2022年度から住宅ローン控除は、新制度が適用されます。
特筆すべき点としては住宅ローンが年末残高の1%から0.7%に減額されたことが挙げられます。
本記事では住宅ローン控除がどのような制度なのかという点から、新制度の住宅ローン控除によって所得税がどのように変わるのか、具体的な数字を用いて詳しく解説します。
住宅ローン控除の全体像について理解したいという方はこちらの記事もご覧ください。
住宅ローンの控除とは?どのように控除される?
住宅ローンの控除は正式名称を「住宅借入金等特別控除」といい、住宅ローンの負担を軽減することができる制度です。
なお、住宅ローンの控除における「控除」とは「差し引かれる」という意味で、所得税から住宅ローンの一部が差し引かれる制度になります。
「住宅ローンの控除をすると住宅ローン自体が安くなる」と捉えてしまっている方も少なくありませんが、実際は所得税から差し引かれる制度となっているため、確定申告、または年末調整時に申請しなければいけません。
住宅ローン控除で対象となる、所得税とは?
所得税は所得に応じて適応される税金のことです。
累進課税という制度が設けられており、課税所得の多い人ほど税率は上がる仕組みになっています。
表の課税所得金額は基礎控除、医療費控除、社会保険控除などを差し引いた金額です。差し引いた金額から税率が算出され、所得税として納めることになります。
課税所得金額 | 税率 |
195万円以下 | 5% |
195万円超 330万円以下 | 10% |
330万円超 695万円以下 | 20% |
695万円超 900万円以下 | 23% |
900万円超1,800万円以下 | 33% |
1,800万円超 4,000万円以下 | 40% |
4,000万円超 | 45% |
住宅ローンの控除は、上記の税率の上で算出された所得税から控除額を差し引く制度です。詳しくは後述しますが、場合によってはゼロ以下になることもあります。
住宅ローンの控除は2022年度から新制度が適用される
住宅ローン控除の新制度は2022年4月1日から施行されます。大きな変更点としては以下です。
- 住宅ローン残高の変更(1%控除されるものが0.7%へ)
- 制度の適用期限は2025年まで
- 控除期間が新築13年に延長(中古住宅は旧制度から変わらず10年のまま)
- 所得制限の上限を引き下げ(旧制度の3,000万から2,000万へ)
- 床面積に関する要件の緩和
- 中古住宅の築年数制限の緩和
- 借り入れ上限額の変更
以下からは特に金額に関わる「控除額」「所得制限」「借り入れ上限額」に焦点を当てて解説します。
控除額
最も大きな変更点は、控除額がローン残高の1%から0.7%に引き下げられたことです。
これにより、2021年以前は最大600万円の控除だったのが、2022年以降は450万円の控除、2024年からは410万円の控除になります。
なお、改正後・改正前の控除額については以下の通りです。
住宅の種類 | ~2021年 | 2022~2023年 | 2024~2025年 |
認定住宅 | 600万円 | 455万円 | 410万円 |
ZEH水準省エネ住宅(※) | 480万円 | 410万円 | 319万円 |
省エネ基準適合住宅 | 364万円 | 273万円 | |
その他住宅 | 273万円 | 140万円 |
※通常の省エネ住宅より高い断熱性を持ち、省エネ効果のより高い住宅のこと
所得制限が2,000万円へ
また改正前の2021年度では所得制限が3,000万円以下となっていましたが、2,000万円以下へと引き下げられました。
つまり所得が2,000万円を超える方は、2022年度の改正から控除が適用されないことになります。
なお改正前の制度が適用されている人は、これまで通り控除を受けることが可能です。
借り入れ上限額など、その他の変更点
2022年度からの住宅ローン控除の新制度の大きな変更点は、借り入れ上限額の変更も挙げられます。
住宅の種類によって限度額は変わりますが、2022年度以降、借り入れ上限額については以下の表のように変わります。
住宅の種類 | ~2021年 | 2022~2023年 | 2024~2025年 |
認定住宅 | 5,000万円 | 4,500万円 | |
ZEH水準省エネ 住宅 | 4,000万円 | 4,500万円 | 3,500万円 |
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 3,000万円 | |
その他住宅 | 3,000万円 | 0円 |
なお、他にも改正後に変わった点として、
- 床面積要件の緩和
- 中古住宅の築年数が1982年以降の場合は控除適用
- 贈与税の非課税措置の継続
などの変更もあります。
以前は適用対象ではなかった住宅が適用される場合もあり、それによって控除額も変わることになるため、事前にしっかりと情報を把握しておきましょう。
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所得税額がゼロに?控除が引ききれない場合は住民税から
