賃貸アパートを退去する際には退去費用がかかります。そんなとき、貸主から請求される退去費用の相場や、相場以上の金額を不正に請求されないか不安になる人が多いのではないでしょうか。原状回復費用をどこまで負担するのかも気になるところです。
退去費用の相場を知ることで、高額な請求を鵜呑みにせず適正価格で退去費用を支払うことができます。
この記事では、退去費用の相場や原状回復費用を誰が負担するのか、退去費用を抑える方法などについて詳しく解説していきます。
- アパートの退去費用は主にハウスクリーニングに充てられる
1LDKのアパートの退去費用の相場は49980円
退去費用の相場
アパートを退去する際の退去費用の相場はいくらになるのでしょうか。相場より高い場合は引き下げの交渉や自分でできることをするなど、対策を考えたいですよね。
間取り別での退去費用の相場
無人契約機検索サイト:アトムくんが実施したアンケート調査によると、請求された退去費用の平均は以下の表の通りになります。
間取り | 請求された退去費用の平均 |
---|---|
ワンルーム、1K、1DK、1LDK | 49,980円 |
2K、2DK、2LDK | 79,924円 |
3DK、3LDK、4K、4DK、4LDK | 90,139円 |
退去費用を支払った経験のある200名にアンケート調査を実施した結果、平均額は63,283円でした。部屋数が多ければ多いほど退去費用が高くなることがわかります。
居住年数別での退去費用の相場
間取りだけでなく、居住年数によっても退去費用が変わります。
居住年数 | 請求された退去費用の平均 |
---|---|
~3年 | 49,431円 |
4年~6年 | 61,694円 |
~7年 | 87,090円 |
居住していた年数に比例して退去費用が高くなっていることがわかります。
1平方メートルあたりの退去費用の相場
実は、アパートの退去費用は1平方あたりいくらという計算で正しく出すことはできません。こちらの表は、請求された金額と平均的な間取り別の平米数から逆算しています。
平米数 | 目安になる相場 |
---|---|
15~20 | 2.950円 |
21~30 | 2,200円 |
31~40 | 2,300円 |
41~50 | 1,750円 |
51~60 | 1.450円 |
61~70 | 1,355円 |
71~80 | 1,200円 |
81~90 | 1,100円 |
91~ | 1,000円 |
退去費用は広い家が割安になることがわかります。
間取り、築年数、平米数を自分の部屋と照らし合わせて考えると、おおよその退去費用が予測できるでしょう。ただ、地域や時期、状況によって費用は上下することがあるので注意してください。
アパートなどの賃貸に必要な「退去費用」とは?
そもそも、退去費用とは何にかかる費用なのでしょうか?
その内訳は、「原状回復費用」と「ハウスクリーニング代」の2つに分けられます。その他、汚れや劣化の程度によって別途費用が発生すると考えると良いでしょう。
退去費用に含まれる「原状回復費用」とは?
退去費用に含まれる「原状回復費用」は、原状回復する際の責任の所在が貸主・借主のどちらにあるかで費用負担が変わります。
というのも、原状回復はガイドラインに定められており、それに従って貸主・借主どちらの負担になるかは決まるからです。
国土交通省の原状回復をめぐるトラブルとガイドラインによると、原状回復とは、賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧することです。
一般的な原状回復は「借りたときの状態に戻す」という意味ですが、ガイドラインに明示してある原状回復の定義は、借りたときの状態に戻すのではなく「通常の使用を超える範囲の損耗や毀損の復旧」です。
つまり、借りた当初の状態に戻す必要はなく、普通に生活する上で付いた傷や汚れなどは原状回復に当てはまらないので、借主が負担する必要はありません。
原状回復の補修にかかる費用の相場
原状回復の補修や汚れの除去は具体的に以下の項目があり、費用相場も以下の通りになります。
損傷箇所と修繕内容 | 料金 |
---|---|
壁紙の張り替え(㎡) | 750~900円 |
ふすまの張り替え(1枚) | 3,000~4,500円 |
トイレの水垢のカビ除去 | 5,000~8,000円 |
床材についた汚れの除去(1ヵ所) | 10,000円 |
サッシのカビの除去(1ヵ所) | 10,000~20,000円 |
