2025年時点の平均的な不動産社⻑の年収とは
不動産業界は「稼げる業界」として知られていますが、その中でも社⻑の年収はどのくらいなのでしょうか。 2025年現在のデータや各種調査を参考にすると、会社の規模や業種によって年収には⼤きな開きがあります。
たとえば、従業員5名未満の中⼩不動産会社の社⻑であれば、平均的な年収は800万円から1200万円程度が⽬安とされています。 ⼀⽅、全国展開している企業や上場企業の代表取締役となると、年収3000万円から1億円以上を稼ぐケースも珍しくありません。
ただしこの「年収」にはさまざまな構成要素があるため、単純に「給料だけでいくらもらっているのか」とは⾔い切れないのが実情です。
法⼈社⻑と個⼈事業主の違い
不動産事業を法⼈で運営する場合と、個⼈事業主として⾏う場合では、年収の定義と計上の⽅法が異なります。
法⼈社⻑の場合、年収は以下のような複数の要素から成り⽴ちます。
- 役員報酬(毎⽉の固定給)
- 会社利益からの配当⾦
- 不動産売却益や所有物件からの家賃収⼊
- 代表個⼈としての講演料やコンサル収⼊(兼業の場合)
⼀⽅、個⼈事業主として不動産仲介などを⾏っている場合、売上から経費を差し引いた**事業所得そのものが「年収相当額」**となります。 ただし、経費の範囲が広いため、実際の⽣活⽔準が⾒かけの年収額と⼀致しないこともあります。
このように、「年収」という⾔葉の定義が曖昧になりやすい業界であるこ
不動産業界の年収は「利益分配型」
不動産業界の社⻑年収の特徴は、利益分配型である点にあります。つま り、会社の利益をどう分配するかによって社⻑⾃⾝の取り分が決まるのです。
たとえば、年商5000万円の⼩さな不動産会社であっても、経費を抑えて利益率を⾼めれば、社⻑が年間1000万円以上の報酬を得ることも可能です。逆に、年商が1億円あっても⼈件費や広告費にコストをかけすぎれば、社⻑の年収は数百万円にとどまるケースもあります。
また、役員報酬を抑えて会社に利益を残し、節税対策や将来の投資に備えるという選択をする社⻑も多く⾒られます。 このように、「⾃分で⾃分の収⼊を設計できる」のが、不動産経営者ならではの特徴です。
このように、不動産社⻑の年収は⼀律ではなく、
- 法⼈ or 個⼈事業主か
- 会社の利益構造と経費の配分
- 役員報酬以外の収益源を持っているか
といった条件によって、⼤きく変わってきます。 そのため、「不動産会社の社⻑=みんな年収2000万円」というような単純なイメージは、実態を正しく反映しているとは⾔えません。
不動産業は「何をやっているか」で年収が変わる
不動産業界の社⻑の年収を語る上で避けて通れないのが、事業内容の違いによる格差です。 ⼀⼝に「不動産会社」と⾔っても、以下のように業種は多岐にわたります。
- 売買仲介業
- 賃貸仲介業
- 賃貸管理業
- 投資⽤不動産の販売
- 開発・分譲・リフォーム業
- サブリース・不動産テック型の新興事業
たとえば、都⼼の⾼価格帯物件を扱う売買仲介業では、1件の取引で数百万円の報酬が⼊ることもあるため、件数が少なくても利益率は⾮常に⾼くなります。 ⼀⽅、賃貸仲介業は単価が低めですが、回転が早く、件数を積み上げることで安定した収益を確保できます。
また、管理業務やサブリース事業はストック型の収⼊を⽣むため、⻑期的に⾒ると安定した年収を⽣み出しやすいビジネスモデルと⾔えます。
このように、扱うジャンルによって収益構造が⼤きく異なるため、同じ年商でも社⻑の年収に差が出るのは⾃然なことです。
従業員数・エリア・資本⾦などの「規模要因」
次に、会社の規模による年収格差について⾒ていきましょう。 以下は、 2025年に⾏われた不動産経営者向けアンケート調査(⺠間コンサル会社による集計)を元にした参考データです。
- 従業員5⼈以下の不動産会社社⻑:年収600万円〜1200万円
- 従業員10⼈〜30⼈規模の会社社⻑:年収1000万円〜2500万円
- 従業員100⼈超・複数拠点を持つ法⼈社⻑:年収3000万円〜1億円以上
このように、スタッフを抱えているか、エリア展開しているか、会社としての資本⾦が多いかどうかなど、経営規模がそのまま年収の上下に反映される傾向が⾒られます。
ただし、これは「規模が⼤きければ必ず稼げる」という意味ではなく、事業の利益率や社⻑⾃⾝の取り分の設定によって最終的な年収は決まります。
実際、⼩規模で⾼収益なビジネスモデルを持つ社⻑の中には、年商5000万円でも⼿取りで1000万円以上を得ているケースもあります。
都市部と地⽅での違いとコスト構造
社⻑の年収に影響を与えるもうひとつの要素が、地域による単価の差です。 都⼼部は取引単価が⾼いため、1件あたりの収益も⼤きく、結果として社⻑の取り分も⼤きくなりやすい構造があります。
⼀⽅、地⽅では家賃相場も売買価格も低いため、同じ件数をこなしても粗利は少なくなります。 ただし、地⽅は固定費(テナント費⽤・⼈件費)が安く抑えられるというメリットがあるため、低コスト運営でしっかり利益を出している地⽅の成功事例も少なくありません。
このように、都市部では「⾼単価・⾼コスト・⾼リスク」、地⽅では「低単価・低コスト・安定志向」といった戦略の違いがあり、どちらが良いという話ではなく、⾃社の⽅針とリソースに合わせた運営モデルの選択が⼤切です。
不動産業界では、「どの事業を選ぶか」「どこで運営するか」「どの規模で回すか」によって、社⻑の年収は⼤きく変わります。 年収を上げたいなら、ただ案件をこなすだけでなく、利益率の⾼いモデルやエリア戦略を設計することが必要不可⽋です。
開業1年⽬のリアルな収⽀はどれくらい?