住宅ローン控除を利用することで、所得税が実質的にゼロになることもあります。
また、住宅ローンの控除により所得税がゼロになった場合は住民税から差し引かれます。
以下ではこれまで踏まえてきた内容を元に、具体的な数字と共に、計算式を用いながら詳しく解説します。
住宅ローン年末残高の0.7%が所得税を超える場合、所得税はゼロに
上述した通り、住宅ローン控除は住宅ローンの年末残高の0.7%(2022年度以降)が基本的な控除額になります。
その際の所得税が控除額を超える場合、所得税はゼロ、もしくはゼロ以下になります。
例えば独身で、現在の年収が500万円だった場合、給与所得控除の金額は144万円となり、所得は356万円です。
ここから基礎控除48万円が適用され、課税総所得は308万円となります。
所得が195万円を超え、330万円以下の場合、10%の控除が適用されますので、控除額97,500円が引かれ、所得税額が21万500円となります。
年収500万円−(給与控除144万円+基礎控除48万円)= 課税所得金額308万円
課税所得金額308万円×所得税率0.1-控除額9万7,500円= 所得税額21万500円
ここで住宅ローンの残高が4,000万円残っていた場合、控除率の0.7%が適用され、28万円の控除となり、所得税分が0円以下となります。
21万500円−(4,000万円×控除率0.007)= −69,500円
所得税から引ききれない場合は住民税から引かれる
上記の例を見ると、-69,500円と、所得税がマイナスになっています。この場合のマイナス分は消失するということはなく、住民税から引かれることになります。
ただし、注意しておかなければならないのは、住民税から控除できる額には1年ごとに上限が定められていることです。
上限額は課税された消費税の税率によって変わりますが、借り入れの上限額や控除額のように、省エネ住宅などに対する優遇はありません。上限額については、具体的には以下のようになります。
消費税 | 消費税8% | 消費税10% | その他 |
住民税の控除額 | 最大136,500円 | 97,500円 |
なお、住民税から控除される場合、
- 所得税から住宅ローン控除を使用し控除しきれなかった金額
- 所得税の課税総所得金額に7%を乗じて得た金額
のどちらか小さい額が控除される金額となります。年収500万円の例では前者が適用され、69,500円が住民税から控除されることになります。
住宅ローン控除の計算方法について詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
住宅ローン控除とふるさと納税を併用するとお得に?
ふるさと納税と住宅ローンの控除を併用することで、所得税をより低く抑えることができるようになります。
以下ではふるさと納税と住宅ローンの控除について、注意点も踏まえて解説します。
ふるさと納税と住宅ローンの控除の併用について
住宅ローン控除はふるさと納税との併用が可能です。確定申告の際、ふるさと納税の寄附金も控除の対象となります。
この際、所得から引かれることになるため、それだけ所得税が低くなります。
上述した通り、住宅ローンの控除では所得税から住宅ローンの一部が差し引かれます。そのため、住宅ローン控除とふるさと納税を併用することで、控除額を増やすことができるようになるのです。
住宅ローン控除の確定申告について知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
1年目はワンストップ特例制度ができなくなる
住宅ローン控除を受ける1年目はふるさと納税の「ワンストップ特例制度」の利用ができなくなることに注意が必要です。
ワンストップ特例制度とは、確定申告をしなくてもふるさと納税の寄付控除を受けることが可能になる制度のことです。1年間に寄付を行った自治体が5団体以内の場合に利用できます。1年目、住宅ローンの控除の申請には確定申告が必要となります。
よってふるさと納税でのワンストップ特例制度は使えなくなります。利用できるのは住宅ローンの控除を受けた2年目からになるため、あらかじめ注意しておきましょう。
住宅ローンの控除で所得税がゼロになることも
2022年度の改正では控除額をはじめとする、所得制限の引き下げや、借り入れ上限額の変更など、多くの項目で変更が行われます。
本記事でご紹介した通り、ローン控除は利用することで所得税がゼロになることもあります。ただし住宅ローン控除はご自身の収入や借入金額など、様々な要素や条件によって控除額が変わってきます。
そのため、住宅ローン控除を受ける前には専門家に相談の上、具体的な数字を把握しておきましょう。
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住宅ローン控除の条件について詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。