お得な価格で入手できる中古物件をリノベーションして入居する方が近年増えてきています。
しかし、すべての物件がリノベーションできるわけではないため、物件を購入する際は「リノベーションに向いている物件かどうか」をしっかりと見分けることが重要です。
この記事では、リノベーション向きの物件を見分けるポイントやコツについて徹底解説します。後半では物件探しの注意点についてもご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
戸建てとマンションでは見ておきたいポイントが異なるため、ご希望の物件に合わせて情報をチェックしておきましょう。
リノベーション向きの物件とは?
「リノベーション向きの物件を選ぼう」と言われても、多くの人はどのような物件がリノベーションに向いているのかについてイメージしにくいかもしれません。また、一戸建てとマンションではリノベーションに向いている条件が異なるため、物件探しの際は注意が必要です。まずは、リノベーション向きの物件についてしっかりと知識を身につけておきましょう。
リノベーション向きの一戸建て住宅
戸建てはマンションと比べると自由度が高いため、制約などを気にしないでリノベーションしやすい傾向にあります。だからといって、どのような中古物件でもリノベーションできるというわけではありません。リノベーションに向いている戸建てを見分けるときは、「築年数」と「完了検査証の有無」をチェックする必要があります。
築年数
最新の耐震基準を満たした、1981年6月1日以降に建築確認が行われた物件が安心です。そのため、目安として築40年未満の物件を中心に選ぶようにしましょう。
これより古い家は現在の耐震基準を満たしていないケースも多く、自然災害による倒壊リスクがあります。また、リノベーションの際に基礎工事や耐震工事が必要になって余計なコストがかかるケースも多いです。
完了検査証の有無
完了検査証とは、建築工事の完了後に行政庁や検査機関に検査を申請し、合格することで交付を受けられる証明書のことです。この完了検査証がないと建物は使用できませんが、古い住宅には審査忘れや違法建築などによって交付を受けていないものもあります。
こういった物件の場合、リノベーションのためにローンを組むときに審査で落とされてしまう恐れがあります。安全面にも不安が残るため、必ず完了検査証がある物件を選びましょう。
リノベーション向きのマンション
次に、リノベーションに向いているマンションの条件を見ていきましょう。マンションは集合住宅という性質上、戸建てのように自由なリノベーションができないことが多いですし、そもそもリノベーションが禁止されていることもあります。しっかりとリノベーション可能な物件を見極めるためにも、「マンションの管理規約」と「構造」について確認しておきましょう。
マンションの管理規約
マンションには、「建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)」により、区分所有者の権利や義務などが定められた管理規約というルールがあります。管理規約はマンションの資産価値をしっかりと管理し、区分所有者の共同の利益を保護するために設定されているものです。
この管理規約には、リノベーションに関するさまざまな制約が設定されています。たとえば「遮音性を高めるために一定性能以上のフローリングしか使用できない」「共用部分にあたるベランダや窓はリノベーションできない」などといった制約があります。物件購入時はあらかじめ管理規約をチェックし、希望する工事が可能かどうかを確認することが大切です。
構造
後述しますが、マンションには2つの構造があり、構造によって間取りの変更ができるかどうかが変わってきます。大幅な間取り変更を希望するときは、「ラーメン構造」と呼ばれる構造のマンションを選ぶ必要があります。
構造は一般の人が目で見て判断することが難しいので、購入するときはしっかりと不動産会社に確認しておきましょう。
リノベーション向き物件の探し方
ここからは、実際にリノベーション向きの物件を探す方法についてご紹介します。条件に合った物件を探すには、「物件提案型サービス」や「不動産ポータルサイト」の利用が便利です。
それぞれについて解説していきます。
物件提案型サービスを利用する
先述の通り、リノベーション向きの物件を探すときは築年数や構造、各管理規約など注意すべきポイントがたくさんあります。とはいえ、不動産知識がないままこれらをゼロから調べるのはなかなか骨の折れる作業です。
そこで「物件提案型サービス」なら、住みたいエリアや希望の条件を登録するだけで、理想の物件を提案してもらえます。無料で利用が可能なので、まずは登録してみましょう。
不動産ポータルサイトを利用する
「まずはどのような物件があるのか色々見てみたい」と言う場合は、通常の不動産ポータルサイトからもリノベーション向きの物件を探すことが可能です。