浴室の水垢やカビの除去 | 10,000〜20,000円 |
キッチンの油汚れの除去 | 15,000〜25,000円 |
床材の張り替え(1枚) | 8,000~10,000円 |
壁の下地ボードの取り替え | 25,000~60,000円 |
壁の張り替え(全面/6畳) | 40,000円 |
柱の修繕 | 10,000~40,000円 |
カーペットの張り替え | 40,000~60,000円 |
フローリングの張り替え | 80,000~120,000円 |
ただ、クリーニング費用と同じく金額にはブレがあるので、以下の点を理解しておきましょう。
- 業者や職人の人件費によって金額は異なる
- 補修箇所によって金額は異なる
業者や職人の人件費によって金額は異なる
まず、業者によって補修費用や除去費用が異なりますし、特に職人を呼ぶ必要がある補修費用は時期によって金額は大きく異なります。
というのも、職人は人材不足なので需要が高い時期であれば人件費が高くなり、それが補修費用にダイレクトに反映するからです。
補修箇所によって金額は異なる
また、たとえば床材の張り替えにしても、ひとつの部屋の床材を張り替えるのか、複数の部屋の床材を張り替えるのかで金額は異なります。
床材を張り替えるときは、部屋の端から床を剥がしていき、該当の床材までたどり着いて床材を張り替えるからです。つまり、ひとつの部屋の方が張り替える手間が省けるというわけです。
たとえば小規模の張り替えだったとしても、複数の部屋に分かれれば時間がかかり、その分人件費が上乗せされるというわけです。
退去費用に含まれる「ハウスクリーニング代」とは?
ハウスクリーニングとは、一般的には専門業者による住宅の清掃サービスです。
つまり、貸主自身で清掃作業するのではなく、専門の業者に単発で清掃を依頼することがハウスクリーニングであり、その費用がハウスクリーニング代です。
具体的に、ハウスクリーニングは以下のような清掃内容になります。
- エアコン清掃
- 床の清掃
- ワックス掛け
- 汚れた壁紙クロスの清掃や張り替え
- キッチン、バス、トイレなど水回りの清掃
- ベランダ清掃
ハウスクリーニングをどこまで行うかは貸主によって異なります。範囲を広げるほど費用は高くなりますが、きちんとハウスクリーニングしないと次の借主が付きにくいです。
その辺りを、築年数や借主の志向性、そしてハウスクリーニング代を天秤にかけて判断しなければいけません。
ハウスクリーニングにかかる費用の相場
ハウスクリーニングにかかる費用相場は以下の通りです。
㎡(平米) | 金額 |
---|---|
~30㎡未満 | 15,000円~30,000円 |
30㎡~50㎡未満 | 30,000円~50,000円 |
50㎡以上~ | 50,000円~ |
ハウスクリーニング代の注意点としては以下になります。
- 業者によって価格が異なること
- 時期によって価格が異なること
業者によって価格が異なること
まず、ハウスクリーニング業者はたくさんあり、業者ごとで価格が異なります。もちろん、安ければ良いというわけではなく、ハウスクリーニングの質が重要です。
複数の物件を所有しているのであれば、複数の業者に見積もりを取った後に、いくつかの業者にハウスクリーニングを依頼しましょう。
そこで業者の質を比較し、費用対効果の高い業者を見つけると、今後の賃貸経営においてプラスになります。
時期によって価格が異なること
また、ハウスクリーニング業者は賃貸の退去が多い時期に需要が増します。
そのため、3月や9月などの転勤や進学などを理由に退去が多い時期には、ハウスクリーニング代は上がる可能性があります。
上記のハウスクリーニング代はあくまで参考金額として頭に入れておき、時期によっては増額すると考えておきましょう。
現状回復費用の負担は貸主?借主?
数年間住んでいると、どうしても傷や汚れが目立ってくるのではないでしょうか。損傷してしまった箇所もあると思います。
どのような汚れ・損傷の場合自分が負担しなければいけないのか気になるところです。
どちらが負担するかの判断基準
原状回復をめぐるトラブルとガイドラインによると、原状回復費用をどちらが負担するかについては、以下の通り決まっています。
経年劣化・自然損傷:大家さんの負担
入居者の故意・過失:入居者の負担
つまり、「自分以外の誰かが普通に住んでいても発生するだろう劣化や損傷」は、大家さんの負担になることが多いと考えておくと良いでしょう。
借主が負担すべき費用は?
