することがわかっています。[注2]
つまり年収が300万円台の人でも、住宅ローンを組むことは可能というわけなのです。
住宅ローンの審査基準は金融機関によって異なりますが、年収だけではなく「勤続年数」や「契約・完済時の年齢」、「健康状態」などを複合的に見られます。
年収が300万円だからという理由だけですぐ審査に落とされるということはないので、マンション購入を希望している場合は、諦めずにチャレンジしてみることをおすすめします。
年収300万でマンション購入する場合の物件価格の目安
それでは、年収300万円の人はどれくらいの物件価格までであれば購入が可能なのでしょうか。ここからは、物件価格の目安について見てみましょう。
年収倍率6~7倍
購入するマンションの物件価格を決める一つの目安として、年収倍率が参考になります。年収倍率とは、購入する物件の価格が年収の何倍に該当するのかを表した数字です。住宅金融支援機構の調査では、2020年におけるマンション購入者の年収倍率は、新築マンションで7.0倍、中古マンションで5.8倍だということがわかりました。[注3]
つまり年収300万円の場合、新築マンションで2,100万円、中古マンションで1,740万円の借り入れをしている人が多いということです。
ただし、年収倍率は地域によって異なります。
都内であれば、中古物件の年収倍率が10%を越えることもありますし、地方であれば新築物件でも年収倍率が5倍に収まることもあります。
上記の数字はあくまでひとつの目安として、ご自分が返済できる金額のマンションを購入することが大切です。
借り入れが可能な上限額
参考までに、年収300万円で借り入れが可能な上限額についても見ておきましょう。住宅ローンの審査をするときは、年収に占める住宅ローン返済額を示す「返済負担率」が非常に重要視されます。
審査に通る返済負担率は金融機関ごとに異なります。
住宅金融支援機構と金融機関が提携して共有する「フラット35」の基準を参考にすると、年収ごとの返済負担率の目安は以下の通りになります。[注4]
年収 | 300万円未満 | 300万円以上 400万円未満 | 400万円以上 700万円未満 | 700万円以上 |
---|---|---|---|---|
返済負担率 | 25%以下 | 30%以下 | 35%以下 | 40%以下 |
年収300万円台の場合、年間の返済額が年収の30%以下に収まる物件であれば、購入できるというわけなのです。
具体的な金額を見てみると、年間返済額を300万円の30%となる90万円に収めればいいため、毎月7万5,000円の支払いで購入できる物件であれば手が届きます。
金利が1%で35年ローンの場合、借入可能額の上限は2,656万円です。
このように借入可能額を見てみると、年収300万円の人でも幅広い選択肢からご自身に合った物件を選べることがわかります。
年収300万でのマンション購入の返済額の目安
年収300万円の人がマンションを購入するときは、金融機関によっては返済額が2,500万円前後までの物件が購入可能だということを紹介しました。しかし、実際に返済率30%で物件を購入してしまうと、返済額が高すぎて生活費が圧迫されてしまう恐れがあるため、注意が必要です。
年収300万円の手取り年収は、約240万円です。月収にすると20万円となり、月に7万5,000円の住宅ローン返済をしてしまうと、生活費が12万5,000円しか残りません。
一人暮らしであれば問題なく生活できるでしょうが、配偶者がいたり子どもがいたりする場合、生活費が足りなくなってしまう恐れがあるのです。
計画的な返済を目指すのであれば、返済負担率を減らしたほうが安心です。
以下では返済額の目安をシミュレートしてみたので、借入額を決めるときの参考にしてみてください。
返済負担率 | 年間の返済額 | 毎年の返済額 | 借入可能額 | 返済後の生活費 |
---|---|---|---|---|
年収の30% | 90万円 | 7万5,000円 | 2,656万円 | 12万5,000円 |
年収の25% | 75万円 | 6万2,500円 | 2,231万円 | 13万7,500円 |
年収の20% | 60万円 | 5万円 | 1,771万円 | 15万円 |
※年利1%・35年ローン・元利均等返済の場合