不動産会社を独⽴開業するとなると、「⾃分がどれだけ稼げるのか」が気になるポイントです。 とくに初年度の収⽀モデルは、理想と現実のギャップが⼤きいため、事前にイメージを持っておくことが重要です。
以下は、売買仲介をメインにした⼩規模法⼈(社⻑1⼈+事務1名)を想定した、⽉商別の収⽀イメージです。
【モデルケース:⽉商300万円の場合】
- 売上(仲介⼿数料):300万円
- 広告費:30万円
- ⼈件費:40万円
- 家賃・⽔道光熱費:15万円
- その他経費:25万円
- 営業利益:190万円
- 社⻑の役員報酬:60万円(残りは会社利益)
このように、売上がある程度確保できれば、初年度でも⽉収50万円〜60万円程度の役員報酬を得ることは可能です。
ただし、注意点としては以下の2つがあります。
- 売上が⽴つまでに数ヶ⽉のタイムラグがある
- 開業資⾦(300万〜500万円)は事前に必要になる
「初⽉から⾼収⼊」は現実的ではないため、最初の半年〜1年は⽣活費を確保しつつ事業に集中できるよう、余裕を持った計画が必須です。
開業3年⽬以降の成⻑モデル
開業から3年⽬を迎える頃には、以下のような変化が⽣まれてきます。
- 過去の顧客からの紹介が発⽣しやすくなる
- 事業のリピート率が上がり、広告費を削減できる
- 外注やスタッフを活⽤して、対応件数が増やせる
この段階で、⽉商500万円前後を安定して出せるようになれば、社⻑の年収も⼤きく上がります。
【モデルケース:⽉商500万円・経費率40パーセントの場合】
- 営業利益:300万円
- 社⻑の報酬:100万円
- 法⼈利益:200万円(税引前)
このように、「売上を上げる」「利益率を上げる」「業務を分散する」ことができれば、年収1200万円〜1500万円も⼗分に現実的な数字になります。
なお、社⻑の取り分を増やすには「役員報酬」と「会社の利益」両⽅をバランスよく設計することが重要です。 税理⼠と相談しながら最適な⾦額を調整することで、節税しながら実質的な⼿取りを増やすことも可能です。
よくある成功モデルと失敗モデル
成功モデル
- 独⽴前に⼈脈や顧客リストを持っていた
- 管理や投資物件など、ストック収⼊を仕込んでいた
- 営業に集中し、事務・経理は早期に外注化失敗モデル
- 広告費がかさんで、利益が残らない
- 価格交渉や査定が⽢く、利益率が低いまま契約が続く
- 営業スキルに頼りすぎて、組織化や仕組み作りを後回しにした
このように、同じように開業しても、数字に対する意識と業務設計によって、3年後の年収は倍以上の差になることもあります。
不動産業で独⽴するというのは、単に「⾃由になる」という話ではなく、経営者として売上・利益・⼈材・時間のすべてをコントロールするということです。
その中でも「⾃分の年収をどう設計するか」は、極めて実務的かつ重要な
視点となります。
⾼収⼊を実現する不動産社⻑の思考と⾏動
不動産会社を経営する⼈の中で、年収1000万円を安定して稼ぎ続けている社⻑には、いくつかの明確な共通点があります。 単に「運が良かった」
「物件が当たった」というような偶然ではなく、意識的に“年収を作る仕組み”を整えているのが特徴です。
彼らに共通しているのは、以下のようなポイントです。
- 数字と利益に強く、常に収⽀管理を怠らない
- 営業だけでなく経営全体(採⽤・教育・経費)にも⽬が届いている
- ⼀発勝負ではなく、ストック型の収益源を複数持っている
- ⾃分が動かなくても売上が⽴つ仕組みを意識して作っている
要するに、「⼀⼈のスーパー営業マン」ではなく、「売上を⽣むチームと構造を作れる⼈」が、結果的に⾼年収を実現しています。
ストック型収⼊の有無が収⼊を左右する
売買仲介だけに依存している社⻑と、複数の収益源を持っている社⻑とでは、年収の安定性と伸び⽅がまったく異なります。
⾼収⼊を実現している社⻑は、次のようなストック型の仕組みを導⼊していることが多いです。
- 賃貸管理物件を持ち、毎⽉の管理料が⼊る
- ⾃社保有物件を運⽤し、家賃収⼊を得ている
- サブリース事業で、空室リスクをヘッジしつつ利幅を確保
- 売却益狙いの投資⽤物件を定期的に回している