さて、上述したように原状回復の定義的には、借主は通常使用していれば費用負担はありません。
ここでは、通常使用の定義が曖昧なため、以下の項目で具体的に借主が負担すべきケースを解説していきます。
- 壁や床の水漏れが原因の腐食
- クロスの傷や落書き
- フローリング、畳、カーペットの傷や汚れ
- タバコのヤニ汚れや臭い、焦げ跡
- ドア、障子、網戸の傷や破損
壁や床の水漏れが原因の腐食
壁や床の水漏れに関しては、たとえば以下のような項目は借主に費用を請求できます。
- エアコンの排水ホースの不備による漏水による腐食
- 洗濯機の給水ホースの不備による漏水による腐食
エアコンを借主が設置したのであれば、その設備不良は借主の責任になります。
また、洗濯機は通常は借主が設置するので、その設備不良での漏水も借主の負担です。
クロスの傷や落書き
クロスの傷や落書きに関しては、たとえば以下のような項目は借主に費用を請求できます。
- 子供がクロスに落書きしたことによる汚れの除去
- 明らかに過失によってできた傷
このような傷や汚れは借主が張り替え費用を負担します。
明らかに過失によってできた傷とは、たとえば家具を運んでいるときにクロスに擦ってしまったときにできた傷などです。
フローリング、畳、カーペットの傷や汚れ
フローリング、畳、カーペットの傷や汚れに関しては、たとえば以下のような項目は借主の負担です。
- 重いものを誤って落としたことでできた傷やへこみ
- 畳に飲みものをこぼしたことでできたシミや汚れ
上記のようなことは通常使用とは言わずに、借主の過失による傷や汚れになります。
タバコのヤニ汚れや臭い、焦げ跡
タバコのヤニ汚れや臭い、焦げ跡に関しては、そのままの意味です。タバコは「通常使用」とは言わずに、借主の都合によるものです。
そのため、タバコによってクロスに臭いが付けば、クロスの貼り換え費用は借主が負担することになります。
また、タバコの火の不始末によりフローリングに焦げ跡ができれば、そのフローリングの補修や交換費用も借主の負担です。
ドア、障子、網戸の傷や破損
ドア、障子、網戸の傷や破損に関しては、明らかに経年劣化でない場合は借主の負担です。
たとえば、築年数が経過しており、網戸が自然に剥がれてしまえば、「通常使用」の範囲として借主は負担しなくて良いもしれません。
ただ、明らかに過失により穴が開いていたり、ドアの枠部分が破損していたりする場合は、借主の費用負担になります。
オーナー負担になる費用は?
前項とは逆に、オーナーの費用負担になるケースを、以下の具体例で解説していきます。
- 壁に空いた画鋲の穴
- 家電の裏の壁に付いた黒いシミ
- フローリング・畳・壁紙の日焼け
- 家具の設置跡やへこみ
壁に空いた画鋲の穴
壁に空いた画鋲の穴は貸主負担です。ただし、以下のような穴の場合は借主負担になるケースもあります。
- 太いネジを埋め込んだことによる大きな穴
- 何度も画鋲を刺したことで広がった穴
要は、「壁にカレンダーを掛ける」「時計を掛ける」などは、生活する上で通常使用と認められます。だからこそ、貸主負担になるというわけです。
しかし、上述したような穴は通常使用の範囲を超えていると見なされるため、借主負担になるケースがあるということです。
家電の裏の壁に付いた黒いシミ
冷蔵庫など長期間同じ場所に置いていると、その家電の裏側のクロスが黒ずむ場合があります。
しかし、それは「通常使用」の範囲ですので、クロス張り替えやクリーニング費用は貸主の負担となります。
フローリング・畳・壁紙の日焼け
太陽光によって、フローリングや畳・クロスは日焼けすることがあります。しかし、この日焼けは普通に住んでいても起こり得ることですので、通常使用の範囲内と見なされます。
そのため、日焼けに伴うクロスやフローリングの張り替え費用は貸主負担です。
家具の設置跡やへこみ
家具を置いていれば、そこで設置跡やへこみができる場合があります。しかし、設置跡やへこみは普通に生活していても起こり得ることですので、通常使用の範囲内です。
そのため、フローリングがへこんだことによる補修や交換費用は、貸主の負担になるというわけです。