検索時に希望する条件を設定して絞り込みを行えば、どのような物件が売り出されているのか確認できるので試してみてください。幅広い情報はポータルサイトで調べて、実際の物件選びは提案型サービスを使うなど、用途にあわせて併用してみるのも良いでしょう。
リノベーションまでワンストップ対応の業者に相談する
物件探しや各種手続きの手間をできるだけなくしたい方は、リノベーションまですべてワンストップで対応してくれる業者に頼ってしまうのもおすすめです。
リノベーション業者の中には、物件探しからリノベーション工事までを一括で対応してくれる会社もあります。このような業者であれば、複数の仲介業者やリノベーション業者を介すことなく丸ごとスケジュール管理まで対応してもらえるので、初めてリノベーションを検討している方でも安心して住宅購入を任せられるでしょう。
リノベーション向き物件の例
ここからは、リノベーション向きの物件を見分けるコツについて具体的に解説します。これから紹介する条件を満たした物件を選べば、希望するリノベーションを実現しやすくなるでしょう。築15~20年の物件
リノベーションする物件を購入するとき、「築何年の物件を選べばお得なのか」が大きな疑問として浮かぶでしょう。リノベーションにかかるコストや資産価値を考慮すると、実は築15~20年の物件が非常におすすめです。物件はある程度年数を経ると価格が落ち着き、それ以降は大きな変化がなくなります。築浅物件だと、価格が割高なうえに将来的に大きな価値の下落が起きる可能性があります。
そのためそこまで古いわけでもなく、ある程度価格が安くなって価値が下がりにくい築15~20年が、もっとも購入に最適な物件なのです。安さを求めるのであれば築25年以降の物件もおすすめですが、建物や設備の老朽化によって修繕費が高くつくことも多い傾向にあります。築年数が長い物件を選ぶときは、「劣化部分がないか」「どれくらいの補修が必要なのか」についてしっかりと確認しておきましょう。
新耐震基準の物件
新耐震基準に適合した物件かどうかも、必ずチェックしておきたいポイントです。耐震基準は1981年(昭和56年)6月1日に改正され、いわゆる新耐震基準になりました。この日以降に建築確認を受けていれば、新しい基準を満たした耐震性の高い物件だということになります。耐震基準を確認しておきたい理由としては第一に安全性が挙げられますが、ほかにも2つの理由が存在しています。まず、銀行によっては旧耐震基準の物件に融資してくれない可能性がある点に注意が必要です。また旧耐震基準の物件は、住宅ローン減税をはじめとする税額の優遇制度や補助金制度が利用できない可能性があります。[注1]
ただし、なかには旧耐震基準でも耐震性があることが確認されている物件もありますし、耐震改修済みの物件もあります。旧耐震基準でも気に入った物件があるときは、耐震診断などで安全性が証明されているかどうかを確認してみることをおすすめします。
ラーメン構造の物件
建物の構造も、リノベーションする物件を探すときにチェックしておきましょう。建物には2種類の構造があり、それぞれで「大幅な間取り変更をともなうリノベーションができるかどうか」が異なるためです。建物の構造の種類と特徴は、以下のとおりです。
ラーメン構造
柱と梁を接合し、しっかりと建物の強度と耐震性を確保する構造です。柱と梁をフレームとするため、本来構造的に必要となる筋交いなどがなくても問題がない建物になります。
柱と梁の接点をしっかりと接合できる鉄筋コンクリートや鉄骨造で取り入られることが多く、戸建住宅から高層マンションまで幅広い建物で取り入れられています。
壁式構造
文字通り、壁で住宅を構築する構造です。柱と梁の代わりに「耐震壁」で建物を支えるため、壁を撤去したり大きな窓をつけたりすることはできません。
室内に柱型や梁が出っ張ることなくスッキリした空間になる点がメリットですが、間取り変更をともなうリノベーションには向いていません。また、一般的には5階以下の低層の建物にしか採用できないとされています。
間取りの変更を希望しているのであれば、ラーメン構造の物件を選ぶことになります。
なお、先ほどリノベーション向きのマンションの条件として構造について言及しましたが、一戸建ての場合もRC (鉄筋コンクリート) 造などで壁式構造を採用しているケースがあります。構造をチェックしておくことは、マンションと一戸建てのどちらを購入する際も非常に重要なのです。
居住中の物件
意外かもしれませんが、居住中の物件も実は非常にリノベーション向きの物件です。なぜなら、いま人が住んでいればリフォームされていないことになり、内装などが傷んでいて価格が安く設定されている可能性が高いためです。また、居住中の物件をそのまま購入するときは価格交渉もしやすく、物件価格を抑えてよりリノベーションに費用をかけられるようになります。リノベーションでは床材や壁紙を一新する人が多いので、居住中の物件を購入しても困ることはありません。そのため、売却のためにリフォームされた物件を購入するよりも、居住中の物件を安く譲ってもらったほうがお得なことが多いのです。