このように、「売上が⽴たない⽉でも収益がある」状態を作っておくことで、経営の安定感と社⻑⾃⾝の年収も保たれるのです。
⾃分が現場に出なくても回る体制づくり
年収1000万円を超える社⻑の多くは、「⾃分が毎⽇現場に出なくても、⼀定の売上が上がる体制」を整えています。 これは決して「楽をしている」ということではなく、会社としての機能を組織化・仕組み化している証拠です。
具体的には、以下のようなアクションを取っています。
- 営業マニュアルを整備し、誰でも⼀定品質で提案できる仕組みを作る
- 反響管理ツールやCRMを導⼊し、追客の⾃動化を図る
- 広告や物件撮影などを外注化し、⾃分のリソースを経営判断に集中させる
- ⼀定以上の案件はスタッフに任せ、⾃分は顧客選別とクロージングに専念する
このように「現場に依存しない体制」を作ることで、社⻑はより利益率の
⾼い案件に集中できるようになります。
結果として、時間単価が上がり、年収1000万円を超えることが現実的になります。
不動産業は、努⼒次第で年収が⼤きく変わる世界です。 しかしその中で も、年収1000万円を安定して超える社⻑は、「仕組み・数字・継続⼒」の3つに優れたバランス感覚を持っています。
- 毎⽉の収益が途切れないようにストックを持つ
- ⾃分にしかできない仕事を⾒極めて集中する
- チームと仕組みを使いこなしてレバレッジをかける
これらを実⾏できる⼈が、着実に⾼収⼊を築いているのです。
⼀律では語れない「社⻑年収」の本質
ここまで⾒てきたとおり、不動産会社の社⻑の年収は、会社員とはまったく異なるロジックで決まります。 それは「誰かに決められるものではなく、⾃分で設計し、⾏動によって変えられるもの」だからです。
法⼈化している場合は役員報酬+会社利益、個⼈事業主であれば事業所得のすべてが年収に直結します。 収⼊が多い年もあれば、出費が重なり⼿元に残らない年もある。こうした波を理解し、コントロールできるようになることが、不動産経営者としての成⻑でもあります。
したがって、「不動産会社を始めたら年収は〇〇万円になる」といった画⼀的な数字には、あまり意味がありません。 重要なのは、⾃分のビジネスモデルと収⽀構造を把握し、利益から“どう報酬を取るか”を考えられる視点を持つことです。
年収を増やすために必要なのは「仕組み」
⾼年収の社⻑には、共通して「仕組み化」の意識があります。 ⼀⼈で全てをこなして⾼収⼊を得ているのではなく、組織・ツール・外注などを活⽤し、⾃分の時間をより利益に直結する業務に集中しています。
- 顧客を資産として積み上げるCRM運⽤
- ⾃社保有物件や管理収⼊でベースを固める
- マーケティングと営業プロセスを⾃動化・分業化する
このような仕組みを築いている会社は、景気や季節に左右されにくく、年収も安定して⾼⽔準を保てる傾向があります。
つまり、年収を上げるために必要なのは、「もっと働くこと」ではなく、
「働き⽅を変えること」なのです。
「年収〇〇万円」が⽬的ではなく、結果になる働き⽅を
不動産社⻑として年収を増やすことは、多くの⼈にとってひとつの⽬標かもしれません。 しかし、収⼊だけを追いかけすぎると、時間や健康、⼈間関係を犠牲にしてしまうリスクもあります。
だからこそ、年収を「⽬的」ではなく「結果」として捉えることが⼤切です。
- 顧客に喜ばれた結果として、リピートや紹介が増える
- スタッフや協⼒業者と良い関係を築けた結果として、効率が上がる
- 地道に仕組みを整備した結果として、⾃動的に利益が積み上がる
このように、ビジネスそのものの質を⾼めていくことで、年収という数字も⾃然とついてきます。
不動産業界は、実⼒と⼯夫次第で⼤きく稼げる可能性を秘めた世界です。社⻑としてそのチャンスをどう活かし、どう設計していくかは、まさに
「経営者としての⼒量」にかかっています。
年収1000万円、2000万円、それ以上を⽬指すことも⼗分可能です。 しかしそのためには、数字だけでなく、仕組みと⼈との関係、そして未来のビジョンまでを⾒据えた戦略が⽋かせません。
この記事を通じて、不動産社⻑としての年収の考え⽅や、その実現⽅法についての理解が少しでも深まっていれば幸いです。