返済負担率を下げれば借入可能な金額は減りますが、そのぶん月々の返済額も減り、安定した返済計画を立てやすくなります。
家族構成や家計の状況によって「返済額はいくらが最適」とは言えませんが、貯蓄や将来必要になる教育・老後資金なども踏まえ、余裕を持った返済額に設定することが大切です。
年収300万でも早期にマンション購入するメリット
年収300万円の人のなかには、「もう少し年収が上がってからマンションを購入しようかな」と考えている人もいるかもしれません。しかし、もしマンション購入を希望しているのであれば、早めに行動に移すことをおすすめします。
なぜなら、早期にマンションを購入することには5つのメリットがあるためです。
ここからは、年収300万円でも早期にマンション購入するメリットを詳しく紹介します。
1.賃貸よりも金額を抑えられるケースがある
マンション購入というと「お金がかかる」と思われるかもしれませんが、マンションを購入することで逆に出費を抑えられるケースがあります。同じ条件の物件を比較したとき、賃貸よりも中古物件で住宅ローンを返済したほうが金額を抑えられることは、意外に多いものです。
もちろん立地や築年数によって物件価格は異なるため、マンションを購入したら必ず毎月の負担が軽くなるとは言えません。
また、マンションは修繕積立金や管理費もかかるため、その金額を踏まえて支払いの見通しを立てる必要があります。
しかし、早期にマンションを購入しておくことで毎月の支払いに余裕が生まれ、貯蓄や教育資金にお金を回す余裕が出る可能性があることは知っておきましょう。
2.長期的なローンが組めて返済負担を減らせる
早期に住宅ローンを組んでおくことで、完済までの期間を伸ばせるようになります。返済期間を伸ばせば、同じ借入金額でも毎月の返済額を減らせます。
そのため、より余裕を持った生活を送れるようになるのです。
一般的に長期ローンと呼ばれている「フラット35」は35年で完済を目指す住宅ローンですが、近年は40~50年借り入れができる住宅ローン商品も増えてきました。
こういった商品は若いうちに契約しておかないと、「完済時の年齢」が理由で審査に通らなくなってしまうため、早めの契約が有利なのです。
3.将来的な返済負担が軽減できる
たとえ現在年収300万円であっても、今後年収が増える見込みは十分にあります。結婚して共働きになるかもしれませんし、昇進して昇給するかもしれません。
年収300万円の今のうちにマンションを購入しておくことで、今後金銭的に余裕が出たときの返済負担を大幅に軽減できるというメリットがあります。
年収400万円、500万円となったときに改めて住宅ローンを組もうとすると、どうしても欲が出てしまうでしょう。
「より条件がよくて高価な物件を…」という思考になってしまい、結局返済に追われることになることも珍しくありません。
考え方にもよりますが、早期に無理なく支払える物件を購入しておけば将来住まい以外にお金をかけられ、より充実した暮らしを実現できるようになります。
4.自己資産が手に入る
賃貸物件の場合、いくら家賃を支払ってもその物件は自分のものになりません。他方でマンションを早期に購入しておけば、そのぶん早くローン返済が終わり、早い段階で不動産の自己資産を得られます。たとえ中古マンションであっても、自己資産を持っているだけで売却して現金化できたり、賃貸に出して一定の不労所得を得られたりとメリットが豊富です。
将来子どもに資産を残せる点も、早期にマンションを購入するときのうれしい利点でしょう。
5.老後の生活が楽になる
マンションを早期に購入しておくと、早く住宅ローンの返済が終わり、老後の住まい費の負担を大幅に減らせます。年収が400万円、500万円になるまで住宅の購入を先送りにしていると、住宅ローン完済時の年齢がどんどん高くなってしまいます。
その結果、定年後も住宅ローンを返済しなくてはいけなくなりますし、住宅ローンの審査も通りにくくなってしまうでしょう。
将来年収が上がった場合も、早く住宅ローンを返済できれば、物件を賃貸に出して新しい住宅に住み替えることが可能です。
将来の選択肢がぐっと広がるため、年収300万円であっても早期にマンションを購入することがおすすめなのです。
住宅ローンの審査に通過するポイントは?