配管経路が「床スラブ上配管」の物件
水回りのリノベーションをするなら、配管経路も要チェックです。配管経路には、以下の2つの種類があります。
床スラブ上配管
排水管が構造躯体コンクリートである床スラブの上を通ってキッチンなどに繋がっているため、構造躯体を壊さずに位置の変更が可能です。
床スラブ貫通
排水管が構造躯体コンクリートである床スラブを貫通してキッチンなどと繋がっているため、水回りの移動がほとんどできません。移動をする際は下階の天井裏を解体することになるので、大掛かりな工事が必要です。
水回りの移動をともなうリノベーションなら、「床スラブ上配管」という配管のほうが向いています。ただし、トイレは配管方式に関係なく位置が移動できないケースが多いため、注意しましょう。
周辺の維持管理が適切な物件
物件を選ぶときは、周辺の維持管理についても確認しておきましょう。リノベーションすれば部屋の内部は自分好みに変更できますが、それ以外の部分だとそうは行きません。マンションであれば共用部分や建物自体、一戸建てであれば共用のゴミ置き場などが、維持管理をチェックしておきたい箇所として挙げられます。とくに、中古マンションは管理が行き届いているかどうかで資産価値が変わってきます。物件を内覧するときは、必ず共用部分のお手入れが行き届いているかどうかを確認しておきましょう。
リノベーション向き物件を探すときの注意点
ここでは、リノベーションするための物件を探すときに押さえておきたい注意点を紹介します。購入してから後悔することがないように、意識しながら物件を探してみてください。あらかじめ予算と優先順位を決めておく
物件を探すときは、あらかじめ予算と優先順位を決めておきましょう。リノベーションするときは、まず物件購入とリノベーションのどちらに予算を優先的に充てたいのかを明確に決定しておくことが大切です。おすすめは、先に物件選びを優先して、余った予算をリノベーションに回す方法です。こうすることでアクセスや資産価値、周辺環境などの優先順位が高い条件を叶えつつ、予算内に費用を抑えられるようになります。
ただし近年はテレワークの促進により、アクセスや資産価値を気にせず、住環境を整えることを重要視する人も増えてきました。この場合、リノベーションの方に予算を割いたほうが満足度の高いマイホームに仕上げられるかもしれません。
ご自身の希望に合わせ、優先順位を決めて物件を選ぶと後悔しにくいでしょう。
「リフォーム・リノベーション済み」の物件は避ける
すでにリフォームやリノベーションが済んでいる物件は、できるだけ避けることをおすすめします。こういった物件は内装がきれいですが、工事費が物件代金に上乗せされており、費用が高めになっています。ここから更にリノベーションするとなると、二重費用になってしまうため注意が必要です。ただしリフォーム・リノベーション済みでも、そのまま活用できる部分が多い物件であれば、リノベーションする箇所が減って費用が押さえられることもあります。気に入った物件があれば、選択肢のひとつに入れてもいいかもしれません。
不安なときはワンストップ業者へ相談
リノベーションを行うときは、物件の契約から工事の相談、ローンの手続きや業者の手配まで多くのプロセスが必要になります。また、リノベーション向きの物件かどうかも見極めなければならず、これらをすべて自力で行うことに不安を感じる方も多いのではないでしょうか。少しでも不安なことがある場合は、先にも触れた通り、リノベーションにおすすめの物件を提案してくれる「提案型サービス」か、物件仲介からリノベーション工事までワンストップで行ってくれる専門業者への相談がおすすめです。仲介する建物がリノベーション可能かどうかの判断はもちろん、物件とリノベーション工事の希望をヒアリングし、最適な予算計画を立ててくれます。
リノベーション向きの物件で理想のマイホームを手に入れよう
リノベーション向きの物件探しを行うときは、構造や築年数など、さまざまな条件を満たした物件を購入することが大切です。人によって押さえておきたい条件は異なりますが、今回ご紹介したポイントや注意点を押さえたうえで、後悔のない物件選びをしていきましょう。とはいえ、リノベーションに向いている物件かどうかのチェックポイントはたくさんあるので、一般の人が内覧するだけでは判断することが難しいです。少しでも不安に感じる場合は、リノベーション会社や不動産会社の担当者に相談して、プロの手を借りながら物件を見極めていくことをおすすめします。
[注1]国税庁|No.1214 中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1214.htm