退去費用を抑える方法
相場より高額な費用を請求されていたり、相場より安く済ませたりしたい場合は、退去費用を抑える方法が気になりますよね。
管理会社に交渉する
知らない方が多いのですが、管理会社に交渉することで退去費用を抑えられる可能性があります。
「安くしてください」という伝え方だとうまくいかないかもしれませんが、うまくいけば立ち合い時のの会話や電話1本で退去費用を安くすることができます。
交渉の際は、高いと思う根拠を事前にはっきりさせておきましょう。
- 原状回復費用やハウスクリーニング代の相場金額を把握する
- 見積書の内訳でわからない部分を明確にする
- 入居した時点の壁や床の状況をおさめた写真を用意する
交渉のタイミングは、退去時の管理会社との立ち合いの際や、退去費用の請求書を受け取った段階になるでしょう。
できれば立ち合いの際にその場で退去費用がいくらくらいになりそうか想定される金額を聞き、交渉を自分から始めることをお勧めします。
目立つ汚れは落とす
退去費用を抑えるために、自分でできる範囲で目立つ汚れは落としておきましょう。
特に、キッチンの油汚れ、トイレ、壁やクロスの汚れは落としておけると、ハウスクリーニング代を多く請求される危険も防げるでしょう。
管理会社も人なので、心証を良くしておくと引き下げ交渉をした際の成功する確率も上がります。
自分で修復する
退去費用を抑えるために、壁や穴や床の傷を自分で修復するという手段もあります。
壁の穴は、ホームセンターやネットで購入できる穴うめ材で埋めることができます。
床の傷も同様に補修キットを使って自分で修復することができます。ただ、壁の穴を埋めるよりも綺麗におこなうのが難しいため、目立たないところから少しずつ始めることをお勧めします。
失敗すると傷や汚れが広がって見える危険性もあるので、場合によっては内装会社に依頼する方が退去費用を抑えられることもあります。
契約内容で注意したい特約
さて、退去費用に関して、相場や借主・貸主の負担範囲が分かったと思います。
次に、借主が知っておくべき以下の特約について解説していきます。
- 原状回復特約
- 敷引き特約
ただし、はじめに言っておくと、特約の内容があまりにも借主に不利な契約であれば無効になる可能性が高いです。
原状回復特約
原状回復特約とは、賃貸借契約書と一緒に結ぶ特約で、ある程度の原状回復費用を入居者に負担させるという内容です。
ただ、特約を結ぶときにどの部分をいくら借主に負担してもらうかを、具体的に明示する必要があります。
一般的には、「クリーニング費用」として部屋の広さに応じて費用を定めておくケースが負いです。
敷引き特約
そもそも敷引きとは、敷金の中から原状回復費用を一定金額差し引くことです。
たとえば、特約で「敷引き1ヶ月」と契約書に記載する場合は、退去時に敷金から家賃1ヶ月分の金額が差し引かれるということです。
この特約によって、前項と同じく契約時に原状回復費用の徴収額を決めておくということになります。
まとめ
- 原状回復費用は通常使用なら借主は負担しない
- 借主が負担せずに補修やクリーニングするなら貸主の負担
- 特約を結ぶことで原状回復費用の徴収を予め決められる
借主、貸主両方の視点で退去費用の相場についてご紹介しました。同じエリアや似た物件の相場を把握した上で適正価格で退去費用を設定できると良いでしょう。
また、賃貸の引っ越しを機にマイホームの購入を考える方も多いと思います。初めての住宅購入では誰もが「自分にマイホームなんてまだ早い」と考えてしまいますが、事前に将来にわたっての返済計画を立てておくことで安心して購入を検討することができます。
そして、住宅ローンを組む際は住宅購入のプロに相談しながら資金計画を立てることが必要不可欠です。というのも、無理のない計画を立てるだけではなく、住宅ローン控除など知らないと損する専門的な知識をベースに資金計画を立てられるからです。
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