年収300万円の人がマンションを購入することは可能ですが、いくつかコツを押さえておくと、より有利に住宅ローンの審査を進められます。ここでは、住宅ローンの審査に通過するためのポイントを4つ紹介します。
頭金を増やす
年収300万円の人が有利に住宅ローンの審査を進めるには、できるだけ頭金を多く支払うことが有効です。借入額を抑えて返済負担率を減らせますし、「まとまった頭金を用意できる」という信用実績にもなります。
近年は頭金ゼロでも購入できる物件が増えてきましたが、住宅ローンの審査を通過するためにも、必ず頭金は用意しておきましょう。
夫婦で協力して住宅ローンを組む
配偶者がいる場合は、収入を合算して住宅ローンを組むのもひとつの手です。妻と夫の収入を合わせて住宅ローンの審査を受けることを「収入合算」と呼びます。収入合算では審査対象の年収が増えるため、審査に通りやすくなります。
なお住宅ローンによっては、配偶者だけではなく親と収入を合算することも可能です。
ほかにも、夫婦がそれぞれ別名義で住宅ローンを組む「ペアローン」を利用することもできます。
ご自宅の状況に合わせて夫婦や家族で協力すれば、より希望する物件を購入しやすくなるでしょう。
返済期間を延ばす
「年収300万でも早期にマンション購入するメリット」の章でも少し触れましたが、返済期間を延ばすことで月々の返済負担率を軽減でき、住宅ローンの審査で有利になることがあります。ただし、たとえば45歳で40年や50年の住宅ローンを組むことはできません。なぜなら、ほとんどの金融機関で「80歳までに完済できるかどうか」を基準に審査しているためです。
返済期間を伸ばして有利に審査を進めたいのであれば、できるだけ早めにマンション購入することを推奨します。
フラット35を利用する
年収300万円の人が住宅ローンを組むときは、フラット35の利用についても検討しましょう。フラット35とは、住宅金融支援機構が全国の金融機関と提携して供給している住宅ローンです。
フラット35は、年収や雇用形態に対する審査基準が比較的柔軟で、民間の住宅ローンよりも審査に通りやすいというメリットがあります。
さらに固定金利であるため、金利水準が上がっても返済額が増えない点も利点です。年収300万円の場合、少しの金利変動で家計に大きな打撃を受ける恐れがあります。
安定した返済計画を立てられて返済額の増加がないフラット35は、年収300万円の人に最適な住宅ローンなのです。
マンション購入で使える補助金や助成金はある?
最後に、マンション購入に使える補助金と助成金について紹介します。マンション購入の際は、「すまい給付金」と呼ばれる補助金制度が利用できます。すまい給付金は、消費税増税にともなう住宅取得時の負担軽減のために支給されている補助金です。
給付を受ける条件は、以下のとおりです。[注5]
◎新築の場合
1.人の居住の用に供したことのない住宅
2.工事完了から1年以内のもの
3.床面積が50㎡以上である
4.以下のいずれかに該当する
・住宅瑕疵担保責任保険へ加入している
・建設住宅性能表示を利用している
・住宅瑕疵担保責任保険法人により保険と同等の検査が実施されている
◎中古物件の場合
1.売主が宅地建物取引業者である中古住宅
2.床面積が50㎡以上である
3.以下のいずれかに該当する
・既存住宅売買瑕疵保険へ加入している
・既存住宅性能表示制度を利用している
・建設後10年以内であって、住宅瑕疵担保責任保険に加入している住宅、または建設住宅性能表示を利用している住宅
受け取れる給付金は、最大で50万円です。詳しい条件や給付額については、国土交通省の特設ページをご覧ください。[注6]
ほかにも、以下のようなリフォームをすると補助金が出るケースがあります。
・バリアフリーリフォーム
・断熱リフォーム
・家事負担軽減に役立つ設備の導入
・エコ住宅設備の導入
各自治体が独自に設定している補助金も、いくつか存在しています。
こういった工事をご検討の際は、補助金が受けられるかどうかを業者や役所の職員に問い合わせておきましょう。
また、住宅ローンを組んでマンションを購入したときは、年末の住宅ローンの残高×1%にあたる金額を所得税や住民税から控除できる「住宅ローン減税」が利用できます。[注7]
こちらもあわせて活用すると、お得なマンション購入が目指せるでしょう。
年収300万円のマンション購入のポイントを押さえておこう
年収300万円の人でも、適切な借入金額であれば住宅ローンを組んでマンションを購入することは夢ではありません。とはいえ、実際には住宅購入のためには登記費用や司法書士費用、また手付金などの購入にかかる諸費用が別途現金でかかってくるほか、住宅ローン控除などの専門的な知識をベースに資金計画を立てないと損をする可能性があります。
そのため、住宅ローンを組む際は住宅購入のプロに相談しながら資金計画を立てることが必要不可欠です。住宅ローン控除やすまい給付金など、知らなきゃ損をする控除制度についての情報収集としても使えるでしょう。
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[注1]国税庁長官官房企画課|令和元年分 民間給与実態統計調査
[注3]住宅金融支援機構|2020年度 フラット35利用者調査
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